BtoBマーケティングオートメーション(MA)とは?導入メリット・使いこなせない原因・成果を出す設計手順を解説
ツールの設定よりも、「何をどう設計するか」で成果が変わります
HubSpot・Account Engagement・Marketoに精通した担当者が、 ツールの設定支援だけでなく、リード育成シナリオやスコアリング設計まで一貫してサポートします。 まずは現状のツール活用状況をお聞かせください。
MA(マーケティングオートメーション)は、見込み客の獲得から商談化までのマーケティング活動を自動化・効率化するためのプラットフォームです。
弊社にご相談いただく企業でも、MAを導入したものの「リードナーチャリングが機能しない」「ステップメールが流れるだけで商談につながらない」といった状態に陥るケースは少なくありません。こうした差を生むのが、シナリオ設計と営業部門との連携設計です。
本記事では、MAの定義やBtoBマーケティングとの相性、導入メリット、うまく活用できない理由、成果につなげるための設計手順までを体系的に整理してお伝えします。
MA(マーケティングオートメーション)とは?BtoBにおける定義と基本的な役割
MA(マーケティングオートメーション)とは、見込み客のデジタル上の行動データを収集・分析し、リードジェネレーションからリードナーチャリング、リードクオリフィケーションまでの流れを自動化するためのツールです。
特に重要なポイントは3つあります。
- 見込み客の行動履歴を一元的に管理できること
- 購買意欲に応じてパーソナライズされたコミュニケーションを自動で届けられること
- 確度の高いリードを客観的なデータで見極めて営業に引き渡せること
この3点です。
MAが求められる背景には、BtoBマーケティングにおける購買行動のデジタルシフトがあります。いまの購買担当者は、営業担当に接触する前にWebサイトや比較サイトでひと通り情報収集を終えていることが一般的です。MAがない状態では、「どのリードが今、購買を検討しているのか」を行動ログとして統合的に把握しにくく、どうしてもリストの上から順番に電話をかけていくような営業スタイルから抜け出しづらくなります。
MAが「自動化」できる5つの業務
MAで自動化できる代表的な業務は、次の5つです。
- フォーム・LP管理:問い合わせフォームやランディングページからのリード情報の収集と蓄積。フォーム送信と同時にCRMへ自動登録されるようにしておけば、担当者が手入力する必要がなくなります。
- ステップメール配信:見込み客の行動をきっかけに、あらかじめ設計したメールを自動配信する機能(リードナーチャリングシナリオの実行)。たとえば、資料をダウンロードした翌日にフォローメールを送るといった一連の流れが、担当者の手をかけずに動き続けます。
- 行動トラッキング:Webサイトの閲覧状況、メールの開封率やクリック率(CTR)、資料ダウンロードなど、行動データを自動で記録します。「誰が、どのページを、何回見たのか」といった情報が見える化されます。
- スコアリング:属性情報と行動データに点数を付け、見込み客のランク付けを自動で行う機能です。勘や感覚ではなく、データにもとづいて「今アプローチすべき相手」を絞り込めるようになります。
- アラート通知:購買意欲が高まったタイミングを検知し、インサイドセールスなどに自動で通知する機能です。たとえば「料金ページを3回閲覧したリード」をトリガーに設定し、担当者へSlack通知を飛ばす、といった運用も可能です。検討フェーズに入った瞬間に連絡できるようになるため、取りこぼしを大きく減らせます。
たとえば、資料をダウンロードした見込み客に翌日関連事例のメールを送り、その3日後に料金ページを閲覧したタイミングでインサイドセールスにアラートを飛ばす、といった一連の流れも、人の手を介さず自動で回すことができます。
MA・SFA・CRMの役割はどう違うのか?
