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トスアップとは?BtoBで成果を出す仕組みの設計と部門連携の全手順

「やっているのに成果が出ない」状態から抜け出すために

施策を続けているのに商談が増えない、リードの質が上がらない。 こうした課題の多くは、戦略と施策のつながりが設計されていないことが原因です。 Sells upは現状の分析と改善の優先順位整理から支援します。

目次

「マーケが渡したリードを、営業がなかなか活用してくれない」

そんな声を、BtoBマーケティングの担当者からよくお聞きします。

その背景には、多くの場合「トスアップが属人的な判断に委ねられている」という課題があります。

本記事では、トスアップの定義から、MQL(マーケティングクオリファイドリード)基準の設計、SLAの締結、MA(マーケティングオートメーション)を活用した自動化まで、仕組みとして機能させるための全手順を解説します。

トスアップとは?1分でわかる定義と営業プロセスにおける位置づけ

トスアップとは「見込み顧客を選別し、次の営業プロセスへ引き継ぐ行為」のことです。

定義を正確に押さえることで、自社のどの部門・どの場面で改善が必要かが見えてきます。

トスアップの語源と基本的な意味

トスアップの語源はバレーボールにあります。セッターがアタッカーに向けてトスを上げ、得点につながるプレーを生み出す動作が語源です。ビジネスの文脈では、潜在顧客の中から購買意欲の高い見込み顧客を選別し、次のプロセスを担う担当者へ引き継ぐことを指します。

重要なのは「引き継ぐだけでなく、選別する」という点です。全員をそのまま次のプロセスに渡してしまえば、担当者に過大な負担がかかり、本当に成約可能性の高い顧客への対応が手薄になります。質を担保した引き継ぎこそが、トスアップの本質です。

ビジネスにおけるトスアップの定義

ビジネスにおけるトスアップとは、マーケティング・インサイドセールス(IS)・コールセンターなどの各部門が、一定の基準を満たした見込み顧客をフィールドセールス(FS)へ引き継ぐプロセス全体を指します。

デマンドジェネレーション(需要創出活動の総称)の流れで整理すると、トスアップはリードジェネレーション→リードナーチャリング→リードクオリフィケーション→トスアップ→商談という順序で位置します。「リードを育てる」だけでなく「育ったリードを正しいタイミングで渡す」ことが、成約率を左右する重要なポイントです。

デマンドジェネレーション全体の構造については、デマンドジェネレーションの全体像で詳しく解説しています。

ティーアップとの違い

ティーアップはゴルフ用語が語源です。ティーペグを使ってボールを地面より高い位置に置く動作から、「相手を褒めて持ち上げる」という意味で使われます。商談の場で顧客との関係を温める際の手法です。

トスアップが「引き継ぎの仕組み」を指すのに対し、ティーアップは「コミュニケーション上の技術」を指します。両者は場面も目的も異なります。

項目トスアップティーアップ
語源バレーボールゴルフ
対象部門間の引き継ぎプロセス対顧客のコミュニケーション技術
目的成約可能性の高いリードを次工程へ渡す相手との関係を温め、本題に入りやすくする
主な場面マーケ・IS・コールセンター→FS商談・ナーチャリングの対話

なぜトスアップの仕組み化が求められるのか

「仕組みのないトスアップ」は機会損失につながりやすくなります。

その理由は、どのリードを渡すかの判断が担当者ごとにバラバラになり、営業部門が受け取るリードの質が安定しないからです。

営業プロセスの分業化が進む背景

2020年以降、BtoBの営業プロセスは急速に分業化が進んでいます。従来は1人の営業担当者がターゲット選定・テレアポ・ナーチャリング・商談・クロージングまでを一手に担うのが一般的でした。しかし現在では、業務効率化と専門性向上を目的に、フェーズごとに担当チームを分ける企業が増えています。

具体的には、マーケティングチームがリード獲得・育成を担い、ISチームが見込み顧客との関係構築と選別を行い、FSチームが商談・クロージングに集中するという体制が標準的になりつつあります。

