ナレッジ 2025.12.30 最終更新 2026.09.13

SaaSマーケティングとは?他業種との違いと成果を出す5ステップ

この記事を書いた人 武田 大 株式会社Sells up 代表取締役

SaaSマーケティングは、契約を取って終わりではありません。継続して利用されなければ、顧客獲得にかけた費用を十分に回収できないためです。

そのためSaaSでは、新規顧客の獲得だけでなく、契約後の定着や継続利用まで含めてマーケティングを設計する必要があります。

特に重要になるのが、

  • ストック売上を前提とした定量計画を立てること
  • 認知から契約、継続利用までの流れを設計すること

です。

BtoBマーケティングを80社以上支援してきたSells upが、SaaS事業のマーケティングに携わる方に向けて、

  • SaaSマーケティングとは何か、他業種と何が違うのか
  • SaaSビジネスで活用できるマーケティング施策
  • SaaSマーケティングの成功事例
  • SaaSマーケティングを進める5つのステップ

を解説します。

SaaSマーケティングの全体像を整理し、自社ではどこから取り組むべきかを考える際の参考にしてください。

SaaSマーケティングとはどのようなもの?他業種との違いを解説

SaaSは、契約後も継続的にサービスを利用してもらうことで売上が積み上がるビジネスモデルです。

そのため、マーケティングでも新規顧客の獲得だけを見るのではなく、契約後の定着や継続利用まで見据えて戦略を考える必要があります。

ここでは、SaaSマーケティングの特徴を、主に買い切り型の商品・サービスとの違いから5つに分けて解説します。

  • 「売って終わり」ではなく、購入後の価値提供まで見据えて戦略を設計する
  • 解約率(継続率)を踏まえてターゲットを設計する
  • 利用データとユーザーの声を施策に活かす
  • 無料トライアルやフリープランから有料化するファネルがある
  • 顧客獲得にかけたコストの回収に時間がかかる

「売って終わり」ではなく、購入後の価値提供まで見据えて戦略を設計する

SaaSマーケティングの大きな特徴は、契約後の利用まで考える必要があることです。

買い切り型の商品では、購入によって一定の売上が確定します。一方、継続課金型のSaaSでは、契約後すぐに解約されれば、その後の売上は積み上がりません。

そのため、SaaSでは「契約を獲得できたか」だけでなく、「顧客がサービスを使い続けられるか」まで含めて考える必要があります。

戦略を考えるときの違い
主に見る範囲

SaaS

認知・検討・契約に加えて、導入・定着・継続利用までを見据える

買い切り型の商品・サービス

認知・検討・購入までの顧客獲得が売上形成に直接つながりやすい

たとえば、BtoB SaaSを導入する顧客には、

  • 煩雑な業務を効率化したい
  • 社内のコミュニケーションコストを減らしたい
  • 手作業によるミスを減らしたい

など、解決したい課題があります。

契約しても、サービスを十分に活用できず、その課題が解決されなければ、「別のサービスに切り替えたい」「費用に見合わない」と判断されることがあります。

そこで重要になるのが、マーケティングだけで顧客獲得を完結させるのではなく、営業やカスタマーサクセスと連携して、契約後の利用まで見据えることです。

たとえば、次のような取り組みが考えられます。

【SaaSで契約後まで見据えて考えたいこと】

  • どのような状態になれば顧客がサービスの価値を実感できるのかを整理する
  • 導入後にサービスを使い始められるよう、オンボーディングを設計する
  • 利用状況に応じてコンテンツや活用方法を案内する
  • 顧客の利用状況や課題に応じて、上位プランや追加機能を提案する

こうした契約後の体験まで視野に入れて設計することが、SaaSマーケティングの特徴の一つです。

解約率(継続率)を踏まえてターゲットを設計する

SaaSでは、契約してくれそうな企業だけでなく、自社サービスを継続して活用できる企業かどうかもターゲット設計で考える必要があります。

継続課金型のSaaSでは、新規契約を増やしても、同じように解約が増えれば顧客数や売上は積み上がりません。

そのため、「受注しやすい企業」だけを追うのではなく、

  • 自社サービスで解決できる課題を持っているか
  • サービスの利用条件や機能が企業の状況に合っているか
  • 導入後に継続して活用できる環境があるか

といった観点も含めてターゲットを考えます。

ターゲット設計で見る観点
考え方

新規獲得

自社サービスを必要としているか、導入を検討する可能性があるか

継続利用

自社サービスによって課題を解決でき、導入後も活用を続けられるか

たとえば、価格やキャンペーンだけを理由に導入した顧客と、自社の課題を認識したうえで、その解決手段としてサービスを選んだ顧客では、契約後の利用状況が異なる可能性があります。

だからといって、「課題が明確な顧客なら必ず継続する」と判断できるわけではありません。

実際の受注・継続・解約データを確認し、

「どのような企業が契約し、その後も継続して利用しているのか」

を分析しながらターゲットを見直すことが重要です。

SaaSでは、獲得時のCVRや商談化率だけでなく、契約後の継続率まで確認することで、自社にとって適した顧客像を整理しやすくなります。

利用データとユーザーの声を施策に活かす

SaaSでは、契約前のマーケティングデータだけでなく、契約後の利用状況を把握できることも特徴です。

たとえば、次のようなデータがあります。

データ
確認できることの例

獲得・商談データ

流入経路、資料DL、問い合わせ、商談、受注など

利用データ

ログイン頻度、利用している機能、利用人数、利用頻度など

顧客の声

導入理由、利用時の課題、不満、解約理由、要望など

Web上の行動だけを確認していると、「なぜ契約したのか」「契約後にどのように使われているのか」「なぜ解約したのか」までは分かりません。

そこで、MAやCRMに蓄積されたマーケティング・営業データに加えて、プロダクトの利用データや、営業・カスタマーサクセスが顧客から聞いた情報も確認します。

たとえば、

「継続している顧客は、導入後早い段階で特定の機能を利用している」

といった傾向が分かれば、オンボーディングでその機能の利用を案内する判断につなげられます。

反対に、

「特定の企業群では契約後ほとんど利用されず、短期間で解約している」

と分かれば、ターゲットや契約前の訴求そのものを見直す必要があるかもしれません。

また、利用ログだけでは理由までは分からないため、顧客へのヒアリングも重要です。

数値で「何が起きているか」を確認し、顧客の声から「なぜ起きているのか」を探る。この両方を施策改善に活かせることが、SaaSマーケティングでは重要です。

無料トライアルやフリープランから有料化するファネルがある

SaaSでは、契約前に無料トライアルやフリープランを提供し、実際にサービスを使ってもらってから有料契約につなげる方法があります。

【SaaSとその他買い切り型サービスのファネル比較(一例)】

SaaSと買い切り型サービスのファネルを比較した図。SaaSは認知、興味・関心、比較・検討、導入のあとに無料トライアルから有料版購入へ進み、さらに定着・継続が続くのに対し、買い切り型は認知から購入で完結することを表している

