ナレッジ 2025.09.19 最終更新 2026.09.06

One to Oneマーケティング事例7選|BtoBの再現手順

この記事を書いた人 武田 大 株式会社Sells up 代表取締役

One to Oneマーケティングの事例とは、顧客一人ひとりに最適化したマーケティング施策によって成果を上げた企業の具体例のことです。

弊社が支援した企業では、事例を自社にそのままコピーして失敗しているケースが多く見られます。事例から抽出すべきは「施策」ではなく「成功の仕組み」です。

本記事では、BtoC・BtoBの成功事例7選と、事例から学ぶ3つの共通点、BtoBマーケティングで再現する5ステップを解説します。

One to Oneマーケティングとは?1分でわかる定義

One to Oneマーケティングとは、顧客一人ひとりの属性・行動履歴・購買履歴にもとづいて、個別に最適化されたメッセージや施策を届けるマーケティング手法のことです。

要するに、顧客データを起点に一人ひとりへ情報を出し分ける考え方です。画一的な配信ではなく個別最適化すること、顧客データを起点に設計すること、関係構築と購買促進を同時に狙うことが特徴といえます。

詳しく見ていきます。購買前の情報収集がデジタル上で完結するようになり、画一的な訴求では顧客の検討状況に刺さりにくくなりました。具体的には、Amazonの「あなたへのおすすめ」表示、検討フェーズに応じたステップメール、スコアにもとづく営業アプローチの切り替えなどが代表例です。

なぜOne to Oneマーケティング事例が注目されるのか?

端的に言えば、MAツールの普及でOne to One施策の土台が整った企業が増え、他社の成功例を参考に自社設計を進めたい担当者が増えているからです。

弊社にご相談いただく企業でも、MAを導入したが運用が止まっている、スコアを設計したが営業に使われていないという課題を抱えるケースが多いです。こうした状況では、他社事例から「再現可能な仕組み」を抽出するニーズが高まります。

なお、定義や手法論をより体系的に押さえたい方は、下記の記事も合わせてご覧ください。

関連記事:One to Oneマーケティングの実装手順

マスマーケティングとの違い

マスマーケティングとは、不特定多数に同じメッセージを届ける画一的な手法のことです。対象が「大衆」か「個人」か、メッセージが「画一」か「個別」か、評価指標が「認知・GRP」か「個別の反応率・商談化率」か、という観点で違いが出ます。

たとえば、テレビCMで広く認知を取るのがマスマーケティングです。一方、閲覧履歴に応じてメール文面を出し分けるのがOne to Oneマーケティングにあたります。

BtoBマーケティングでは意思決定者が複数存在し検討期間も長いため、マスではなくOne to Oneの設計が商談化率に直結します。

One to Oneマーケティングの事例7選(BtoC・BtoB横断)

ここからは、データ活用に成功した7社の事例を紹介します。BtoC大手企業の代表的な事例に加え、Sells upが支援したBtoB企業の事例も取り上げ、具体的な施策や成果を数値とともに解説します。

事例を単なる成功例として見るのではなく、「なぜ成果につながったのか」「自社に取り入れられる要素は何か」という視点で読み解くことで、自社の施策にも活かしやすくなります。

事例1:Amazon|購買履歴にもとづくレコメンデーションで関連商品購入を促進

Amazonは購買履歴・閲覧履歴・カート投入履歴などの行動データをAIで分析し、「あなたへのおすすめ」「この商品を買った人はこんな商品も」の形でレコメンドを出し分けています。行動データの蓄積量、レコメンドアルゴリズムの精度、サイト全体での出し分け範囲の広さが強みです。

たとえば、特定メーカーの化粧品を購入した顧客には同メーカーの関連商品を、特定ジャンルを閲覧した顧客にはその類似・関連商品を自動表示します。膨大な購買データを学習し続ける仕組みがあり、新規顧客と既存顧客で異なるレコメンドを出せます。

出典:Amazon Personalizeの小売、メディア&エンターテイメント向けに最適化されたレコメンダーリリースのお知らせ

事例2:スターバックス|「スターバックスリワード」でLTVを向上

スターバックスは、会員プログラム「スターバックスリワード」を通じて顧客の購買履歴と嗜好を把握しています。モバイルオーダーやデジタルスターバックスカードで接点を個別化し、会員データを起点とした体験提供、デジタル接点の拡張、継続来店を促すポイント設計を一体で運用しています。

