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MAスコアリング事例|営業に使われる設計と運用手順

MAスコアリングの設計プロセスと営業連携で問い合わせを増やす実践手順

同じ成果を、自社でも再現できるか確認したい方へ

Sells upはBtoBマーケティング支援に特化し、これまで80社以上の支援実績を持ちます。 広告費10万円で月100件のリード創出、MA活用で問い合わせ10倍など、事例で紹介した成果は実際に支援した企業で起きたことです。 自社の課題に当てはめて何ができるかを、まずはお気軽にご相談ください。

目次

マーケティングオートメーション(MA)におけるスコアリングとは、見込み顧客の属性や行動を数値化し、「どのリードから商談化を狙うべきか」を見極めるための仕組みです。

弊社が支援してきた企業でも、スコアは用意したものの営業にはほとんど使われず、結局はハウスリストの上から順番に電話している、といった状況が少なくありません。

本記事では、そうした現場感も踏まえつつ、弊社の支援知見から整理したスコアリング設計の手順、営業に使ってもらうための合意プロセス、そしてツール選定時の考え方までをまとめてお伝えします。

本記事で扱う全体像|3軸・5ステップ・SLAを把握する

最初に、全体像を共有します。MAのスコアリングを「設計しただけ」で終わらせず、きちんと機能させるために押さえたいポイントは、

  1. 3つの評価軸(属性・行動・活性度)でリードを多面的に見ること
  2. 5つのステップで段階的に設計・運用していくこと
  3. SLAでマーケと営業の引き継ぎルールを文書として取り決めること

の3つです。本記事は、この3点を中心に構成しています。

併せて、「そもそも今の自社にスコアリングが必要かどうか」も、先にチェックしておくと判断しやすくなります。

具体的には、

  • 月間のリード数が一定以上コンスタントに発生しているか
  • 数ヶ月分の行動データが溜まっているか
  • 営業がすべてのリードに個別でアプローチするには限界があるか

この3つがそろっていれば、スコアリングを検討する意味があります。どれか一つでも欠けている場合は、まずはリード獲得とコンテンツの充実を優先した方が、結果として近道になることが多いでしょう。

どの順番で読めばよいか迷う場合は、まずは弊社の支援経験をもとにまとめた事例パートから目を通し、そのあとで設計手順とSLA設計のパートを読むと、「自社では何から手を付けるべきか」がイメージしやすくなります。

マーケティングオートメーション(MA)におけるスコアリングとは|1分でわかる定義と役割

MAの文脈でいうスコアリングとは、見込み顧客の属性情報と行動履歴に点数を付け、商談化に近いリードを抽出する仕組みを指します。担当者として押さえておきたい役割は3つあります。

  1. 「誰が有望か」を客観的に判断する物差しをつくること
  2. 営業がどのリードから優先的にアプローチすべきかを可視化すること
  3. マーケティング活動の成果をスコアとして説明できるようにすること

です。

BtoBマーケティングでは、月によっては数百〜数千件単位のリードが発生する一方で、営業がフォローできる件数には限りがあります。すべてのリードに同じ熱量で接触していると、本来すぐに商談化できたはずの有望リードを取り逃がし、検討初期のリードへの対応に時間を取られてしまいがちです。

スコアリングは、この「どこからアプローチするか」という優先順位付けを仕組みとして組み込むための機能だと捉えてください。

スコアリングの定義|属性×行動を数値化する仕組み

スコアリングでは、見込み顧客のプロフィール情報(業種・企業規模・役職など)と、サイトやメール上での行動(資料ダウンロード、ウェビナー参加、料金ページの閲覧など)にスコアを割り振り、その合計値で「どの程度商談化に近いか」を表現します。

たとえば「料金ページを閲覧したら20点」「役職が部長以上なら10点」といったルールを設定し、合計スコアが一定のラインを超えたリードを「MQL(Marketing Qualified Lead)」として営業に引き渡す、といった使い方が一般的です。

「事例を読んでも自社で再現できない」のはなぜか

他社の事例記事で、業界別の配点例やスコアシートを見ても、「うちにそのまま当てはめるのは難しい」と感じる方は多いと思います。

よくあるのは、事例の多くが「最終的にこうなった」という配点表だけを公開し、その裏側にある設計の経緯や、営業とのすり合わせ、運用開始後の見直し履歴までは触れていない、という点です。

本当に再現に必要なのは、完成形の配点そのものではなく、「どうやって作り」「どうやって営業に使ってもらう状態にしていったか」というプロセスの部分です。

本記事の到達点|弊社の支援知見から学ぶスコアリング設計のプロセス

そこで本記事では、弊社が支援した株式会社SmartHR様のケースをもとに、1年間にわたるスコアリング設計のプロセスを、確認できる事実に絞って時系列で整理しました。

そのうえで、そこから抽出した実務的な設計手順をご紹介します。読み終えたときに、「自社のスコアリングはどこから見直すべきか」を判断できる状態になっていることをゴールにしています。

MAスコアリングの3つの評価軸と採点設計の基本

MAのスコアリングを組み立てる際にまず意識したいのは、評価軸を3つに分けて、リードを立体的に見ることです。具体的には、

  1. 属性スコア(ターゲットへの適合度)
  2. 行動スコア(興味・関心の強さ)
  3. 活性度スコア(検討タイミング)

の3つを組み合わせて扱います。

どれか一つの軸だけで判断すると、どうしても抜け漏れが発生します。たとえば属性が理想ターゲットにぴったりでも、直近ではまったく動きがないリードを優先してしまったり、行動は多いものの、ターゲット外の企業規模のリードに時間を使ってしまったり、といったケースです。

3軸を掛け合わせて評価することで、「ターゲットに合致していて、なおかつ今まさに動いている」リードを、精度高くピックアップできるようになります。

スコアリング設計全体の流れや考え方は、スコアリング設計の全体像という別記事で体系的に整理しています。3つの評価軸の位置づけをより立体的に理解したい場合は、あわせてご覧ください。

