MAツールの導入・活用の相談はSells upへ。

MAツールの導入や、導入後の成果最大化に課題をお持ちでしたら、ぜひSells upにご相談ください。50社以上の導入・活用を支援してきた担当者が貴社の状況・目標に向き合い、最適なツールの導入プラン / 統計知識を用いた活用プラン描き、戦略策定から実装 / 実行 / 効果測定までをご支援いたします。

目次

BtoBマーケティングの現場において、「リード数は確保できているのに、商談化率が上がらない」という課題は深刻です。特に、MA(マーケティングオートメーション)ツールを導入しているにもかかわらず、営業部門から「質の低いリードが多い」「アプローチしても脈がない」といったフィードバックが絶えない場合、リードの「量」から「質」への転換が急務となります。

「どのリードに、どのタイミングで、どのようなアプローチをすべきか」。この判断精度が、限られたリソースで成果を最大化するための分岐点となります。その判断を、個人の勘や経験則ではなく、データに基づいて客観的に行うための仕組みこそが「スコアリング」です。

本記事では、スコアリングの基本概念から、貴社のビジネスモデルに適合した具体的な設計方法、成功の前提となるデータ基盤の整備、そして営業部門と連携して成果を出すための運用プロセスまでを網羅的に解説します。

スコアリングとは?リード管理プロセスにおける位置づけ

まずは、スコアリングの定義と、BtoBビジネスのリード管理プロセス全体における位置づけを整理します。

スコアリングの定義:見込み客の「購買意欲」を定量化する

スコアリングとは、見込み客(リード)の属性情報(企業規模、役職など)や行動履歴(Webアクセス、資料請求など)に基づいて点数を付与し、その合計点によって「現時点でどれだけ購買意欲が高いか(確度)」を定量的に可視化する手法です。

MAツールにおいてスコアリングは、蓄積されたリードデータを具体的な営業・マーケティングアクションに結びつけるための中心的な機能となります。

リード管理プロセスとリードクオリフィケーション

スコアリングは、「リードクオリフィケーション(見込み客の絞り込み)」と呼ばれるプロセスにおいて重要な役割を担います。

  1. リードジェネレーション(獲得)

  2. リードナーチャリング(育成)

  3. リードクオリフィケーション(絞り込み)

    • ナーチャリング過程での行動や属性をスコアリングによって評価します。

    • スコアが一定の基準を超えたリードを「有望なリード」として認定します。

MQLとSQLの定義におけるスコアリングの役割

リードクオリフィケーションのプロセスでは、リードのステータスを定義し、部門間での引き渡し基準を明確にします。

  • MQL (Marketing Qualified Lead):マーケティング部門が認定した有望なリード。

  • SQL (Sales Qualified Lead):MQLに対して営業(またはインサイドセールス)がアプローチし、商談化が見込めると判断されたリード。

スコアリングは、リードがMQLの基準を満たしているかどうかを客観的かつ自動的に判定するために用いられます。合計点が一定の閾値(しきい値)を超えた時点でMQLと認定することで、クオリフィケーションの効率と精度が飛躍的に向上します。

スコアリング導入が解決する組織課題とメリット

スコアリングは、多くのBtoB組織が抱える構造的な課題に対する有効な解決策となります。

課題1:マーケティングと営業の分断(サイロ化)の解消

マーケティングが創出したリードを営業に渡しても、「温度感が合わない」といったミスマッチは頻繁に発生します。これは、両部門で「質の高いリード」の定義が共有されていないことに起因します。

サイロ化を解消するためには、スコアリングによって優先順位を客観的に明確化し、MQLの定義について共通認識を持つことがポイントです。

課題2:営業リソース配分の最適化と生産性向上

限られた営業リソースを、購買意欲の低いリードへのアプローチに費やしてしまうと、組織全体の生産性が低下します。

スコアリングにより、「今すぐ対応すべきホットリード」と「育成が必要なリード」を切り分け、営業効率を最大化できます。

課題3:マーケティング施策の費用対効果(ROI)の明確化

スコアリングを導入することで、リードの温度感の変化や、施策ごとの貢献度(どの施策がスコア向上に寄与したか)を定量的に測定できるようになり、データに基づいた施策改善のPDCAサイクルを回しやすくなります。