単なるポイント付与ではありません。購買履歴・嗜好に応じた情報配信で「自分に合った提案を受けている」と顧客が感じる体験を設計しています。結果としてLTV(Life Time Value、顧客生涯価値)の向上と会員数・利用率の増加を実現しています。

出典:
Starbucks Rewards
LTV(ライフタイムバリュー)とは?重視すべき4つの理由を紹介

事例3:一休.com|検索結果のパーソナライズで宿泊販売額をコロナ前の2〜3倍に

一休.comはデータドリブン経営を軸に、顧客の閲覧履歴・宿泊履歴に応じて検索結果やクーポンを出し分けています。閲覧・宿泊履歴の活用、顧客別の価格最適化、リアルタイムでの購入確率予測を組み合わせているのが特徴です。

具体的には、リアルタイムで購入確率や金額を予測し、顧客一人ひとりに的確なオファーを紹介する仕組みを構築しました。データドリブンな意思決定文化があり、2022年・2023年の宿泊販売額がコロナ前の2〜3倍になるという成果につながっています。

出典:bsearchtech社『One to Oneマーケティングの成功事例7選』より要約

事例4:リンナイ|行動履歴にもとづくメール配信で購買率を大きく向上

リンナイは自社ECサイト「R.STYLE」とマーケティングツール「インサイトボックス」を活用し、会員データ・購入履歴にもとづくメール配信を実施しています。自社ECでの会員データ蓄積、行動履歴による配信対象の絞り込み、反応が良かった顧客への継続的フォローを組み合わせています。

行動履歴を分析して反応が高そうな顧客のみに絞ってメールを配信することで、開封率・クリック率・購入率が大きく向上しました。一斉配信から個別最適化に切り替えた結果、「押し付けがましい」と感じる顧客が減り、メルマガ退会も抑制できています。

出典:bsearchtech社『One to Oneマーケティングの成功事例7選』より要約

こちらの事例のようなメール施策をBtoBマーケティングで設計したい場合は、下記の記事で具体手順を解説しています。

関連記事:BtoBの1to1メール設計手順

事例5:ブリューアス様|休眠顧客への掘り起こしメールで大型案件を受注

ブリューアス様は、BtoCのマーケ手法をそのままBtoBマーケティングに転用していたことが大きな課題でした。BtoC発想からの脱却、Account Engagement(旧Pardot)の移行時にアクティビティデータを守り切ったこと、休眠顧客へのOne to One掘り起こしメールで大型案件を受注したことが成果のポイントです。

Google広告のみの運用からMeta広告・Microsoft広告を追加し、Microsoft広告での法人向けPCユーザーへの訴求など新たなチャネルを開拓しました。LPもお客さまとのコミュニケーション視点で再設計しています。

MA運用の立て直しによってステップメールから継続的な受注を獲得しました。一度失注した休眠顧客への掘り起こしメール配信で大型案件の受注につながっています。広告運用の改善によりCPA(Cost Per Acquisition、顧客獲得単価)を取り組み前と比べて約3分の1に削減し、目標のリード件数も達成しました。

BtoC手法の転用から抜け出し、BtoBマーケティングにおけるOne to One施策を「休眠リードへの個別最適化」として機能させた事例です。


BtoCマーケの”コピー&ペースト”から脱却。全方位施策で広告CPAを支援前の約3分の1に削減

sellsup.co.jp

本棚のある打ち合わせスペースで、2人が木製テーブルの脇に立って笑顔で並んでいる写真

事例6:CLUE様|3日連続訪問ユーザーを検知しインサイドセールスへ自動連携

CLUE様は、2019年時点でマーケティング経験者が社内に一人もいない状態から出発しました。5年間の支援を通じて、体系立ったマーケティング体制を構築しています。まず着手したのはKPI設計です。そこからAccount EngagementとSalesforceの連携設計、3日連続でサービスページに訪問しているユーザーをインサイドセールスへ自動連携するOne to Oneの仕組み構築へと進めました。

建設業界は検索行動が活発ではありません。プッシュ型(Meta広告・ディスプレイ広告)の方が獲得効率が高いという知見を支援のなかで得ました。そのため、リード獲得後の個別最適化に力を入れる必要があったのです。LPをサービス機能中心からお客さまの課題解決に焦点を当てた構成に再設計し、セミナー後のアンケートから関心トピックを分析して最適なフォローアップメールを配信する設計も導入しました。

