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目次

現代のBtoBビジネスにおいて、マーケティング活動で獲得した見込み顧客(リード)を効率的に商談化・受注へと繋げる仕組みの構築は、事業成長における重要なポイントです。特に、顧客の購買プロセスが長期化・複雑化する中で、獲得したリードが放置されたり、非効率なアプローチによって取りこぼされたりするケースが多く見受けられます。

この課題を解決する手段として注目されているのが、「インサイドセールス」による「リードナーチャリング(見込み顧客の育成)」です。インサイドセールスがマーケティング部門と営業部門の間に立ち、リードの状態に合わせて継続的なコミュニケーションを行うことで、購買意欲を高め、質の高い商談を創出する役割を担います。

本記事では、インサイドセールスがリードナーチャリングにおいて果たす役割、具体的な業務内容と手法、そして商談化率を高めるためのポイントについて体系的に解説します。

リードナーチャリングにおけるインサイドセールスの役割とは?

インサイドセールスは、リードナーチャリングプロセスの中核を担う機能です。その役割は、リードの購買意欲を段階的に高め、質の高い商談を創出することにあります。

そもそもリードナーチャリングとは:見込み顧客を育成する活動

リードナーチャリングとは、獲得したリードに対して継続的なコミュニケーションや情報共有を行い、購買意欲や検討度合いを高めていく活動です。BtoBの購買プロセスが長期化・複雑化するなかで、単なるリード獲得だけではなく、いかに「商談化率」を引き上げるかが事業成長に直結します。ナーチャリング活動は、リードの関心や課題に合わせて適切な情報を届けることで、最終的に受注確度の高い顧客へと育成することを目的としています。

インサイドセールスとは:非対面で行う営業活動

インサイドセールスは、電話やメール、ウェブ会議などの非対面チャネルを活用し、見込み顧客に対して情報共有やヒアリング、商談化の促進を担う営業活動です。フィールドセールス(訪問営業)とは異なり、効率的かつスピーディに多くのリードへアプローチできる点が特徴です。

インサイドセールスの種類(SDRとBDR)と役割の違い

インサイドセールスは、その目的によって大きく2種類に分けられ、リードナーチャリングへの関わり方も異なります。

  • SDR (Sales Development Representative) - 反響型 マーケティング活動(例:資料請求、ウェビナー参加)によって獲得したインバウンドリードに対してアプローチします。SDRの主なミッションは、リードの興味・関心を引き上げ、課題をヒアリングし、商談化することです。リードナーチャリングの主要な実行部隊となります。

  • BDR (Business Development Representative) - 新規開拓型 自社がターゲットとする企業(アカウント)に対し、アウトバウンドでアプローチし、新たな接点を創出します。BDRは、接点構築から関係性を深め、商談機会を発見することをミッションとします。

BtoB領域では、マーケティング部門が獲得したリードをインサイドセールス(主にSDR)が育成し、適切なタイミングでフィールドセールスに引き渡す「分業型」の営業体制が一般化しています。

両者の関係性:インサイドセールスはナーチャリング実行部隊の中核

リードナーチャリングの実行部隊として、インサイドセールスは重要な役割を担います。マーケティング部門が生み出したリードを、単にフィールドセールスへ渡すだけではなく、インサイドセールスがリードの検討度合いやニーズを見極め、最適なタイミングでパスすることで、商談化率・受注率を大きく高めることができます。

特に、「今すぐ客」ではない中長期的な見込み顧客を将来の優良顧客へと育成するプロセスにおいて、インサイドセールスによる体系的なアプローチは不可欠です。インサイドセールスは、リードの状態に応じて個別最適なコミュニケーションを実施し、顧客体験の質を担保する存在です。

なぜ、インサイドセールスによるリードナーチャリングが重要なのか

現代のBtoBマーケティングにおいて、インサイドセールスによるリードナーチャリングが重要視される背景には、顧客の購買行動の変化と、企業側の営業効率化の必要性があります。

理由1:購買プロセスの変化と情報収集の長期化

デジタル化の進展により、BtoB顧客の購買行動は大きく変化しています。顧客は営業担当と接点を持つ前に、WebやSNS、比較サイトなどで膨大な情報収集を行い、意思決定の多くを社内で完結させるケースも珍しくありません。こうした中、従来の「テレアポ型営業」や「単発的なアプローチ」では、顧客の検討プロセスに寄り添うことができず、商談化率の低下を招いてしまいます。インサイドセールスによるリードナーチャリングは、顧客の情報収集や検討フェーズに合わせて適切なタイミングで接点を持つことで、検討の主導権を握る上で重要な役割を果たします。

