ツールの設定よりも、「何をどう設計するか」で成果が変わります

HubSpot・Account Engagement・Marketoに精通した担当者が、 ツールの設定支援だけでなく、リード育成シナリオやスコアリング設計まで一貫してサポートします。 まずは現状のツール活用状況をお聞かせください。

目次

Sells upはSalesforce Certified Marketing Cloud Account Engagement Specialist資格を保有し、80社以上のBtoBマーケティング支援の中でAccount Engagementのスコアリング設計・SFA連携・営業とのSLA構築を実際に行ってきました。株式会社SmartHRさまの支援では、主観的なスコアリングルールを統計的手法で再設計したことで、1年間に問い合わせ数が約10倍になりました。

この記事では、Salesforceを使ったリードスコアリングが「機能しない・形骸化する」原因と、Einstein(AI型)とAccount Engagement(ルールベース型)の使い分け、Account Engagementのスコアリング再設計の具体的な手順、そして営業との連携を仕組み化するSLA構築まで、一連の流れを解説します。

なぜ、Salesforceのリードスコアは機能しないのか

リードの「量」は足りているのに「質」が上がらない原因

マーケティング部門がリード獲得数の目標を達成しているのに、営業部門から「どのリードにアプローチすべきか分からない」「質の低いリードが増えている」という声が上がる。これは多くのBtoB企業で起きている状況です。

この問題の根本原因は「自社にとっての質の高いリードの定義が曖昧なまま」になっていることです。Sells upの支援現場で最も多く見るのは、「導入時に設定したルールがビジネス環境の変化に追いついていない」ケースです。数年前に重要だったコンテンツに高スコアが付いたまま、メール開封のような低エンゲージメント行動に点数が加算され続けてスコアがインフレを起こしています。

スコアリングが営業にとって「信頼できない指標」になった瞬間、その仕組みは形骸化します。この状態を解消するには、ツールの問題ではなく「設計の再構築」が必要です。スコアリングの基本的な考え方についてはリードスコアリングとは?BtoB担当者が最初に理解すべき仕組み・設計・営業連携の全体像を参照してください。

SalesforceのリードスコアリングはEinstein(AI型)とAccount Engagement(ルールベース型)の2択

Salesforce環境でリードスコアリングを実現するには、「AI活用型(Einstein)」と「ルールベース型(Account Engagement)」の2つのアプローチがあります。自社のフェーズと課題に合った手法を選ぶことが成功への第一歩です。

Einstein(AI型):特徴・メリット・向いている企業

EinsteinリードスコアリングはSalesforceのAIが過去の成約・失注データを分析し、「成約しやすいリードの共通パターン」を自動学習する機能です。各リードに1〜99のスコアを付与し、影響を与えたプラス・マイナスの要因も可視化されます。

  • 高い予測精度:人間の思い込みでは見つけられないデータ上の複雑な相関関係をAIが発見する
  • 運用の効率化:一度設定すればAIが自動学習を続けるため、手動でのルール見直しが不要
  • 営業の納得感:「なぜこのスコアか」の根拠が可視化されるため、営業担当者がスコアを信頼しやすい

Einsteinが機能するための前提条件:Salesforceでは「過去200日以内に作成されたリードが1,000件以上、うち120件以上が取引開始済み」が推奨条件です。この基準に満たない場合でもグローバルモデル(匿名化した汎用モデル)が適用されますが、自社固有のパターンを反映させるには一定量のデータ蓄積が必要です。

向いている企業:事業が成熟期にあり過去の商談データが豊富に蓄積されている企業。人間では気づけない成功パターンをAIに発掘させたい企業。

Account Engagement(ルールベース型):特徴・メリット・向いている企業

Account Engagement(旧Pardot)のスコアリングは、マーケティング担当者が手動でルールを定義し、特定の行動や属性に対して点数を割り当てる仕組みです。例えば「価格ページの閲覧に+15点」「問い合わせフォームの送信に+50点」といったルールを自ら設計します。

  • 柔軟なカスタマイズ性:自社の営業プロセスやカスタマージャーニーに合わせてルールを細かく設計できる
  • ロジックの透明性:どの行動がスコアにどう影響するかが明確でコントロールできる
  • 部門間の合意形成:営業と議論しながらルールを構築するプロセス自体が組織の共通認識を育てる

向いている企業:創業期〜成長期で顧客データがまだ蓄積中の企業。営業とマーケが一体となって「勝ちパターン」を模索している段階の企業。

Sells upの視点:フェーズで選ぶ最適な手法

AI型とルールベース型に優劣はありません。データが蓄積されるまではルールベース型で仮説を立て、データが蓄積されたらEinsteinに移行または併用するというステップが、Sells upが推奨するアプローチです。80社以上の支援経験から言うと、どちらも「設計の品質」がスコアリングの成否を決定づけます。ツールを変えても設計が変わらなければ、形骸化は繰り返されます。