さらに、3日連続でサービスページを訪問している高確度ユーザーを自動検知してインサイドセールスに連携する仕組みを構築しました。結果として「営業が自分の足で獲得する状態」から「仕組みでリードを獲得できる状態」へ変革し、インサイドセールスチームの立ち上げにつながっています。

本事例の詳細は、弊社の成功事例をまとめた記事にも記載しています。


スタートアップのマーケ立ち上げ。商談・受注を創出するリードが安定獲得できる仕組みを構築

sellsup.co.jp

打ち合わせスペースの木製テーブルを挟んで、2人が向かい合って笑顔で話している写真

関連記事:弊社支援企業のBtoBマーケティング成功事例

事例7:すかいらーく|POSデータ活用で広告費を10%以上削減

すかいらーくはPOSデータとガストアプリのログデータを活用し、年齢・性別・居住地などの属性に応じて最適なクーポンを個別配信しています。POSデータによる顧客属性の把握、クーポン種類と配信タイミングの個別最適化、データマイニングツールを用いた高速PDCAを組み合わせているのが特徴です。

アクティブユーザーだけでなく来店から一定期間経過した顧客にも最適なタイミングでクーポンを届ける設計により、広告宣伝費を前年同期比で10%以上削減しました。画一的なクーポン配布から個別最適化に切り替えたことで、配信コストを抑えつつ来店率を高めた事例です。

出典:bsearchtech社『One to Oneマーケティングの成功事例7選』より要約

事例から学ぶOne to Oneマーケティング成功の3つの共通点

ここからは、紹介した7つの事例に共通する成功のポイントを、「データ基盤」「施策設計」「組織連携」の3つに分けて解説します。いずれか1つに取り組むだけでは十分ではなく、3つを組み合わせて進めることが重要です。

これらは、Sells upがこれまで80社以上のBtoBマーケティングに携わってきた経験からも、成果を上げている企業に共通して見られるポイントです。

共通点1:顧客データの統合と行動履歴の可視化ができている

成功事例に共通する1つ目の特徴は、顧客データが一元化され行動履歴が可視化されていることです。CRM(顧客関係管理)・MA・SFA(営業支援システム)の連携、行動データ(閲覧・購買・反応)の蓄積、データ品質の担保が土台になっています。

ここで押さえておきたいのは、個別最適化を行うためには、「顧客一人ひとりの行動を継続的に追跡できる状態」を整えておく必要があるという点です。

Amazonではサイト上の顧客行動を追跡し、リンナイでは自社EC会員の行動履歴を蓄積しています。また、CLUE様ではAccount EngagementとSalesforceを連携し、Webサイト上の行動データと商談データを紐づけています。

共通点2:セグメント設計とシナリオが事業目標から逆算されている

2つ目の共通点は、セグメント設計と配信シナリオが事業目標から逆算されていることです。KGI・KPIの明確化、顧客フェーズごとのセグメント、フェーズに合わせたコンテンツ設計が揃っています。

セグメントやシナリオを感覚だけで設計してしまうと、施策を実施しても商談や受注につながりにくくなります。重要なのは、顧客の属性や行動データをもとに対象を明確にし、それぞれに適した施策を設計することです。

一休.comでは購入確率を予測して価格を最適化し、すかいらーくでは顧客属性に応じてクーポンの種類や配信タイミングを設計しています。また、ブリューアス様では「休眠顧客」という明確なセグメントに対して掘り起こしのシナリオを設計し、受注につなげています。

シナリオ設計の具体例は下記の記事で詳しく解説しています。

関連記事:ナーチャリングシナリオの設計例

共通点3:マーケと営業・CSの連携が仕組み化されている

3つ目の共通点は、マーケティングと営業・CS(カスタマーサクセス)の連携が仕組みとして設計されていることです。ホットリードの定義合意、トスアップの自動化、フィードバックループが整っています。

マーケティング部門がリードごとに施策を最適化しても、その情報を営業部門が活用できなければ、商談化にはつながりません。CLUE様では、3日連続でWebサイトを訪問したユーザーを検知すると、インサイドセールスへ自動的に連携される仕組みを構築しました。

One to One施策をマーケティング部門だけで完結させるのではなく、その後の営業活動まで一連の流れとして設計していることも、紹介した事例に共通する成功のポイントです。

BtoBマーケティングでOne to Oneを再現する5ステップ

ここからはBtoBマーケティングでOne to One施策を導入する具体的な進め方を5ステップで解説します。まずデータ整備から着手し、次にセグメント・スコアリングを固め、最後に営業連携(SLA)まで含めて設計することが重要です。