理由2:マーケティングと営業を繋ぐパイプラインの最適化

リードナーチャリングの目的の一つは、マーケティング部門と営業部門の間に存在する「パイプライン」を最適化することにあります。多くの企業では、マーケティング部門が獲得したリードが有効活用されず放置されていたり、営業部門から「質が低い」と判断されフォローされなかったりする課題があります。

インサイドセールスがリードを適切に育成し、受注確度の高い状態で営業部門へ引き渡す仕組みを構築することで、部門間の連携が強化され、リードの取りこぼしや無駄なアプローチを防ぐことができます。インサイドセールスは、両部門をつなぐハブとして機能し、リードの質と量のバランスを最適化する役割を担います。

理由3:営業リソースの有効活用と生産性向上

営業リソースが限られる中で、全てのリードに対してフィールドセールスが直接アプローチするのは非効率です。インサイドセールスがリードナーチャリングを担うことで、営業担当は「今すぐ商談化が見込める顧客」に集中できるため、活動の生産性が向上します。加えて、インサイドセールスがリード情報を一元管理し、過去の接点やヒアリング内容を蓄積することで、属人化のリスクを低減し、組織的な営業活動が実現できます。

インサイドセールスが担うリードナーチャリングの具体的な業務内容

インサイドセールスによるリードナーチャリングは、リードの分類から始まり、継続的なコミュニケーションと情報蓄積を通じて行われます。

見込み顧客のセグメンテーションとアプローチ優先度の決定

インサイドセールスの業務は、MA(マーケティングオートメーション)ツールやCRM(顧客管理システム)に蓄積されたリード情報をもとに、見込み顧客をセグメント分けし、アプローチの優先順位を決定することから始まります。例えば、過去の資料請求やセミナー参加履歴、Webサイトの行動データなどをもとに「ホットリード」「ウォームリード」「コールドリード」といった分類を行い、各セグメントに最適なナーチャリングシナリオを設計します。

電話やメールによる継続的なコミュニケーション

単発的なアプローチではなく、リードの検討フェーズや関心度に合わせて、電話・メール・オンラインミーティングなど複数チャネルを組み合わせた継続的なコミュニケーションを実施します。例えば、初回はお礼メール、2回目は課題ヒアリング、3回目はお役立ち資料の送付など、段階的に関係性を深めていきます。

コンテンツ(お役立ち資料・セミナー等)を活用した情報共有

リードの関心や課題に応じて、ホワイトペーパー、導入事例、ウェビナー、比較資料などのコンテンツを活用し、検討を促進します。単なる情報共有ではなく、「今このタイミングでこの情報が必要」と感じてもらえるよう、パーソナライズされたコンテンツ配信が重要です。

顧客情報のヒアリングとSFA/CRMへの蓄積(BANT情報など)

インサイドセールスは、電話やメールを通じて顧客の課題やニーズ、導入検討時期、予算、意思決定プロセス(いわゆるBANT情報:Budget/予算、Authority/決裁権、Needs/必要性、Timeframe/導入時期)をヒアリングし、SFA(営業支援システム)やCRMに記録します。これにより、営業部門へのスムーズな引き渡しや、後続アプローチの質向上が実現します。

【Sells upの視点】ナーチャリングの質は「ヒアリング設計」で決まる

インサイドセールスが単なるアポインター(アポイント獲得部隊)だけではなく、ナーチャリング部隊として機能するためには、質の高いヒアリングが不可欠です。しかし、多くの企業ではヒアリング項目がBANT情報に偏りすぎていたり、担当者によってヒアリングの深さが異なったりする課題が見受けられます。

Sells upでは、BANT情報だけでなく、顧客の「現状の課題(As-Is)」と「目指す姿(To-Be)」、そしてそのギャップを埋めるための「解決策の方向性」までを深掘りするヒアリング設計を重視しています。

  • 現状把握(As-Is):現在どのようなツールや体制で業務を行っているか、どのような不満や非効率が生じているか。

  • 理想像(To-Be):どのような状態になればビジネス目標が達成されるか、導入によって何を実現したいか。

このAs-Is/To-Beを明確にすることで、インサイドセールスは単なる製品説明ではなく、顧客の課題解決に寄り添った提案型のコミュニケーションが可能になります。結果として、フィールドセールスに引き渡すリードの質が格段に向上し、商談化後の受注率にも良い影響を与えます。