属性スコア|企業規模・業種・役職をどう点数化するか

属性スコアは、リードが所属する企業や個人に関する静的な情報に点数を付ける考え方です。

典型的な項目としては、企業規模(従業員数や売上規模)、業種、本社所在地、役職、所属部門などが挙げられます。たとえば、自社の主要ターゲットが「従業員300名以上の人材サービス企業の経営層」だとしたら、その条件に当てはまるリードには、大きめのスコアを与えるイメージです。

弊社が支援した企業の中でも、属性スコアを設計しようとしたときに、「そもそも自社にとっての理想顧客像(ICP)がきちんと文章になっていない」というケースは少なくありません。属性スコアは、あくまでICPを言語化したうえで、「その条件をどの程度満たしているか」を数値に落とし込むパートだと捉えると、スムーズに設計できるようになります。

行動スコア|閲覧・DL・参加・問い合わせの配点ルール

行動スコアは、リードがWebサイトやメール上で取った行動に対して、「どのくらい購入意欲の強さが表れているか」を踏まえて点数を付けていく考え方です。代表的な行動としては、Webページの閲覧、ホワイトペーパーのダウンロード、ウェビナーへの参加、メールの開封・クリック、各種フォーム送信などが挙がります。

弊社の支援で、最初のたたき台として採用することが多い配点イメージとしては、「料金ページの閲覧は20点」「導入事例のダウンロードは15点」「ホワイトペーパーのダウンロードは5点」「メール開封は1点」といった形です。

ただし、業界や商材によって「どの行動がどれくらい購買に近いか」は変わるため、自社の受注データを見ながら調整していくことが重要です。「すべての行動に同じ点数を付けてしまい、結局どのリードが優先なのか分からない」というご相談は、弊社の支援でもよく頂くテーマです。

活性度スコア|直近の行動頻度と時間減衰の考え方

活性度スコアは、「その行動がいつ起きたか」という時間軸の情報を評価に織り込むためのものです。同じ「料金ページ閲覧」という行動でも、半年前に一度だけ見ているのか、先週から立て続けに見に来ているのかでは、検討の温度感がまったく違うことは直感的にもわかるかと思います。

そこで、たとえば直近30日以内の行動に重みを置き、一定期間まったくアクションがなければスコアを減点・リセットするといった仕組みを組み込んでいきます。

弊社が支援先にお伝えしている一つの目安としては、「90日間まったくアクションがないリードはスコアをリセットする」という運用があります。

古い行動に基づくスコアがいつまでも残っていると、営業が「半年前の温度感」を見てアプローチしてしまい、「今はもう検討していない」と断られる、という状況が起きやすくなります。

活性度スコアは、営業の限られた工数を守るためにも、欠かせない設計要素です。なお、検討期間が半年〜1年以上に及ぶような長期商材では、120日や180日といったスパンで減衰させる、という考え方も現実的です。

ネガティブスコア|購買意欲低下を捉える設計

ネガティブスコアは、購買意欲の低下や「そもそもターゲット外ではないか」というサインに対して減点を行うための仕組みです。

たとえば、メールの購読停止や退会、競合製品の比較ページばかりを見ている行動、対象外業種であることが後から判明した場合などが該当します。

加点だけの設計だと、本来は営業に渡すべきではないリードがスコア上位に紛れ込んでしまうため、ネガティブスコアのルールをセットで用意しておくことがポイントになります。

支援事例|SmartHR Plus様で1年間に問い合わせ数が約10倍になったマーケティング基盤づくり

ここからは、弊社が支援した株式会社SmartHR様の事例をご紹介します。1年間をかけてマーケティング基盤を整備していく中で、スコアリング設計はあくまでその一部の役割を担っていました。問い合わせ数が1年間で約10倍に増えたのは、初期設定、定期的なメール配信、トリガーメール、問い合わせフォームの整備など、複数の施策が組み合わさった結果であり、スコアリングだけの効果ではないという点を、最初にお伝えしておきます。

本事例で触れている内容は、SmartHR様側で公表されている情報や、公開可能な範囲の事実に限定しています。配点の詳細や運用ルールなど、顧客固有のノウハウに関わる部分については、本記事では割愛しています。

背景|BtoBアプリストア40以上のアプリを抱え、社内に運用経験者がいない状態からのスタート

SmartHR Plusは、2023年12月に正式リリースされたBtoB向けのアプリストアサービスで、40以上のアプリケーションが掲載されています。

SmartHR本体と連携して使えるアプリが多数ラインナップされている一方で、リリース当初はAccount Engagement(旧Pardot)を導入したものの、社内に本格的な運用経験を持つマーケターがほとんどおらず、初期設定の段階から「どこから手を付けるべきか」で悩んでいる状態でした。弊社の支援は、まさにこの立ち上げフェーズからスタートしています。

Phase1|Account Engagement初期設定と最初のメルマガ配信

支援開始後、まずはAccount Engagement上での初期設定を集中的に進め、おおよそ1ヶ月程度で最初のメルマガ配信まで持っていきました。

具体的には、リードデータベースの設計、セグメントの定義、メールテンプレートの準備、基本的な配信フローの構築などを整えています。この立ち上げ期間を短縮できたのは、初期の設定方針や判断ポイントを弊社側で整理したうえで、SmartHR様には確認と承認に集中していただく、という役割分担を取ったことが大きな要因でした。

Phase2|週次でメール文面を積み上げ、短期間で多数のパターンに拡充

初回の配信以降は、毎週、性質の異なる複数のアプリを対象に、ターゲットの要件定義、タグ付け、メール文面の作成までを一気通貫で進めていきました。週次で新しい文面パターンを追加していくことで、短期間のうちにかなりの数のメールパターンを持てるようになっています。

この期間で特に意識したのは、単にメールの本数を増やすことではなく、「アプリごとにターゲットとなるペルソナが違う」という前提で、セグメントをきちんと切り分けることでした。スコアリングの観点で言えば、「どのアプリの、どの行動に、どの程度のスコアを付けるか」を細かく設計していくための土台づくりの期間だった、と言えます。