BtoBの営業プロセス全体を把握したい方は、マーケティング8ステップ全体像も参考にしてください。

仕組みのないトスアップが引き起こす3つの機会損失

仕組みのないトスアップが引き起こす機会損失は3つあります。

  1. ①質の低いリードの大量流入
  2. ホットリードの対応遅延
  3. フィードバックが適切に回らない

です。

①質の低いリードの大量流入:「名刺交換した」「資料をダウンロードした」という行動だけを根拠にトスアップすると、購買意欲のほとんどないリードがFSに大量に流れ込みます。FSの稼働が圧迫され、本来成約できたリードへの対応が遅延します。

②ホットリードの対応遅延:購買意欲が高まったタイミングで迅速に接触できないと、競合に商談機会を奪われます。「担当者が外出中だった」「情報共有に時間がかかった」という属人的な事情が、成約率に直結します。

③フィードバックが適切に回らない:トスアップ後に「このリードは成約したか」「どの基準で渡したリードが良かったか」というデータがマーケやISに戻らないと、トスアップ基準は改善されません。多くの企業で、渡した後の結果が見えないという課題があります。

トスアップを「属人的な判断」から「仕組み」に変える意義

トスアップを仕組み化するとは、「誰が担当しても同じ基準でリードを引き継げる状態」を作ることです。

具体的には、MQL基準の言語化・スコアリングによる客観的な判定・SLAによる部門間合意・MAを活用した自動連携の4つの要素を整備することを指します。

弊社の支援事例では、トスアップ基準を言語化しただけで、FSから「質が上がった」というフィードバックが出始め、マーケとISの連携コストが大幅に削減されたケースがあります。仕組み化の効果は、基準設計の段階から現れ始めます。

部門別トスアップの役割と引き継ぎに必要な情報

部門ごとにトスアップで果たすべき役割は異なります。共通しているのは「情報の質」がトスアップの成否を決めるという点です。

マーケティング部門からフィールドセールスへのトスアップ

マーケティング部門の役割は、大量のリードの中から「購買意欲が顕在化しつつある見込み顧客」を選別し、FSが商談に集中できる状態で引き継ぐことです。

マーケからのトスアップで最も多い失敗パターンは、FSが想定していたターゲット像とリードがかけ離れているケースです。

たとえば、マーケティングが「コスト削減に課題を持つ中堅製造業」をターゲットに設定していたにもかかわらず、FSが「業務効率化を求める大手SaaS企業」を想定してトークスクリプトを組んでいると、商談の場で顧客が求めているものと提案がすれ違います。

マーケがFSへ引き継ぐ際に必須の情報は以下のとおりです。

  • 流入経路(どの施策・チャネルからのリードか)
  • 訴求したコンテンツと、顧客が示した関心ポイント
  • スコアリングの結果と判定根拠
  • 企業属性(業種・規模・部門・役職)
  • 競合比較や予算確認の有無

なぜインサイドセールスのトスアップが最も成約率に影響するのか?

インサイドセールスからのトスアップが最も成約率に影響する理由は、ISが「顧客との実際の対話」を通じて購買意欲を直接確認できる唯一の部門だからです。

ISは見込み顧客と非対面で接触しながら、課題のヒアリング・情報提供・関係構築を同時に行います。この過程で蓄積されたインサイト(顧客の発言・懸念点・検討のタイムライン)は、FSが商談を進める上で非常に重要な情報です。

ISがFSへ引き継ぐ際に伝えるべき情報は以下のとおりです。

  • これまでの対話の経緯(何回接触し、何を話したか)
  • 顧客が強く反応したポイントと、懸念を示したポイント
  • 検討タイムライン(いつまでに決定したいか)
  • 決裁者・影響者の構造(誰が決めるか)
  • 競合検討の状況