One to One施策はリードナーチャリングの一環として設計することで商談化につながります。ナーチャリング全体の設計を先に押さえたい方は下記の記事も参考にしてください。

関連記事:BtoBのリードナーチャリング全体像

Step.1:顧客データの棚卸しと統合

Step.1では、社内に散在している顧客データを棚卸しし、1つに統合します。まずは顧客データがどこに、どのような形式で保存されているのかを洗い出し、そのうえで名寄せやデータクレンジングを行い、MA・CRM・SFAなどで一元的に管理できる状態を整えます。

具体的には、名刺管理ツールやExcel、MAツール、CRM/SFAなどに分散している顧客情報を確認し、氏名やメールアドレス、会社名、部署、役職などの表記を統一します。同じ顧客が複数のツールに登録されている場合は名寄せを行い、重複したレコードを整理することも必要です。退職や転職によって古くなった情報、メールアドレスの不備なども、この段階で可能な限り整理しておきます。

目指すのは、「誰が、いつ、どの施策に接触し、その後どのような行動を取ったのか」を顧客単位で追跡できる状態です。顧客の属性情報だけでなく、メールの開封・クリック、Webサイトの閲覧、資料のダウンロード、商談履歴などを紐づけられるようにすることで、その後のセグメント設計やOne to One施策にも活用しやすくなります。

これまでSells upがBtoBマーケティングを支援してきた経験からも、データが十分に整理されていない状態でOne to One施策を始めると、同じ顧客への重複配信や、本来アプローチすべき顧客が配信対象から漏れるといった問題が起こりやすくなります。精度の高い施策を実施するためにも、顧客データの棚卸しと統合は最初に取り組むべき重要なステップです。

Step.2:セグメント設計とペルソナの言語化

Step.2では、統合した顧客データをもとにセグメントを設計し、それぞれの顧客像をペルソナとして言語化します。業種や企業規模、部署、役職などの「属性」と、Webサイトの閲覧履歴や資料ダウンロード、ウェビナーへの参加といった「行動」の両面から顧客を分類し、誰にどのようなアプローチを行うのかを明確にします。

セグメントが曖昧なまま施策を実行すると、「誰に、何を、どのタイミングで届けるのか」が定まりません。その結果、メールの件名や本文に企業名・担当者名を差し込むだけなど、表面的な個別化にとどまり、One to One施策の効果を十分に引き出せなくなります。

まずは、ICP(理想顧客プロファイル)を定義し、自社にとって受注につながりやすい企業の業種や規模、地域、事業特性などを明確にします。そのうえで、企業内のどの部署・役職の人物が意思決定に関わるのか、どのような課題やニーズを持っているのかまで整理すると、具体的な施策に落とし込みやすくなります。

さらに、同じ属性の顧客であっても、検討状況によって必要な情報は異なります。そのため、「検討初期」「情報収集期」「比較検討期」などのフェーズに分け、それぞれで想定される課題や行動、必要としている情報を言語化します。たとえば、情報収集期には課題解決のノウハウや調査資料、比較検討期には導入事例やサービスの比較資料など、フェーズに応じて提供するコンテンツを変えていきます。

また、セグメントやペルソナはマーケティング部門だけで決めるのではなく、実際に顧客と接している営業部門とも認識を合わせることが重要です。営業が持つ商談時の情報や失注理由なども反映しながら顧客像を具体化することで、マーケティング施策から営業活動まで一貫したアプローチを設計しやすくなります。

関連記事:セグメンテーション分析の手順

Step.3:スコアリングで「今すぐ対応すべき顧客」を可視化

Step.3では、顧客の属性や行動をスコアリングし、優先的にアプローチすべき顧客を可視化します。主に「属性スコア」と「行動スコア」の2つを設定し、一定の基準を満たした顧客を営業へ引き渡せる仕組みを構築します。

One to One施策では、すべての顧客に同じ優先順位でアプローチするのではなく、「誰に優先して情報を届けるのか」「どのタイミングで営業へ引き渡すのか」を客観的に判断する基準が必要です。その役割を担うのがスコアリングです。

属性スコアでは、業種や企業規模、部署、役職など、Step.2で定義したICPとの一致度をもとに点数を設定します。たとえば、自社の主要なターゲットとなる業種や企業規模に該当する場合は加点し、ターゲットから外れる場合は加点しない、あるいは減点するといった設計が考えられます。