Account Engagementのスコアリング再設計:形骸化を防ぐ3ステップ

Account Engagementのスコアリングが形骸化している場合、以下の3ステップで再設計します。統計的なアプローチについてはスコアリングを「感覚」から「データ」に変える:統計的スコアリング設計の考え方も参照してください。

Step.1:営業部門と顧客の購買プロセスを可視化する

最初のステップはマーケティング部門だけで完結させないことです。実際に受注した顧客がどのような経緯で情報を集め、どのタイミングで営業との対話を求め、何が決め手となって契約に至ったかを商談記録の分析と営業へのヒアリングで可視化します。

Sells upでは支援開始時にこのプロセスを必ず実施します。株式会社SmartHRさまの事例でも、営業が「過去に受注した顧客が必ず閲覧していたページ」を特定したことが、スコアリング再設計の起点になりました。このプロセスを通じて「意味のある行動」が初めて見えてきます。

Step.2:行動の重みを定義する(高価値・中価値・低価値)

洗い出した顧客行動に対して購買意欲の高さに応じてメリハリのある点数を設定します。Sells upが支援現場で実際に使う点数設計の参考例を示します。

行動カテゴリ具体的な行動例推奨スコア設定理由
高価値行動問い合わせフォームの送信、製品デモの申込、見積依頼+50〜100点明確な導入検討シグナル。即座に営業に引き渡すべき行動
高価値行動価格ページの複数回閲覧(3回以上)+30点購買検討の具体化を示すシグナル
中価値行動導入事例のダウンロード、特定課題解決ウェビナーへの参加+15〜25点比較検討段階にあることを示唆する行動
中価値行動製品詳細ページの閲覧(1回)、ホワイトペーパーのダウンロード+10点情報収集段階。ナーチャリングを継続すべき対象
低価値行動メールの開封、ウェブサイトのトップページ訪問+1〜3点関心の初期段階。過度な加点は避ける

Sells upの現場より:「メール開封に5点」という設定は多くの企業で見られますが、これが積み重なってスコアインフレを起こすケースが非常に多い。開封は「少し興味がある」程度のシグナルであり、1〜2点が適切です。

Step.3:関心の低下を捉えるマイナススコアの設計

スコアリングで見落とされがちなのがマイナススコアです。加点だけでは関心が下がったリードへの優先度を下げられません。

マイナススコアのトリガー推奨スコア設定理由
30日間のWebサイト訪問なし−5点関心の低下を自動検知
60日間のWebサイト訪問なし−15点休眠状態。ナーチャリングリストへの移動を検討
採用ページの閲覧−10点顧客ではなく求職者の可能性が高い
メールの配信停止(オプトアウト)−50点明確な関心消失シグナル

マイナススコアを設定することで、同じスコアでも「直近に活発に行動しているリード」を正確に抽出できるようになります。Account Engagementのメール配信設定との連携についてはAccount Engagementのメール配信設定ガイドも参照してください。

Einsteinリードスコアリングの導入・活用術

初期設定:デフォルトかカスタムか

Einsteinの設定開始時に「デフォルト設定」か「カスタム設定」かを選択します。デフォルトは全項目を分析対象とする最も簡単な方法です。まずはデフォルトで開始し、運用しながら得られた知見をもとにカスタム設定で調整していくアプローチが現実的です。

「成功」の定義付け:取引開始マイルストーンの選択

カスタム設定で最重要なのが「成功(コンバージョン)」の定義です。「リードが取引先に変換されること」か「リードが変換され商談が作成されること」かを定義します。BtoBでは「商談の作成」を成功と定義する方が売上に近いモデルを構築しやすくなります。この定義はマーケティングと営業のゴールを一致させる上でも重要な議論のポイントです。

ダッシュボードを活用したマーケ施策改善

Einsteinのダッシュボードには「リードソース別の平均スコア」「スコア別の取引成立率」などのレポートが含まれます。例えば「オーガニック検索経由のリードの平均スコアが85点と高い一方、特定の広告キャンペーン経由は平均45点」というデータが出たとします。これは広告のターゲティングやメッセージを見直すべきという明確なシグナルです。スコア分析をマーケティング施策にフィードバックするサイクルが組織全体のリード質向上につながります。

リードスコアリングとMAの効果測定についてはナーチャリングの成果はどうやって測ればいいのかも参照してください。

スコアリングを成果につなげる:マーケティングと営業のSLA構築

どれほど精緻なスコアリングを設定しても、マーケティングと営業の連携がなければ成果は生まれません。スコアリング施策が失敗する最大の原因は「ツールの性能」ではなく「部門間のコミュニケーション不足と信頼関係の欠如」にあります。