Phase3|SmartHRユーザーの行動データをベースにしたトリガーメール配信開始

翌年の立ち上がりには、SmartHRのユーザー行動データをもとにしたトリガーメールの配信をスタートしました。トリガーメールとは、特定の行動(例:特定のアプリ詳細ページへのアクセスや、特定機能の利用開始)が発生したタイミングで、自動的に送られるメールのことです。ユーザーの検討タイミングを逃さずにコミュニケーションを打てるため、BtoBにおいても重要な仕掛けになります。

このフェーズに入ることで、これまで設計してきた行動スコアや活性度スコアが、実際の配信に接続されました。スコアリングは単に「点数を付けて眺めるもの」ではなく、「一定以上のスコアになったら、こういうアクションを起動する」という形で、運用フローの中に組み込んでこそ意味を持ちます。

スコアリングとメール配信の連携については、ナーチャリングとスコアリングの連携でも整理していますので、シナリオ設計の参考にしてみてください。

Phase4|Account Engagement上に40以上のアプリ対応の問い合わせフォームを構築

さらにその後、Account Engagement上に、40以上あるアプリすべてに対応した問い合わせフォームを構築しました。ユーザーがどのアプリに関心を持って問い合わせをしてきたのかを、データとしてきちんと取得できるようにした形です。

問い合わせフォームの整備は、マーケティング基盤づくりの仕上げにあたる部分です。スコアによって購買意欲が高まったリードがいても、その受け皿となるフォームや導線が整っていなければ、せっかくの行動が商談に結びつきません。スコアリングを導入する際は、「点数を付ける仕組み」と同時に、「スコアが上がったリードをどこに流し込むのか」という受け皿の設計までセットで考える必要があります。

成果|マーケティングチーム全体の目標である問い合わせ数が1年間で約10倍に成長

こうした取り組みを1年間かけて積み上げた結果、マーケティングチーム全体で追っていた「問い合わせ数」は、おおよそ10倍程度まで伸びました。Salesforceとのデータ連携についても、社内の他部門から直接相談が持ち込まれるようになり、マーケチームの専門性が組織全体に認知されてきた、という変化も生まれています。

繰り返しになりますが、この成果はスコアリングだけのものではありません。初期設定から始まり、メール文面の拡充、トリガーメールの実装、問い合わせフォームの構築といった複数の施策が相互に作用した結果です。その中でスコアリングは、「どのリードを営業に渡すべきか」を見極める役割を担い、営業活動の質と効率を底上げするための基盤として機能しました。SmartHR様からパートナー選定時に評価いただいたポイントとしては、「手を動かすスピードや柔軟性」と、「マーケ施策全体をビジネスの視点で組み立てる姿勢」が挙げられています。


1年間で約10倍の問い合わせ数を獲得!急成長のマーケチームを支えたMA活用支援の裏側に迫る

SmartHR Plusのプラットフォーム事業部が、Account Engagement導入初期にSells upのMA活用支援を活用した事例。社内知見ゼロの状態からトリガーメール・スコアリング設計・40超のフォーム構築まで一貫支援し、1年で問い合わせ数約10倍を達成。マーケチーム立ち上げ期にMA成果を最速で出す支援の全貌を公開。

sellsup.co.jp

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この事例から紐解く「スコアリングが営業に使われる仕組み」の3要素

この事例から、一般化できるポイントを3つ挙げるとすれば、次のようになります。

1つ目は、スコアリングそのものを単体で設計するのではなく、「初期設定 → メール文面の拡充 → トリガーメール → 受け皿となるフォーム構築」というステップの中に位置付けていったこと。

2つ目は、文面の数とターゲットセグメントの両方を整えて、スコアリングの土台となる行動データを意図的に増やしていったこと。

3つ目は、最後に問い合わせフォームという受け皿を整備し、高スコアのリードが自然と流れ込む導線を確保したことです。

MAスコアリング設計の5ステップ|事例から逆算した進め方

ここからは、先ほどの事例も踏まえて整理した、MAスコアリング設計の5つのステップをご紹介します。これは、受注データの分析からスタートし、営業との合意形成、ツールへの実装、そして定期的なチューニングまでを一連の流れとして捉えたものです。順番としては、

  1. 受注データから仮説を立てる
  2. 評価項目数を絞ってシンプルに始める
  3. 営業とMQL閾値を決める
  4. 導入後30日でスコア分布を確認する
  5. 四半期ごとにチューニングする

の5つです。

最初から完璧なモデルを作ろうとすると、設計だけで数ヶ月が過ぎてしまい、その間は何も動かない、という状況になりがちです。

まずはシンプルなルールで走らせてみて、一定期間データを貯めてから配点を見直していくほうが、現場で本当に機能するモデルを早く手に入れやすい、というのが弊社の経験則です。

Step.1|受注データから「自社のホットリード像」を仮説化する

最初のステップは、過去の受注顧客データを分析し、「自社にとってのホットリードとはどんなリードか」を仮説として言語化することです。具体的には、受注に至ったリードに共通する属性(業種・企業規模・役職など)や行動パターン(接触したコンテンツ、問い合わせ前によく見られているページ、初回接触から受注までの期間)を洗い出していきます。

弊社が支援してきた企業でも、この受注分析を飛ばして「まずはスコアリングを作ってみよう」と進めてしまい、「営業の感覚とズレたスコア」が量産される、というパターンは珍しくありません。少し時間はかかりますが、この段階で受注データをじっくり見ることが、後から効いてくる場面は非常に多いです。

Step.2|評価項目を「属性5項目+行動10項目」程度でシンプルに始める

次に、スコアリングで使う評価項目を決めます。弊社の支援先では、最初の段階では「属性5項目+行動10項目」くらいに絞り込んでスタートすることがほとんどです。いきなり30〜50項目も用意してしまうと、「どの項目が効いているのか」が分からなくなり、改善の手が打ちづらくなってしまいます。

