ナレッジ 2026.10.03

生成AIのBtoBマーケティング活用|480名調査と使える場面・注意点

この記事を書いた人 武田 大 株式会社Sells up 代表取締役

生成AIをマーケティングに使う企業は増えていますが、BtoBマーケティングでは「どの業務に使えばよいのか」「どこまで任せてよいのか」が整理されないまま、個人の判断で使われていることが少なくありません。検討期間が長く、関わる人が多いBtoBの購買では、生成AIが作った文章をそのまま出すと、かえって商談につながりにくくなる場面もあります。

本記事では、BtoBマーケティングを80社以上支援してきたSells upが、BtoB企業480名の調査で見た生成AIの活用状況と、コンテンツ・メール・リード管理で生成AIが使える場面と任せにくい場面、使うときの注意点、無理に導入しなくてよい場合を解説します。

生成AIのBtoBマーケティング活用とは

生成AIのBtoBマーケティング活用とは、文章・要約・分類などを作る生成AIを、コンテンツ制作やメール配信、リード情報の整理といったBtoBマーケティングの業務に組み込むことです。下書きや要約を短時間で用意できるため、担当者は企画や営業との調整に時間を振り向けられます。

BtoCとの違いは、購買の進み方にあります。BtoBの購買は検討期間が長く、複数の部署や役職が関わり、商材の専門性も高いのが一般的です。そのため、生成AIの出力は「量を増やすための下書き」として使い、自社の事例や数値、顧客の状況に合わせた判断は人が担う、という役割分担が前提になります。

MAと生成AIの役割の違い

MA(マーケティングオートメーション)と生成AIは、役割が異なります。MAは、見込み客の属性や行動を記録し、条件に応じてメールを配信したり、営業へ通知したりする仕組みです。生成AIは、文章や要約といった「中身」を作る道具です。

つまり、MAが「誰に、いつ届けるか」を担い、生成AIは「何を届けるか」の下書きを担う、と考えると分担が見えやすくなります。生成AIで文面を増やしても、MAで配信の条件や営業への引き渡しが整っていなければ、増えた文面は商談につながりません。MAの役割と導入の手順はBtoBマーケティングオートメーションの導入手順で解説しています。

BtoBマーケティング全体の流れの中で、生成AIをどの工程に使うかを考えると整理しやすくなります。獲得から育成、営業への引き渡しまでの流れはデマンドジェネレーションの3つのプロセスで解説しています。

BtoB企業の生成AI活用の現状|弊社調査

弊社が実施したBtoB企業480名の調査で、MAの活用とあわせて生成AIの活用状況を聞いたところ、「積極的に活用し効果が出ている」は12.7%、「一部で試験的に活用している」は22.1%、「検討中」は17.1%、「活用していない」は48.1%でした(回答者全体・n=480)。

試験的な活用を含めて使っている企業は合わせて34.8%で、約半数はまだ使っていません。「効果が出ている」は回答者の自己評価であり、どの業務でどれだけ成果につながったかまでを示すものではありません。また、この結果は活用状況の分布を示すもので、生成AIを使えば成果が出るという因果関係を示すものではありません。

調査主体:株式会社Sells up/調査ツール:Surveroid(2026年9月, n=480)。設問ごとの詳しい結果はBtoB企業のMA活用実態調査(第0回)で公開しています。

「活用していない」約半数をどう読むか

使っていない企業が約半数という結果は、出遅れを意味するとは限りません。BtoBマーケティングでは、生成AIより先に、営業へ渡す条件や配信の仕組みといった運用の土台が整っていないケースも多くあります。土台がないまま生成AIでコンテンツやメールの量だけを増やしても、営業がフォローしきれず商談につながらないためです。

使い始めるかどうかは、自社の運用のどこに手間がかかっているかで判断します。MA運用の業務の全体はMA運用の業務内容と進め方で整理しています。

BtoBマーケティングで生成AIが使える場面

生成AIが使いやすいのは、たたき台を作る作業と、すでにある情報を要約・分類する作業です。ここではBtoBマーケティングの業務に沿って、使える場面を5つ紹介します。