【Sells upの視点】スコアリングは「組織の共通言語」であり、全体最適化の起点
Sells upでは、スコアリングを単なる「見込み客の点数付け」とは捉えていません。それは、マーケティング、営業、インサイドセールス、そして経営層までをも結びつける「組織の共通言語」であると考えています。スコアという客観的な指標を軸に部門間の認識を揃えることで、これまで分断されがちだった情報や課題認識が共有され、建設的な議論を行う土壌が生まれます。サイロ化した組織は個別最適に陥りがちですが、スコアリングという共通の枠組みを持つことで、全体最適の視点が組織に根付きやすくなります。

スコアリング導入前に整備すべき3つの基盤

精度の高いスコアリングを実現し、成果につなげるためには、モデル設計に着手する前に、土台となる基盤を整備しておくことが不可欠です。この準備段階を軽視すると、導入後に運用が破綻するリスクが高まります。

基盤1:データ基盤の整備(データガバナンス)

最も重要なのが、評価の土台となるデータの品質です。CRM、SFA、MAツールなど複数のシステム間でデータが分散していたり、不正確な情報が混在していたりすると、正しいスコアリングは行えません。

データクレンジングと名寄せの重要性

特に属性情報においては、データの正確性がスコア精度を大きく左右します。

  • 表記ゆれ:「株式会社ABC」と「(株)ABC」が別企業として扱われている。

  • 重複データ(名寄せ不備):同一人物が複数のリードとして登録され、スコアが分散している。

  • 情報欠損・陳腐化:業種や役職情報が抜けている、あるいは古い情報のまま更新されていない。

スコアリング設計と並行して、データクレンジング(表記の正規化)や名寄せ(重複の統合)を実施し、データの一貫性と正確性を担保するプロセス(データガバナンス)を構築することが非常に重要です。

【Sells upの視点】精度の高いスコアリングの土台は「データ品質」への投資にある
どれほど緻密なスコアリングモデルを設計しても、その土台となるデータが不正確であれば、算出されるスコアは意味を持ちません。誤ったデータに基づいたスコアリングは、むしろ現場の混乱を招き、データドリブンな文化の醸成を阻害します。 Sells upでは、データ品質への投資こそが、中長期的にマーケティングROIを最大化するための最短経路であると考えています。データ基盤の整備は、経営課題として取り組むべきテーマです。

基盤2:KGI・KPIと目標値の設定

「何のためにスコアリングを導入するのか」という目的を明確にし、それを測定可能な指標に落とし込む必要があります。

  • KGI(重要目標達成指標)例:受注金額、マーケティング経由の売上比率

  • KPI(重要業績評価指標)例:MQL創出数、MQLからSQLへの転換率、高スコアリードの受注率

これらの目標値を事前に設定することで、スコアリングモデルの有効性を客観的に評価し、改善サイクルを回すことが可能になります。

基盤3:組織体制とSLA(Service Level Agreement)の締結準備

スコアリングはマーケティング部門だけで完結しません。モデルの設計、運用、評価、改善の各プロセスにおいて、部門間の連携が不可欠です。

特に、リード引き渡し後の対応ルールについては、マーケティング部門と営業部門の間でSLAの締結が必須です。SLAとは部門間の役割と責任を明確にする合意事項であり、これがなければホットリードが放置され、機会損失が発生します。

スコアリングの精度を決める評価軸とモデルの種類

ここでは、スコアリングの精度を左右する評価軸と、代表的なスコアリングモデルの種類について解説します。

スコアリングの精度を決める3つの評価軸

精度の高いスコアリングを実現するためには、以下の3つの評価軸を組み合わせることが重要です。

評価軸1:アトリビュート(属性)スコア:「どのような企業・担当者か」

リードの静的な「属性」情報に基づいた評価です。自社にとって理想的な顧客像(ICP:Ideal Customer Profile)に近いほど、高い得点を付与します。

  • 企業属性(Firmographics)例:業種、企業規模(従業員数、売上高)、エリアなど。

  • 個人属性(Demographics)例:役職・職位(決裁権の有無)、所属部署など。

評価軸2:エンゲージメント(行動)スコア:「どのような行動をとったか」

リードが自社のコンテンツに対してどのような反応を示したかという「行動」に基づいた評価です。購買検討段階が進んでいると推測される行動ほど、高い得点を付与します。

  • 評価項目例:Webサイト閲覧(料金ページ、導入事例ページ)、資料ダウンロード、セミナー参加、メールの開封・クリックなど。

評価軸3:アクティビティ(行動の鮮度・頻度):「“今”ホットかどうか」

購買意欲は時間とともに変化するため、行動が「どれだけ最近」「どれだけ頻繁に」発生しているかを評価する「鮮度」と「頻度」の視点が重要です。

時間経過によるスコア減衰の設定方法

過去の行動を永続的に評価し続けると、現在の購買意欲と乖離が生じます。これを防ぐために、時間経過とともにスコアを自動的に減点する「スコア減衰」という仕組みを導入します。