インサイドセールスが用いるリードナーチャリングの具体的な手法

インサイドセールスは、様々なチャネルとコンテンツを組み合わせてリードナーチャリングを行います。リードの状態や目的に応じて、これらの手法を使い分けることが重要です。

電話(テレコール)

電話は、メールでは把握しきれないリードの状況や温度感をリアルタイムで把握できる手法です。双方向のコミュニケーションにより、深いヒアリングや関係構築に適しています。

  • 活用シーン:課題の深掘りヒアリング(As-Is/To-Be)、BANT情報の収集、キーパーソン(決裁関与者)への接触、ウェビナーや個別相談会への誘導。

Eメール(一斉配信・パーソナライズメール)

メールはリードナーチャリングの基本となる手法です。MAツールを活用した一斉配信(メルマガなど)やステップメールにより、効率的に情報を届け、継続的な接点を維持します。

また、インサイドセールス担当者が個別に送るパーソナライズメールも重要です。電話でのヒアリング内容を踏まえたお礼や、特定の課題に合わせた資料案内など、1to1のコミュニケーションが信頼関係構築に役立ちます。

コンテンツマーケティングとの連携

リードの検討フェーズを引き上げるためには、有益なコンテンツを適切なタイミングで届けることが重要です。

ホワイトペーパー(お役立ち資料)

特定のテーマに関するノウハウや調査レポートなどをまとめた資料です。リードの情報収集フェーズや課題認識を深める段階で有効です。インサイドセールスは、ヒアリングした課題に応じて最適なホワイトペーパーを案内します。

導入事例

自社製品・サービスを導入した企業の成功事例です。リードが具体的な活用イメージを持ち、比較検討フェーズに進む際に役立ちます。特に、リードと同じ業界や規模の事例が効果的です。

ウェビナー(Webセミナー)

オンラインで開催するセミナーです。一度に多くのリードに対して専門的な情報やデモンストレーションを届けることができます。インサイドセールスは、ウェビナーへの集客(参加促進)と、参加後のフォローアップ(アンケート回答の確認や個別相談の打診)を担います。

【Sells upの視点】成果を出すインサイドセールスは「タイミング」を科学する

データドリブンなインサイドセールス組織では、「いつ・誰に・どのようなアプローチを行うべきか」を科学的に判断することが成果創出のポイントです。

MAスコアと行動履歴から最適なアプローチタイミングを見極める

MAツールのスコアリング機能を活用し、メールの開封・クリック、資料ダウンロード、Web閲覧履歴などの行動データをリアルタイムで把握します。スコアが一定値を超えたリードに対しては、即時アプローチを実施することで、検討意欲が高まった「今この瞬間」を逃さずに接点を持つことが可能です。

インテントデータ(興味・関心データ)の活用

近年では、Webサイト上の閲覧ページや検索キーワードなどの「インテントデータ(興味・関心データ)」を活用し、顧客の潜在的なニーズや課題を早期に発見する取り組みが進んでいます。例えば、特定の機能ページを繰り返し閲覧しているリードには、その機能に特化した導入事例やFAQを案内することで、より深い検討を促すことができます。Sells upでは、こうしたデータ活用により、アプローチのタイミングと内容の最適化を実現しています。

リードナーチャリング成功の6つのポイント

リードナーチャリングを成功に導き、商談化率を向上させるためには、以下の6つのポイントを押さえることが重要です。

ポイント1:ペルソナとカスタマージャーニーの明確化

リードナーチャリングの土台となるのは、ターゲット顧客(ペルソナ)の具体化と、購買までの意思決定プロセス(カスタマージャーニー)の可視化です。ペルソナを明確に設定することで、誰に対してどのような課題解決を届けるべきかが明確になります。カスタマージャーニーを設計する際は、「認知」「情報収集」「比較検討」「導入検討」などのフェーズごとに、顧客が求める情報や接点を整理しましょう。

顧客理解はすべての基本です。例えば、情報収集段階のリードには業界トレンドや課題整理のホワイトペーパー、比較検討フェーズのリードには導入事例やROIシミュレーションを用意するなど、フェーズごとに最適な情報を届けることが重要です。