一方、行動スコアでは、フォーム送信や資料ダウンロード、メールのクリック、Webサイトへの再訪、料金ページの閲覧など、顧客の行動に応じて点数を設定します。すべての行動を同じ点数にするのではなく、購買意欲の高さを示す行動ほど高いスコアを設定することがポイントです。

そして、属性スコアと行動スコアを組み合わせ、一定の閾値を超えた顧客をMQLとして営業へ自動的に連携する仕組みを設計します。これにより、営業担当者がすべてのリードを確認する必要がなくなり、受注につながる可能性の高い顧客から優先的にアプローチできるようになります。

ただし、スコアリングは一度設定して終わりではありません。実際に商談や受注につながった顧客の属性・行動と照らし合わせながら、「どの行動が商談化につながりやすいのか」「営業へ引き渡す閾値は適切か」を定期的に検証し、スコアや基準を見直していくことが重要です。

関連記事:見込み客スコアリングの設計

Step.4:MAでシナリオを自動化

Step.4では、Step.2で設計したセグメントとStep.3のスコアリングをもとに、MA(マーケティングオートメーション)で顧客へのアプローチを自動化します。シナリオを開始するトリガーを設定し、セグメントや顧客の行動に応じた配信内容を設計したうえで、施策の成果を継続的に測定できる仕組みを整えます。

具体的には、資料をダウンロードした顧客へのステップメール、一定期間行動がない休眠顧客の掘り起こし、特定のWebページを閲覧した顧客へのメール配信などが挙げられます。たとえば、サービス資料をダウンロードした顧客に対して、数日後に導入事例を案内し、その後に料金ページを閲覧した場合は営業へ連携するといったシナリオを設計できます。

シナリオを設計する際は、「どの行動を起点にするか」だけでなく、その後の顧客の行動に応じた分岐まで考えることが重要です。メールをクリックした場合としなかった場合、特定のページを閲覧した場合、スコアが一定の基準を超えた場合など、それぞれの状況に応じて次のアプローチを変えることで、顧客の検討状況に合わせたコミュニケーションが可能になります。

また、シナリオの開始条件だけでなく、終了条件もあらかじめ設定しておきます。たとえば、商談化した顧客や受注済みの顧客をナーチャリングの対象から除外するなど、顧客の状況が変化した際に不要なメールが配信されない仕組みを整えておくことも必要です。

さらに、シナリオごとにメールの開封率やクリック率だけでなく、MQLへの転換率や商談化率などを確認し、施策が次のフェーズへの移行につながっているかを継続的に検証します。成果を確認しながら、配信するコンテンツやタイミング、分岐条件などを見直していくことで、シナリオの精度を高めていきます。

Sells upでは、HubSpot・Account Engagement・Marketoの3つのMAツールを活用した支援経験があります。その経験から重視しているのは、ツールの機能を基準に施策を決めるのではなく、自社のセグメントや顧客の検討プロセスに合わせてシナリオを設計し、その実現に必要な機能を活用することです。MAツールを導入すること自体を目的にせず、「誰に、どのタイミングで、どのようなアプローチを行うか」を先に設計することが、One to One施策を機能させるうえで重要です。

関連記事:MAシナリオ設計の全手順

Step.5:営業とのSLAを設計し、トスアップを仕組み化

Step.5では、マーケティング部門と営業部門の間でSLA(Service Level Agreement)を設計し、確度の高いリードを適切なタイミングで営業へトスアップできる仕組みを整えます。具体的には、ホットリードの定義やトスアップの条件、営業が対応するまでの期限、対応後のフィードバック方法などを明文化します。

まず必要なのが、「どのようなリードを営業へ渡すのか」という基準について、マーケティングと営業の認識を合わせることです。Step.3で設定したスコアが一定の基準を超えたリードや、料金ページを複数回閲覧したリードなど、属性や行動にもとづいてトスアップの条件を具体化します。マーケティングだけで基準を決めるのではなく、営業が実際に商談した際の感触や過去の受注傾向も踏まえて設定することが重要です。

あわせて、トスアップ後の対応ルールも決めておきます。たとえば、「MQLとしてトスアップされたリードには24時間以内に初回コンタクトを行う」といった対応期限を設定し、誰が、いつまでに、どのようなアプローチを行うのかを明確にします。MAからCRM/SFAへリード情報を自動連携し、営業担当者への通知まで仕組み化しておけば、対応漏れも防ぎやすくなります。

