「紹介やテレアポだけでは、新しい商談を増やしにくくなってきた」
BtoBマーケティングでは、このような課題を感じることがあります。営業担当者の人脈や架電数だけに頼るのではなく、継続的に見込み顧客との接点をつくり、商談につながるまでフォローする仕組みを整える必要があります。
その考え方の一つが、デマンドジェネレーションです。
本記事では、デマンドジェネレーションの基本的な意味から、BtoBで必要とされる理由、リードジェネレーション・リードナーチャリング・リードクオリフィケーションの関係、実際に取り組む際の進め方まで解説します。
なお、本記事で扱うのは、BtoBマーケティングにおけるデマンドジェネレーションです。Google広告の「デマンド ジェネレーション キャンペーン」とは異なる概念のため、Google広告の設定や配信方法については、該当する専門記事をご参照ください。
デマンドジェネレーションとは「需要を創り、育て、渡す」全プロセスのこと
デマンドジェネレーション(Demand Generation)とは、見込み顧客との接点をつくり、継続的に関係を築きながら、営業がアプローチする対象を見極めて引き渡すまでの一連のマーケティング活動を指します。
広告やウェビナー、メール配信といった個別の施策を指す言葉ではありません。見込み顧客の獲得から育成、営業への引き継ぎまでを一つの流れとして設計・運用する考え方です。
直訳は「需要の創出」。実際には獲得・育成・選別までを含む
「Demand」は需要、「Generation」は創出を意味するため、直訳すると「需要の創出」です。
ただし、BtoBマーケティングにおけるデマンドジェネレーションは、単に新しい需要を生み出す活動だけを意味するものではありません。
一般的には、次の3つの活動を組み合わせて考えます。
- リードジェネレーション:見込み顧客との接点をつくり、リードを獲得する
- リードナーチャリング:獲得した見込み顧客へ継続的に情報を届け、関係を築く
- リードクオリフィケーション:属性や行動などをもとに、営業が優先して確認するリードを見極める
たとえば、広告やSEO、展示会などで見込み顧客との接点をつくっても、その後のフォローがなければ商談につながらない場合があります。
反対に、メールやウェビナーで継続的に情報を届けていても、どのリードを営業へ共有するのかが決まっていなければ、マーケティング活動と営業活動がつながりません。
そのため、デマンドジェネレーションでは、リードを獲得することだけではなく、獲得したリードをどのように育成し、どの状態になったら営業へ引き継ぐのかまでを一つのプロセスとして考えることが重要です。
また、すでに具体的な製品・サービスを探している顕在層だけが対象ではありません。
まだ課題を認識したばかりの企業や、具体的な比較検討には入っていない見込み顧客とも早い段階から接点を持ち、検討状況に応じた情報を継続的に届けていくことも、デマンドジェネレーションの役割です。
つまり、「今すぐ商談になるリードを集める」という短期的な活動だけではなく、将来的な商談につながる見込み顧客との接点を継続的につくり、営業へつながる流れを整えることがデマンドジェネレーションの基本的な考え方です。
「デマンド ジェネレーション キャンペーン(Google広告)」とは別の概念
「デマンドジェネレーション」と検索すると、Google広告の「デマンド ジェネレーション キャンペーン」に関する情報も表示されます。
Google広告のデマンド ジェネレーション キャンペーンは、YouTube、Discover、GmailなどのGoogleの広告枠を活用してユーザーへ広告を配信するキャンペーンタイプです。
一方、本記事で扱うデマンドジェネレーションは、BtoBマーケティングにおける見込み顧客の獲得・育成・選別・営業への引き継ぎまでを設計する考え方です。
名前は似ていますが、Google広告の商品名とBtoBマーケティングの概念は別のものとして整理しておきましょう。
BtoBでデマンドジェネレーションが必要な理由
BtoBマーケティングでは、営業担当者と接点を持つ前から、見込み顧客自身がWebサイトや業界メディア、SNS、ウェビナーなどを通じて情報を集め、比較・検討を進めることが一般的になっています。
そのため、問い合わせや商談が発生してから営業が対応するだけではなく、それ以前の段階から見込み顧客と接点をつくり、継続的に関係を築く仕組みが重要になります。
デマンドジェネレーションが必要になる背景として、特に次の3つが挙げられます。
- 営業と接点を持つ前に、見込み顧客自身が情報収集を進めている
- 紹介やテレアポだけでは、継続的に接点を増やしにくい