ISの役割とナーチャリング手法の詳細は、ISによるナーチャリング実践で解説しています。

コールセンターからフィールドセールスへのトスアップ

コールセンターからのトスアップで注意すべきは、「話を聞いてくれた」という事実と「購買意欲がある」という判断を混同しないことです。

電話対応の中で確認すべき購買意欲のシグナルは具体的に3つあります。

  1. 代金・契約条件に関する質問が相手から出た
  2. 詳細資料や見積もりを求めてきた
  3. 納期や導入スケジュールについて質問があった

これらのシグナルがない場合は、まずMAやISによるナーチャリングを継続する判断が適切です。

また、コールセンターからFSへ担当者が代わる場合は、顧客に事前に「詳しい担当者から改めてご連絡いたします」と伝えることが必須です。連絡なしに担当者が変わると、顧客に不安感を与え、それまでのナーチャリング効果が損なわれます。

各部門共通で必ず引き継ぐべき5つの情報項目

部門を問わず、トスアップ時に必ず引き継ぐべき情報項目は5つです。

  • 企業属性と担当者情報:業種・企業規模・担当者の役職・決裁権の有無
  • 接触履歴と反応の記録:いつ・どの施策で・どのような反応だったか
  • 課題・ニーズの概要:顧客が自発的に述べた課題と、ヒアリングで確認した潜在ニーズ
  • トスアップ判定の根拠:スコアリングの点数、または判定に使った行動トリガー
  • 次のアクションの推奨:FSが最初に取るべき行動(アポイントの設定か、追加情報の提供か)

トスアップのタイミングを決める「MQL基準」の設計

トスアップのタイミングを決める方法は「MQL基準を言語化し、スコアリングと行動トリガーで客観化すること」です。

MQLとSQLとは?トスアップ基準を言語化する

MQL(Marketing Qualified Lead:マーケティングが選別した見込み顧客)とは、一定の基準を満たし「営業が接触すべき」と判断されたリードのことです。SQLとはSales Qualified Lead(営業が商談に値すると判断したリード)のことを指します。

MQLとSQLの違いは、判定する主体と基準にあります。

  • MQLは「マーケ・ISが、このリードは営業に渡せる」と判断した状態です。
  • SQLは「営業が、このリードは商談を進められる」と判断した状態です。

トスアップとは、マーケ・ISがMQLと判定したリードをFSへ引き継ぐことと言い換えられます。

MQLとSQLの定義設計と連携方法の詳細は、MQL/SQL連携の設計全体像で解説しています。

スコアリングでトスアップのタイミングを客観化する

スコアリングとは、リードの属性情報と行動情報に点数を付け、購買意欲を数値化する手法のことです。「見込み顧客の関心度を点数で可視化する仕組み」と定義できます。

スコアリングを活用したトスアップ基準の設計は、「属性スコア」と「行動スコア」を組み合わせる方法が最も再現性が高いです。

  • 属性スコアは「自社のターゲット像にどれだけ近いか」を点数化します。
  • 行動スコアは「どれだけ購買に近い行動を取っているか」を点数化します。

この2軸の合計が一定の閾値を超えた時点でMQLと判定し、ISまたはFSへトスアップするという設計が基本です。

スコアリングルールの具体的な設計手順は、スコアリングルール設計の全手順を参照してください。

行動トリガーと属性スコアを組み合わせた判定基準の例

行動トリガーと属性スコアを組み合わせた判定基準の例を以下に示します。

属性スコアの例(業種・規模・役職に点数を付ける)

属性条件スコア
業種ターゲット業種に合致+20点
企業規模従業員数100名以上+15点
役職部長・本部長以上+20点
所在地主要商圏内+10点

行動スコアの例(購買意欲の高さを点数化する)

行動スコア
価格ページの閲覧+30点
事例資料のダウンロード+25点
ウェビナーへの参加+20点
メールのクリック+10点
サービス詳細ページの閲覧+15点

属性スコアと行動スコアの合計が80点以上でMQLと判定するといった基準を、マーケ・IS・FSの3部門で合意します。

点数だけでなく「価格ページを閲覧した場合は点数にかかわらず即時IS接触」という行動トリガーも設定することで、ホットリードの対応遅延を防げます。

リードスコアリングの仕組みと設計の全体像は、リードスコアリングの基本設計で詳しく解説しています。

トスアップを仕組み化するSLAの設計

SLAなしのトスアップは「渡すだけ」で終わります。SLAとは、マーケ・ISとFSの間で「どのようなリードを・いつ・どのように渡し・FSはどう動くか」を文書で合意する取り決めのことです。