さらに、営業へトスアップして終わりにせず、その後の結果をマーケティングへ戻すフィードバックの仕組みも必要です。「商談化した」「現時点では検討していない」「ターゲットと異なっていた」といった営業側の結果を蓄積することで、スコアリングやMQLの条件、ナーチャリングシナリオを見直す材料として活用できます。

このステップが十分に設計されていないと、マーケティングがトスアップしたリードが営業で放置されたり、営業側が「リードの質が低い」と判断し、次第に活用されなくなったりすることがあります。

これまでSells upがBtoBマーケティングを支援してきた経験からも、MAを導入していても、マーケティングと営業の間でリードの定義や対応ルールが明確になっていないために、商談化につながっていないケースが見られます。一方で、ホットリードの定義やトスアップ後の対応について双方の認識を合わせ、SLAとして明文化することで、営業連携が機能し始めるケースも多くあります。

MAによるOne to One施策を商談や受注につなげるためには、マーケティング施策だけで完結させず、営業が対応し、その結果を再びマーケティングへ戻すところまでを一連の仕組みとして設計することが重要です。

関連記事:営業トスアップの設計

One to Oneマーケティングで陥りがちな3つの失敗パターン

ここからは、One to Oneマーケティングを実践する際に陥りやすい失敗パターンを3つ紹介します。これまで80社以上のBtoBマーケティングに携わってきた経験から、特に多く見られるのが「個別配信とOne to Oneマーケティングの混同」「データ活用の設計不足」「営業連携の不備」です。

One to Oneマーケティングは、MAツールを導入してメールを出し分けたり、他社の成功事例をそのまま取り入れたりするだけで成果につながるものではありません。顧客データをどのように活用するのかを設計し、顧客の属性や行動、検討状況に応じて適切なアプローチを行い、その後の営業活動までつなげる必要があります。

この一連の設計が十分でないと、施策を実施しているにもかかわらず、顧客の反応や商談化率が改善しないといった状況に陥りやすくなります。自社でOne to Oneマーケティングに取り組む際は、成功事例だけでなく、こうした失敗パターンもあらかじめ把握しておくことが重要です。

失敗パターン1:個別配信=One to Oneと誤解し、差し込み程度で止まっている

1つ目は、メールに顧客名や企業名を差し込むだけで「One to One施策ができている」と考えてしまうパターンです。名前や企業名の差し込みは個別化の入り口にすぎません。One to Oneマーケティングで重要なのは、顧客の属性や行動、検討状況をもとに、「何を、いつ、どのように届けるか」まで変えることです。

たとえば、同じサービスに興味を持っている顧客でも、初めてWebサイトを訪れた顧客と、サービス資料をダウンロードした後に料金ページを何度も閲覧している顧客では、検討状況が異なります。前者には課題への理解を深めるコンテンツ、後者には導入事例やサービスの詳細情報を案内するなど、行動に応じて提供する情報を変える必要があります。

名前だけを差し替えても、メールの内容や配信タイミングがすべての顧客で同じであれば、それぞれの検討状況に合ったコミュニケーションにはなりません。そのため、メールの開封率やクリック率だけでなく、その後の商談化率にも十分な変化が表れない可能性があります。

実際にOne to Oneマーケティングを機能させている企業では、こうした行動データを施策に反映しています。Amazonでは閲覧履歴などをもとに表示する商品を変え、CLUE様では3日連続でWebサイトを訪問したユーザーを検知し、インサイドセールスへ連携する仕組みを構築しています。

このように、単に顧客ごとに表示内容を変えるのではなく、顧客の行動から現在の興味・関心や検討状況を捉え、コンテンツや配信タイミング、その後のアプローチまで変えることが、One to Oneマーケティングでは重要です。

失敗パターン2:データは蓄積されているが、セグメント設計ができていない

2つ目は、MAに顧客データは蓄積されているものの、セグメント設計ができておらず、施策に十分活用できていないパターンです。MAを導入すると、企業情報や担当者情報に加えて、メールの開封・クリック、Webサイトの閲覧、資料ダウンロードなど、さまざまなデータを蓄積できるようになります。しかし、データが増えるだけでOne to Oneマーケティングが実現するわけではありません。

よくあるのが、「どのような条件で顧客を分類するのか」が決まっていない状態です。業種や企業規模、部署、役職といった属性で分けるのか、Webサイトの閲覧や資料ダウンロードといった行動で分けるのか、あるいはスコアや検討フェーズまで組み合わせるのかを事前に設計する必要があります。