- BtoBでは複数の関係者が購買に関わるため、検討期間を通じたフォローが必要になる
BtoBマーケティング全体の考え方については、BtoBマーケティングの全体像でも詳しく解説しています。
購買前の情報収集が営業との接点より前に進むようになった
BtoBの購買担当者は、営業担当者に問い合わせる前から、自ら情報を集めるようになっています。
Gartnerが2026年に公表した調査では、BtoB購買者の67%が、営業担当者を介さずに進められる購買体験を好むと回答しています。
これは営業が不要になったという意味ではありません。実際には、一般的な情報収集はデジタルで進めながら、自社に合うかどうかの判断や意思決定の場面では営業担当者の支援を求める傾向もあります。
つまり、購買プロセスのすべてを営業が主導するのではなく、見込み顧客自身が情報収集を進め、必要な場面で営業と接点を持つ形に変わっています。
見込み顧客は、たとえば次のような情報源を利用します。
- 企業のWebサイト
- SEO記事
- 業界メディア
- SNS
- ウェビナー
- ホワイトペーパー
- 比較サイトやレビュー
- 生成AIを使った情報収集
この段階ですでに、どのような選択肢があるのか、どの企業が候補になりそうかを検討している場合があります。
そのため、問い合わせが発生するまで待つのではなく、見込み顧客が情報を集めている段階から接点を持てる状態をつくることが重要です。
なお、「BtoB購買プロセスの57%が営業接触前に終わっている」という数字もよく引用されます。
これはGoogleとCEBが2011〜2012年に行った調査をもとにしたもので、当時の調査では、購買担当者が営業担当者と本格的に接触するまでに購買プロセスの平均57%を進めていると報告されました。
現在では、BtoBの購買は「認知→比較→決定」と一直線に進むというより、情報収集や要件整理、社内調整などを行き来しながら進むものとして捉える方が実態に近くなっています。
そのため、この57%という数字そのものよりも、営業との接点が生まれる前から情報収集や比較が進んでいるという点を押さえておくことが重要です。
紹介とテレアポだけでは接点を増やし続けにくい
紹介やテレアポは、現在でも有効な営業手法です。
ただし、継続的に新しい見込み顧客との接点を増やしていくという点では、人脈や営業工数に左右されます。
紹介営業では、既存顧客や取引先のネットワークから新しい企業を紹介してもらいます。そのため、既存顧客との関係性が強い企業には有効ですが、紹介だけで接点を増やし続けるには限界があります。
テレアポも、営業担当者が対応できる件数に上限があります。
営業人員を増やせば架電数を増やすことはできますが、その分だけ人件費や管理コストも増えます。
そのため、
- SEO
- Web広告
- ウェビナー
- 展示会
- ホワイトペーパー
- メール
- SNS
などを組み合わせ、営業担当者の人脈や架電数だけに依存せずに見込み顧客との接点をつくる方法も必要になります。
Sells upが支援した株式会社日本テレビアート様でも、新規事業の立ち上げ当初は営業代行を活用していました。
しかし、デザインという無形商材の特徴を外部の営業担当者へ十分に伝えることが難しく、商談につながりにくい状況がありました。
その後、自社でMeta広告を活用したリード獲得へ取り組み、月10万円程度の広告予算で月100件以上のリードを獲得する体制を構築しています。
このように、紹介やテレアポをやめるのではなく、それらに加えて継続的に新しい接点をつくる仕組みを持つことが、デマンドジェネレーションの役割の一つです。
BtoBでは複数の関係者が購買に関わるため、継続的なフォローが必要になる
BtoBの購買では、担当者一人だけで導入を決められないケースがあります。
商品やサービスによっては、
- 実際に利用する担当者
- 部門の責任者
- 経営層
- 購買部門
- 情報システム部門
- 法務・セキュリティ部門
など、複数の関係者が判断に関わります。
それぞれの立場によって、知りたい情報も異なります。
実務担当者であれば使いやすさや業務負荷、管理職であれば導入効果や運用体制、経営層であれば費用対効果を重視する場合があります。
そのため、一度資料を送ったり、商談したりしただけで検討が進むとは限りません。
たとえば、
- 課題を理解するためのコンテンツ
- 導入事例
- 機能や料金の情報
- 社内説明に使える資料
- セキュリティやシステム連携に関する情報
などを、検討状況に応じて適切なタイミングで提供することが重要です。
デマンドジェネレーションでは、こうした一連の接点を個別対応だけに頼るのではなく、マーケティングと営業が連携して運用できる形に整えます。