具体例として、属性スコアには「役職」「企業規模」「業種」「所在地」「部門」の5つ、行動スコアには「料金ページ閲覧」「導入事例ダウンロード」「ホワイトペーパーダウンロード」「ウェビナー参加」「メールクリック」「フォーム送信(資料請求)」「フォーム送信(問い合わせ)」「特定機能ページ閲覧」「複数回のサイト訪問」「比較資料ダウンロード」といった10個を入れるケースが多いです。あくまで「最初の一歩としての目安」なので、自社のビジネスに合わせて取捨選択してください。

Step.3|営業と「MQLに渡す閾値」を合意するワークショップを開く

5つのステップの中でも、最も重要なのがこのStep.3です。スコアの合計値が何点を超えたらMQLとして営業に渡すのか、その閾値をマーケティングと営業が同じ場で決めるプロセスです。マーケ側が「スコア50点以上をMQLにしよう」と決めても、営業側が「そのスコアで渡されるリードは商談にならない」と感じていれば、そのルールは現場では機能しません。

ワークショップの進め方としては、過去の受注リードと失注リード、それぞれに仮のスコアを付けて並べて見せ、「営業から見て話してみて手応えがあったリード」と「まだ温度が低かったリード」を営業メンバーに振り分けてもらう、という方法が有効です。データと現場感の両方を見ながら、「このスコア帯ならMQLと言えそうだ」というラインを一緒に探っていきます。

MQLの定義そのものをよりきちんと設計したい場合は、MQL基準の設計手順で、定義文の作り方や合意プロセスを詳しく解説しています。

Step.4|MAツールに実装し、最初の30日でスコア分布を確認する

配点ルールが決まったら、MAツールに実装し、まずは30日ほど動かしてみます。そのうえで、スコアの分布を必ずチェックしてください。見るべきポイントは2つあります。1つは、極端に高得点のリードが大量に発生していないかどうか。もう1つは、ほとんどのリードが低得点のままになっていないかどうか、です。

前者の場合は、配点が全体的に甘すぎる可能性が高く、後者の場合は、ルールが厳しすぎるか、そもそも行動データの母数が足りていないかのどちらかであることが多いです。まずは30日分のデータを見て、明らかにおかしな傾向があれば、そのタイミングで一度目のチューニングを行う、というイメージです。

Step.5|四半期ごとに営業フィードバックでスコア配点をチューニングする

スコアリングを一度導入したら終わり、ではなく、四半期ごとに営業からのフィードバックをもとに配点を見直していくのが現実的です。レビューの際に確認したいのは、「高スコアにもかかわらず商談化しなかったリードに、どんな共通点があるか」「逆に、低スコアだったのに商談化したリードに、どんな行動パターンがあったか」という2点です。

弊社では、こうしたチューニングに統計解析(ロジスティック回帰分析など)を取り入れ、各項目がどの程度受注に影響しているかを数値で算出する方法もご提案しています。担当者の経験だけで配点を決めていると、「なぜこの行動は20点なのか」と聞かれたときに説明しづらく、社内の理解を得にくくなるためです。

統計的なアプローチでスコアの重み付けを見直したい場合は、統計解析によるスコア重み付けで、ロジスティック回帰の考え方や、実際の運用への落とし込み方を紹介しています。

「スコアを設計したのに営業に使われない」状態からの立て直し方

「スコアリングは導入したものの、営業がまったく見てくれない」という相談もよく頂きます。この状態とは、MAツール上ではスコアが付いているものの、営業の行動がそのスコアを前提に変わっていない状況を指します。原因として多いのは、

  1. ①マーケ側だけで配点を決めてしまった
  2. ②MQLの閾値が営業の感覚とズレている
  3. ③スコアの根拠を説明できない

の3つです。

本来、スコアリングは「マーケ部門が作ったシステム」ではなく、「営業とマーケが一緒に決めた合意事項」であるべきです。そのプロセスを踏まずにスコアリングだけを先行させると、営業側からは「マーケが勝手に付けた数字」にしか見えず、自分の判断よりスコアを優先しようとはなかなか思ってもらえません。

失敗パターン1|マーケティングだけで配点を決めてしまった

一番よくある失敗が、マーケティング部門だけでスコア配点を決めてしまうパターンです。マーケ側としては仮説に基づいて設計しているつもりでも、営業現場の肌感覚とズレていることは多く、その結果としてスコア通知が見向きもされなくなってしまいます。

スコアリングの振り返りミーティングでは、営業から「通知が毎日30件くらい来るんですけど、正直そこまで手が回らないんですよね」「最初に何件か電話したときの温度感が低かったので、それ以降、通知自体あまり信用していません」といった声が挙がることも少なくありません。ここから立て直すには、まず設計の段階に営業を巻き込むところからやり直す必要があります。

失敗パターン2|閾値(MQL基準)が営業の感覚と合っていない

2つ目は、「何点からMQLとするか」というラインが営業の感覚と合っていないケースです。マーケ側が「スコア100点以上はMQL」と定義しても、営業がそのリードに実際にコンタクトしてみたら「情報収集の段階で、予算も決まっていなかった」という状況が続くと、スコアそのものへの信頼が失われてしまいます。

レビューの場では、「スコア100点と聞いて期待して電話したのに、全然そんな状態ではなかった」という指摘がよく挙がります。立て直しの際には、過去の商談ログとスコアを付き合わせ、「商談化しているリードの最低スコア帯はどのあたりか」を洗い出し、その値を新しいMQLの基準として設定し直す、というアプローチが有効です。

失敗パターン3|スコアの配点の根拠を説明できない

3つ目は、「なぜその行動がその点数なのか」を説明しきれないケースです。「料金ページ閲覧を20点にしました」と言った時に、「どうして20点なのか」「15点ではダメなのか」と問われても、「重要そうだから」という答えでは説得力がありません。営業から「その20点は何を根拠にしているんですか?」と聞かれて言葉に詰まった経験がある方も多いのではないでしょうか。