無料トライアルやフリープランを設けることで、契約前に操作性や機能を確認してもらい、サービスの価値を体験してから有料版を検討してもらうことができます。

たとえば、次のような方法があります。

【無料から有料契約につなげる方法の例】

  • 一定期間、サービスの主要機能を利用できる無料トライアルを提供する
  • 一部の機能を無料で提供し、利用できる機能や容量を増やしたい場合に有料プランを案内する
  • 無料トライアル中の利用状況に応じて、活用方法や有料プランを案内する

ただし、すべてのSaaSに無料トライアルやフリープランが適しているわけではありません。

導入に個別の設定や支援が必要なサービスや、担当者一人では購入を判断できない高単価のBtoB SaaSなどでは、無料で提供しても有料契約につながりにくい場合があります。

そのため、「SaaSだから無料プランを用意する」のではなく、顧客がサービスを自分で利用し、契約前に価値を実感できるかを基準に判断します。

無料プランが向いているケースと向いていないケースについては、後ほど詳しく解説します。

顧客獲得にかけたコストの回収に時間がかかる

SaaSマーケティングでは、顧客獲得にかけた費用をどのくらいの期間で回収できるかという視点も重要です。

マーケティングや営業には、広告費、人件費、コンテンツ制作費、ツール費用など、さまざまなコストが発生します。

継続課金型のSaaSでは、契約時に売上を一括で得るのではなく、顧客が利用を続けることで売上が積み上がっていきます。

そのため、顧客を獲得した時点では、獲得にかけたコストをまだ回収できていない場合があります。

SaaSで確認したいこと
内容

CAC

1社の顧客を獲得するために、どの程度の費用がかかったか

CAC回収期間

顧客獲得にかけた費用を、契約後どのくらいの期間で回収できるか

LTV

一人・一社の顧客から、契約期間を通じてどの程度の価値を得られるか

たとえば、新規顧客を獲得できても、CACを回収する前に解約されれば、その顧客の獲得にかけた投資を十分に回収できない可能性があります。

反対に、獲得時のCACが多少高くても、継続率が高く、長期間にわたって収益が得られるのであれば、事業として成立する場合があります。

そのため、SaaSではCACだけを見るのではなく、LTVとのバランスやCACの回収期間、解約率などをあわせて確認します。

【LTVとは?】

LTV(Life Time Value/顧客生涯価値)は、一人・一社の顧客が取引期間を通じてもたらす価値を表す指標です。

SaaSでは、契約単価や粗利、継続期間などをもとに、顧客獲得にかけた投資を回収できるか判断するために利用されます。

このようにSaaSマーケティングでは、新規顧客を何件獲得したかだけでなく、獲得した顧客が継続し、中長期的に投資を回収できるかまで見ながら施策を判断することが重要です。

SaaSマーケティングで見るべき3つの指標

SaaSでは、リード数や商談数、新規契約数だけを見ても、マーケティング投資が事業成長につながっているかを十分に判断できません。

新規顧客を獲得できても、短期間で解約されたり、顧客獲得にかけた費用の回収に時間がかかりすぎたりすれば、売上が伸びても収益性は悪化する可能性があります。

そのため、SaaSマーケティングでは新規獲得の指標とあわせて、次の3つを確認します。

  • 解約率(チャーンレート)
  • LTV/CAC比率とCAC回収期間
  • NRR(Net Revenue Retention)

それぞれの意味と、判断するときの考え方を解説します。

解約率(チャーンレート)

解約率は、一定期間のうちにどの程度の顧客が解約したかを示す指標です。

継続課金型のSaaSでは、新規顧客を獲得しても解約が多ければ顧客数が積み上がらないため、事業の持続性を確認するうえで重要な指標になります。

ただし、「チャーン率は○%以下なら問題ない」と一律に判断することはできません。

公開されているベンチマークでも、SMB向けSaaSは月次3〜7%程度、Enterprise向けでは1%前後から1.5%程度など、対象とする顧客層によって大きな差があります。一般に、契約単価が高く、契約期間が長いサービスほどチャーン率は低くなる傾向があります。

出典:Vena「2025 SaaS Churn Rate: Benchmarks, Formulas and Calculator」、ChartMogul「カスタマーチャーンレート」

そのため、ベンチマークを見る場合は、

  • SMB向けか、Enterprise向けか
  • 月額契約か、年間契約か
  • 契約単価はいくらか
  • 事業が立ち上げ期か、成熟期か

といった条件が自社と近いかを確認する必要があります。

また、解約率を見るときは全社平均だけでなく、顧客セグメントや契約時期ごとに分けて確認すると、どの顧客で解約が起きているのかを把握しやすくなります。

記事の後半で解説する定量計画でも、こうした実績や事業特性を踏まえて目標継続率を設定します。

LTV/CAC比率とCAC回収期間

SaaSでは、顧客獲得にかけた費用と、その顧客から将来的に得られる価値のバランスを確認します。

その代表的な指標が、LTV/CAC比率です。

LTV/CAC比率 = LTV ÷ CAC

たとえば、LTVが90万円、CACが30万円であれば、LTV/CAC比率は3倍です。

SaaSでは「LTV/CACが3倍程度」を一つの目安とする考え方が広く使われています。ただし、3倍を超えていれば必ず健全というわけではありません。

出典:Stripe「CAC SaaS: 企業向けガイド」

あわせて確認したいのが、CAC回収期間です。

CAC回収期間は、顧客獲得にかけた費用を、その顧客から得られる粗利などによって何ヶ月で回収できるかを見る指標です。

指標
確認すること

LTV/CAC比率

顧客獲得にかけた費用に対して、顧客からどの程度の価値を得られるか

CAC回収期間

顧客獲得に投資した資金を、何ヶ月で回収できるか

CAC回収期間についても、対象顧客によって目安は異なります。

公開されているベンチマークでは、SMB向けではおおむね6〜14ヶ月、Mid-Marketでは10〜20ヶ月前後、Enterpriseでは13〜30ヶ月前後など、顧客規模や業界によって回収期間に差があります。高単価で契約期間の長いEnterprise SaaSでは、SMB向けサービスより長い回収期間になるケースもあります。