コンテンツの構成案と下書き

記事やホワイトペーパーの構成案、見出しの候補、下書きは、生成AIで短時間に用意できます。ただし、BtoBのコンテンツで読み手が求めるのは、自社の事例や支援で得た知見、具体的な数値です。生成AIの下書きはあくまで骨組みとして使い、自社にしか書けない一次情報を人が加えます。

メール文面のパターン出し

業種別・役職別・検討段階別にメールの文面を出し分けるとき、パターンの案を出す作業に生成AIが向いています。件名の候補を複数出して比べる使い方もできます。配信前には、表現が自社のトーンに合っているか、事実と異なる記述がないかを人が読みます。出し分けの考え方はOne to Oneメールの作り方で解説しています。

ウェビナーや商談記録の要約

ウェビナーの文字起こしや、インサイドセールスの通話メモ、商談記録を要約し、よく出る質問や課題を分類する作業も生成AIが得意とする領域です。顧客から実際に出た質問をもとにFAQやコンテンツの企画を立てると、一般論ではない情報を発信できます。

広告文とランディングページの改善案

広告の見出しや説明文の候補、ランディングページのキャッチコピーの言い換え案を複数出す作業にも使えます。候補を広げる段階では生成AIが速く、どの案を採用するかはABテストの結果や営業から聞いた顧客の言葉で決めます。BtoBの広告では、業種や役職によって響く言葉が変わるため、案を出す際にも対象の業種・役職・抱えている課題を具体的に指定すると、使える案が出やすくなります。

リード情報の整理とリスト分析の補助

フォームの自由記述欄や問い合わせ内容を分類したり、表記の揺れがある会社名・部署名をそろえたりする作業にも使えます。分析の観点を出させる使い方もできますが、集計そのものは表計算ソフトやMAの機能で行い、生成AIの出した数値をそのまま使わないことが前提です。

スコアリング設計の補助

スコアリングでは、配点の仮説を言葉にしたり、営業向けにスコアの意味を説明する文章を作ったりする場面で生成AIが役立ちます。一方で、配点の重みそのものは受注・失注のデータから決めます。弊社が用いるRFEスコアモデルも、行動データからロジスティック回帰で重みを算出するもので、生成AIとは別の仕組みです。スコアリングの設計手順はリードスコアリングの設計手順で紹介しています。

生成AIに任せにくい場面

生成AIに任せにくいのは、事実の正しさや顧客ごとの判断が成果を左右する場面です。BtoBマーケティングでは次の4つが当てはまります。

1つ目は、事例や実績、数値の記述です。生成AIは存在しない事例や数値をもっともらしく書くことがあるため、出典を人が原典で突き合わせる必要があります。

2つ目は、専門性の高い説明です。商材の仕様や業界の規制のように誤りが許されない内容は、社内の担当者が書くか、出力を専門の担当者が読み直します。

3つ目は、営業へ引き渡すかどうかの判断です。どのリードを営業へ渡すかは、営業と合意した条件で決めます。

4つ目は、顧客の状況の断定です。行動履歴を生成AIに要約させても、それだけで購買意欲が高いとは言えません。

これらの場面でも生成AIをまったく使えないわけではありません。たとえば事例記事なら、取材メモの整理や見出し案の作成には使えます。ただし、事実を書く部分と判断を下す部分は人が担い、生成AIは作業の手間を減らす役割にとどめます。

行動データの要約で購買意欲は断定できない

閲覧ページやメールの反応を生成AIに要約させると、検討が進んでいるように読める文章が出てくることがあります。しかし、行動データは関心の手がかりにとどまり、実際の検討状況は営業やインサイドセールスが会話で聞き取ります。行動の読み取り方はインテントデータの読み取り方で解説しています。

営業へ渡す条件と渡したあとの対応は、トスアップの基準と手順で整理しています。

生成AIを使うときの注意点

生成AIを業務で使うときに押さえておきたい注意点は、次の4つです。

1つ目は、誤った内容の出力(ハルシネーション)です。生成AIは事実と異なる内容を自然な文章で出力することがあります。数値・固有名詞・出典は、公開前に原典と突き合わせます。