MAと混同されやすいツールとして、SFA(Sales Force Automation、営業支援システム)とCRM(Customer Relationship Management、顧客管理システム)があります。それぞれの役割を整理すると、次のようになります。
| ツール | 主な役割 | 管理する対象 |
|---|---|---|
| MA | 見込み客の育成・選別 | リード(未商談の見込み客) |
| SFA | 商談開始から受注までの営業活動管理 | 商談(進行中の案件) |
| CRM | 受注前後を含む顧客ライフサイクル全体で、関係性を維持・向上させる | 顧客(見込み〜既存取引先) |
この3つを連携させることで、マーケティングが育てたリードをSFA側で商談化し、受注後はCRMで関係性を深めるという、一気通貫のパイプラインを組むことができます。Marketing Cloud Account Engagement(旧Pardot)とSalesforceの連携構成や、HubSpot Marketing HubとHubSpot CRMを組み合わせた構成が、その代表例です。
MA・SFA・CRMを連携させた後の効果測定については、MAのKGI/KPIツリー設計で詳しく解説しています。
BtoBマーケティングの特徴とBtoCとの違い
BtoBマーケティングとは、企業が企業(法人)を相手に商品・サービスを販売するビジネスで行うマーケティング活動を指します。BtoCマーケティングと比べたとき、特に次の3つの特徴が、MAとの相性を高めるポイントになります。
BtoBマーケティングに固有の3つの特徴
BtoBマーケティングを考えるうえで、まず押さえておきたい特徴は次の3点です。打ち合わせの場でよく聞くのが「BtoCと同じ感覚でMAを使ったら、まったく機能しなかった」という声で、まさにこの3点を前提にできていないことが原因になっているケースが多くあります。
①ターゲット市場が限定されている:BtoB商材のターゲットとなる企業数は、BtoCの一般消費者と比べるとはるかに少なく、業種や企業規模、地域によってはかなり限られた範囲に絞られます。そのため、一度獲得したリードを取りこぼさず、長い目で関係を維持していくことが、BtoC以上に重要になります。
②購買検討期間が数ヶ月から数年に及ぶ:BtoBでは、予算承認や複数部門の合意、競合比較といったプロセスを踏む必要があるため、初回接触から受注までに半年〜数年かかることも珍しくありません。この長い検討期間のあいだ、リードとの接点を途切れさせず、購買意欲の醸成を続けるための仕組みとして、MAが力を発揮します。
③意思決定者が複数名存在する:BtoBの商談には、窓口となる担当者だけでなく、その上長、最終決裁者、IT部門など、複数のステークホルダーが関わることが一般的です。それぞれ関心のポイントが異なるため、相手に合わせた情報を届けていく必要があります。その際に役立つのが、MAのセグメント配信機能です。
BtoBとBtoCのマーケティング比較
| 比較軸 | BtoBマーケティング | BtoCマーケティング |
|---|---|---|
| リード数 | 少ない(業種・規模次第で限定的) | 多い(不特定多数の一般消費者) |
| 商材単価 | 高い(数百万〜数億円規模も) | 低い(数百〜数万円が多い) |
| 購買検討期間 | 半年〜数年 | 即日〜数週間 |
| 意思決定者 | 複数名(担当者・上長・決裁者) | 本人1名 |
| MAとの親和性 | 非常に高い | 中程度 |
BtoBマーケティングは、「検討期間が長い」「関わる人が多い」「単価が高い」という3つの特徴があるため、個々人の勘や手作業で管理し続けるには限界があります。こうした前提を踏まえて設計されているのがMAであり、BtoC以上にBtoBと相性の良いツールだと言えます。
ターゲット企業の絞り込みや属性設計については、BtoBのセグメンテーション設計で詳しく解説しています。
BtoBマーケティングにMAが有効な理由
BtoBでMAが力を発揮するのは、購買行動のデジタル化が進んでいることと、中長期的なリード育成が求められるようになっていること、この2つの変化が背景にあります。この変化を踏まえずに、従来どおり営業主体のアプローチだけでカバーしようとすると、認知の段階で競合に先を越されやすくなります。
購買行動がWebへシフトし「認知されなければ検討されない」時代に