ポイント2:部門間で連携する仕組みの構築(SLAの設計)

インサイドセールスがリードナーチャリングを担う場合、マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールスの3部門が連携して一貫した顧客体験を構築する必要があります。部門間の対立や非効率を解消し、連携を強化するためには、リードの定義や引き渡し基準を明確に定めた「SLA(Service Level Agreement)」を設計し、部門間で認識を合わせておくことが不可欠です。

SLA設計の具体的なステップ

SLAの設計は、以下のステップで進めます。

  • Step.1:現状のリードフローの可視化 現在のリード獲得から受注までの流れと、各部門の役割分担を整理します。

  • Step.2:リードの定義の明確化 SLAでは、以下のようなリードの定義を明確にし、部門間の共通言語を作ります。

    • MQL (Marketing Qualified Lead):マーケティング部門が創出し、インサイドセールスへ引き渡すリードの基準(例:特定のホワイトペーパーをダウンロードし、かつ従業員数100名以上の企業)。

    • TQL (Teleprospecting Qualified Lead):インサイドセールスがアプローチし、一定のヒアリングが完了したリード。

    • SAL (Sales Accepted Lead):インサイドセールスから引き渡され、フィールドセールスが受け入れを承認したリードの基準(例:BANT情報のうち3つ以上が確認できていること)。

    • SQL (Sales Qualified Lead):フィールドセールスが商談化・案件化すると判断したリード。

  • Step.3:引き渡し基準と対応ルールの設定 各フェーズにおける引き渡しの条件(スコア、属性、ヒアリング項目など)を定めます。加えて、引き渡し後の対応期限(例:SAL受領後、2営業日以内に初回アプローチを実施する)や、フィールドセールスからインサイドセールスへのフィードバック(例:商談の結果やリードの質に関するコメント)のルールも定めます。

  • Step.4:部門間でのレビューと合意 設計したSLA案について、関係部門のマネージャー間でレビューし、実行可能な内容であることを確認した上で合意します。

【Sells upの視点】SLAは「作って終わり」にしない運用が重要

SLAを設計しても、それが形骸化してしまっては意味がありません。Sells upでは、SLAの遵守状況をSFA/CRMのレポートで可視化し、部門長会議などで定期的にレビューすることを推奨しています。市場環境や事業戦略の変化に応じて、SLA自体を柔軟に見直していく姿勢が、部門間連携を継続的に機能させるポイントです。

ポイント3:活動の「質」と「量」を可視化するKPI設定と運用

リードナーチャリングの活動成果を客観的に評価し、改善を続けるためには、適切なKPI設定が重要です。KPIは単なる数字の管理ではなく、活動を可視化し、PDCAサイクルを回すための指標です。活動の「量」と「質」の両面からバランスよく設定しましょう。

KPIツリーによる指標の構造化

最終的な目標(KGI:例えば「インサイドセールス経由の受注金額」)を達成するために、どのような要素(KPI)を管理すべきかを「KPIツリー」として構造化すると、ボトルネックの特定が容易になります。

  • KGI(最終目標):受注金額、受注数

  • 成果KPI:商談化数、商談化率

    • 質に関する副指標:BANT情報取得率、キーパーソン(決裁関与者)接続率、As-Is/To-Beヒアリング完了率

  • 活動量KPI(プロセス指標):有効会話数(担当者と繋がり、意味のある会話ができた数)、コンタクト率(リードへの接触率)

    • 量に関する副指標:架電数、メール送信数

特に、インサイドセールスがアポインター化している場合、「有効会話数」や「BANT情報取得率」「As-Is/To-Beヒアリング完了率」といった、ナーチャリング活動の質を測るKPIを設定することが重要です。

SFA/CRMダッシュボードによるリアルタイム管理

設定したKPIは、SFAやCRMのダッシュボード機能を活用し、リアルタイムでモニタリングできる環境を構築します。担当者別、セグメント別などの切り口でKPIを可視化することで、属人的な運用からの脱却と、データに基づいた改善活動が可能になります。

ポイント4:MA・SFA・CRMのデータ連携と活用基盤の整備

MA、SFA、CRMを連携させ、データを活用する基盤を整備することは、効率的で質の高いリードナーチャリングを実現する上で不可欠です。

具体的な連携モデル

ツール連携により、リードの行動履歴やスコアリング結果(MA)をインサイドセールスがリアルタイムで把握(SFA/CRM)し、最適なタイミングと内容でアプローチすることが可能になります。