2つ目は、個人情報や機密情報の入力です。個人情報保護委員会は2023年6月2日、生成AIサービスに個人情報を含むプロンプトを入力する場合は、利用目的の達成に必要な範囲かを十分に見極めるよう注意を呼びかけています。顧客リストや商談の詳細をそのまま入力しない運用にします。

3つ目は、権利と表現です。生成した文章や画像が第三者の著作物に似ていないか、自社のブランドの表現に合っているかを人が読みます。

4つ目は、社内の利用ルールです。国内では、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(AI法)が2025年9月1日に全面施行されました。経済産業省と総務省はAIの開発者・提供者・利用者向けの指針を公表しており、2026年3月31日の第1.2版ではAIエージェントのリスクの整理も加わっています。法的な拘束力のない指針ですが、自社のルールを作るときの参考になります。

社内の利用ルールで決めておく4項目

利用ルールは、次の4項目から決めると運用しやすくなります。

1つ目は、入力してよい情報と入力しない情報の線引きです。

2つ目は、出力を公開前に読む担当者です。

3つ目は、数値・出典を原典で突き合わせる手順です。

4つ目は、どの業務で使ったかの記録です。後から成果や問題を振り返れるようにします。

生成AIを業務に取り入れる進め方|4ステップ

生成AIは、使う業務を絞って始め、効果を見ながら広げる進め方が向いています。

Step.1:手間のかかっている業務を洗い出す
コンテンツの下書き、メールのパターン作成、記録の要約など、時間がかかっている作業を書き出します。

Step.2:1つの業務で試す
まずは公開前に人が目を通せる業務を1つ選び、生成AIの下書きを使った場合の作業時間を比べます。

Step.3:利用ルールと読み直しの担当を決める
入力してよい情報、出力を読む担当者、出典の突き合わせの手順を決めます。

Step.4:成果を商談まで見て広げる
作業時間だけでなく、そのコンテンツやメールから商談につながったかまでを見て、使う業務を広げるかを判断します。

作業時間が短くなっても、メールの反応や商談の数が下がっていれば、生成AIの使い方を見直す必要があります。反対に、記録の要約のように顧客の目に触れない業務は、作業時間の削減だけで判断してもかまいません。業務ごとに、何をもって効果とみなすかを先に決めておくと、広げる・やめるの判断がしやすくなります。

MAツールに組み込まれたAI機能を使う場合は、どのデータをもとに動くのか、自社に十分なデータがあるのかを導入前に見ておきます。選び方の観点はMAツールの選び方で紹介しています。

生成AIを無理に導入しなくてよい場合

生成AIは、すべての企業にとって最初に取り組むべき施策ではありません。次の3つに当てはまる場合は、生成AIの導入を急がず、運用の土台づくりを優先したほうが成果につながります。

1つ目は、MAの基本的な運用が回っていない場合です。営業へ渡す条件や配信の仕組みがないまま、生成AIでコンテンツやメールを増やしても、受け止める仕組みがありません。

2つ目は、出力を読み直す担当者がいない場合です。読み直しの時間を確保できないと、誤った内容が外に出るリスクのほうが大きくなります。

3つ目は、扱う情報の多くが機密情報や個人情報である場合です。入力できる情報が限られ、生成AIで省ける作業が少なくなります。

弊社が支援したCLUE様では、ツールの機能より先にKPIの設計から着手し、追う指標を絞ってから施策を組み立てました。生成AIも同じで、何を改善したいかを先に決めると、使う業務を選びやすくなります。


スタートアップのマーケ立ち上げ。商談・受注を創出するリードが安定獲得できる仕組みを構築

顧客データで目標設定し、運用型広告を媒体選定から刷新。営業インサイトを反映したLP改修とセミナー・オウンドメディア改善により、商談・受注を創出するリードの安定獲得を実現。

sellsup.co.jp

打ち合わせスペースの木製テーブルを挟んで、2人が向かい合って笑顔で話している写真

生成AIより先に整えること

運用のノウハウが社内に足りないと感じる場合は、生成AIで補うより先に、運用の手順を社内に残す仕組みを作ります。進め方はMA運用のノウハウを社内に蓄積する進め方で解説しています。