いまのBtoBマーケティングでは、購買担当者が営業と会う前にWeb上で候補を絞り込んでいるケースがほとんどです。Webサイト上での情報提供やコンテンツの配置、SEOなどで必要な情報をきちんと届けられていないと、比較検討のリストにそもそも載らない、という状況になりかねません。MAを使えば、Webサイトへのアクセスを個人単位で追跡し、「どのページをどのような順番で見ているか」といった行動データを、リード育成に活かせるようになります。
中長期にわたるリードナーチャリングを人の手で行う限界
BtoBの現場では、問い合わせやセミナー参加など何らかのアクションはしているものの、その時点ではまだ購買に至らない見込み客が多数を占めます。こうした「将来顧客」との関係を、人手だけで追いかけ続けるには限界があります。担当者一人あたりが追えるリード数には、どうしても上限が出てきてしまうからです。MAは、ステップメールとトリガー配信を組み合わせることで、数百〜数千件規模のリードに対して、個々の状況に合わせたカスタマージャーニーを自動で回していくことができます。
BtoBにMAを導入する5つのメリット
BtoBの現場にMAを導入することで得られる主なメリットは5つあります。弊社が80社以上をご支援してきた中での実感としては、とくに「②休眠リードからの商談創出」と「⑤営業効率の改善」に手応えを感じる企業が多い印象です。
①マーケティング状況の可視化とKPI管理
MAを導入すると、各ファネルステージに何件のリードがいるのか、MQL(Marketing Qualified Lead:マーケティング部門が創出した、一定以上の確度があるリード)への転換率がどれくらいか、といった数字をリアルタイムで把握できるようになります。感覚にもとづく報告ではなく、データにもとづいて経営陣に説明できるようになるため、この可視化だけで社内でのマーケティング部門の見られ方が変わることも少なくありません。
②休眠リードからの商談創出
過去に名刺交換や資料請求があったものの、その後フォローされていないリードがデータベースの中に眠っている、という企業は少なくありません。MAでリードナーチャリングのシナリオを組み、アプローチを自動化することで、休眠リードの購買意欲が高まったタイミングを捉え、商談化のきっかけをつくることができます。
実際に、弊社がご支援した株式会社ブリューアス様では、Account Engagement(旧Pardot)を活用してステップメール配信を見直した結果、一度失注となった休眠顧客に対する掘り起こしメールから、大型案件の受注につながりました。
休眠リードへのアプローチ方法については、休眠リードを再活性化するナーチャリングで詳しく解説しています。

③マーケティング業務の効率化
メール配信やリスト抽出、効果測定といった定型業務をMAで自動化することで、担当者は戦略設計やコンテンツ企画など、より本質的な業務に時間を割けるようになります。とくに少人数のマーケティング組織では、「送る作業」にかかっていた時間を「設計する時間」に振り向けられるようになり、この変化が大きなインパクトになります。
④パーソナライズされたOne to Oneコミュニケーションの実現
見込み客の業種や役職、行動履歴にもとづいてセグメントを切り、それぞれに合ったコンテンツを届けるパーソナライズ配信ができるようになります。一斉配信のメルマガと比べると、エンゲージメント率や開封率、クリック率(CTR)の向上につながりやすくなります。
⑤営業効率の改善と受注率の向上
MAのスコアリングで購買意欲の高いリードを抽出し、そのタイミングで営業に渡す仕組みを作れば、営業担当者は確度の高い案件に集中できます。従来のように「ハウスリストを上から順に電話していく」やり方から抜け出し、タイミングの良いフォローができるようになることで、受注率の向上も期待できます。
BtoBのMAで機能するリードジャーニーとスコアリング設計
リードジャーニーとは、見込み客が最初の接点から受注に至るまで、どのようなフェーズをたどるのかを示した流れのことです。MAをきちんと機能させるには、このジャーニーをあらかじめ6つの段階に分け、その段階ごとにシナリオ設計とスコアリング設計をしておくと、後の運用が格段にスムーズになります。
6段階のリードジャーニー設計
BtoBのMAで扱いやすいリードジャーニーは、次の6段階で整理できます。
| フェーズ | 状態 | MAでの主な施策 |
|---|---|---|
| New | 未接触・データ未収集 | LP・フォームでのリード獲得 |