見込み顧客との接点をつくり、検討期間を通じて必要な情報を届け、適切なタイミングで営業へつなぐこと。これが、BtoBでデマンドジェネレーションが必要になる大きな理由です。
デマンドジェネレーションを構成する3つのプロセスとリサイクル
デマンドジェネレーションは、主に「リードジェネレーション」「リードナーチャリング」「リードクオリフィケーション」の3つのプロセスで構成されます。
それぞれを個別の施策として考えるのではなく、見込み顧客との接点をつくり、関係を築き、必要なタイミングで営業へつなぐ一連の流れとして設計することが重要です。
実際の購買行動は必ずしも一直線に進むわけではありません。ナーチャリング中のリードが問い合わせをしたり、営業へ引き継いだ後に検討が止まり、再びナーチャリングへ戻ったりすることもあります。
そのため、次のような循環する仕組みとして捉えると分かりやすくなります。
【デマンドジェネレーションの全体像】
[リードジェネレーション]
展示会・広告・SEO・ウェビナー
↓ 接点を作る
[リードナーチャリング]
メルマガ・コンテンツ・セミナー
↓ 関係を育てる
[リードクオリフィケーション]
属性・行動の確認、MQL判定、営業への引き継ぎ
↓ 営業に渡す
[営業クローズ]
↓ 失注・休眠
[リサイクル(再アプローチ)]
↓ ナーチャリングへ戻す

①リードジェネレーション|見込み顧客との「接点を作る」
リードジェネレーション(Lead Generation)とは、自社の商品・サービスの対象になりうる企業や担当者と接点をつくり、見込み顧客として情報を取得する活動です。
主な手法には、次のようなものがあります。
- オンライン:SEO・コンテンツマーケティング、Web広告、ウェビナー、ホワイトペーパー、SNS
- オフライン:展示会、セミナー、イベント、名刺交換、勉強会
ここで重要なのは、単純にリード数を増やすことだけを目的にしないことです。
たとえば、展示会で多くの名刺を獲得しても、自社のターゲット企業がほとんど含まれていなければ、その後のメール配信や営業フォローにつながりにくくなります。
また、企業名や部署・役職、接点を持ったきっかけなど、その後の施策に必要な情報が取得できていない場合も、ナーチャリングや営業への引き継ぎが難しくなります。
そのため、リードジェネレーションでは、何件獲得するかだけではなく、獲得したリードをその後どのように活用するのかまで考えて設計することが重要です。
リードジェネレーション単体の設計手順と手法の選び方はリードジェネレーションの手法12選とBtoBのリード獲得施策9選で解説しています。
チャネルごとの指標の置き方はリードジェネレーションのKPI設計、ツールの比較はリードジェネレーションツール比較、他社の進め方はBtoBマーケティングの成功事例にまとめています。MAを使って獲得後の管理や施策につなげる場合はMAでのリード獲得の手順も参照してください。
リードジェネレーションとリードナーチャリングの役割の違いについては、獲得と育成の役割の違いで解説しています。
②リードナーチャリング|継続的に情報を届け、関係を築く
リードナーチャリング(Lead Nurturing)とは、獲得した見込み顧客に対して継続的に情報を届け、検討状況に応じて関係を築いていく活動です。
BtoBでは、リードを獲得した直後に商談や契約へ進むとは限りません。
たとえば、
- 課題は感じているが、まだ具体的なサービスを探していない
- 情報収集はしているが、社内で予算化されていない
- 他社サービスも含めて比較している
- 一度検討したものの、優先順位が下がっている
といった状態があります。
こうした見込み顧客に対して、一律に商談を求めるのではなく、現在の関心や検討状況に合わせた情報を届けていくのがナーチャリングです。
主な手法には次のようなものがあります。
- メールマガジン・ステップメール
- ウェビナー・オンラインセミナー
- ブログ・導入事例・ホワイトペーパーなどのコンテンツ
- SNSでの情報発信
- リターゲティング広告
- インサイドセールスによるフォロー
重要なのは、「定期的にメールを送ること」自体をナーチャリングの目的にしないことです。
たとえば、課題を認識し始めた段階では基礎的な情報を、具体的な比較を進めている段階では導入事例やサービス情報を届けるなど、見込み顧客の状況によって提供する情報を変えることが考えられます。
ただし、Webサイトの閲覧や資料ダウンロードだけで、相手の購買フェーズを正確に判断できるわけではありません。
行動データやアンケート、過去の商談状況などを組み合わせながら、どのような情報を届けるのが適切かを考えます。