SLA(サービスレベル合意)とは何か

SLA(Service Level Agreement)とは、リードの定義・引き渡し基準・フォローアップの流れなど、部門間の役割分担と責任範囲を明文化した「連携の設計図」です。SLAを導入することで、MQLの基準が明確になり、両部門の期待値と評価指標が揃い、継続的な改善の場が生まれます。

実践的SLAに盛り込むべき5つの必須項目

1. MQL(有望リード)の明確な定義

「スコアが100点以上」とするだけでなく、「業種が製造業かつ役職が課長以上、かつ価格ページを閲覧済み」といった属性情報も含め、誰が見ても解釈に迷わないレベルまで具体的に定義します。MQL定義の設計についてはリードスコアリングとは?BtoB担当者が最初に理解すべき仕組み・設計・営業連携の全体像も参照してください。

2. リード引き渡しのプロセスとルール

リードの受け渡し方法(例:Salesforce上でのステータス変更やアサイン)・引き渡しタイミング・情報共有の内容を明文化します。引き渡しミスや対応漏れを防止します。

3. 営業のフォローアップ規約(時間とアクション)

引き渡されたMQLに「何時間以内に」「どのような手段で(電話・メールなど)」初回アプローチを行うかを約束します。Sells upの支援現場では「24時間以内に初回コンタクト」をSLAに盛り込むことで、リードへのフォロー率が大きく改善したケースがあります。

4. リードの評価とフィードバック方法

営業部門がMQLに対してどのような評価を行い、成約・失注・不適合などのフィードバックをマーケティング部門にどう返すかを決めます。このフィードバックがスコアリングルールの改善に必要な情報として循環します。

5. 定期的な見直しと改善の場

月に一度または四半期に一度、両部門の責任者が集まりSLAの運用状況をレビューします。「スコア100点以上で引き渡したリードの商談化率」「失注したリードのスコアや行動の共通点」を定期的にレビューし、ルールを改善し続けることがスコアリングを形骸化させない鍵です。

Sells upの視点:SLAは「作るプロセス」に価値がある

SLA策定の最大の価値はドキュメントの作成ではなく、マーケティングと営業が膝を突き合わせて議論し共通認識を深めるプロセス自体にあります。80社以上の支援の中で、SLAを作成したことで部門間の信頼関係が改善し、スコアリングの活用率が大幅に向上したケースを多数経験しています。BtoBマーケティング全体の戦略設計についてはBtoBマーケティング戦略の立て方|80社支援の実績から解説する5ステップも参照してください。

まとめ:Salesforceリードスコアリングを機能させる5つのポイント

  1. 企業フェーズでEinsteinとAccount Engagementを使い分ける:データ蓄積前はルールベース型、蓄積後はAI型が有効。設計の品質が成否を決める
  2. 行動に高・中・低の重みをつけてメリハリのある点数設計をする:メール開封の過剰加点がスコアインフレの主因。高価値行動(問い合わせ・デモ申込)に集中させる
  3. マイナススコアで関心の低下を自動検知する:一定期間のアクションなし・採用ページ閲覧などに減点を設定することで精度が上がる
  4. スコアリングルールを「仮説」として定期的にPDCAで改善し続ける:一度設定して終わりにしない。月次・四半期でのレビューサイクルを設ける
  5. SLA(部門間連携の設計図)でスコアの活用を仕組み化する:MQL定義・引き渡しルール・フォローアップ規約・フィードバック方法を明文化する

Account Engagement活用の成功事例については以下も参照してください。


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ツールの設定よりも、「何をどう設計するか」で成果が変わります

HubSpot・Account Engagement・Marketoに精通した担当者が、 ツールの設定支援だけでなく、リード育成シナリオやスコアリング設計まで一貫してサポートします。 まずは現状のツール活用状況をお聞かせください。

株式会社Sells up
武田 大
株式会社AOKIにて接客業を、株式会社リクルートライフスタイル(現:株式会社リクルート)にて法人営業を経験した後、株式会社ライトアップでBtoBマーケティングを担当。その後、デジタルマーケティングエージェンシーにてBtoBマーケティングの戦略設計/施策実行支援、インサイドセールスをはじめとしたセールスやカスタマーサクセスとの連携を通じたマーケティング施策への転換といった支援を行い、2023年に株式会社Sells upを設立。BtoBマーケティングの戦略設計/KPI設計はもちろん、リードジェネレーション施策やナーチャリング、MA/SFA活用を支援し、業界/企業規模を問わずこれまでに約80社以上の支援実績を持つ。Salesforce Certified Marketing Cloud Account Engagement Specialist/Tableau Desktop SpecialistのSalesforce認定資格を保有。