  • リードディケイの設定例

    • 期間指定減点:「資料請求から30日経過で-10点」

    • 半減期設:「スコアの価値が半分になる期間を60日に設定する」(MAツールの機能による)

    • リセット:「最終アクションから90日経過で行動スコアを0にリセットする」

これにより、「今」まさに検討を進めているホットなリードを正しく抽出できます。

スコアリングモデルの主な種類

目的に応じて適切なスコアリングモデルを選択することが重要です。

1次元スコアリング:シンプルで導入しやすい基本モデル

属性スコアと行動スコアを合算し、その合計点で評価するモデルです。設計がシンプルで導入しやすい反面、「ターゲット属性だが行動がないリード」と「ターゲット外だが行動が活発なリード」の区別がつきにくい場合があります。

2次元スコアリング(スコアリングマトリクス):精緻な評価を実現

属性スコアと行動スコアを独立した軸として評価し、マトリクス上でリードを分類するモデルです。

  • :「高属性・高行動(ホットリード)」「高属性・低行動(要ナーチャリング)」「低属性・高行動(様子見)」といった分類が可能になり、それぞれ異なるアプローチを設計できます。

【Sells upの視点】
まずは1次元で運用を回し、課題が見えたら2次元への移行を検討する 高度な2次元スコアリングは魅力的ですが、最初から複雑なモデルを導入すると運用が破綻するリスクがあります。Sells upでは、まずはシンプルな1次元スコアリングで運用を開始し、PDCAサイクルを回すことを推奨します。その過程で、「属性スコアが高すぎて行動が少ないリードがホットリードになってしまう」といった具体的な課題が明確になった段階で、2次元スコアリングへの移行を検討するのが現実的なアプローチです。

アカウントスコアリング:企業単位での評価(ABMへの応用)

ABM(アカウントベースドマーケティング)を推進する場合に有効です。ターゲット企業(アカウント)に所属する複数のリードのスコアを合算し、企業単位での優先順位を決定します。

予測スコアリング(AI活用型)

過去の受注データなどをAI(人工知能)で分析し、将来の購買確率を自動的に算出する高度な手法です。高精度な予測が可能ですが、十分な学習データ量が必要となります。

成果につながるスコアリングモデル設計:6つのStep

スコアリングモデルの設計は、必ず営業部門(インサイドセールス、フィールドセールス)を巻き込み、現場の知見を取り入れながら進めることが成功のポイントです。

Step.1:目的の明確化と営業部門との合意形成(ホットリードの定義)

まずは、営業部門を巻き込んだ「ホットリード(MQL)の定義」に関する徹底的な合意形成を行います。マーケティング部門が独断で基準を設定しても、営業部門が納得しなければスコアリングは形骸化します。

営業部門とのキックオフミーティング・アジェンダ例

合意形成を円滑に進めるためには、以下のようなアジェンダで共同ワークショップを開催することが有効です。

  1. 現状の課題共有:マーケティング、営業双方から見たリードの質や連携に関する課題の洗い出し。

  2. 理想の顧客像(ICP)のすり合わせ:ターゲットとすべき企業属性、担当者属性の明確化。

  3. 「ホットリード」の定義の言語化:どのような状態になったら営業が即座に対応すべきかの基準設定。

Step.2:有効な評価項目を見つけるためのデータ分析

次に、どのような属性や行動が受注に結びついているのかを特定するため、過去のデータを分析します。この分析結果がスコアリング設計の客観的な根拠となります。

受注・失注分析の進め方

  1. データ収集:過去1〜2年分の受注データと失注データをCRM/SFAから抽出します。

  2. 属性の比較分析:受注顧客と失注顧客で、属性にどのような違いがあるかを比較します。(例:「従業員100名以上の企業は受注率が3倍高い」)

  3. 行動の比較分析:受注顧客がリードだった期間に、どのような行動をとっていたかをMAツールで分析します。(例:「受注顧客の80%は、商談前に料金ページを閲覧していた」)