出典:First Page Sage「SaaS CAC Payback Benchmarks: 2025 Report」

ここで注意したいのは、LTV/CAC比率だけを見て判断しないことです。

たとえば、LTV/CACが高くても、CACの回収に数年かかるのであれば、先に広告費や営業費用の支払いが発生するため、資金繰りへの負担が大きくなります。

また、LTVは将来の継続期間や解約率などを前提にした推計値です。

特にBtoB SaaSでは顧客ごとの契約単価に差がある場合も多いため、全顧客の平均値だけを見ると、高単価の顧客と採算の合わない顧客が混ざってしまうことがあります。

そのため、

  • 顧客セグメント別のLTV
  • 顧客セグメント別のCAC
  • CAC回収期間
  • 実際の解約率

をあわせて確認することが重要です。

NRR(既存顧客からの売上の増減)

NRR(Net Revenue Retention)は、既存顧客からの売上が一定期間でどの程度増減したかを見る指標です。

新規顧客からの売上を含めず、

  • 解約
  • ダウングレード
  • アップセル
  • クロスセル

による売上の増減を確認します。

たとえば、期初に既存顧客から100万円のMRRがあり、解約やダウングレードで10万円減った一方、アップセルによって20万円増えた場合、期末の既存顧客売上は110万円になります。

この場合、NRRは110%です。

NRRが100%を超えていれば、解約やダウングレードによる減少分を、既存顧客からの追加売上で補えている状態です。

反対に100%を下回っている場合は、新規顧客を除いた既存顧客だけを見ると売上が減少しています。

ただし、NRRの水準も顧客層や事業モデルによって大きく異なります。

公開データでは、BtoB SaaSのNRRは契約単価によって差があり、中央値では100〜110%程度、契約単価の高い企業群では上位25%が118〜120%程度となるデータもあります。

出典:SaaS Capital「2023 B2B SaaS Retention Benchmarks」

そのため、「110%を超えれば成功」と単純に判断するのではなく、自社の顧客構成や契約単価、アップセル余地を踏まえて評価します。

もしNRRが継続的に100%を下回っている場合は、新規顧客の獲得を増やすだけでなく、

  • どの顧客が解約しているのか
  • ダウングレードが発生している理由は何か
  • 利用されていない機能はないか
  • アップセルできる顧客がどこにいるか

といった点を確認する必要があります。

SaaSマーケティングでは、新規顧客をどれだけ獲得したかだけでなく、獲得した顧客を維持し、その顧客から得られる売上がどのように変化しているかまで見ることが重要です。

無料トライアルやフリープランを前提にしないほうがよい場合

無料トライアルやフリープランは、SaaSでよく使われる提供方法ですが、すべてのサービスに適しているわけではありません。

サービスの性質によっては、無料で利用できるユーザーを増やしても、有料契約につながらず、提供コストやサポート負荷だけが増えることがあります。

特に、次のような場合は慎重に判断する必要があります。

無料トライアル・フリープランが向きにくい条件
理由

導入に設定支援やカスタマイズが必要

ユーザー自身で操作するだけではサービスの価値を十分に体験できず、無料利用だけで終わる可能性がある

単価が高く、複数人で導入を判断する

担当者が個人で試しても、稟議や他部署との調整が必要なため、そのまま有料契約へ進むとは限らない

利用量に応じて提供コストが増える

ストレージや計算リソース、問い合わせ対応などの負担が、無料ユーザーの増加とともに大きくなる

対象となる企業が限られている

無料利用の間口を広げても、ターゲット外のユーザーが増え、営業やサポートの負担につながる場合がある

また、無料で使える範囲を広くしすぎると、有料プランへ移行する理由が弱くなることもあります。

フリープランを提供する場合は、

  • 無料でどこまで価値を体験してもらうか
  • どのタイミングで有料機能が必要になるか
  • 無料ユーザーを維持するための原価やサポート負荷はどの程度か

をあらかじめ整理しておくことが重要です。

無料トライアルやフリープランを用意するかどうかは、「競合も提供しているから」ではなく、自社のサービスが利用者自身で価値を体験できるか、その後の有料契約につながる設計ができるかを基準に判断します。

PQL(プロダクト適格リード)で利用状況を判断材料にする

無料トライアルやフリープランを提供する場合は、PQL(Product Qualified Lead)の考え方も活用できます。

PQLとは、資料ダウンロードやウェビナー参加などのマーケティング施策への反応だけではなく、実際のプロダクト利用状況をもとに、営業や有料プランへの案内を優先するユーザーを判断する考え方です。

たとえば、次のような行動をPQLの条件として設定できます。

【PQLの判定に使える行動の例】

  • 一定期間内に継続してログインしている
  • 初期設定を完了している
  • サービスの中心となる機能を利用している
  • 他のメンバーを招待し、複数人で利用している
  • 無料プランの利用上限に近づいている
  • 料金ページやアップグレード画面を確認している

重要なのは、ログイン回数など単一の行動だけで判断しないことです。

たとえば、毎日ログインしていても主要機能を使っていなければ、サービスの価値を十分に体験できていない可能性があります。

反対に、

「初期設定を完了し、主要機能を利用し、複数のメンバーを招待している」

といった状態であれば、サービスが実際の業務に組み込まれ始めていると判断する材料になります。

PQLは、こうしたプロダクト上の行動を使って「次にどのユーザーへ対応するか」を決めるために活用します。

公開されているPLG関連の調査では、PQLを活用している企業は、無料アカウントから有料契約への転換率が高い傾向も報告されています。ただし、PQLの定義や対象サービスによって数値は大きく変わるため、自社の利用データと有料転換・商談結果をもとに条件を設計することが重要です。