SLAとは?マーケと営業が合意すべきトスアップのルール

SLAはService Level Agreementの略です。元々はITサービスの品質保証で使われていた概念ですが、BtoBマーケティングでは「マーケティングチームと営業チームの間で交わす、リード引き継ぎに関する取り決め」として広く活用されています。

SLAがなければ、トスアップの基準・対応タイムライン・フィードバックの方法がすべて不明確なままになります。

その結果、FSからは「質の低いリードばかり来る」という不満が、マーケからは「渡してもフォローしてもらえない」という不満が、それぞれ蓄積します。この相互不信が、多くのBtoB企業でマーケと営業の連携を阻んでいる要因です。

SLAに盛り込むべき6つの必須項目

SLAに必ず盛り込むべき項目は6つです。

①MQLの定義:どのスコア・行動トリガーでMQLと判定するかを数値で明示します。たとえば「スコア合計80点以上、かつ価格ページ閲覧またはIS接触後に検討意向が確認できた場合」のように具体的に定義します。

②トスアップ後のFSの対応タイムライン:MQL判定から何時間以内にISまたはFSが接触するかを明記します。「営業時間内のMQL発生:2時間以内に初回接触」「営業時間外:翌営業日午前中に接触」といった形です。ホットリードほど対応速度が成約率を左右します。

③引き継ぎ情報のフォーマット:CRM(顧客管理システム)またはSFA(営業支援システム)に記録すべき項目を統一します。何をどこに書くかが明確でないと、引き継ぎの品質が担当者によって大きく変わります。

④フィードバックのルールと頻度:FSは引き継いだMQLについて、「商談化した・失注した・まだナーチャリングが必要」という結果を、いつまでにどの形式で共有するかを定めます。月次での定期レビューを設ける企業が多いです。

⑤ホットリードの定義:MQLのうち、即時対応が必要なリードの定義を分けて記載します。

ホットリードの定義設計については、ホットリードの定義と設計も参照してください。

⑥SLAの見直し頻度:市場環境や商材の変化に合わせ、四半期ごとにSLAの内容を見直す旨を明記します。一度作ったSLAを更新しないと、現場の実態とかい離し、形骸化します。

SLA締結を円滑に進める社内調整の進め方

SLA締結で最も難しいのは、マーケ・IS・FSの全員が納得する合意を形成するプロセスです。

部門間で利害が対立することも多く、特に「MQLの閾値をどう設定するか」「対応タイムラインをどこまで厳格にするか」は交渉が必要な場面です。

弊社の支援事例では、SLA締結のワークショップを「直近3カ月の商談データを持ち寄る場」として設計し、「どのリードが成約したか」「どのリードが無駄だったか」というデータを全員で確認してから議論を始める進め方が最も合意形成しやすいという結果が出ています。感情論や思い込みではなく、データを共通言語にすることがポイントです。

トスアップの失敗パターンと対処法

トスアップの失敗には必ず「構造的な原因」があります。その原因を特定しなければ、個人の努力で改善しようとしても再発します。

失敗パターン① MQL基準が言語化されておらず、低品質リードが大量流入する

「なんとなく確度が高そう」という担当者の感覚に依存したトスアップが行われていることが要因です。感覚基準は担当者ごとにバラバラで、引き継ぎのタイミングや質が一定になりません。

対処法は、MQL基準をスコアリングで数値化し、全担当者が同じ基準で判定できる状態を作ることです。まず「過去に成約したリードにはどんな属性・行動パターンがあったか」をデータで確認し、そこからスコアリングの設計を逆算します。