この問題に対処するには、受注データを使った分析や統計的な手法を取り入れ、「この行動は商談化に対してこれくらい影響している」という根拠を持たせることが大切です。感覚だけで配点を決めていると、後から必ず説明責任が発生します。

立て直しの3ステップ|営業ヒアリング→受注データ照合→閾値の再設定

こうした状況から立て直す際は、次の3ステップで進めることをおすすめします。

1つ目は、営業メンバーにヒアリングし、「最近商談化したリードに共通する特徴は何か」を言葉にしてもらうこと。

2つ目は、その内容を過去の受注データと突き合わせ、感覚とデータの両面から共通項を絞り込むこと。

3つ目は、そこで見えてきた特徴をもとにスコアの閾値を再設定し、あらためて営業と合意を取ることです。

もしスコアがなかなか上がらない原因が、「そもそも行動を促すコンテンツが十分に用意されていない」ことにあるなら、スコアリングより前にナーチャリング設計を見直す必要があります。スコアリングは、あくまでナーチャリングという土台があってこそ機能する仕組みだと捉えてください。

ナーチャリングの基本的な考え方については、ナーチャリング設計の基本でまとめています。

業界別・スコアリング配点の具体例

ここからは、業界ごとに「どんな行動に重みを置くべきか」の例を簡単に整理します。業界別のスコアリング設計とは、その業界ならではのリード行動や購買プロセスを踏まえて、どの行動にどれくらい加点するかを調整していく考え方です。ざっくり言うと、

  1. SaaSは製品内のトライアル行動
  2. 製造業は技術資料のダウンロードと展示会後の継続接触
  3. 人材サービスは採用の緊急度
  4. マーケ支援業はネガティブスコアの設計

といった違いがポイントになります。

SaaS業界|トライアル利用データを軸にしたPQLスコアリング設計

SaaSでは、無料トライアルやフリーミアム版が提供されているケースが多く、製品の中でユーザーがどう動いているかという行動データがスコアリングの中心になります。いわゆるPQL(Product Qualified Lead)という考え方で、「製品の主要機能をどの程度使い込んでいるか」が有料プランへの転換可能性を測る重要な指標になります。

弊社が支援したSaaS企業でも、料金ページ閲覧やデモ申込といった「購入に直結しやすい行動」に高いスコアを置き、ブログ記事の閲覧など「情報収集段階の行動」は相対的に低めのスコアに抑える設計が機能しています。「コンテンツマーケティングで多くのユーザーを集客できたものの、そのままスコアに反映したら情報収集層ばかりが高スコアになってしまった」という悩みは、SaaSの現場でもよく耳にするところです。

製造業|展示会後の継続接触と技術資料DLを軸にした設計

製造業では、展示会やカンファレンスでの名刺交換が、いまでも重要なリード獲得チャネルになっています。その一方で、「展示会後のフォローが追いつかない」「誰から優先的に連絡すべきか分からない」といった課題もよく聞かれます。この状況に対しては、展示会後のフォローメールの開封やクリック、技術資料やカタログのダウンロードなど、「接触が続いているかどうか」を重視した配点にするのが有効です。

実際に弊社が支援した製造業の企業では、「展示会から3ヶ月以上経っても継続して技術資料を見に来ているリード」は、初回接触時よりも検討度合いが高いと判断するルールを採用していました。

人材サービス業|採用緊急度と決裁者役職を組み合わせた設計

人材紹介や採用代行といった人材サービスのビジネスでは、「採用の緊急度」がスコアリングの重要な要素になります。「採用要件がまだ曖昧な段階のリードに営業が入ってしまい、なかなか案件化しない」「決裁権のない担当者と話を進めてしまい、途中で止まってしまう」といった課題に対しては、問い合わせフォームで「採用予定時期:1〜2ヶ月以内」といった項目を設けて加点したり、人事部長以上からの問い合わせに高スコアを付けたり、といった工夫が効果を発揮します。

マーケティング支援業|長期検討前提のネガティブスコア設計

マーケティング支援のように、検討期間が長く、単価も高めのサービスでは、「前向きに検討していたが、途中で温度が下がったリード」をいかに見極めるかがポイントになります。この場合は、「一定期間アクションがなければスコアを少しずつ下げていく」といったネガティブスコアの設計が、営業の工数を本当に動いているリードに集中させるうえで有効です。

スコアリングを営業に使ってもらうためのSLA設計

スコアリングをきちんと営業の現場で使ってもらうためには、SLA(Service Level Agreement)の設計が欠かせません。ここでのSLAとは、マーケティングが営業にリードを渡すときのルールを、文書として合意したものを指します。押さえておきたいのは、

  1. MQLの定義
  2. 営業の対応期限
  3. フィードバックの方法と頻度
  4. リサイクルの条件
  5. 月次のレビュー

という5つの観点です。

口頭だけの取り決めにしてしまうと、時間が経つにつれて必ず認識のズレが生じ、「あのときはこう決めたつもりだった」「いや、そんな話は聞いていない」といったすれ違いが起きます。文書にまとめて、両部門の責任者が合意したうえで運用を始めることで、スコアリングが一過性の施策ではなく、継続的なプロセスとして定着していきます。

SLA(マーケと営業の引き継ぎルール)とは何か

あらためて整理すると、SLAは「マーケティング部門が営業部門にリードを引き継ぐ際のルールをまとめた合意文書」です。BtoBの現場では、このSLAの有無によって、スコアリングがきちんと機能するかどうかが大きく変わります。SLAがない組織では、マーケと営業がそれぞれ別々の「ホットリード像」を頭の中に持っており、引き継ぎがどうしても感覚頼みになってしまいがちです。