出典:ProductLed「Product-Led Growth Benchmarks」

また、BtoB SaaSでは、プロダクトの利用状況だけで契約が決まるとは限りません。

企業規模や契約金額によっては、担当者がサービスを評価したあとに、

  • 上司や経営層への説明
  • 情報システム部門による確認
  • セキュリティチェック
  • 契約条件の調整

などが必要になる場合があります。

そのため、PQLは「このユーザーなら自動的に有料化する」と判断するためのものではなく、営業が優先して確認する対象を絞り込む材料の一つとして使うとよいでしょう。

SaaSビジネスに効果的なマーケティング施策一覧【サービスの成熟度別】

SaaSマーケティングで取り組むべき施策は、事業のフェーズによって変わります。

立ち上げ直後から広告、SEO、ウェビナー、ホワイトペーパーなどをすべて実施するのではなく、現在の課題に合わせて優先順位を決めることが重要です。

ここでは、SaaS事業の状態を「初期」「中期」「成熟期」の3つに分け、各フェーズで検討したい施策を整理します。

初期:まず顧客との接点をつくる

サービスを立ち上げたばかりの段階では、まだ認知が少なく、どの企業にどの訴求が響くのかも十分に分かっていないことがあります。

そのため、まずはターゲットとなる企業との接点を増やしながら、どのようなテーマや訴求に反応があるのかを確認します。

施策
内容

外部メディアへの記事寄稿

業界メディアなどへ記事や調査コンテンツを寄稿し、自社だけでは接点を持ちにくい層へ認知を広げる

オウンドメディア

ターゲット企業が検索する課題やテーマをもとに記事を作成し、検索からの流入や継続的な接点をつくる

ウェビナー

ターゲットが関心を持つテーマでセミナーを開催し、参加登録を通じて見込み客との接点をつくる

自社だけで十分な集客が難しい場合は、他社との共催ウェビナーや外部メディアへの露出など、すでに対象顧客との接点を持っている企業・媒体を活用する方法もあります。

この段階では、施策数を増やすことよりも、「どの企業が、どのテーマや訴求に反応するのか」を把握することが重要です。

中期:リード獲得と検討促進の仕組みを広げる

一定数のリードを獲得できるようになったら、接点を増やすだけでなく、獲得したリードを商談やトライアルへつなげる仕組みを整えます。

施策
内容

オウンドメディアの拡充

流入につながっているテーマを中心にコンテンツを増やし、検索から継続的にリードを獲得できる状態を目指す

ホワイトペーパー・導入事例

課題整理や比較検討に役立つ資料、導入事例などを用意し、検討を進めるための情報を提供する

Web広告

検索広告、ディスプレイ広告、SNS広告などを使い、ターゲットとの接点やリード獲得を増やす

比較サイト・外部媒体への掲載

SaaS比較サイトや業界メディアなど、すでに比較検討しているユーザーとの接点をつくる

ウェビナー

課題解決や事例、サービス活用などのテーマで開催し、既存リードとの接点を増やす

無料トライアルへの誘導

無料トライアルが適しているサービスでは、メールやLPなどから実際の利用へ進む導線を設計する

このフェーズでは、単にリード数を増やすだけではなく、

  • どのチャネルから商談が生まれているか
  • どのコンテンツを見たリードが商談へ進んでいるか
  • どの施策から獲得した顧客が継続しているか

まで確認することが重要です。

リード数は増えていても商談につながっていない場合は、さらに集客を増やす前に、ターゲットや訴求、ナーチャリング、営業への引き渡し方法を見直す必要があります。

成熟期:施策を選別し、投資配分を最適化する

複数のチャネルから継続的にリードや商談を獲得できるようになったら、施策を増やすことよりも、どこへ投資を集中するかを判断することが重要になります。

施策・取り組み
内容

施策ごとの効果測定

リード数だけでなく、商談化率、受注率、CACなどを確認し、投資対効果を比較する

予算配分の見直し

成果につながっているチャネルへ予算を寄せ、効果の低い施策は縮小・停止する

既存施策の改善

広告、LP、コンテンツ、ウェビナーなど、継続している施策のCVRや商談化率を改善する

既存顧客への施策

利用促進、アップセル、クロスセルなど、新規獲得だけでなく既存顧客からの売上も伸ばす

市場や顧客変化の確認

顧客ニーズや競合、市場環境の変化を確認し、チャネルや訴求が現在も適切か見直す

成熟期では、「これまで実施してきた施策をすべて続ける」のではなく、データをもとに残す施策とやめる施策を判断します。

たとえば、SEOから多くのリードを獲得できていても商談化率が低い一方、ウェビナー経由のリードは件数が少なくても受注率が高い場合があります。

その場合は、リード件数だけではなく、商談・受注やCACまで確認したうえで予算やリソースの配分を見直します。

また、SaaSでは新規顧客の獲得だけでなく、継続利用やアップセルによる売上も重要です。

事業が成長するほど、マーケティング、営業、カスタマーサクセスがそれぞれ別々に施策を進めるのではなく、顧客獲得から継続利用までを一つの流れとして改善する必要があります。

このように、SaaSマーケティングでは、事業のフェーズによって優先する施策が変わります。

重要なのは、「今は初期だからこの施策」と機械的に決めることではありません。

現在どこに課題があるのかを確認し、その課題を解消するために必要な施策を選ぶことが基本です。

リード獲得から育成、営業への引き渡しまでを通した施策の並べ方は、デマンドジェネレーションの全体像で解説しています。

リード獲得に絞って施策を選びたい場合は、SaaSのリード獲得で質と量を両立させる方法もあわせてご覧ください。

マーケティング戦略全体の進め方については、記事後半の「SaaSマーケティングの進め方5ステップ」で詳しく解説します。

SaaSマーケティングの成功事例

ここでは、Sells upが支援したSaaS事業者の事例から、マーケティング体制や施策をどのように整えていったのかを紹介します。

株式会社CLUE様|マーケティング体制の立ち上げから営業連携までを整備

株式会社CLUE様の支援事例のインタビュー写真。テーブルを挟んで担当者2名が話している

項目
内容

事業内容

ドローンを活用した建設業界向けソフトウェアの開発・提供。主要サービスは、ドローンによる屋根外装点検をワンタップで実現する「DroneRoofer」など

当時の課題

営業活動は進められていたものの、社内にマーケティング経験者がおらず、施策の選定や予算配分、進め方、全体の戦略設計を判断しにくい状態だった

支援の目的

マーケティング全体の戦略設計と、自社で継続して運用できる体制の構築

支援期間

2019年から約5年間

実施した主な取り組みは、次のとおりです。

  • マーケティング全体の戦略とKPIの設計
    過去の顧客データやWebサイトのアクセスログを確認し、施策ごとの目標を設定
  • Web広告の再設計
    Google、Yahoo、Metaなどを運用し、チャネルごとの反応を比較しながら配分を見直し
  • LPの改善
    機能や特徴を中心とした訴求から、サービス導入によってどのような課題を解決できるのかが伝わる内容へ変更
  • ウェビナーコンテンツの改善
    自社サービスの説明だけではなく、参加者の課題解決に役立つテーマを中心に内容を見直し
  • オウンドメディアと他施策の連携
    セミナーのアンケート結果やメール配信などで得られた反応を、記事企画へ反映
  • MA(Account Engagement)とSFA(Salesforce)の導入・運用設計
    ウェビナー集客のメール配信や、3日連続でサービスページを訪問したユーザーをインサイドセールスへ連携するシナリオを構築
  • インサイドセールスチームの立ち上げ
    リード獲得から商談までの役割分担や引き渡しの流れを整理

こうした取り組みを通じて、マーケティング担当者がいない状態から、マーケティング施策によって継続的にリードを獲得できる体制へと移行しました。

また、オウンドメディアから継続的にコンバージョンを獲得できるようになり、マーケティングと営業の連携も整備されています。

【本事例から確認できるポイント】

  • 個別施策から始めるのではなく、先に戦略やKPIを整理している
  • 広告、LP、ウェビナー、オウンドメディアを別々に運用せず、顧客の反応を施策間で活用している
  • リード獲得だけでなく、営業への引き渡しまで含めて運用を設計している
  • 外部支援を利用しながら、最終的には自社で運用できる体制づくりを進めている