インサイドセールスを組み合わせる場合はインサイドセールスでの育成を、SaaSのマーケティングについてはSaaSのリード獲得とSaaSマーケティングの進め方もあわせて確認してください。
ナーチャリングの具体的な手法や進め方については、リードナーチャリングの進め方で詳しく解説しています。
③リードクオリフィケーション|営業が確認する対象を見極める
リードクオリフィケーション(Lead Qualification)とは、保有している見込み顧客の中から、営業が優先して確認する対象を見極める活動です。
判断には、たとえば次のような情報を使います。
- 業種
- 企業規模
- 部署・役職
- 利用しているシステム
- 問い合わせ内容
- 資料ダウンロード
- ウェビナーへの参加
- Webサイト上の行動
- 過去の商談履歴
代表的な方法の一つがスコアリングです。
スコアリング(Scoring)は、企業属性や担当者属性、行動などに一定の点数を設定し、複数の情報からリードの優先順位を判断する方法です。
ただし、スコアが高いことと、購買意欲や受注確度が高いことは同じではありません。
たとえば、資料を何度もダウンロードしている担当者でも、競合調査や情報収集が目的の場合があります。反対に、Web上の行動は少なくても、具体的な課題を持って問い合わせをしている企業もあります。
そのため、スコアは営業へ引き継ぐ対象を判断する材料の一つとして利用し、実際の商談結果を見ながら条件や配点を調整していきます。
また、リードクオリフィケーションに必ずスコアリングが必要なわけではありません。
「特定の企業規模以上かつ問い合わせ済み」「既存顧客からの紹介かつ決裁者」といった明確な条件がある場合は、ルールベースで営業へ共有する方法もあります。
MQL(Marketing Qualified Lead)は、属性や行動などの条件をもとに、マーケティング部門が優先的なフォロー対象として判定したリードを指します。
Sells upでは、支援先のデータや商談状況に応じて、属性と行動を分けて評価するスコアリングモデルを設計することもあります。重要なのは、共通の配点をすべての企業へ当てはめることではなく、自社で実際に商談・受注につながったデータを確認しながら条件を設計することです。
選別の基本的な考え方と4つの方法の進め方はリードクオリフィケーションの意味と4つの方法で整理しています。
さらに重要なのが、マーケティングと営業の認識を合わせておくことです。
マーケティング側では営業へ共有すべきリードだと判断していても、営業側が「まだ対応する段階ではない」と考えている状態では、引き継ぎがうまく機能しません。
そのため、
- どのような条件を満たしたらMQLとするのか
- MQLになったら誰へ共有するのか
- 営業はどの程度の期間で対応するのか
- 営業が対応しない場合はどう戻すのか
といったルールをあらかじめ決めておきます。
④リサイクル|失注・休眠したリードへ再びアプローチする
デマンドジェネレーションを運用していると、営業へ引き継いだすべてのリードが商談や受注に進むわけではありません。
「今は予算がない」「優先順位が変わった」「一度検討したが見送った」といった理由で、検討が止まることもあります。
こうしたリードをそのまま放置せず、状況が変わったタイミングで再びアプローチできるようにするのが、リサイクルや再ナーチャリングと呼ばれる考え方です。
たとえば、
- 失注後、一定期間が経過したタイミングで最新事例を案内する
- 新機能やサービス内容の変更を知らせる
- 過去に関心を示したテーマのウェビナーを案内する
- Webサイトへの再訪などをきっかけに営業へ通知する
といった方法があります。
重要なのは、「半年後に必ず連絡する」と一律に決めることではありません。
失注理由や商材の検討期間、予算のタイミングなどによって、再アプローチに適した時期は異なります。
また、既存のリードへ再びアプローチできれば、新しいリードを獲得するだけでは得られない商談機会につながる場合があります。
Sells upが支援した株式会社ブリューアス様では、Account Engagementの移行時にも過去のアクティビティデータを活用できる状態を維持し、ステップメールを継続しました。その中で、一度失注して休眠していた顧客への掘り起こしメールをきっかけに、大型案件の受注につながった事例があります。

休眠リードへの再アプローチについては、潜在顧客の掘り起こしで詳しく解説しています。
デマンドジェネレーションとABMの違い。どちらを先に設計すべきか