SLAに盛り込むべき5項目|MQL定義/対応時間/フィードバック頻度/リサイクル基準/月次レビュー

SLAを作る際には、最低限次の5項目は明文化しておきたいところです。

1つ目は、MQLの定義(スコアの閾値と、必須となる属性条件)。

2つ目は、営業の初回対応期限(例:MQLを受け取ってから24時間以内に初回連絡をする、など)。

3つ目は、フィードバックの取り方(差し戻し理由の記録方法など)。

4つ目は、リサイクルの基準(一定期間アクションがなければ再度ナーチャリングに戻すか、スコアをリセットするかなど)。

5つ目は、月次でレビュー会を行うことです。

SLA合意の進め方|営業を巻き込むワークショップの設計

SLAの合意を進める際は、マーケの責任者と営業の責任者に加え、実際に運用する担当者も含めた半日〜1日ほどのワークショップを設けるのがお奨めです。

アジェンダの例としては、「現状のリード引き継ぎで何が困っているかの共有」「ホットリードの定義の擦り合わせ」「先ほどの5項目を一つずつ決めていく」「運用開始日と、最初のレビュー日を決める」といった流れです。

弊社の支援事例|SLA設計を通じて引き継ぎ品質を整えるアプローチ

弊社の支援では、スコアリングの設計とSLAの設計を、できるだけ並行して進めるスタイルを取っています。スコアの配点だけを決めても、引き継ぎのルールが整っていなければ、営業の行動は変わりません。

逆に、SLAだけを整えても、その裏側にあるスコア設計が粗いと、営業に渡るリードの質にばらつきが生まれます。両者をセットで整えることが、これまで多くの企業の支援を通じて見えてきた現実的なやり方だと感じています。

スコアリングのROIを経営層に説明する3つの指標

スコアリングにかけた投資がどれだけ成果につながっているかを説明するには、ROI(Return on Investment)を、経営層が理解しやすい数値で示す必要があります。その際に使いやすいのが、

  1. MQLからSQLへの転換率
  2. 営業1人あたりの商談創出数
  3. マーケ起点の受注額・受注率

という3つの指標です。

経営層が知りたいのは、「営業の生産性が上がったのか」「売上にどう貢献したのか」という2点に集約されます。抽象的な表現ではなく、これらの指標がスコアリング導入前後でどう変わったかを四半期ごとにレポートすることで、継続的な投資判断の材料になります。

MQL→SQL転換率の改善

1つ目の指標は、MQLからSQL(Sales Qualified Lead)への転換率です。スコアリングがうまく機能していれば、マーケから営業に渡したMQLのうち、「これは商談として追う価値がある」と営業が判断したSQLの割合が上がっていきます。導入前と導入後の転換率を並べることで、スコアリングの設計がどれだけ精度を増したかを示すことができます。

営業1人あたりの商談創出数

2つ目は、営業一人あたりの月次の商談創出数です。スコアリングによって優先順位が明確になっていれば、同じ人数・同じ時間の中でも、より多くの商談を作れるはずです。この指標は、経営層にとってもイメージしやすく、「スコアリングが営業の生産性向上にどれだけ効いているか」をストレートに伝えやすい指標です。

マーケティング起点の受注額/受注率

3つ目は、マーケティング施策から生まれたリードを起点とした受注額と受注率です。スコアリングの導入によって、マーケ起点の案件がどれだけ増えたのか、受注率がどれだけ改善したのかを、金額や割合で追うことで、マーケ施策全体のインパクトを経営層に伝えやすくなります。

報告フォーマット例|四半期レビューで何を共有すべきか

四半期ごとのレビューでは、先ほどの3つの指標の前後比較に加えて、「今期はスコアリングのどの部分をどう変更したか」「その変更によってどのような効果が出ていると考えているか」「次の四半期にどのような改善を予定しているか」といった情報をセットで示すとよいでしょう。経営層は数字だけでなく、「なぜそうなったのか」「次に何をするのか」というストーリーを重視するためです。

MAツール別スコアリング機能の比較と選定軸

最後に、代表的なMAツールにおけるスコアリング機能の違いと、ツール選定の際に見ておきたいポイントを簡単に整理します。ここでの焦点は、

  1. Account Engagementはスコアリングカテゴリによる製品別管理がしやすい
  2. HubSpotは手動スコアとAIによる予測スコアの両方を持つ
  3. Marketoは複数のスコアモデルを並行運用しやすい
  4. SATORIは匿名リードへのスコアリングに強みがある

という点です。

4ツールの選定マトリクス|体制規模・リード数・Salesforce有無で比較

自社にとってどのツールが適しているかを考える際の目安として、簡易なマトリクスを用意しました。

ツール向いている体制規模月間リード数の目安Salesforce連携スコアリングの特長
Account Engagement中堅〜エンタープライズ数百〜数千件標準(Salesforce純正)スコアリングカテゴリで製品別にスコアを分離管理できる
HubSpotスモール〜中堅数十〜数千件連携あり(別途設定が必要)手動スコアとAI予測スコアを併用できる
Marketoエンタープライズ数千〜数万件連携あり(別途設定が必要)複数のスコアモデルを並行して運用しやすく、ルール設計の自由度が高い
SATORIスモール〜中堅数十〜数百件連携あり(別途設定が必要)匿名リード(実名化前の訪問者)にもスコアを付与できる

たとえば、すでにSalesforceを利用していて、月間のリード数が数百件以上ある中堅〜大企業であれば、Account Engagementは候補に挙げやすいでしょう。

一方、1〜2名の体制でまずはスモールスタートしたい場合は、HubSpotやSATORIの方が取り回しやすいケースが多いです。Marketoは非常に柔軟な設計ができる反面、運用ノウハウも求められるため、体制がある程度整ったエンタープライズ企業向けという印象です。

いずれも、既存のCRM環境や予算、実現したいシナリオによって最適な選択肢は変わります。

Account Engagement(旧Pardot)|スコアリングカテゴリで複数製品を分離管理

Account Engagementは、Salesforce社が提供するBtoB向けのMAツールで、日本国内でも多くの導入実績があります。スコアリング機能で特徴的なのは、「スコアリングカテゴリ」という仕組みによって、製品ラインや事業領域ごとにスコアを分けて管理できる点です。複数のプロダクトを扱っていて、それぞれで購買行動が異なるような場合には、この分離管理が大きなメリットになります。