| TOFU | 認知・関心段階 | 教育コンテンツ配信・セミナー招待 |
| MOFU | 比較・検討段階 | 事例紹介・機能比較コンテンツ配信 |
| BOFU / MQL | 購買意欲が高まった状態 | 価格ページ・導入検討コンテンツ |
| SQL | 営業が承認した商談候補 | インサイドセールスへのアラート・トスアップ |
| 受注 | 契約締結 | CRMへのデータ移行・オンボーディング |
MQL条件とスコアリング設計の基本
スコアリングとは、見込み客の属性データと行動データに点数を付け、購買確度を数値で可視化するための設計です。Account Engagement Specialistとして80社以上をご支援してきた中での傾向として、「属性スコア20点以上」かつ「行動スコア40点以上」を満たした状態を、営業への引き渡し基準(MQL)とする設計を基本形のひとつとして用いています。
行動スコアの一例としては、
- 料金ページやサービス詳細ページへのアクセス(+15点)
- 資料ダウンロード(+20点)
- 事例ページの閲覧(+10点)
- メールのクリック(+5点)
- フォーム送信(+25点)
などが代表的です。また、180日間まったく行動がないリードに対してはスコアを30点減衰させることで、「昔の行動でスコアだけ高いまま」という状態を避けられます。これは、「スコアが高いリードに営業が電話したら、すでに他社に乗り換え済みだった」といったケースを防ぐための考え方です。
スコアリングの設計手順については、リードスコアリングの設計手順で詳しく解説しています。
各ステージごとのシナリオ設計については、BtoBで商談を生むMAシナリオ設計で具体例を紹介しています。
多くの企業がMAを使いこなせない3つの原因
MAを導入したのに成果が出ない企業には、共通した3つのパターンがあります。弊社の経験上、これらはツールの性能の問題ではなく、設計と組織体制の問題であることがほとんどです。ツールを乗り換えても状況が変わらないのは、このためです。
原因①:戦略がないままツールを入れている
まずMAツールの選定から始めてしまうと、「どんな課題を解決するために、どの機能をどう使うのか」という設計がないまま運用に入ってしまいます。その結果、高機能なツールを入れているにもかかわらず、実態としては従来の一斉メール配信ツールと変わらない使い方になりがちです。
MAはあくまでも手段であり、「誰に・どんな状態で・何を届けるのか」というコンテンツマッピングと、追うべきKGI・KPIの設計を先に固める必要があります。この順番を逆にしてしまうと、あとから設計を作り直すコストが余計にかかります。
原因②:スコアリング設計が営業の現場に合っていない
マーケティング部門だけでスコアリングを決めてしまうと、「営業が実際に獲りたいリード」と「スコアが高く評価されるリード」の間にズレが生じやすくなります。営業担当者にとって価値があるリード像を定義しないまま設計したスコアリングは、現場で使われなくなってしまいます。
たとえば「資料ダウンロードのスコアが高く設定されているが、実際には競合リサーチ目的のダウンロードも含まれている」といったケースは典型例です。こうしたズレは、スコア設計の段階から営業と同じテーブルについて条件を決めておけば、防ぎやすくなります。
原因③:マーケティングと営業の間にSLAが存在しない
SLA(Service Level Agreement)は、マーケティングと営業の間で交わす「リードの受け渡しルール」です。「どんな状態のリードを、いつまでに営業に引き渡すのか」「引き渡されたリードに営業は何営業日以内にアプローチするのか」といったことを、双方で合意した文書に落とし込みます。
このSLAがないと、MAで創出したMQLが営業に渡ったあと、フォローされずに放置されてしまいがちです。MAの成果が見えない企業の多くは、ツールではなく、このSLA設計が抜けていることが原因になっています。見落とされやすいのが、SLAを作ったものの「営業側のルール」として形だけ残り、運用が伴わなくなるパターンです。定期的なレビュー会議をあわせて設計しておくと、この問題はかなり減らせます。
MAの運用体制づくりについては、MAを機能させる運用設計の全体像で詳しく解説しています。
MAを導入する前に整備すべき3つの前提条件
MA導入を成功させるためには、ツールを入れる前に次の3つを整えておくと、その後の立ち上げが非常に楽になります。この準備がないままツールだけ入れてしまうと、初期設定までは進んでも、そのあと運用が続かないというリスクが高まります。