失敗パターン② 引き継ぎ情報が不足し、営業が1から関係構築し直す

引き継ぎの情報フォーマットが標準化されていないため、ISが「とりあえず連絡先と会社名だけ渡す」という状況が発生していることに起因します。FSは「この顧客が何に困っているのか」「何に興味を持ったのか」を知らないまま初回接触し、顧客側からは「また最初から説明しなければならない」という不満が生まれます。

対処法は、引き継ぎ情報のフォーマットをSLAで標準化し、CRMに必須入力項目として設定することです。

失敗パターン③ トスアップ後のフィードバックループがなく、基準が改善されない

FSからマーケ・ISへのフィードバックが仕組み化されていないため、「渡したリードがどうなったか」がマーケ・ISには伝わらないことが要因です。その結果、トスアップ基準は初期設定のまま放置され、市場環境や商材の変化に追随できなくなります。

対処法は、SLAにフィードバックのルールを明記し、月次の定例レビューでデータを持ち寄る場を設けることです。

失敗パターン④ 訴求軸の不統一により、顧客が商談で「話が違う」と感じる

マーケが「コスト削減効果」を訴求した広告でリードを獲得しているのに、FSが「業務効率化」を中心に商談を進めるという訴求軸のズレが発生することが要因です。顧客は「思っていた内容と違う」と感じ、商談が成立しないケースが多くなります。

対処法は、ペルソナとカスタマージャーニーマップを全部門で共同設計し、どのフェーズでどのメッセージを届けるかを統一することです。

失敗パターン⑤ ホットリードの対応が遅延し、購買意欲が下がる

MAやSFAのアラートが設定されておらず、担当者がMQL発生に気づくのが数時間後・翌日になってしまうことが要因です。購買意欲は時間の経過とともに低下します。競合他社が同じタイミングで接触していれば、対応の遅れが直接失注につながります。

対処法は、MAとSFAを連携させてスコア閾値到達時に担当者へ即時通知を送る仕組みを構築することです。

MAとSFAを活用したトスアップの自動化

MAとSFAの連携でトスアップを自動化することで、「スコア閾値到達→即時通知→迅速な初回接触」という一連の流れを人手を介さずに実現できます。

MA(マーケティングオートメーション)とインサイドセールスの連携フローの詳細は、MAとIS連携の具体策で解説しています。

MAとSFAの連携でトスアップを自動化する仕組み

MAとSFA(営業支援システム)を連携させたトスアップ自動化の基本的な仕組みは以下のとおりです。

Step.1:MAでスコアリングを設定する:リードの属性情報と行動データに基づき、MAツール上でスコアを自動集計します。ウェブサイトの特定ページの閲覧・メールのクリック・フォームの送信などの行動を、あらかじめ設定したスコアと自動的に紐づけます。

Step.2:閾値に達したリードをSFAへ自動連携する:MAで設定したMQL基準(例:合計スコア80点以上)に達したリードを、SFAに自動的に取り込みます。このタイミングで、担当するISまたはFS担当者にメールまたはslackなどで通知されます。

Step.3:SFA上で対応状況を管理する:SFAにMQLが登録された後の対応状況(初回接触済み・商談設定済み・失注・受注)をFSが記録します。この記録がMAにフィードバックされ、スコアリングの精度向上に活用されます。

MAツールで設定すべきトスアップトリガーの例

MAツールで設定すべきトスアップトリガーは、「スコア閾値トリガー」と「行動トリガー」の2種類があります。

スコア閾値トリガー:合計スコアが一定の点数に達した時点でMQL判定し、SFAへ自動連携します。蓄積型の購買意欲の高まりを捉えるのに適しています。

行動トリガー:特定の行動(価格ページの閲覧・料金シミュレーターの利用・無料トライアルの申し込みなど)を起点に、スコアにかかわらず即時にIS担当者へ通知します。購買意欲の急激な高まりを即座にキャッチするのに適しています。