  1. 行動履歴の連携:MAで取得したWebアクセス履歴やメール反応をSFA/CRMに連携し、インサイドセールスがアプローチ前に顧客の関心事を把握する。

  2. スコアリング結果の活用:MAのスコアをSFA/CRMに表示し、アプローチの優先順位付けを自動化する。

  3. ヒアリング内容のフィードバック:インサイドセールスがヒアリングした内容(SFA/CRM)をMAのセグメンテーション条件として活用し、よりパーソナライズされたメール配信を行う。

MAスコアリングの設計と見直し

MAスコアリングは、インサイドセールスがアプローチするタイミングを見極める上で重要な機能ですが、適切に運用するためには設計と定期的な見直しが必要です。

スコアリングは、顧客の「属性(企業規模、業種、役職など)」と「行動(Web閲覧、資料DL、メール開封など)」の2軸で評価します。設計の際は、過去に受注に至った顧客の行動特性を分析し、「どの行動が商談化に繋がりやすいか」を基に重み付けを行います(例:料金ページの閲覧は5点、導入事例のDLは10点など)。

【Sells upの視点】スコアリングは「仮説検証」のプロセス

MAツールを導入していても、「スコアが高いのに商談化しない」「スコアが低いのに受注した」といった状況があり、適切に機能していないケースが多く見受けられます。スコアリングの精度は、最初から完璧を目指すのではなく、運用しながら高めていくものです。

Sells upでは、スコアリング設計を「仮説検証」のプロセスと捉えています。まず、「どのような行動を取ったリードが商談化しやすいか」という仮説に基づき初期設定を行います。そして、運用開始後は、実際のデータで「仮説は正しかったか」「どの行動が成果に貢献しているか」を検証します。この分析結果をもとに、スコアリングの重み付けを調整し続ける運用が、スコアリングを機能させるポイントです。このチューニングを継続することで、インサイドセールスのアプローチ効率が向上します。

データクレンジングとデータ拡充の重要性

効果的なナーチャリングを行うためには、蓄積されたデータが正確かつ十分である必要があります。社名の表記ゆれ、部署・役職情報の欠落、重複データなどが存在する状態では、正しいセグメンテーションやスコアリングが機能しません。

インサイドセールス活動と並行して、定期的なデータクレンジング(名寄せ・表記統一・正規化)やデータ拡充(不足情報の補完)を行うことが重要です。データの品質は、ナーチャリングの成果に直結する要素です。

【Sells upの視点】ツール連携の「注意点」と運用ルールの重要性

多くの企業がMA・SFA・CRMの導入を進めていますが、単にツールを連携させただけでは期待した成果は得られません。Sells upでは、ツール連携における注意点として以下の点を認識しています。

  1. データ連携ルールの未整備:どのデータを、どのタイミングで、どの項目に連携させるかのルールが曖昧なため、担当者が混乱する。

  2. 運用プロセスの不一致:ツール上のステータスと、実際の営業活動のフェーズが一致しておらず、データの信頼性が低下する。

  3. 入力負荷の増大:情報の一元化を目指すあまり、インサイドセールス担当者の入力項目が増えすぎ、本来のナーチャリング活動が圧迫される。

これらの注意点を回避するためには、ツールの連携設計と同時に、部門横断での「運用ルール」と「業務プロセス」の標準化を徹底することが重要です。Sells upでは、担当者の負荷を考慮しつつ、成果につながるデータ活用を実現するための全体設計を重視しています。

ポイント5:インサイドセールス担当者の育成と評価制度

インサイドセールスをより戦略的な顧客育成部隊へと成長させるためには、担当者のスキルアップと適切な評価制度が不可欠です。単なるアポインターではなく、顧客の課題を深くヒアリングし、解決策を提示できる担当者を育成する必要があります。