前提①:リードデータの品質
MAをきちんと機能させるには、メールアドレス・会社名・役職などの属性情報が揃ったリストが必要です。名刺データが複数のシステムに分散している、メールアドレスのエラーが多い、といった状態では、まずデータ整備から着手する必要があります。
具体的には、既存のCRMやSFA、展示会のリスト、名刺管理ツールなどのデータを統合し、有効なメールアドレス付きのリードが数百件以上ある状態を目標にします。この棚卸しを後回しにすると、せっかくMAの設定が終わっても「配信できるリストが少なすぎる」ということになりがちです。
前提②:TOFU・MOFU・BOFUをカバーするコンテンツ
MAはあくまで「コンテンツを届けるための仕組み」なので、配信する中身がなければ、シナリオを組んでも意味がありません。TOFUには教育系ホワイトペーパーやウェビナー、MOFUには導入事例や比較資料、BOFUには価格シミュレーターや個別相談への誘導コンテンツなど、それぞれのフェーズに合ったコンテンツが必要になります。
MA導入前に、すでに手元にあるコンテンツを棚卸しし、足りていないフェーズのコンテンツをどう補うか計画を立てておくと、ツール導入後すぐに施策を走らせやすくなります。
前提③:MQL定義とSLAの部門間合意
「どのような状態のリードを営業に引き渡すのか」という基準(MQL定義)について、マーケティングと営業の間で合意がとれていることも、MA導入前の重要な前提です。ここが曖昧なまま運用を始めると、「渡されるリードの質が低い」といった摩擦が、あとになってから必ず出てきます。
MQL条件の一例としては、「過去30日以内にサービス詳細ページを閲覧し、なおかつ資料をダウンロードしているリード」といった形で、行動条件と属性条件の組み合わせで定義します。この合意を先に済ませておくことで、その後のスコアリング設計の議論もスムーズに進めやすくなります。
MQL定義とSLAの設計については、MQL判定基準とSLAの設計手順で具体的に解説しています。
BtoBのMAツール選定で確認すべき4つのポイント
MAツールの選定では、「機能が多そう」「価格が安そう」といった理由だけで決めてしまうと、あとから設定変更や運用の見直しが難しくなることがあります。弊社がHubSpot・Marketing Cloud Account Engagement・Adobe Marketo Engage(旧Marketo)の3ツールを支援してきた経験から、押さえておきたいポイントは次の4つです。
①自社の営業プロセスとSFA/CRM連携できるか
MAを導入する目的が「リードの商談化」であれば、既存のSFA・CRMとのデータ連携は前提条件になります。Marketing Cloud Account EngagementはSalesforceとのネイティブ連携が強みで、HubSpotはCRM機能を標準で持っています。すでにSalesforceを使っているのか、これからSFA/CRMも含めて導入するのかによって、適した選択肢は変わってきます。
②スコアリング・シナリオ設計の自由度
MAのコアになるのは、スコアリングとシナリオ設計をどれだけ柔軟に組めるか、という点です。行動条件や属性条件の設定、スコア減衰の設計、条件分岐の細かさなどは、ツールによって大きく違います。BtoB特有の複雑な購買プロセスに対応するには、複数条件を組み合わせた分岐シナリオを組めるツールを選んでおくと、後々の運用が楽になります。
③導入後のサポート・支援体制
MAは導入して終わりではなく、そこからがスタートです。シナリオ設計やスコアリングのチューニング、SFAとの連携で起きるトラブルへの対処など、運用フェーズで必要になるサポートを、どこまで受けられるかを確認しておく必要があります。とくにMAを初めて導入する企業や、社内にマーケティング経験者がいない企業の場合は、ベンダーサポートに加えて外部の支援会社と並走する形を検討したほうが安心です。
④コストとROIのバランス
MA導入の費用対効果(ROI)は、「(MA導入による利益増加額 − 投資総額)÷ 投資総額 × 100」で算出します。このとき、投資総額にはライセンス費用だけでなく、初期設定やコンテンツ制作、担当者の人件費なども含めて考える必要があります。月額数万円から始められるツールであっても、運用やコンテンツ制作のコストを加味すると、年間で数百万円規模になることも珍しくありません。導入前に総所有コスト(TCO)を試算しておくことで、社内の稟議も通しやすくなります。