さらに、セグメントを作るだけではなく、それぞれに「どのコンテンツを届けるのか」「どのタイミングで配信するのか」「どの行動があれば次の施策へ移行するのか」まで決めておくことが重要です。セグメントと施策が紐づいていなければ、顧客を細かく分類できても、そのデータを実際のマーケティング活動に活かすことはできません。

こうした状況が起こる事情には、「MAを導入すれば、自動的にOne to Oneマーケティングができる」という誤解があります。MAは、あらかじめ設計したセグメントやシナリオを効率的に実行するためのツールであり、誰に何を届けるべきかを自動的に決めてくれるわけではありません。

そのため、MAを活用する前に、リードの属性・行動履歴・スコアなどを組み合わせ、「どのセグメントに、どのようなアプローチを行うのか」を設計しておく必要があります。この設計がないままでは、せっかくデータを蓄積しても活用方法を決められず、最終的には全員に同じメールを配信する運用へ戻ってしまいます。

失敗パターン3:マーケティングと営業の連携がなく、施策が商談につながらない

3つ目は、マーケティング部門がOne to One施策を設計しても、営業部門との連携が十分にできておらず、商談につながらないパターンです。具体的には、ホットリードの定義について双方の認識が合っていない、営業へのトスアップが担当者ごとの判断に委ねられている、営業が対応した結果がマーケティングへ共有されないといった問題が挙げられます。

One to Oneマーケティングでは、顧客の属性や行動をもとに検討度を判断し、確度が高まったタイミングで営業へ引き渡します。しかし、マーケティングと営業で「どのような状態になったらホットリードと判断するのか」という認識が異なっていると、マーケティング側では有望と判断したリードでも、営業側からは「まだ商談する段階ではない」と判断されることがあります。

Sells upでは、マーケティング部門だけでOne to One施策の設計を完結させることは推奨していません。マーケティングがリードの検討度を高めても、その後に顧客へアプローチし、商談へつなげるのは営業部門です。営業が「トスアップされても活用できないリードが多い」と感じる状態が続けば、次第にリードへの対応が後回しになり、せっかく構築した仕組みが機能しなくなる可能性があります。

そのため、スコアリングの閾値やMQLの条件は、マーケティング部門だけで決めるのではなく、過去の商談・受注データや営業現場の意見も踏まえて双方で合意することが重要です。そのうえで、「どの条件を満たしたら営業へトスアップするのか」「トスアップ後、何時間以内に対応するのか」「対応結果をどのようにマーケティングへ返すのか」といったルールをSLAとして明文化します。

さらに、営業から返ってきた「商談化した」「検討時期がまだ先だった」「ターゲットと異なっていた」といった情報を蓄積し、スコアリングやセグメント、ナーチャリングシナリオの見直しに活用することも重要です。マーケティングから営業へリードを渡して終わりにするのではなく、営業の結果を再びマーケティング施策へ反映するところまで仕組み化することで、One to Oneマーケティングの精度を継続的に高められます。

「やっているのに成果が出ない」状態から抜け出すために

施策を続けているのに商談が増えない、リードの質が上がらない。こうした課題の多くは、戦略と施策のつながりが設計されていないことが原因です。Sells upは現状の分析と改善の優先順位整理から支援します。

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まとめ

本記事では、BtoC・BtoBにおけるOne to Oneマーケティングの成功事例7選を紹介し、そこから見えてくる3つの共通点や、BtoBで実践するための5つのステップ、陥りがちな失敗パターンについて解説しました。

成功事例に共通しているのは、「顧客データの統合と可視化」「事業目標から逆算したセグメント・シナリオ設計」「マーケティング・営業・CSが連携できる仕組み」の3つです。成功事例の施策をそのまま取り入れるのではなく、こうした成果につながる仕組みを理解し、自社の環境に合わせて設計することが重要です。

BtoBマーケティングでOne to Oneマーケティングを実践する際は、データの棚卸し、セグメント設計、スコアリング、MAによる自動化、SLAの構築という5つのステップで進めます。Sells upの支援でも、ブリューアス様・CLUE様ともにこうした流れで施策を立ち上げ、休眠顧客からの受注や継続的にリードを獲得する仕組みの構築につなげてきました。

成功事例を読んで終わりにするのではなく、自社が保有するデータや組織体制、営業プロセスに置き換え、「自社ではどのように実現できるか」を考えることが大切です。自社に合った仕組みを構築し、継続的に改善していくことで、One to Oneマーケティングを商談創出につなげられるようになります。

よくある質問

One to Oneマーケティングの目的は何ですか?