MAを活用したスコアリング設計の実践テンプレートは、MA失敗事例に学ぶスコアリングで詳しく解説しています。

自動化後も必要な「人が介在するポイント」

MAとSFAによる自動化を進めても、人が判断すべき場面は残ります。3つのポイントに注意が必要です。

①スコアリングのチューニング:MAが自動算出するスコアは、実際の成約データと突き合わせて定期的に見直す必要があります。「高スコアのリードが成約していない」場合は、スコアリングの設計自体に問題がある可能性があります。

②難易度の高いリードへの個別対応:スコアが高くても、複雑な組織購買プロセスや特殊な懸念点がある場合は、ISが直接ヒアリングしてから渡すほうが成約率が高くなります。自動化で見落とされやすい複雑な状況への対応は、人の判断に委ねます。

③フィードバックの定期的な実施:MAとSFAの連携が機能していても、月次レビューでマーケ・IS・FSが集まりデータを確認する場は必要です。ツールが出すデータを、人が解釈して次の設計改善につなげることが重要です。

トスアップを成功させる組織設計の4ステップ

トスアップを仕組み化するには、一度に全部を整備しようとせず、ステップを踏んで段階的に構築することが最も確実です。

Step.1:全部門でペルソナとカスタマージャーニーを共同設計する

最初にやるべきことは、マーケ・IS・FSの全員が同じ「ターゲット像」を共有することです。部門ごとにターゲットの認識が異なると、その後のトスアップ基準やSLAが機能しません。

共同設計の進め方として、まず「過去1〜2年の受注データから理想顧客の共通属性を抽出する」ことをお勧めします。「どんな業種・規模・役職の顧客が受注しているか」「受注顧客が最初にどこから流入してきたか」というデータを全員で確認し、ペルソナとカスタマージャーニーに落とし込みます。

Step.2:MQL/SQL基準を言語化し、トスアップのトリガーを設定する

ペルソナが合意できたら、次にMQL基準を設計します。このステップで多くの企業が躓くのは、「正解のスコア配分がわからない」という点です。

最初から完璧な設計を目指す必要はありません。まず「受注した顧客の過去の行動履歴」をMAのデータで確認し、「どの行動を取ったリードが最終的に受注したか」を分析します。そのパターンを基準値として設定し、運用しながら精度を上げていく方法が現実的です。

Step.3:SLAで部門間の合意を文書化する

MQL基準が決まったら、SLAを作成します。SLAはシンプルでかまいません。最初は「MQLの定義・対応タイムライン・フィードバックの頻度と方法」の3項目だけで十分です。形式よりも、全員が合意している内容が文書化されていることが重要です。

SLAを作成した後は、四半期ごとに見直す場を必ず設けます。最初に設定したMQL基準が現場と合わない場合は、データを基に調整します。

Step.4:MAを活用してトスアップを自動化し、PDCAを回す

SLAが機能し始めたら、MAとSFAの連携でトスアップを自動化します。自動化によって対応速度が上がり、ホットリードの機会損失が大幅に減少します。

自動化後のPDCAの基本サイクルは、「月次定例でMQL数・商談化率・成約率を確認→スコアリングの精度を検証→SLAとスコア基準を調整→翌月の運用に反映」です。弊社Sells upでは、BtoBマーケティング支援・MA活用支援・インサイドセールス立ち上げ支援を通じて、このサイクルを各社のフェーズに合わせた形で実装する支援を行っています。

まとめ

トスアップは、「見込み顧客を引き継ぐ行為」ではなく「成約につながる仕組みを設計する営業インフラ」です。

本記事で解説した内容を整理すると、トスアップを仕組み化するために必要な要素は以下の4つです。

  • MQL基準の言語化:「確度が高そう」という感覚判断をスコアリングで客観化する
  • SLAの締結:部門間の合意を文書化し、対応タイムラインとフィードバックのルールを明確にする
  • MAとSFAの連携:スコア閾値や行動トリガーで自動的にISまたはFSに通知し、対応速度を担保する
  • 月次PDCAの実施:データを持ち寄り、スコアリング精度とSLAの内容を継続的に改善する

多くの企業でトスアップが属人的な判断に依存している現状は、個人の能力の問題ではなく、仕組みの不在が原因です。まずStep.1のペルソナ共同設計から着手し、データを積み重ねながら段階的に仕組みを構築することをお勧めします。

Sells upでは、BtoBマーケティング支援・MA活用支援・インサイドセールス立ち上げ支援を通じ、トスアップの仕組み化を含む営業・マーケ連携の設計から実装まで支援しています。まずはお気軽にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

ビジネスにおけるトスアップとは何ですか?