ツール選定から導入後の設計までを一通り押さえておきたい方は、BtoBのMA導入を成功させる手順もあわせてご覧ください。
支援事例で見た、MAで成果を出した企業の共通点
MA導入でしっかり成果を出している企業には、共通する3つのポイントがあります。ここでは、弊社の支援事例をもとに具体的にご紹介します。
事例①:Marketing Cloud Account Engagement活用でCPAを約3分の1に削減
株式会社ブリューアス様は、もともとBtoC向けプログラミングスクールで用いていたマーケティング手法を、そのままBtoBにも当てはめていたことが課題でした。BtoBマーケティングの経験者が社内にいない状態からのスタートです。
弊社の支援では、まずGoogle広告のみだった運用にMeta広告とMicrosoft広告を加え、多媒体での集客に切り替えました。そのうえで、Marketing Cloud Account Engagement(旧Pardot)のステップメールシナリオを再設計。一斉配信が中心だったメールを、「資料ダウンロード後3日目に事例メール」「7日目に個別提案への誘導メール」といった段階的なシナリオに組み替え、休眠顧客向けの掘り起こしシナリオも新たに構築しました。その結果、施策前と比べてCPAを約3分の1に抑えられ、休眠顧客へのメールから大型案件の受注につながりました。

事例②:マーケ経験者がいない状態から5年で安定したリード獲得体制を構築
株式会社CLUE様は、2019年時点では社内にマーケティング経験者がおらず、営業活動こそできているものの、マーケティング投資の進め方が分からない状態からのスタートでした。
まずKPI設計から着手し、ターゲットに合致するリード数と商談獲得数を主要指標として設定しました。建設業界では検索行動がさほど活発でないため、Meta広告やディスプレイ広告などのプッシュ型施策の方が獲得効率が高いことが、実際の運用を通じて見えてきました。これに合わせて、LPの構成も機能訴求から「お客さまの課題解決」に焦点を当てた内容に再設計しました。さらに、Marketing Cloud Account EngagementとSalesforceの選定・導入を行い、「3日連続でサービスページを訪問したユーザーをインサイドセールスに自動連携する」仕組みを構築しています。5年間の支援を通じて、「営業が足で開拓する状態」から「マーケティング施策で安定的にリードを創出できる状態」へと移行し、インサイドセールスチームの立ち上げにもつながりました。

成果が出た企業に共通する3つの要因
これらの企業に共通していたのは、
- ツール選定に入る前に戦略とKPIを明確にしていたこと
- いきなり大掛かりに始めるのではなく、小さく始めて成功パターンを積み上げてから施策を拡大していったこと
- マーケティングと営業が共通のMQL定義を持ち、連携を密にしていたこと
の3点です。MAツールの違いそのものよりも、こうした前提が整っているかどうかの方が、成果に与える影響は大きいと感じています。
まとめ
MA(マーケティングオートメーション)は、リードジェネレーションからリードナーチャリング、リードクオリフィケーションまでの一連のマーケティングプロセスを自動化するためのプラットフォームです。BtoBマーケティングは、検討期間が長く、意思決定者が複数存在し、ターゲット市場も限定されるという特性があるため、MAとの相性がよく、購買行動のデジタル化が進む現在において、中長期的な見込み客育成を支える基盤として欠かせない存在になりつつあります。
MAで成果を出すためには、ツール選びの前に「リードデータの整備」「TOFU・MOFU・BOFUをカバーするコンテンツ資産」「MQL定義とSLAに関する部門間の合意」という3つの前提条件を整えることが先決です。多くの企業でMAが十分に活用されていないのは、戦略がないままツールを導入していること、スコアリング設計が営業の現場感覚と合っていないこと、SLAが存在しない(もしくは形骸化している)ことに帰結します。
本記事でご紹介したブリューアス様・CLUE様も、ツール導入前に戦略とKPIを固め、小さく始めて成功体験を積み重ねてから施策を広げていくことで成果を上げてきました。MAは、適切な設計のもとで運用すれば、リードナーチャリングの自動化から営業効率の向上まで、BtoBマーケティングを変えていく土台となるツールです。
よくある質問
マーケティングオートメーション(MA)とは何ですか?