One to Oneマーケティングの目的は、顧客一人ひとりの属性・行動に合わせた個別最適なコミュニケーションで、購買率・LTV・顧客ロイヤリティを高めることです。BtoBマーケティングでは、長期化する検討プロセスの中で「今の検討フェーズに合った情報」を届けることで、商談化率と受注率の向上を狙います。

ワントゥワンマーケティングとは何ですか?

ワントゥワンマーケティング(One to Oneマーケティング)とは、顧客データにもとづいて個別に最適化されたメッセージ・施策を届ける手法のことです。画一的なマスマーケティングと対比される概念で、現時点ではMAツールやCDP(顧客データ基盤)の普及により導入しやすくなっています。

マーケティング近視眼の身近な例は何ですか?

マーケティング近視眼とは、自社商品の機能・スペックばかりを訴求し、顧客が本当に解決したい課題を見落とす状態を指します。BtoBマーケティングでいえば、LPに機能一覧ばかり並べて顧客の課題解決ストーリーが描けていないケースが該当します。弊社が支援したブリューアス様ではLPを論理的なお客さまとのコミュニケーション視点で再設計、CLUE様ではサービス機能中心からお客さまの課題解決に焦点を当てた構成に再設計することで、One to One施策と合わせて成果につなげました。

O2Oマーケティングの事例とOne to Oneマーケティングの違いは何ですか?

O2O(Online to Offline)マーケティングとは、オンラインの接点からオフライン店舗への送客を促す手法のことです。One to Oneは「個別最適化」が主軸、O2Oは「オンラインとオフラインの連携」が主軸である点が異なります。BtoBマーケティングでは、セミナー(オンライン)から商談(オフライン接触)につなげる際に両者を組み合わせるケースが多く、弊社がCLUE様を支援した事例でもセミナー後のアンケートから関心トピックを分析し、個別のフォローアップメールで商談化率を高めた実例があります。

BtoBマーケティングでもOne to Oneマーケティングは有効ですか?

BtoBマーケティングこそOne to Oneマーケティングが有効です。意思決定者が複数関わり検討期間も長いBtoB取引では、検討フェーズに応じた個別最適化が商談化率を大きく左右します。弊社が支援したブリューアス様では休眠顧客への個別掘り起こしメールで大型案件を受注、CLUE様では3日連続訪問ユーザーを検知してインサイドセールスへ自動連携する仕組みを構築しました。

One to Oneマーケティングを始めたいが、どこから着手すべきですか?

最初に着手すべきは、顧客データの棚卸しと統合です。MAツールの導入や高度なシナリオ設計より前に、分散している顧客情報を一元化することが重要です。弊社の支援事例でも、データ統合が整っていないままOne to One施策を設計すると効果が出ない落とし穴に陥るため、まず現状のデータ状況を整理することから支援を始めます。

MAを導入したのにOne to One施策が商談につながらない場合はどうすればよいですか?

多くの場合、原因はツールではなく「セグメント設計」「スコアリング閾値」「営業との連携ルール」のいずれかが欠けていることにあります。弊社にご相談いただく企業でも、MAを高機能なメール配信ツールとして使っている状態から、スコアリングとSLA設計を整えることで商談化につながるケースを多く見てきました。ツール設定の見直しより前に、セグメントと営業連携の再設計から着手することをおすすめします。

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株式会社Sells up 代表取締役
武田 大
株式会社AOKIにて接客業、株式会社リクルートライフスタイル(現:株式会社リクルート)にて法人営業を経験後、株式会社ライトアップでBtoBマーケティングを担当。デジタルマーケティングエージェンシーを経て2023年に株式会社Sells upを設立。戦略設計・KPI設計を起点に、リードジェネレーション、ナーチャリング、MA/SFA活用、営業連携までBtoBマーケティングを一気通貫で支援。KGI逆算のKPI設計やリードスコアリングの統計的設計、営業連携SLAの構築を強みとし、業界・規模を問わず80社以上に提供。Account Engagement SpecialistおよびTableau Desktop SpecialistのSalesforce認定資格を保有。
保有資格Salesforce Certified Marketing Cloud Account Engagement Specialist/Tableau Desktop Specialist
専門領域BtoBマーケティング/リードジェネレーション/リードナーチャリング/マーケティングオートメーション/HubSpot導入活用支援/Account Engagement導入活用支援/Marketo活用支援/インサイドセールス/統計解析によるスコアリング設計/商談化率向上/マーケティングROI改善