Account Engagementにおける具体的な配点設計や運用時の注意点については、Account Engagementの配点設計で詳しく解説しています。

HubSpot|手動スコアと予測スコア(AI)の使い分け

HubSpotは、手動でルールを設定するリードスコアと、AIが過去データから自動的にスコアを算出する予測スコアの両方を備えています。手動スコアは、自社が持つ業務知識や営業の感覚をルールに反映しやすいのが強みです。一方で予測スコアは、人間の目だけでは見落としがちなパターンをデータから見つけ出せる点にメリットがあります。実務上は、まず手動スコアで基本のルールを作り、ある程度データが溜まってきた段階で予測スコアも併用していく、という使い方が現実的です。

HubSpot固有の設定方法や、予測スコアの具体的な活用方法については、HubSpotの予測スコア活用で整理しています。

Marketo|複数モデル並走と詳細なルール設計

Marketoは、Adobe社が提供するエンタープライズ向けのMAツールで、スコアリングの設計自由度が非常に高いのが特徴です。複数のスコアモデルを用意し、製品別・地域別・キャンペーン別に評価軸を変えながら複数のスコアリングを同時に運用するといったことも可能です。多国籍展開や複雑な事業ポートフォリオを持つ企業にとっては、この柔軟さが大きな強みになります。

SATORI|匿名リードへのスコアリングが可能

SATORIは、国産のMAツールで、「匿名リード」へのアプローチに強みがあります。まだフォーム送信などで個人情報を取得していない段階のWebサイト訪問者の行動に対しても、スコアを付与することができ、後からフォーム送信があったタイミングで、そのスコアを個人に紐づける、といったことが可能です。初回接触の前からどれくらい関心を持っていたのかを把握できるため、「初回コンタクト時点での温度感」を見極めやすくなります。

自社に合うツールの選び方|体制・リード数・連携要件で判断する

ツール選定を行う際は、運用に割ける体制の規模、月間のリード数、既存のSFA/CRMとの連携要件といった観点から考えるのが現実的です。1〜2人の少人数体制で、まずはスコアリングを試してみたいという段階であれば、HubSpotやSATORIの方がスモールスタートしやすいでしょう。一方、Salesforceを基盤として複数の事業を展開しているようなエンタープライズ企業であれば、Account EngagementやMarketoが選択肢として上がりやすくなります。

スコアリング運用でよくある失敗5選と対応策

最後に、スコアリング運用で実際によく起きる失敗パターンと、その対策を整理しておきます。スコアリングは導入時にはうまく機能していても、運用を続けるうちに少しずつ現場とのズレが生まれ、気づいたら形骸化していた、というケースも少なくありません。よく見られるのは、

  1. 定期的な見直しが行われない
  2. 行動データの母数が少ない段階で導入してしまう
  3. 配点が担当者の主観に依存している
  4. 営業との定例レビューがない
  5. アカウント単位の評価が抜けている

といったポイントです。

失敗1|スコアの定期見直しが行われず陳腐化する

1つ目は、一度作ったスコアリングルールをそのまま放置してしまうパターンです。市場環境や、見込み顧客の情報収集行動は時間とともに変化していくため、導入時に最適だった配点が、1年後もそのまま通用するとは限りません。少なくとも四半期に一度はスコアリングを見直す機会を設け、できればそのサイクルをSLAの中にも組み込んでおくと良いでしょう。

失敗2|行動データが少ない状態で導入してしまう

2つ目は、行動データがほとんど溜まっていない段階でスコアリングを始めてしまうケースです。月間のリードが数十件程度しかない場合は、スコアリングよりも、まずリード数を増やす施策やコンテンツの拡充に注力した方が、短期的な成果にはつながりやすいです。母集団が小さいフェーズでは、営業がすべてのリードに直接アプローチした方が良いことも多いでしょう。

失敗3|スコアの「重み」が主観で決められている

3つ目は、スコアの配点が担当者の感覚だけで決まってしまうパターンです。「料金ページ閲覧は重要だから20点」といった決め方では、後から「本当に20点が妥当なのか」を検証しづらくなります。受注データを使った統計的な分析で、各行動が受注に与えている影響を数値で確認しながら配点を見直していくと、説得力のあるスコア設計に近づけます。

失敗4|営業との定例レビューが設けられていない

4つ目は、営業との定例レビューがないことです。スコアリングの精度は、データだけを見ていても上がりません。実際にリードと対面している営業から、「このスコア帯のリードは話してみるとこんな印象だった」といったフィードバックを継続的にもらうことで、モデルを磨き込んでいくことができます。月次あるいは四半期ごとに、スコアと商談化率の関係を一緒に確認する場を設けるのがおすすめです。

失敗5|アカウント単位の評価が抜けている

5つ目は、BtoB特有の課題として、「個人(リード)単位のスコアリングだけで完結してしまう」ケースです。実際のBtoBの購買では、同じ企業の中の複数人が関わるのが一般的です。そのため、「この企業全体としてはどれくらい温度感が高まっているのか」を見るアカウントスコアの考え方を取り入れると、営業の優先順位付けがしやすくなります。個人スコアに加えて、アカウント単位の評価軸も設けることを検討してみてください。

なお、スコアリングはどの企業にも必ずしもフィットするわけではありません。月間のリード数が極端に少ない場合や、Web上の行動データを取得できていない場合、営業が全リードに直接アプローチできる体制である場合は、スコアリングに時間をかけるよりも、別の打ち手にリソースを割いた方が良いケースもあります。スコアリングの導入を見送る場合は、「費用や運用の負荷に見合うだけのメリットが得られない可能性が高い」ことが主な理由になります。