この分析により、スコアリングで重視すべき評価項目が明確になります。

Step.3:評価項目の洗い出しと配点の設計

Step.1とStep.2の結果に基づき、具体的な評価項目と配点(重み付け)を設計します。まずは重要な項目に絞り、シンプルな設計から始めることが推奨されます。

スコアリングモデルの設計例(BtoB SaaS企業の場合)

評価軸

項目

条件

配点(例)

属性(企業)

業種

IT・情報通信業

+15

従業員規模

100名以上

+10

属性(個人)

役職

部長・役員クラス

+20

課長・リーダークラス

+10

行動Webサイト

料金ページ閲覧

+15

導入事例ページ閲覧(3ページ以上)

+10

コンテンツ

サービス資料ダウンロード

+20

比較検討ガイドダウンロード

+25

イベント

製品紹介セミナー参加

+30

鮮度(減点)

最終行動

30日以上経過(リードディケイ)

-15

Step.4:リード引き渡しの閾値設定とSLAの締結

スコアの合計値が何点以上になったらMQLとして営業部門へ引き渡すか、その基準となる閾値を設定します。(例:合計80点以上)

この閾値設定と同時に、必ずSLAを部門間で締結します。

SLAに含めるべき項目例

  • 対応スピード:MQLに対して、何時間以内に初回アプローチを行うか。(例:24時間以内)

  • 対応回数・期間:初回アプローチで繋がらなかった場合、何回まで、どの程度の期間フォローするか。

  • フィードバックルール:アプローチ結果(商談化、時期尚早、対象外など)を、どのようにSFA/MAに記録・フィードバックするか。

  • リードの差し戻しルール:時期尚早などで営業がフォローを終了したリードを、どのような条件でマーケティング部門に差し戻し、再育成するか。

【Sells upの視点】スコアリングの成果は「SLAの設計と遵守」で決まる
スコアリングによってどれほど質の高いリードを抽出できても、その後の営業アクションが遅れたり、情報共有がなされなければ成果にはつながりません。Sells upでは、スコアリング設計と同等、あるいはそれ以上に、SLAの設計と、それを遵守させるための組織的な仕組みづくりが重要であると考えています。SLAの遵守状況を可視化し、部門間でフィードバックし合う文化を醸成することが、連携強化の本質です。

Step.5:MAツールへの実装とテスト検証

設計したモデルをMAツールに実装します。設定後は、既存のリードデータを用いてシミュレーションを行い、スコアの分布や抽出されるリードの内容を検証します。

  • 想定されるMQL数は適切か(営業リソースとのバランス)。

  • 過去の受注顧客は、リード時代に高スコアがついていたか。

  • 営業部門から見て、抽出されたリードは納得感があるか。

この検証結果に基づき、配点や閾値を微調整します。

Step.6:本格運用開始と社内への定着化

運用開始にあたり、関係者全員に対して、スコアリングの基準、閾値、そしてSLAを改めて周知徹底します。

【Sells upの視点】完璧なモデルを目指すより、「改善し続ける仕組み」の構築を優先する
スコアリングモデルは、最初から100点満点を目指す必要はありません。市場環境の変化によって、評価すべき項目は常に変化するからです。Sells upでは、「スコアリングは一度作って終わり」ではなく、「継続的に改善し続ける仕組み」を組織にインストールすることこそが、本質的な成功のポイントであると考えています。まずはスモールスタートで運用を開始し、データと現場のフィードバックに基づきながら、段階的に精度を高めていくアプローチを推奨します。

スコアリング運用を成功に導くPDCAサイクルと効果測定

スコアリングは導入してからが本番です。設定したモデルが期待通りの成果を生んでいるかを定期的に評価し、改善し続ける必要があります。

改善目標(KPI)の設定(Plan)と運用実行(Do)

設定したKPI(MQL創出数、SQL転換率など)の目標に基づき、運用を実行します。この際、営業の対応結果(SLA遵守状況、商談化状況、失注理由)を正確にCRM/SFAに記録・蓄積しておくことが非常に重要です。

定期的な効果測定と分析:月次レビューの実施(Check)