デマンドジェネレーションとABM(Account Based Marketing)は、どちらもBtoBマーケティングで使われる考え方ですが、対象の絞り方とアプローチ方法が異なります。
デマンドジェネレーションは、見込み顧客との接点を広くつくり、育成しながら営業へつなぐ仕組みです。
一方、ABMは、あらかじめ重要な企業を選び、その企業ごとにマーケティングと営業が連携してアプローチする考え方です。
両者はどちらか一方を選ぶものではなく、組み合わせて使うこともできます。

どちらを先に設計するかは、商材とターゲットによって決まる
新規顧客との接点を継続的に増やす仕組みがまだ整っていない場合は、まずデマンドジェネレーションから設計する方法があります。
リードを獲得し、商談や受注につながった企業の特徴を確認していくことで、どのような企業を優先すべきか判断する材料が増えるためです。
その結果、
- 受注しやすい業種や企業規模
- 契約単価が高い企業の特徴
- 商談につながりやすい接点
- 受注までの期間
- 継続率やアップセルの傾向
などが見えてくれば、ABMで重点的にアプローチする企業を選びやすくなります。
一方で、最初から対象企業が明確な場合は、ABMを先に設計することもできます。
たとえば、対象となる企業を具体名で挙げられる、1社あたりの契約金額が大きい、個社ごとに提案内容を変えても採算が合う、といった商材です。
大手企業向けの基幹システムや、対象業界が限られている高単価サービスなどでは、広くリードを集めるよりも、重点企業を決めて営業とマーケティングが連携する方が適している場合があります。
また、既存顧客へのアップセルやクロスセルを重視する場合も、対象企業がすでに明確なため、ABMの考え方を取り入れやすくなります。
そのため、
広く見込み顧客との接点をつくり、受注につながる企業の特徴を見つけたい場合はデマンドジェネレーション、対象企業がすでに明確で、1社ごとに投資する価値が高い場合はABM
という考え方で整理すると分かりやすくなります。
実際には、デマンドジェネレーションで新しい見込み顧客との接点をつくりながら、その中でも重要な企業にはABMで個別にアプローチするなど、両方を組み合わせることもできます。
デマンドジェネレーションを機能させる3つの前提条件
デマンドジェネレーションを始める際に、「まずメルマガを始める」「MAツールを導入する」といった個別施策から着手するケースがあります。
しかし、施策だけを増やしても、営業へ引き継ぐ基準や、その後のフォロー方法が決まっていなければ、獲得したリードを十分に活用できません。
これまでSells upがBtoBマーケティングを支援する中でも、施策そのものより、その前後の運用や役割分担を整理することで改善につながるケースがありました。
デマンドジェネレーションを継続的に運用するために、特に確認しておきたいのが次の3点です。
1つ目は、営業とマーケティングで「どのリードを営業へ引き継ぐか」の認識を合わせることです。
2つ目は、リードを獲得した後、どのようにフォローするのかを設計することです。
3つ目は、その運用を継続できる体制とツールを用意することです。
前提①:営業へ引き継ぐリードの基準を共有する
デマンドジェネレーションでは、マーケティングが獲得・育成したリードを営業へ引き継ぐ場面があります。
このとき、マーケティングと営業で「どの状態なら営業が対応するのか」の認識が合っていないと、引き継ぎがうまく機能しません。
たとえば、マーケティング側では資料を複数回ダウンロードしたリードを優先度が高いと判断していても、営業側では企業規模や導入時期が分からなければアプローチしにくいと考えている場合があります。
BtoB企業の担当者480名を対象に弊社が実施したMA活用実態調査では、MAからのトスアップ運用を行っている割合は、MAが商談・売上に貢献できている企業とできていない企業で大きな差がなく、どちらも6割前後でした。一方で、営業との連携が取れていると回答した割合は、貢献できている企業でおよそ8割、できていない企業では1割に届きませんでした。引き渡しの仕組みがあるかどうかより、基準と対応が共有されているかどうかで差がついています。
この結果は相関を示すものであり、因果関係を示すものではありません。詳しい集計はBtoB企業のMA活用実態調査(第0回)で公開しています。
そのため、あらかじめ、
- どのような企業を対象とするのか
- どのような状態になったら営業へ共有するのか
- 営業へ共有した後、誰が対応するのか
- 対応結果をどのようにマーケティングへ戻すのか
といったルールを整理しておきます。
MQL(Marketing Qualified Lead)は、属性や行動などの条件をもとに、マーケティング部門が優先的なフォロー対象として判定したリードを指します。