営業との連携が整っている企業の共通点は営業連携が機能している企業の共通点で整理しています。

「やっているのに成果が出ない」状態から抜け出すために

施策を続けているのに商談が増えない、リードの質が上がらない。こうした課題の多くは、戦略と施策のつながりが設計されていないことが原因です。Sells upは現状の分析と改善の優先順位整理から支援します。

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まとめ

生成AIのBtoBマーケティング活用とは、コンテンツの下書きやメールのパターン出し、記録の要約といった業務に生成AIを組み込み、担当者が企画や営業との調整に時間を使えるようにすることです。弊社のBtoB企業480名の調査では、試験的な活用を含めて使っている企業は34.8%で、約半数はまだ使っていませんでした。

BtoBマーケティングでは、生成AIの出力は下書きとして扱い、事例・数値・出典の正しさ、営業へ渡す判断、顧客の状況の見極めは人が担います。行動データを生成AIに要約させても、それだけで購買意欲は断定できません。

使い始めるときは、手間のかかっている業務を1つ選び、利用ルールと読み直しの担当を決めたうえで、商談までの成果を見ながら広げます。MAの運用が回っていない段階では、生成AIの導入を急がず、運用の土台を先に整える選択肢もあります。

よくある質問

生成AIはBtoBマーケティングのどの業務に使えますか?

コンテンツの構成案や下書き、メール文面のパターン出し、ウェビナーや商談記録の要約、問い合わせ内容の分類などに使えます。いずれも生成AIの出力を下書きとして使い、公開前に人が読み直す前提です。

BtoB企業ではどのくらい生成AIが使われていますか?

弊社が実施したBtoB企業480名の調査では、「積極的に活用し効果が出ている」が12.7%、「一部で試験的に活用している」が22.1%、「検討中」が17.1%、「活用していない」が48.1%でした。

生成AIで書いた記事やメールをそのまま公開してもよいですか?

おすすめしません。生成AIは事実と異なる内容を自然な文章で出力することがあり、自社の事例や数値も持っていません。数値・固有名詞・出典を原典と突き合わせ、自社の一次情報を加えてから公開します。

生成AIでリードスコアリングはできますか?

配点の仮説を言葉にしたり、スコアの意味を営業向けに説明したりする補助には使えます。配点の重みは受注・失注のデータから決めるもので、スコアが高いことと購買意欲が高いことも同じではありません。

生成AIに顧客情報を入力してもよいですか?

個人情報保護委員会は、生成AIサービスに個人情報を含むプロンプトを入力する場合、利用目的の達成に必要な範囲かを十分に見極めるよう注意を呼びかけています。社内で入力してよい情報の線引きを決め、顧客リストや商談の詳細をそのまま入力しない運用にします。

生成AIの導入より先に取り組むべきことはありますか?

MAの基本的な運用、営業へ渡す条件の合意、出力を読み直す担当者の確保です。これらが整っていない段階では、生成AIでコンテンツやメールの量を増やしても商談につながりにくくなります。

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株式会社Sells up 代表取締役
武田 大
株式会社AOKIにて接客業、株式会社リクルートライフスタイル(現:株式会社リクルート)にて法人営業を経験後、株式会社ライトアップでBtoBマーケティングを担当。デジタルマーケティングエージェンシーを経て2023年に株式会社Sells upを設立。戦略設計・KPI設計を起点に、リードジェネレーション、ナーチャリング、MA/SFA活用、営業連携までBtoBマーケティングを一気通貫で支援。KGI逆算のKPI設計やリードスコアリングの統計的設計、営業連携SLAの構築を強みとし、業界・規模を問わず80社以上に提供。Account Engagement SpecialistおよびTableau Desktop SpecialistのSalesforce認定資格を保有。
保有資格Salesforce Certified Marketing Cloud Account Engagement Specialist/Tableau Desktop Specialist
専門領域BtoBマーケティング/リードジェネレーション/リードナーチャリング/マーケティングオートメーション/HubSpot導入活用支援/Account Engagement導入活用支援/Marketo活用支援/インサイドセールス/統計解析によるスコアリング設計/商談化率向上/マーケティングROI改善