運用開始後は、定期的(少なくとも月1回)にマーケティングと営業が合同でレビュー会議を実施し、スコアリングの効果を検証します。

スコアリング精度の検証手法

KPIの進捗確認に加え、スコアと成果の相関関係を分析し、モデルの精度を検証します。

  • スコア別転換率分析:リードをスコア帯(例:80-99点、100点以上)に分け、それぞれの商談化率や受注率を比較します。高スコア帯ほど転換率が高くなっていれば、モデルは概ね正しく機能していると判断できます。

  • コホート分析:特定の期間にMQLとなったリード群(コホート)が、その後どのように推移したか(商談化、受注)を追跡します。これにより、スコアリングモデル変更前後の効果比較が容易になります。

月次レビュー会議で確認すべきポイント

  1. 定量評価(データ分析結果の共有):KPI進捗、スコア別転換率、SLA遵守率などの確認。

  2. 定性評価(現場フィードバックの吸い上げ)

    • 高スコアだが商談化しなかったリードの分析:なぜ温度感が低かったのか。(例:競合調査目的だった、特定の行動スコアが高すぎたなど)

    • 低スコアだが受注に至ったリードの分析:なぜ見逃していたのか。加点すべき新たな行動や属性はないか。

  3. 改善案の議論:分析結果とフィードバックに基づくモデル改善案の検討。

分析結果に基づくモデルの更新(Action)

評価・分析の結果を踏まえ、スコアリングモデルの見直しと調整(チューニング)を行います。

  • 配点(重み付け)の調整

  • 評価項目の追加・削除

  • MQL閾値やリードディケイ設定の見直し

この改善サイクルを継続的に回すことで、スコアリングモデルは現場の実態に即した「生きた仕組み」となります。

インサイドセールス(IS)によるスコアリングの補完

MAツールによる自動スコアリングは効率的ですが、それだけでは捉えきれない情報も存在します。インサイドセールス(IS)がMQLに対して電話などでアプローチし、BANT条件(Budget:予算、Authority:決裁権、Needs:必要性、Timeframe:導入時期)をヒアリングすることで、スコアの精度を補完します。

例えば、「スコアは高いが、ヒアリングの結果、導入時期が1年先だった」場合、営業へ引き渡さずにナーチャリング対象に戻すといった判断が可能になります。ISによる人的な評価を組み合わせることで、リードクオリフィケーションの精度はさらに高まります。

よくあるスコアリングの失敗例と、その解決策

スコアリング導入・運用において、多くの企業がつまずく典型的な失敗パターンとその解決策を紹介します。

失敗例1:「スコアは高いのに、商談につながらない」

  • 原因:過去の行動履歴に過度な配点がされていたり、属性スコアが高すぎて、直近の購買意欲が低いリードが上位に表示されてしまうケースが考えられます。

  • 解決策:リードディケイ(時間経過による減点)を導入し、行動の鮮度を重視します。それでも改善しない場合は、属性と行動を分離して評価する2次元スコアリングへの移行を検討します。

失敗例2:「営業部門がスコアを信頼せず、活用されない」

  • 原因:モデル設計プロセスに営業部門が関与しておらず、スコアの根拠や基準が不透明な場合、「マーケティングが勝手に決めた基準」と認識され、現場では受け入れられません。

  • 解決策:設計段階から営業部門を巻き込み、共同でMQLの定義を行い、明確なSLAを締結します。また、定期的なレビュー会議を制度化し、現場からのフィードバックをモデルに反映させます。

失敗例3:「データが整備されておらず、精度が出ない」

  • 原因:データクレンジングや名寄せが行われておらず、重複データや情報欠損が多い状態では、正しいスコアリングが行えません。

  • 解決策:スコアリング導入前に、必ずデータ基盤の整備(データガバナンスの構築)に着手します。

失敗例4:「設定が複雑すぎて、運用・管理がブラックボックス化する」

  • 原因:初期段階から評価項目や条件分岐を過剰に増やしてしまうと、運用負荷が増大し、誰もメンテナンスできない状態を招きます。

  • 解決策:まずはビジネス成果に直結する重要な項目に絞り込み、シンプルなモデルから運用を開始します(スモールスタートの原則)。

【Sells upの視点】スコアリングの失敗は、技術的な問題ではなく組織間の連携の問題
スコアリングがうまく機能しない場合、MAツールの機能や配点ロジックといった技術的な側面に原因を求めがちですが、多くの場合、本質的な原因は組織間の連携不足(合意形成の欠如、SLAの不備)や運用プロセスの不備といった組織論的な問題にあります。Sells upでは、ツールやルールの導入以上に、組織全体で成果を最大化するための「仕組みづくり」を重視しています。