MQLの条件には、業種や企業規模、役職などの属性を利用する場合もあれば、問い合わせや資料ダウンロード、ウェビナー参加などの行動を組み合わせる場合もあります。
重要なのは、共通の条件を機械的に当てはめることではありません。自社の営業が実際に対応できるリードはどのような状態かを、マーケティングと営業で確認しながら決めることです。
また、引き継ぎ後の対応ルールまで決めておくと運用しやすくなります。
たとえば、「MQLになったら営業へ通知する」「営業は一定期間内に確認する」「対象外だった場合は理由を記録してナーチャリングへ戻す」といった流れです。
こうした部門間の役割や対応ルールをSLA(Service Level Agreement)として整理する場合もあります。
MQLの定義や営業との合意形成については、営業が納得するMQL基準の設計法で詳しく解説しています。
前提②:リード獲得後のフォロー方法を設計する
次に必要なのが、リードを獲得した後にどのようなフォローを行うのかという設計です。
展示会や広告、ウェビナーでリードを獲得しても、その後にお礼メールを送るだけでフォローが終わってしまえば、継続的な関係づくりにはつながりません。
反対に、毎週メルマガを送っていても、すべてのリードへ同じ情報を届け続けているだけでは、相手の関心に合わない場合があります。
そこで、
- どのようなリードに
- どのような情報を
- どのタイミングで届けるか
- どのような行動があったら次の対応へ進めるか
をあらかじめ整理します。
たとえば、展示会で初めて接点を持ったリードには業界課題に関するコンテンツを案内し、その後サービス資料を閲覧したリードには導入事例を届ける、といった設計が考えられます。
ただし、すべてのリードが「認知→関心→検討→比較→決定」と同じ順番で進むわけではありません。
そのため、カスタマージャーニーは購買行動を固定するものではなく、どのような状況のリードに何を提供するのかを考えるための整理方法として利用します。
重要なのは、細かなシナリオを最初から作り込むことではありません。獲得したリードをそのまま放置せず、次にどのような接点を持つのかを決めておくことです。
前提③:継続して運用できる体制とツールを用意する
デマンドジェネレーションは、一度仕組みを作れば終わるものではありません。
リードの獲得状況や商談結果を確認しながら、配信するコンテンツや営業への引き継ぎ条件、対象となるセグメントなどを見直していく必要があります。
そのため、
- 誰がリードデータを管理するのか
- 誰がメールやコンテンツを作るのか
- 誰が数値を確認して改善するのか
- 営業からのフィードバックを誰が反映するのか
といった運用体制を決めておくことが重要です。
リード数が少ない段階であれば、CRMや表計算ソフト、メール配信ツールなどを組み合わせて運用することもできます。
一方、リードが増え、複数の条件でリストを管理したり、メール配信や営業通知を自動化したりする必要が出てきた場合は、MA(マーケティングオートメーション)を利用する方法があります。
MAでは、たとえば次のような業務を支援できます。
- リード情報の管理
- 条件に応じたリスト作成
- メール配信の自動化
- Web上の行動履歴の記録
- スコアリング
- 営業への通知
- CRM・SFAとのデータ連携
ただし、MAを導入しただけでデマンドジェネレーションが機能するわけではありません。
誰を対象とするのか、どのようにフォローするのか、どの状態で営業へ共有するのかが決まっていなければ、ツールを導入しても活用方法を決められません。
そのため、運用の考え方を整理したうえで、必要な部分をツールで効率化するという順番で考えることが重要です。
MAを導入するタイミングや進め方については、BtoBのMA導入と活用で詳しく解説しています。
デマンドジェネレーションの優先度を上げる前に確認したいこと
デマンドジェネレーションは、すべての企業が同じタイミングで優先すべき施策ではありません。
現在の課題によっては、リード獲得を増やす前に別の部分を整えた方がよい場合があります。
たとえば、次のようなケースです。
- 営業が既存リードへ十分に対応できていない:新しいリードを増やす前に、優先順位や引き継ぎルールを整理します
- ターゲットとなる企業が明確になっていない:まず既存顧客や受注企業を分析し、どの企業を狙うのかを整理します
- 獲得後に届けるコンテンツがほとんどない:リード獲得だけを増やすのではなく、その後のフォローに必要なコンテンツを準備します