※本事例の詳しい内容は、以下の記事で紹介しています。


戦略立案、施策の実行、そして人材育成。非連続な成長を続けるスタートアップのマーケ立ち上げとその裏側

顧客データで目標設定し、運用型広告を媒体選定から刷新。営業インサイトを反映したLP改修とセミナー・オウンドメディア改善により、商談・受注を創出するリードの安定獲得を実現。

sellsup.co.jp

スタートアップのマーケ立ち上げ。商談・受注を創出するリードが安定獲得できる仕組みを構築のサムネイル

この事例から分かるのは、SaaSマーケティングでは、広告やコンテンツなど一つの施策だけを改善するのではなく、戦略、施策、営業連携までを一つの流れとして整えることが重要だということです。

また、社内だけで判断が難しい場合には、必要に応じて外部の知見を取り入れながら、最終的に自社で運用できる状態を目指す方法もあります。

株式会社SmartHR様|MA運用を立ち上げ、問い合わせ件数が約10倍に

SaaS事業者の事例をもう1件紹介します。

株式会社SmartHR様では、MAツールの運用経験を持つマーケティング担当者がいない状態から初期設定に着手し、約1ヶ月で初回のメールマガジン配信まで進めました。

その後、配信するメールを1〜2パターンから20〜30パターンへ広げ、問い合わせ件数は1年間で約10倍になっています。

この事例で特徴的なのは、単にメールの配信本数を増やしたことではありません。

対象となるユーザーや状況に応じて複数のメールを用意し、届ける内容やタイミングを分けられる運用体制を整えたことです。

SaaSでは、獲得したリードすべてに同じ情報を送るのではなく、

  • どのような課題を持っているか
  • どこまで検討が進んでいるか
  • どのコンテンツに反応しているか

などに応じて情報を出し分けることで、その後の問い合わせや商談につながる可能性を検証できます。

SmartHR様の事例は、MAツールを導入するだけではなく、継続して配信内容を増やし、運用できる状態をつくることが重要だと分かる事例です。


1年間で約10倍の問い合わせを獲得。メールを1〜2から20〜30パターンへ拡充

Account Engagementの初期設定からメール文面作成まで一貫支援。メールラインナップを20〜30パターンに拡充し、行動データを基にしたトリガーメールと30以上のフォームを展開。

sellsup.co.jp

SmartHRのロゴが光る壁の前で、3人が笑顔で談笑している写真

SaaSマーケティングの進め方5ステップ

ここまで、SaaSマーケティングの特徴や施策について解説してきました。

実際に取り組むときは、いきなり広告やSEOなどの施策から始めるのではなく、事業目標から必要な顧客数や商談数を整理し、そのうえで顧客獲得から継続利用までの流れを設計します。

基本的な進め方は、次の5ステップです。

  • Step.1:定量計画を策定する
  • Step.2:顧客獲得から受注までの流れを設計する
  • Step.3:継続利用される仕組みを設計する
  • Step.4:優先順位を決めて施策を実行する
  • Step.5:効果を測定し、計画と施策を見直す

順番に見ていきましょう。

Step.1:定量計画を策定する

最初に、SaaS事業としてどの程度の売上を目指し、そのために何社の顧客を獲得・維持する必要があるのかを整理します。

たとえば、

「2030年までにMRR○円を達成する」

という目標を置いた場合、その数字だけではマーケティング施策には落とし込めません。

そこから、

  • 必要な契約社数は何社か
  • 既存顧客は何社残る想定か
  • 毎月何社の新規受注が必要か
  • そのために何件の商談が必要か
  • 商談を生み出すために何件のリードが必要か

と順番に分解していきます。

定量計画で整理する項目
考え方の例

事業目標

2030年までにMRR○円を達成する

必要な継続顧客数

目標MRR、顧客単価、プラン構成などから必要な契約数を算出する

継続率・解約率

既存顧客がどの程度残るかを見込み、新規獲得だけではなく解約による減少も織り込む

必要な新規受注数

目標顧客数と既存顧客の継続状況から、新たに必要な契約数を算出する

必要な商談数

過去の受注率などから、新規受注に必要な商談数を逆算する

必要なリード数

商談化率などから、必要なリード数を逆算する

施策と予算

必要なリード・商談を生み出すための施策と予算を整理する

たとえば、新規受注が月10社必要で、商談から受注する割合が20%であれば、単純計算では月50件の商談が必要です。

さらに、リードから商談へ進む割合が10%であれば、月500件のリードが必要になります。

実際にはチャネルや顧客セグメントによって商談化率・受注率が異なるため、可能であればチャネル別やターゲット別に分けて計算します。

SaaSで特に重要なのは、新規顧客だけではなく、既存顧客の継続を計画に含めることです。

たとえば毎月10社を新規獲得していても、同じ期間に多数の顧客が解約していれば、顧客数やMRRは想定したほど積み上がりません。

そのため、

事業目標 → 必要な継続顧客数 → 新規受注数 → 商談数 → リード数 → 施策・予算

のように、ストック売上を前提としてマーケティング計画を組み立てます。

なお、上記は考え方を示すための例です。実際に見るべき項目は、料金体系や契約期間、営業プロセス、アップセルの有無などによって変わります。

Step.2:顧客獲得から受注までの流れを設計する

定量計画を立てたら、次に見込み客との接点をつくってから受注するまでの流れを整理します。

BtoB SaaSでは、マーケティングだけで契約まで完結するとは限りません。

マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスなどが関わる場合は、どの段階で誰が対応するのかを決めておきます。

たとえば、次のような流れです。

ステップ
目的
主な担当の例

1. リード獲得

ターゲットとなる企業・担当者との接点をつくる

マーケティング

2. 情報提供・ナーチャリング

検討状況に応じて、課題解決やサービス選定に必要な情報を提供する

マーケティング

3. 営業への引き渡し

属性や行動、問い合わせ内容などから営業が確認する対象を絞る

マーケティング・インサイドセールス

4. 商談・ヒアリング

課題、導入条件、決裁プロセスなどを確認する

インサイドセールス・営業

5. デモ・トライアル・提案

サービスの適合性や導入後の利用イメージを確認してもらう

営業・必要に応じてCS

6. 契約

条件を確認し、有料契約へ進む

営業

※上記は一例です。セルフサーブ型のSaaSでは営業を介さず契約まで進む場合もあり、高単価のBtoB SaaSでは商談やセキュリティ確認、稟議など複数の工程が入る場合もあります。