スコアリングの限界と注意点

スコアリングは有効な手法ですが、万能ではありません。その限界や注意点を理解した上で活用することが重要です。

スコアはあくまで「確率」であり、絶対ではない

スコアリングは、設定したルールに基づいて購買意欲が高い「確率」を示すものです。高スコアだからといって必ず受注できるわけではありません。スコアを過信せず、最終的には営業担当者による見極めが重要です。

オフラインでの行動は把握しにくい

MAツールによるスコアリングは、主にデジタル上の行動を評価対象とします。展示会での会話内容や、営業担当者が個別に得た情報など、オフラインでの重要なシグナルは自動的には反映されません。これらの情報は、手動でCRM/SFAに入力し、スコアリングと組み合わせて評価する必要があります。

スコアリングの高度な活用と応用領域

スコアリングは、リードの優先順位付けだけでなく、より高度なマーケティング・営業活動に応用できます。

スコアに基づいたパーソナライズドナーチャリング

リードのスコア状況(温度感)に応じて、提供するコンテンツやチャネルを動的に変更することで、ナーチャリングの精度を高めることができます。

  • 低スコアリード(認知段階):業界トレンドや基礎知識を提供。

  • 中スコアリード(比較検討段階):導入事例や比較資料を提供。

セールス・イネーブルメントとしての活用

スコアリングデータを「営業担当者が成果を出しやすくするための支援(セールス・イネーブルメント)」として活用する視点も重要です。

営業担当者がアプローチする際、単に合計スコアを伝えるだけでなく、「なぜこのスコアになったのか」という根拠(直近の行動履歴や関心領域)をCRM/SFA上で明確に示すことで、担当者は的を射た提案活動が可能になります。

まとめ:スコアリングを組織成長の仕組みとして定着させるために

スコアリングは、BtoBマーケティングにおけるリードの「質」を定量的に可視化し、営業・マーケティング活動の生産性を飛躍的に高めるための重要な手法です。リードクオリフィケーションプロセスの中核として機能させることで、部門間の連携強化、データに基づいた施策の最適化、そしてマーケティングROIの明確化を実現します。

貴社がスコアリングを導入し、成果を最大化するためには、以下の4つのポイントが重要です。

  1. データ品質への投資:正確なデータ基盤(データガバナンス)なくして精度の高いスコアリングは実現できません。

  2. 部門横断の協力体制:マーケティングと営業が一体となり、設計から運用・改善までを一貫して行うことが不可欠です。

  3. 明確なSLAの締結と遵守:部門間の役割と責任を明確にし、合意したルールに基づいて運用することが連携の要です。

  4. スモールスタートと継続的改善:シンプルなモデルから始め、データと現場の声に基づきPDCAサイクルを回し続けることが成功のポイントです。

Sells upは、データとテクノロジーを活用したマーケティング戦略の立案から実行支援を通じて、貴社の売上成長を支援します。スコアリングを組織成長の仕組みとして定着させ、具体的な成果につなげたい場合は、ぜひ専門家にご相談ください。

MAツールの導入・活用の相談はSells upへ。

MAツールの導入や、導入後の成果最大化に課題をお持ちでしたら、ぜひSells upにご相談ください。50社以上の導入・活用を支援してきた担当者が貴社の状況・目標に向き合い、最適なツールの導入プラン / 統計知識を用いた活用プラン描き、戦略策定から実装 / 実行 / 効果測定までをご支援いたします。

株式会社Sells up
武田 大
株式会社AOKIにて接客業を、株式会社リクルートライフスタイル(現:株式会社リクルート)にて法人営業を経験した後、株式会社ライトアップでBtoBマーケティングを担当。その後、デジタルマーケティングエージェンシーにてBtoBマーケティングの戦略設計/施策実行支援、インサイドセールスをはじめとしたセールスやカスタマーサクセスとの連携を通じたマーケティング施策への転換といった支援を行い、2023年に株式会社Sells upを設立。BtoBマーケティングの戦略設計/KPI設計はもちろん、リードジェネレーション施策やナーチャリング、MA/SFA活用を支援し、業界/企業規模を問わずこれまでに約80社以上の支援実績を持つ。Salesforce Certified Marketing Cloud Account Engagement Specialist/Tableau Desktop SpecialistのSalesforce認定資格を保有。