まとめ|スコアリングは「設計」より「営業に使われる仕組み化」が重要

ここまで、MAのスコアリングについて、基本の考え方から設計のステップ、SmartHR Plus様の事例、SLAやROIの話、ツールごとの違いまで一通り見てきました。スコアリングは、見込み顧客の属性や行動を数値に落とし込み、商談化すべきリードを見極めるための仕組みです。

ただし、重要なのは、スコアリングを「マーケだけが作った仕組み」として終わらせず、「営業と合意を取ったうえで、日々の判断に組み込まれている状態」まで持っていくことです。配点の精度を高めることも大事ですが、それ以上に、営業がスコアを信頼し、優先順位付けの参考にしてくれる状況をつくることが、最終的な商談数や売上の増加につながります。SmartHR Plus様のケースでも、初期設定からトリガーメール、問い合わせフォームの構築までを段階的に積み上げる中で、スコアリングがその基盤の一部として機能し、結果として1年間で問い合わせ数が約10倍という成果につながりました。

スコアリングは、一度設計して終わりではなく、四半期ごとに営業とすり合わせながら育てていく仕組みです。本記事で紹介した5つのステップとSLAの考え方が、自社のスコアリングを見直す際の土台としてお役に立てば幸いです。

マーケティングオートメーションのスコアリングに関するよくある質問

スコアリングは何件のリードがあれば始めるべきですか?

弊社の支援経験を踏まえると、月間のリード数が一定以上安定して発生し、数ヶ月分の行動データが蓄積されている状況での導入をおすすめしています。リード数がまだ少ない段階では、スコアリングを入れるよりも、営業が全件フォローした方が早く成果につながるケースも多いです。そのため、母集団が小さい企業には、まずリード獲得やコンテンツの拡充を優先しましょう、というお話をすることがよくあります。

スコアリングのスコア配点は誰が決めるべきですか?

配点は、マーケティング部門と営業部門が一緒に決めるのが理想です。マーケ側だけで決めてしまうと、営業の感覚とズレてしまい、せっかく作ったスコアが現場では使われない、という状況になりがちです。弊社の支援では、設計段階から営業を巻き込んだワークショップを実施し、過去の受注ログを共有しながら配点とMQLの閾値を合意していく進め方を取っています。

スコアリングモデルはどのくらいの頻度で見直すべきですか?

導入直後の3〜6ヶ月くらいは、月に1回程度のペースで見直しの場を設けることをおすすめします。その後、運用が落ち着いてきたタイミングで、四半期ごとの見直しに切り替えるのが一つの目安です。市場環境やリードの行動パターンが変われば、設計当時の配点が最適ではなくなることもあるため、営業との定例レビューで「スコアと商談化率の関係」を確認しながら調整していくことが大切です。

スコアが高いのに商談にならない場合、何を見直すべきですか?

その場合は、まずは

  1. 属性条件が緩すぎないか
  2. 行動スコアが情報収集行動に偏りすぎていないか
  3. 活性度スコアが十分に効いているか

の3点を見直すとよいでしょう。料金ページの閲覧や問い合わせフォームへの到達といった、購入意向が強く表れる行動に配点を寄せていくのも一つの方法です。受注したリードの最低スコアと、高スコアのまま失注したリードの行動パターンを比較すると、調整の方向性が見えやすくなります。

BtoBマーケティングでアカウントスコアリングは必要ですか?

エンタープライズ向けの商材や、複数の意思決定者が関与する案件が多いビジネスでは、アカウントスコアリングの重要性は高いと考えています。BtoBの購買は、個人ではなく組織として意思決定されるため、リード単位のスコアだけでは全体の温度感を捉えきれないことが多いからです。まずはリードスコアリングから始めつつ、余力が出てきたタイミングでアカウント単位のスコアも検討する、という進め方が現実的です。

MAツールを導入していないと、スコアリングはできませんか?

簡易的なスコアリングであれば、スプレッドシートなどを使って実施することも可能です。ただし、Webサイト上の細かな行動データを自動で取り込み、リアルタイムにスコアへ反映していこうとすると、専用のツールの助けがほぼ必須になります。月間のリード数が増えてきて、手作業での管理が負担になってきた段階で、MAツールの導入とスコアリング設計を並行して検討するのが現実的です。

スコアリング設計を外部に依頼するメリットは何ですか?

外部に依頼するメリットは、自社だけでは手に入らない他社の成功・失敗事例を踏まえながら、スコアリングを短期間で立ち上げられる点にあります。弊社の場合は、Salesforce Certified Marketing Cloud Account Engagement Specialistといった資格を持つメンバーが、多数の企業の支援で蓄積してきた設計パターンをもとに、初期設定から営業との合意形成、運用のチューニングまでを一貫してサポートしています。社内にMAやスコアリングの経験者がいない状況で立ち上げるのであれば、外部の知見をうまく活用するのも、現実的な選択肢の一つだと思います。

同じ成果を、自社でも再現できるか確認したい方へ

Sells upはBtoBマーケティング支援に特化し、これまで80社以上の支援実績を持ちます。 広告費10万円で月100件のリード創出、MA活用で問い合わせ10倍など、事例で紹介した成果は実際に支援した企業で起きたことです。 自社の課題に当てはめて何ができるかを、まずはお気軽にご相談ください。

株式会社Sells up 代表取締役
武田 大
株式会社AOKIにて接客業を、株式会社リクルートライフスタイル(現:株式会社リクルート)にて法人営業を経験した後、株式会社ライトアップでBtoBマーケティングを担当。その後、デジタルマーケティングエージェンシーにてBtoBマーケティングの戦略設計/施策実行支援、インサイドセールスをはじめとしたセールスやカスタマーサクセスとの連携を通じたマーケティング施策への転換といった支援を行い、2023年に株式会社Sells upを設立。KGI逆算によるKPI設計・リードスコアリングの統計的設計・営業連携SLAの構築を含むMA活用支援を、業界・規模を問わず80社以上に提供してきた実績を持つ。Account Engagement SpecialistおよびTableau Desktop SpecialistのSalesforce認定資格を保有。