- 対象市場が非常に限定されている:広くリードを集めるより、ABMや営業による個別アプローチの方が適している場合があります
重要なのは、デマンドジェネレーションを「やるか、やらないか」という二択で考えることではありません。
現在どこがボトルネックになっているのかを確認し、必要な部分から整えることが重要です。
「どこから始めるか」導入の優先順位と最初の3ステップ
デマンドジェネレーションを始めるときは、いきなり新しい施策やツールを増やすのではなく、現在のリードデータや営業との引き継ぎ条件を整理したうえで、小さく運用を始める方法があります。
Sells upでは、支援先の状況に応じて調整しながら、主に次の3つのステップで進めています。

1つ目は、現在保有しているリードデータを整理することです。
2つ目は、どのようなリードを営業へ引き継ぐのかを、営業とマーケティングで決めることです。
3つ目は、対象を絞ったシナリオを実際に動かし、結果を見ながら改善することです。
Step.1:現在のリードデータを棚卸しする
まず確認したいのは、現在どのようなリードデータを持っているのかです。
名刺管理ツール、CRM・SFA、Excel、メール配信ツールなど、複数の場所にリード情報が分かれている場合は、一度全体を把握します。
たとえば、次のような観点で整理します。
- 最終接触日
- 業種・企業規模
- 部署・役職
- 接触経路
- 現在の商談状況
- 過去の失注・休眠状況
- メール配信やウェビナーへの参加履歴
最終接触日は「半年以内」「半年〜1年」「1年以上」など、自社の商材や検討期間に合わせて分類すると整理しやすくなります。
この棚卸しによって、
- どのような企業のリードが多いのか
- 長期間フォローされていないリードがどの程度あるのか
- 過去に商談・失注した企業がどの程度残っているのか
- 今後取得する必要があるデータは何か
といったことが見えてきます。
重要なのは、最初からすべてのデータを完璧に整備することではありません。現在何を持っていて、何が不足しているのかを把握することが目的です。
手元のリードをどのように整理するかについては見込み客管理の全体像、新しい接点の作り方については見込み客の探し方と見込み客を増やす方法で解説しています。
また、MAの導入を検討している場合も、先に現在のデータや運用を確認しておくと、必要な機能を判断しやすくなります。
Step.2:営業へ引き継ぐリードの基準を決める
次に、現在の受注・商談データを振り返り、「どのようなリードなら営業が対応しやすいのか」を整理します。
たとえば、過去の受注企業について、
- 業種
- 企業規模
- 担当者の部署・役職
- 最初の接触経路
- どのような課題を持っていたか
- 問い合わせや資料ダウンロードなどの行動
- 接点を持ってから商談・受注までの期間
などを確認します。
ここから、営業へ引き継ぐ対象となるリードの仮説をつくります。
たとえば、「特定の業種・企業規模に該当し、サービス資料を取得している」といった条件です。
ただし、過去の受注企業に共通していた条件が、そのまま今後の正解になるとは限りません。母数が少ない場合もありますし、商品や営業戦略が変われば、対象となる企業も変わります。
そのため、最初から精密なMQL条件を作るのではなく、仮説として条件を決め、営業の反応や商談結果を見ながら見直す方法が現実に即しています。
また、条件だけでなく、
- MQLになったら誰へ通知するのか
- 営業が対応した結果をどこへ記録するのか
- 対象外だったリードをどう戻すのか
といった運用まで決めておくと、その後の改善につなげやすくなります。
Step.3:対象を絞ったシナリオから始める
営業への引き継ぎ条件が整理できたら、次は実際のフォロー施策を動かします。
ここで重要なのは、最初からすべてのリードを対象に複雑なシナリオを作らないことです。
たとえば、
- 展示会で名刺交換した製造業の担当者
- 特定のホワイトペーパーをダウンロードしたリード
- 過去に商談したものの失注している企業
など、対象を一つに絞って始める方法があります。
その対象に対して、
- 最初に何を送るか
- その後どのような情報を届けるか
- どのような行動があれば営業へ共有するか
- 反応がなかった場合にどうするか
を決めます。
たとえば、「展示会で名刺交換した製造業の担当者に、一定期間で複数回メールを送り、その後ウェビナーを案内する」といったシンプルな設計でも構いません。
重要なのは、メールの本数や期間そのものではありません。
対象・届ける情報・次のアクションが明確になっており、実際に結果を確認できる状態にすることがポイントです。
運用を始めた後は、開封率やクリック率だけでなく、