スキルマップの作成と育成フローの構築

まず、自社のインサイドセールスに求められるスキルセットを「スキルマップ」として定義します。

  • 基礎知識:自社製品・サービス、競合情報、顧客の業界知識。

  • コミュニケーションスキル:ヒアリング力(特にAs-Is/To-Beの深掘り)、提案力、関係構築力。

  • データ活用能力:MA/SFA/CRMの操作方法と、データを基に仮説を立てる分析手法の習得。

このスキルマップに基づき、OJT(ロールプレイング、トークスクリプトの共同作成)やOff-JTを組み合わせた育成フローを構築します。

評価制度の設計

評価制度は、商談化数や架電数といった「量」だけではなく、ヒアリングの質(BANT情報取得率やAs-Is/To-Beの明確化)、顧客満足度、部門間連携への貢献度といった「質」を評価に反映させる設計が望ましいです。これにより、担当者のモチベーション向上と、組織が目指すナーチャリング活動の実現が両立できます。

ポイント6:PDCAサイクルを回し続ける体制

リードナーチャリングは一度設計して終わりではなく、常にPDCAサイクルを回し続けることが重要です。シナリオやトークスクリプトは、リードの反応や成果データをもとに定期的に見直し、改善を重ねていきましょう。

また、インサイドセールス部門内や部門横断で、成功事例・失敗事例を共有しナレッジ化することで、組織全体のナーチャリング力が底上げされます。データや担当者の声を起点に、柔軟に施策をアップデートし続ける体制づくりが、商談化率向上の近道です。

インサイドセールスによるリードナーチャリングの進め方

具体的なリードナーチャリングの進め方を5つのステップで解説します。

Step.1:目的とゴールの設定

まず、リードナーチャリングの目的とゴールを明確に設定しましょう。例えば「商談化率10%への改善」や「MQLからSQLへの転換数月間30件」など、具体的かつ測定可能な目標を定めることが重要です。

Step.2:対象とするリードの定義とSLA設計

次に、ナーチャリング対象とするリードの条件(例:過去6ヶ月以内に資料請求したリード、MAスコア30点以上のリードなど)を明確にします。同時に、ポイント2で解説したSLAを設計し、部門間でのリードの定義や引き渡し基準について合意を形成します。

Step.3:ナーチャリングシナリオの設計

ターゲットとなるリードのペルソナやカスタマージャーニーに基づき、各フェーズでどのような情報共有やコミュニケーションを行うか、シナリオを設計します。顧客の属性や検討フェーズに応じて、用意するコンテンツとタイミングを具体的に定めることがポイントです。

シナリオ設計の具体例(BtoB SaaS企業の場合)

タイミング

アクション

チャネル

目的・用意するコンテンツ例

当日中

お礼と関連情報の案内

メール

ダウンロードのお礼と、関連する課題解決ノウハウ資料を案内。

3日後

状況確認とヒアリング

電話

現在の状況や課題感(As-Is/To-Be)をヒアリング。BANT情報の初期収集。

7日後

導入事例の送付

メール

ペルソナと類似する業界・規模の導入事例を送付し、具体的な活用イメージを持ってもらう。

14日後

ウェビナーへの招待

メール/電話

ツールの具体的な活用法を解説するウェビナーへ招待し、検討度合いを高める。

ウェビナー後

個別相談会の打診

電話

ウェビナーの感想を伺いつつ、具体的な課題解決に向けた個別相談会を打診。(商談化)

Step.4:KPIの設定と計測環境の整備

活動量・成果のKPIを設定し、SFAやCRMなどのツールで計測・管理できる環境を整えます。KPIは定期的にレビューし、必要に応じて見直します。

Step.5:スモールスタートで開始し改善を重ねる

最初から全てを完璧に設計する必要はありません。まずは小規模な施策からスタートし、実際のデータや担当者の声をもとにPDCAを回しながら、徐々に仕組みを拡張していくアプローチが有効です。

インサイドセールス活用の高度化(応用編)

基本的なリードナーチャリングの仕組みが構築できたら、より高度な活用方法にも取り組むことで、さらなる成果向上が期待できます。

「失注・ペンディング案件」の再ナーチャリング戦略(リード・リサイクル)

リードナーチャリングの対象は、新規に獲得したリードだけではありません。一度失注したり、検討が長期化したりしている案件リストは「休眠資産」です。これらを放置せず、インサイドセールスが定期的にフォローし、将来の案件化につなげる「リード・リサイクル」の仕組みも重要です。

過去に失注した理由が「タイミングが合わなかった」「予算が確保できなかった」といったものであれば、状況の変化(例:担当者の変更、課題の再燃、競合製品への不満)によって再検討の可能性が生まれます。インサイドセールスが定期的に情報共有や状況確認のコンタクトを行うことで、こうしたタイミングの変化を捉えることができます。

ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)におけるインサイドセールスの役割

ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)は、特定のターゲット企業群(アカウント)に対して、部門横断で戦略的にアプローチする手法です。ABMにおいても、インサイドセールス(特にBDR)は情報収集や関係構築の中核を担います。

一般的なリードナーチャリングが個々のリード(個人)を対象とするのに対し、ABMではターゲット企業(組織)全体を攻略対象とします。インサイドセールスは、ターゲット企業内の複数の部署やキーパーソンに対してアプローチし、組織図や意思決定プロセス、抱えている課題を深くヒアリングします。

マーケティング部門が実施するターゲット企業向けの広告やセミナーと連携し、インサイドセールスが個別最適化されたコミュニケーションを行うことで、ターゲット企業との関係性を深め、戦略的な商談機会を創出します。

【Sells upの視点】インサイドセールス組織の成熟度と次のステップ

インサイドセールスの組織は、成熟度に応じて取り組むべき課題や目指すべき姿が異なります。自社の組織が現在どの発展段階にあるかを自己診断できるフレームワークを、4つのレベルに分けて解説します。

Level 1:リアクティブ型

マーケティング部門から渡されたリードに対し、受動的に対応する段階。属人的な運用が中心で、ナーチャリング施策やKPI管理は未整備です。実質的にテレアポ部隊となっている状態です。

Level 2:プロセス管理型

リードの定義や引き渡し基準(SLA)が明文化され、部門間の連携が強化され始めます。ナーチャリングシナリオやKPI管理も導入され、活動の再現性が高まります。

Level 3:データ活用型

MA・SFA・CRMなどのツールを連携し、リードの行動データや属性情報をもとに、アプローチの最適化やタイミングの科学的判断が可能となる段階です。MAスコアリングの精度も向上し、KPIのモニタリングや施策の改善が日常的に行われます。

Level 4:プロアクティブ提案型

顧客のインテントデータや検討履歴をもとに、先回りした提案やコンサルティング型のナーチャリングが実現できる段階です。ABMなどの高度な戦略も実行可能となり、インサイドセールスが事業成長の中核として、戦略レイヤーの意思決定にも関与することが求められます。

貴社の現在地と目指すべき姿

貴社が現在どのレベルにあるのかを客観的に把握し、次のレベルに進むための解決策を段階的に導入することが、インサイドセールス組織の成長と成果向上につながります。

まとめ:インサイドセールスによるリードナーチャリングは事業成長の基盤

インサイドセールスによるリードナーチャリングは、BtoBビジネスの商談化率や売上成長を左右する重要な活動です。購買プロセスの長期化・複雑化が進む中で、従来型の営業手法だけでは顧客の意思決定プロセスに寄り添いきれず、リードの取りこぼしや非効率なアプローチが生じやすくなっています。

本記事で解説した通り、リードナーチャリングで成果を出すためには「適切なタイミングで、適切な情報を、適切なリードに届けること」が重要です。その実現には、ペルソナやカスタマージャーニーの明確化、部門間の連携(SLA設計)、KPIの可視化(質と量のバランス)、MA・SFA・CRMのデータ連携と整備(スコアリングの最適化)、そして担当者の育成といった多角的な取り組みが不可欠です。

これらの仕組みは一度にすべてを完成させる必要はありません。まずは自社の現在地(組織の成熟度)を客観的に見極め、段階的な仕組み化と改善を積み重ねることが、成果創出の最短ルートとなります。

MAツールの導入・活用の相談はSells upへ。

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株式会社Sells up
武田 大
株式会社AOKIにて接客業を、株式会社リクルートライフスタイル(現:株式会社リクルート)にて法人営業を経験した後、株式会社ライトアップでBtoBマーケティングを担当。その後、デジタルマーケティングエージェンシーにてBtoBマーケティングの戦略設計/施策実行支援、インサイドセールスをはじめとしたセールスやカスタマーサクセスとの連携を通じたマーケティング施策への転換といった支援を行い、2023年に株式会社Sells upを設立。BtoBマーケティングの戦略設計/KPI設計はもちろん、リードジェネレーション施策やナーチャリング、MA/SFA活用を支援し、業界/企業規模を問わずこれまでに約80社以上の支援実績を持つ。Salesforce Certified Marketing Cloud Account Engagement Specialist/Tableau Desktop SpecialistのSalesforce認定資格を保有。