ここで重要なのは、理想的なファネルを作ることではなく、実際に顧客がどのような経路で契約しているのかをもとに設計することです。

また、マーケティングから営業へリードを渡す場合は、引き渡し条件も決めておきます。

「興味がありそう」といった感覚だけで判断するのではなく、

  • 対象業種・企業規模に該当する
  • デモや相談を申し込んでいる
  • 特定のサービスページを閲覧している
  • 一定のスコアを満たしている

など、営業と共有できる条件にします。

Sells upが支援で使用しているRFEスコアモデルでは、受注データをロジスティック回帰で分析し、Engagement 0.45/Recency 0.385/Frequency 0.165という配点を置いています。MQLは属性スコア20点以上かつ行動スコア40点以上、ホットリードはスコア0.75以上かつ直近7日以内に質の高い行動があることを条件にしています。

これは一般的な基準値ではなく、Sells upの支援で使用している設計例です。

重要なのは配点やしきい値そのものではなく、なぜその条件で営業へ渡すのかを説明でき、商談や受注の結果をもとに見直せる状態にすることです。

配点としきい値の決め方は、スコアリングの設計6ステップで解説しています。

営業へ引き渡したあとに誰がいつまでに対応するかは、営業への引き渡し条件と対応期限の決め方にまとめています。

【立ち上げ期は営業とCSを兼任する方法もある】

SaaSでは、契約前に営業が聞いた顧客の課題や導入目的を、契約後の支援へ引き継ぐことが重要です。

立ち上げ期で顧客数がまだ少ない場合は、営業担当者が契約後のフォローまで担当する方法もあります。

商談で確認した、

・顧客が解決したい課題
・導入を決めた理由
・利用時に懸念していること
・期待している成果

などを把握したまま支援できるため、情報の引き継ぎを減らせます。

一方で、顧客数が増えてくると、営業活動と既存顧客への支援を同じ担当者が継続することが難しくなる場合があります。

その段階では、営業とCSの役割を分け、商談時に得た情報をCRMなどへ記録して引き継ぐ体制を整える方法があります。

営業とCSを兼任するか分業するかは、契約単価だけで決めるのではなく、顧客数や支援工数、更新業務の複雑さなどを踏まえて判断します。

Step.3:継続利用される仕組みを設計する

契約までの流れを整理したら、次に契約後の利用を設計します。

SaaSでは、契約しただけでは売上が継続するとは限りません。

顧客がサービスを使い始め、業務の中に定着し、導入時に期待していた価値を実感できる状態を目指します。

そのために、

  • 顧客が解決したい課題や目標を確認する
  • サービスを十分に利用できているか確認する
  • 利用につまずいている箇所を把握する
  • 活用方法を案内する
  • 必要に応じて上位プランや追加機能を提案する

といった契約後の流れを設計します。

たとえば、次のような方法があります。

段階
定期的な支援の例
メール・コンテンツによる支援の例

導入初期

導入目的や目標の確認、初期設定・基本操作の支援

初期設定や基本的な使い方を案内

定着期

利用状況を確認し、つまずきや活用方法をヒアリング

FAQ、活用事例、利用機能に応じた情報を案内

活用拡大

利用結果を確認し、改善方法や追加活用を提案

応用的な活用方法や関連機能を案内

どこまで人が対応し、どこからメールやプロダクト内の案内で対応するかは、顧客単価や顧客数、サービスの複雑さによって変わります。

高単価で個別支援が必要なサービスであれば、定期ミーティングを設ける方法があります。

一方、顧客数が多く、利用方法がある程度共通しているサービスでは、メールやヘルプコンテンツ、プロダクト内の案内などを組み合わせることで、個別対応に頼りすぎない仕組みを作れます。