MA(マーケティングオートメーション)とは、見込み客のデジタル行動データを集約・分析し、リード獲得から育成・選別までのマーケティングプロセスを自動化するツールです。メール配信やスコアリング、行動トラッキングなどを自動化することで、購買意欲の高い見込み客を見極め、営業に引き渡しやすくなります。
BtoBマーケティングとは何ですか?
BtoBマーケティングは、企業が法人を対象に商品・サービスを提供するビジネスで行うマーケティング活動を指します。BtoCと比べて、検討期間が半年〜数年と長く、複数の意思決定者が関わり、ターゲット市場も限定されるといった特徴があります。
BtoBとBtoCのマーケティングの違いは何ですか?
一番大きな違いは、購買意思決定プロセスの複雑さです。BtoCでは購買者本人が短期間で意思決定することが多い一方で、BtoBでは担当者・上長・決裁者・IT部門など複数の関係者が関わり、検討プロセスも長期にわたります。そのため、BtoBでは中長期的なリードナーチャリングや、データにもとづくスコアリングが特に重要になります。
BtoBマーケティングでMAを導入する際、最初に取り組むべきことは何ですか?
まずは、MQLの定義(どんな状態のリードを営業に渡すのか)について、営業部門と合意を取るところから始めることをおすすめします。ツール選定はそのあとで構いません。MQLの基準が曖昧なままだと、どのツールを入れても活用しづらくなります。あわせて、保有しているリストの件数やデータ品質、各ファネルフェーズに対応できるコンテンツの有無を確認しておくと、導入後のスタートダッシュが切りやすくなります。
MAツールを導入したのに成果が出ない場合、どこから見直せばよいですか?
MAの成果が出ない場合、多くはツールそのものではなく設計側に原因があります。優先して確認したいのは、
- SLAが存在し、MQLが営業にきちんと引き渡されているか
- スコアリング設計が営業の現場感覚と合っているか
- 配信しているコンテンツがカスタマージャーニーのフェーズに合っているか
の3点です。ツールの設定を細かくいじる前に、この3つを営業と一緒に見直すことをおすすめします。
MAはどのくらいの期間で効果が出ますか?
BtoBの検討期間が長いことを踏まえると、MAの効果が数字として見えてくるまでには、一般的に数ヶ月はかかります。一方で、休眠リードの掘り起こし施策については、比較的早い段階で商談化につながるケースもあります。弊社の支援先では、適切な設計を行ったうえで運用を始めると、半年以内に商談数の改善が見られることが多い印象です。ただし、業種やリスト規模、コンテンツの充実度によって変わるため、あくまで当社支援先での傾向として参考にしていただければと思います。
ツールの設定よりも、「何をどう設計するか」で成果が変わります
HubSpot・Account Engagement・Marketoに精通した担当者が、 ツールの設定支援だけでなく、リード育成シナリオやスコアリング設計まで一貫してサポートします。 まずは現状のツール活用状況をお聞かせください。
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