ビジネスにおけるトスアップとは、マーケティング・インサイドセールス・コールセンターなどの部門が、一定の基準を満たした見込み顧客をフィールドセールスへ引き継ぐプロセスのことです。語源はバレーボールで、セッターがアタッカーへトスを上げる動作に由来します。単なる情報の受け渡しではなく、購買意欲の高い顧客を選別した上で引き継ぐという「選別と引き継ぎの両方」がトスアップの本質です。MQL(マーケティングクオリファイドリード)基準やスコアリングを活用して客観的に判定することで、営業部門が商談に集中できる環境が整います。

ビジネス用語で「トスする」とはどういう意味ですか?

ビジネス用語で「トスする」とは、自分が担当していた顧客・案件・情報を次の担当者やプロセスへ引き継ぐことを指します。バレーボールのセッターがアタッカーへボールを渡す動作が語源です。営業の文脈では「このリードをトスする」「ISからFSへトスする」という形で使われます。単に連絡先を渡すのではなく、顧客の課題・接触履歴・検討状況といった情報をセットで引き継ぐことが、成約率を高めるうえで重要です。

コールセンターでのトスアップとはどういうことですか?

コールセンターでのトスアップとは、テレアポや問い合わせ対応を担うコールセンターが、購買意欲の高い見込み顧客をフィールドセールスへ引き継ぐことです。コールセンターのトスアップで最も重要なのは、「話を聞いてくれた」という事実と「購買意欲がある」という判断を混同しないことです。代金・契約条件への質問、詳細資料や見積もりの要求、納期・導入スケジュールへの関心といった具体的なシグナルを確認してからトスアップする判断が適切です。また、担当者が変わる際は顧客に事前に連絡し、不安感を与えないよう配慮することがポイントです。

トスアップがうまくいかない場合、最初に見直すべきポイントはどこですか?

トスアップがうまくいかない場合、最初に見直すべきポイントはMQL基準が言語化されているかどうかです。「なんとなく確度が高そう」という感覚に依存したトスアップでは、担当者によって引き継ぐリードの質がバラバラになります。次に確認すべきは、引き継ぎ情報のフォーマットが統一されているかどうかです。接触履歴・顧客の課題・検討タイムラインが共有されていない場合、営業担当者は1から関係構築し直すことになります。さらに、フィードバックループが機能しているかを確認してください。渡したリードがどうなったかをマーケやISに戻す仕組みがないと、トスアップ基準は改善されないままになります。

「やっているのに成果が出ない」状態から抜け出すために

施策を続けているのに商談が増えない、リードの質が上がらない。 こうした課題の多くは、戦略と施策のつながりが設計されていないことが原因です。 Sells upは現状の分析と改善の優先順位整理から支援します。

株式会社Sells up 代表取締役
武田 大
株式会社AOKIにて接客業を、株式会社リクルートライフスタイル(現:株式会社リクルート)にて法人営業を経験した後、株式会社ライトアップでBtoBマーケティングを担当。その後、デジタルマーケティングエージェンシーにてBtoBマーケティングの戦略設計/施策実行支援、インサイドセールスをはじめとしたセールスやカスタマーサクセスとの連携を通じたマーケティング施策への転換といった支援を行い、2023年に株式会社Sells upを設立。BtoBマーケティング支援会社として、デジタルマーケティング戦略設計・MA/SFA導入・リードジェネレーション・ナーチャリング・営業連携SLA構築を80社以上に提供し、売上成長への貢献実績を持つ。Account Engagement SpecialistおよびTableau Desktop SpecialistのSalesforce認定資格を保有。