- どのコンテンツが閲覧されたか
- 問い合わせやウェビナー申込につながったか
- 営業へ共有されたリードが商談になったか
- 営業側からどのような評価が返ってきたか
まで確認しながらシナリオを調整します。
最初から大規模な仕組みを作るよりも、対象を限定して運用し、結果を見ながら広げていく方が、改善点を把握しやすくなります。

「やっているのに成果が出ない」状態から抜け出すために
施策を続けているのに商談が増えない、獲得したリードがなかなか商談につながらない。こうした場合は、個々の施策だけではなく、リードの獲得から育成、営業への引き継ぎまでの流れを見直す必要があります。Sells upでは、現状の分析から改善の優先順位整理、実際の施策への反映まで支援しています。
相談してみる →まとめ
デマンドジェネレーションとは、見込み顧客との接点をつくるリードジェネレーション、継続的に関係を築くリードナーチャリング、営業へ引き継ぐ対象を見極めるリードクオリフィケーションを、一連の流れとして設計・運用する考え方です。
また、一度検討が止まったリードや失注したリードに再びアプローチするリサイクルや再ナーチャリングも、この流れの中で考えます。
重要なのは、メルマガやWeb広告、MAツールといった個別の施策を増やすことではありません。見込み顧客との接点を継続的につくり、関係を築きながら、適切なタイミングで営業へつなげられる状態を整えることが目的です。
そのためには、リード獲得・育成・営業への引き継ぎをそれぞれ別々に考えるのではなく、前後のプロセスがつながるように設計する必要があります。
営業へ引き継ぐ基準を決めること、獲得後のフォロー方法を設計すること、継続して運用できる体制を整えることも重要です。MAはこうした運用を効率化する手段の一つですが、ツールを導入すること自体が目的ではありません。
実際に始める際は、現在保有しているリードや過去の商談・受注状況を確認し、営業と引き継ぎ条件を整理したうえで、対象を絞った施策から動かしていく方法があります。
また、すべての企業が同じ順番で進める必要はありません。リード獲得、育成、営業対応、ターゲット設定など、現在どこがボトルネックになっているのかを確認し、必要な部分から整えることが重要です。
Sells upでは、BtoBマーケティングの戦略整理から、リード獲得、ナーチャリング、MAへの実装、営業との連携まで支援しています。「何から着手すべきか整理したい」という段階からでもご相談いただけます。
よくある質問
デマンドジェネレーションとリードジェネレーションの違いは何ですか?
リードジェネレーションは見込み顧客との接点を作る活動を指し、デマンドジェネレーションはその獲得から育成、営業への引き渡しまでを含む全体のプロセスを指します。リードジェネレーションはデマンドジェネレーションの最初の工程にあたります。
Google広告の「デマンド ジェネレーション キャンペーン」とは別のものですか?
別のものです。Google広告のデマンド ジェネレーション キャンペーンは、YouTubeやDiscover、Gmailなどに広告を配信する広告メニューの名称です。本記事で扱うデマンドジェネレーションは、BtoBマーケティングにおける需要創出から営業引き渡しまでのプロセス全体を指します。
デマンドジェネレーションを始めるのに、MAツールは必須ですか?
必須ではありません。リード件数が少なく、担当者が手作業で配信と管理を回せる範囲であれば、ツールがなくても始められます。配信するシナリオの本数やリード件数が増えて手作業が追いつかなくなった段階で、導入を検討してください。
成果が出るまでにどのくらいの期間がかかりますか?
商材の検討期間によって変わります。BtoBでは検討に6ヶ月から2年かかることも珍しくないため、受注という結果だけを見ると判断が遅れます。最初の3ヶ月はメールの開封率やクリック率、MQLの件数といった手前の指標で進み具合を確認し、そのうえで商談化率を見ていくのが現実に即した見方です。
リード件数が少ない段階でも、デマンドジェネレーションは意味がありますか?
意味はありますが、優先順位は変わります。件数が少ない段階では、新しく集めることよりも、手元のリードを整理して営業に渡す基準を決めるほうが先です。基準がないまま母数を増やすと、商談にならないリードが積み上がります。
誰が担当するのがよいですか?
マーケティング担当者だけでは完結しません。MQLの定義と引き渡しのルールは営業と一緒に決める必要があるため、少なくとも営業責任者を巻き込んだ体制で進めてください。専任者がいない場合は、まず1人が窓口となり、営業責任者と月1回見直す形から始められます。