契約後の支援そのものは、主にカスタマーサクセスが担う領域です。

ただし、SaaSマーケティングでは、どの顧客を獲得すると継続しやすいのか、契約後にどのような利用状況になるのかをマーケティング側にも戻すことが重要です。

たとえば、特定のチャネルから獲得した顧客の解約が多ければ、集客時のターゲットや訴求を見直す必要があります。

反対に、長期継続している顧客に共通する属性や導入理由が分かれば、その情報を新規顧客の獲得施策にも活用できます。

購入後のフォローをどのような指標で管理するかは、BtoBカスタマーサクセスのKPIと営業連携で解説しています。

LTVの算出方法と施策への活用方法は、LTVの計算方法と活用手順にまとめています。

ここまでで、

リード獲得 → 商談・受注 → 導入 → 定着 → 継続利用

までの基本的な流れが整理できた状態になります。

Step.4:優先順位を決めて施策を実行する

顧客獲得から継続利用までの流れを設計したら、具体的な施策を実行します。

このとき、広告、SEO、ウェビナー、ホワイトペーパーなどを一度にすべて始める必要はありません。

まず、現在の流れの中でどこに課題があるのかを確認します。

たとえば、

現在の課題
確認・検討することの例

ターゲットとの接点が少ない

SEO、広告、外部媒体、ウェビナーなど、接点を増やす施策を検討する

リードはあるが商談が少ない

リードの獲得元、ターゲットとの適合度、ナーチャリング、引き渡し条件、営業対応などを確認する

商談はあるが受注につながらない

ターゲット、提案内容、競合との違い、価格、商談プロセスなどを確認する

新規契約は増えているが解約も多い

契約前の期待値、ターゲット、オンボーディング、利用状況、解約理由などを確認する

ここで重要なのは、課題に対してすぐ施策を決めないことです。

たとえば「リードは多いのに商談が少ない」という状態でも、原因は一つとは限りません。

ターゲット外のリードを集めている場合もあれば、営業への引き渡し条件に問題がある場合、営業側の初動が遅い場合もあります。

まず原因を確認し、その原因に対応する施策を選びます。

SaaSビジネスのフェーズ別に考えられる施策は、前述の「SaaSビジネスに効果的なマーケティング施策一覧【サービスの成熟度別】」で整理しています。

Step.5:効果を測定し、計画と施策を見直す

施策を実行したら、結果を確認して改善します。

このとき、施策ごとのKPIだけを見るのではなく、Step.1で設定した事業目標までつながっているかを確認することが重要です。

たとえば、次のように確認します。

確認する階層
指標の例

施策

広告のCPA・CVR、記事からのCV、ウェビナーの申込数・参加率など

リード・商談

リード数、商談化率、商談数、受注率など

顧客獲得

新規契約数、CACなど

継続利用

解約率、継続率、アップセル・ダウングレードなど

事業

MRR、ARR、NRR、LTV/CAC、CAC回収期間など

たとえば、広告のCPAが改善していても、そのリードがほとんど商談につながっていなければ、広告として本当に改善しているとは判断できません。

反対に、CPAが他のチャネルより高くても、その後の受注率や継続率が高ければ、投資する価値がある可能性があります。

そのため、施策単体の数字だけではなく、

施策 → リード → 商談 → 受注 → 継続利用

まで追って評価します。

改善するときは、次のように進めます。

1. 目標と実績の差を確認する

どの指標が計画を下回っているのかを確認します。

2. 原因を分解する

たとえばリード数が不足している場合でも、流入数が少ないのか、CVRが低いのかによって対応は変わります。

3. 改善する箇所を決める

原因に応じて、広告配信、コンテンツ、LP、営業への引き渡し、オンボーディングなどを見直します。

4. 改善後の結果を確認する

変更前後で指標がどう変わったのかを確認し、次の判断に反映します。

また、Step.1で作成した定量計画についても定期的に見直します。

実際の商談化率や受注率、解約率が当初の想定と異なれば、必要なリード数や予算も変わります。

そのため、定量計画は一度作って固定するものではなく、実績が蓄積されるほど前提を更新していきます。

SaaSマーケティングでは、新規顧客を獲得する施策と、契約後の継続状況を切り離して考えないことが重要です。

どの施策から獲得した顧客が商談・受注し、その後も継続しているのかまで確認しながら、事業目標から施策までを継続的に見直していきます。

SaaSマーケティングの戦略設計はSells upにご相談ください

株式会社Sells upの公式サイトのスクリーンショット

SaaSマーケティングでは、新規顧客の獲得だけでなく、継続利用を前提とした計画や、マーケティング・営業・CSの連携まで考える必要があります。

そのため、

  • どの施策から優先して取り組むべきか
  • 限られた予算をどこに配分するか
  • マーケティングから営業へ、どの条件でリードを引き渡すか
  • 獲得した顧客が継続しているかまで、どのように評価するか

といった判断に迷うこともあります。

ここまで記事を読んで、

「考え方は理解できたものの、自社では何から進めればよいか判断しにくい」

と感じた場合は、BtoBマーケティング支援を行う「Sells up」にご相談ください。

Sells upでは、顧客データや商談実績、Webサイトのアクセス状況などを確認しながら、事業の状況に合わせてマーケティング戦略や施策の優先順位を整理します。

広告、コンテンツマーケティング、ウェビナー、MA活用など、特定の施策だけを切り出すのではなく、リード獲得から営業への引き渡しまでを含めて支援しています。

【Sells upで支援できることの例】

  • 施策や予算配分の優先順位が決められない
    →顧客データや商談履歴、各施策の実績を確認し、どこから改善するかを整理する
  • 複数の施策を実施しているものの、商談につながっている要因が分からない
    →広告、コンテンツ、ウェビナーなどの施策と、その後の商談・受注データを確認し、改善すべき箇所を整理する
  • マーケティングの運用を社内に定着させたい
    →戦略設計だけでなく、施策の進め方やMAの運用、営業との連携方法まで含めて支援する
  • マーケティングから営業への引き渡し基準を整理したい
    →商談・受注データをもとに、どのような属性や行動を営業対応の条件とするかを検討する

SaaS事業者への支援事例は、記事内の「SaaSマーケティングの成功事例」でも紹介しています。

Sells upの支援で重視しているのは、施策を増やすことではなく、現在どこに課題があり、何から改善するべきかを整理することです。

施策の実績や商談・受注データを確認しながら、必要に応じて戦略や施策の優先順位を見直し、自社で継続して運用できる状態を目指します。

Sells upに相談する「話を聞いてみる」ボタン

「やっているのに成果が出ない」状態から抜け出すために

施策を続けているのに商談が増えない、リードの質が上がらない。こうした状態では、施策そのものだけでなく、ターゲットや訴求、営業への引き渡し基準、予算配分など、複数の観点から見直す必要があります。Sells upでは、現在の施策やデータを確認しながら、課題となっている箇所を整理し、優先順位をつけて改善を進めます。

相談してみる →

まとめ

本記事では、SaaSマーケティングの特徴や主な施策、実際の進め方について解説しました。

SaaSマーケティングでは、新規顧客を獲得するだけでなく、契約後の定着や継続利用まで見据えて設計することが重要です。

特に押さえておきたいポイントは、次のとおりです。

【SaaSマーケティングの主な特徴】

  • 契約後の価値提供まで見据えて戦略を設計する
  • 解約率や継続率を踏まえてターゲットを考える
  • 利用データと顧客の声を施策改善に活かす
  • 無料トライアルやフリープランから有料契約につなげる設計を検討する
  • CACやLTV、回収期間などを確認しながら投資を判断する

また、実施する施策は事業のフェーズや現在の課題によって変わります。

立ち上げ期では顧客との接点をつくり、中期ではリード獲得から商談につなげる仕組みを整え、成熟期では施策ごとの効果を比較しながら投資配分を見直します。

SaaSマーケティングを進める基本的な流れは、次の5ステップです。

  • 定量計画を策定する
  • 顧客獲得から受注までの流れを設計する
  • 継続利用される仕組みを設計する
  • 優先順位を決めて施策を実行する
  • 効果を測定し、計画と施策を見直す

重要なのは、広告やSEOなど個別の施策から考えるのではなく、事業目標から必要な顧客数・商談数・リード数を整理し、顧客獲得から継続利用までを一つの流れとして設計することです。

そのうえで、実際の商談・受注・継続状況を確認しながら、自社に合った施策や予算配分へ調整していきましょう。

よくある質問

日本の三大SaaS企業は?

日本を代表するSaaS企業として広く認知されているのは、Sansan(名刺・顧客管理)、freee(クラウド会計・人事労務)、SmartHR(クラウド人事労務)の3社です。いずれも特定の業務課題に特化したBtoB向けSaaSとして国内で高い市場シェアを持ち、上場企業としても注目されています。

これらの企業がSaaSマーケティングの観点で共通して実践していることは以下のとおりです。

企業名 主な事業領域 SaaSマーケティングの特徴
Sansan 名刺管理・顧客データ活用 「それさ、Sansanで。」のTVCMで広く認知を獲得。解決する業務課題を訴求した認知獲得施策が特徴
freee クラウド会計・人事労務SaaS 無料プランから有料へ誘導するフリーミアムモデルと、オウンドメディアによる検索流入を活用した継続的なリード獲得が特徴
SmartHR クラウド人事労務SaaS 無料トライアルとカスタマーサクセス体制を組み合わせ、導入後の定着・継続利用を重視した設計が特徴

これらの企業のマーケティングに共通しているのは、本記事で解説したSaaSマーケティングの考え方、すなわち「売って終わりではなく、継続利用されることでビジネスが成立する」という設計思想です。認知獲得から無料体験・有料転換・カスタマーサクセスまでを一貫して設計することが、国内トップSaaSに共通する成功パターンと言えます。

5大SaaS企業はどこですか?

グローバル規模で「5大SaaS企業」と呼ばれる明確な定義はありませんが、時価総額・売上規模・利用者数・業界への影響力の観点から、特に注目度の高い代表的なSaaS企業として以下の5社が挙げられることが多いです。

企業名 主な提供サービス 強みとなる領域
Salesforce CRM・SFA・MA(Account Engagement等) グローバルで広く使われているCRMプラットフォーム。BtoB企業の営業・マーケティング・CSを一元管理
Microsoft(365) OfficeアプリのSaaS化・Teams・Azure 企業向け生産性ツールとクラウドインフラの両面でグローバルシェアを確保
HubSpot CRM・MA・コンテンツ管理(オールインワン) 中小〜中堅BtoB向けのインバウンドマーケティング支援。日本でも導入実績多数
Adobe Creative Cloud・Marketo Engage等 デザイン・マーケティング自動化領域でグローバルに高い専門性を持つ
Slack(Salesforce傘下) ビジネスチャット・コラボレーションツール 職場のコミュニケーション基盤として広く普及。多くの業務システムと連携

SaaSマーケティングの観点では、これらの企業はいずれもフリーミアムモデルや無料トライアルの活用、オウンドメディアやコンテンツマーケティングによるリード獲得、そしてカスタマーサクセスによる継続利用の促進といった、本記事で解説した手法を体系的に実践しています。SaaS企業のマーケティング戦略を学ぶ際の参考になります。

SaaS業界で1位はどこですか?

SaaS業界の「1位」は、評価軸(時価総額・売上・利用者数・特定ジャンル)によって異なります。グローバルの売上・時価総額で見ると、Salesforce、Microsoft 365、Adobeなどが上位を争っており、特にSalesforceはCRM・SFA分野で長年にわたって世界首位の地位を維持しています。

日本国内では、SaaSの分野別に市場シェア1位の企業が異なります。

SaaSの分野 国内で高いシェアを持つ企業(例)
名刺・顧客管理 Sansan
クラウド会計 freee、弥生クラウド
人事労務 SmartHR
ビジネスチャット Slack、Microsoft Teams
CRM・SFA・MA Salesforce、HubSpot

SaaSビジネスは「業界全体で1位を取る」より「特定の課題領域で圧倒的なシェアを持つ」という戦略が成功しやすい構造です。本記事で解説したとおり、SaaSマーケティングでは「誰のどんな課題を解決するサービスなのか」を明確にしたうえで、継続利用してくれるユーザーをターゲットに設計することが、市場シェアを獲得するための根幹となります。

SaaSで有名なサービスはどのようなものがありますか?

SaaSとは、Software as a Serviceの略称で、インターネットを通じてソフトウェアを提供するビジネスモデルのことです。従来のパッケージソフトと異なり、月額・年額のサブスクリプション形式で利用でき、導入・更新の手間が少ない点が特徴です。

国内外で広く利用されている有名なSaaSサービスの例は以下のとおりです。

カテゴリ 代表的なSaaSサービス 主な用途
CRM・SFA・MA Salesforce、HubSpot、Adobe Marketo Engage 顧客管理・営業支援・マーケティング自動化
ビジネスコミュニケーション Slack、Microsoft Teams、Zoom 社内チャット・Web会議・コラボレーション
クラウド会計・経費 freee、マネーフォワードクラウド、Concur 会計処理・経費精算・給与計算の自動化
人事労務 SmartHR、HRMOS、カオナビ 入社手続き・勤怠管理・人材データ管理
プロジェクト管理 Asana、Notion、Jira、Backlog タスク管理・スケジュール・チーム連携
クリエイティブ・デザイン Adobe Creative Cloud、Figma、Canva デザイン制作・プロトタイピング・資料作成

これらのSaaSが成長・普及した経緯には、本記事で解説したSaaSマーケティングの特徴が共通して関係しています。無料トライアルやフリープランで導入ハードルを下げる「無料→有料化ファネル」、オウンドメディアやウェビナーによるリード獲得、そして導入後のカスタマーサクセスによる継続利用の仕組みづくりが、ユーザー数・継続率の向上に直結しています。自社のSaaSマーケティングを設計する際には、これらの有名サービスのアプローチを参考にできます。

SaaSマーケティングで最初に決めるべきことは何ですか?

最初に決めるのは、ストック売上を前提にした定量計画です。目標とするMRRから逆算して、必要な継続顧客数、目標継続率、月あたりの必要リード数を数値で置きます。

順序を逆にして施策から決めてしまうと、広告やコンテンツにいくら使えばよいのか、どの施策をやめるべきなのかを判断する基準が持てません。解約率の目安(月次で中小企業向け2〜3%以下、中堅・大企業向け1〜2%以下)を置いたうえで、積み上がる顧客数を計算するところから始めます。

無料トライアルは必ず用意したほうがよいですか?

必ずしも用意する必要はありません。導入に設定支援やカスタマイズが必要なサービス、単価が高く稟議で導入が決まるサービス、ユーザー数に比例して原価が増えるサービスでは、無料ユーザーを抱えてもサポートとインフラの負担が増えるだけになることがあります。

フリーミアムの有料転換率は2〜5%程度が一般的な水準です。この転換率で無料ユーザー分の費用を賄えるかどうかを先に試算し、賄えない場合はデモや個別相談を入口にしたほうが無理がありません。

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株式会社Sells up 代表取締役
武田 大
株式会社AOKIにて接客業、株式会社リクルートライフスタイル(現:株式会社リクルート)にて法人営業を経験後、株式会社ライトアップでBtoBマーケティングを担当。デジタルマーケティングエージェンシーを経て2023年に株式会社Sells upを設立。戦略設計・KPI設計を起点に、リードジェネレーション、ナーチャリング、MA/SFA活用、営業連携までBtoBマーケティングを一気通貫で支援。KGI逆算のKPI設計やリードスコアリングの統計的設計、営業連携SLAの構築を強みとし、業界・規模を問わず80社以上に提供。Account Engagement SpecialistおよびTableau Desktop SpecialistのSalesforce認定資格を保有。
保有資格Salesforce Certified Marketing Cloud Account Engagement Specialist/Tableau Desktop Specialist
専門領域BtoBマーケティング/リードジェネレーション/リードナーチャリング/マーケティングオートメーション/HubSpot導入活用支援/Account Engagement導入活用支援/Marketo活用支援/インサイドセールス/統計解析によるスコアリング設計/商談化率向上/マーケティングROI改善