Salesforceリードスコアリング実践講座|AIとルールベースを使い分け、商談化率を最大化する戦略

BtoBマーケティングのご相談はSells upへ
Sells upはデータに裏打ちされたマーケティング活動を通じて売上成長を実現するBtoBマーケティング専門のエージェンシーです。 まずはお気軽にご連絡ください。
なぜ、あなたの会社のリードスコアは機能しないのか?
リードの「量」は足りているのに、「質」が上がらない根本原因
マーケティング部門の努力でリード獲得数は目標を達成している。しかし、営業部門からは「どのリードからアプローチすべきか分からない」「最近、質の低いリードが増えている気がする」といった声が聞こえてくる。これは、多くのBtoB企業でマーケティング責任者が直面する、深刻なジレンマではないでしょうか。
この問題の根本原因は、リードの「量」を追うだけでは成果に繋がりにくくなった現代において、自社にとっての「質の高いリード」の定義が曖昧なままになっている点にあります。特に、マーケティングと営業が分業体制を敷いている場合、「今、まさに営業が話すべき顧客」を見極める共通の基準がなければ、両者の間には少しずつ認識のズレが生じます。この部門間の溝こそが、せっかく導入したリードスコアリングがいつの間にか形骸化してしまう最大の要因なのです。
リードスコアリングとは?データに基づき「今、話すべき顧客」を見極める技術
リードスコアリングとは、見込み顧客の属性情報(企業規模や役職など)や行動データ(Webサイト閲覧や資料請求など)に対して点数を付け、客観的な基準で優先順位を判断する仕組みです。この仕組みによって、営業部門は「今アプローチすべき有望なリード」に集中でき、マーケティング部門は「まだ育成が必要なリード」を明確に区別できるようになります。
しかし、ただルールを設定して点数化するだけでは不十分です。そのスコアが営業現場の実感と乖離していたり、顧客のリアルな購買プロセスを反映していなかったりすれば、それは単なる意味のない数字の羅列になってしまいます。リードスコアリングを真に機能させるためには、そのスコアの根拠が、自社のビジネスと顧客の実態に深く根差していることが非常に重要です。
Salesforceにおける2つのアプローチ―AI予測とルールベース、自社に合うのはどちらか
Salesforce環境でリードスコアリングを実現するには、大きく分けて「AI活用型(Einstein)」と「ルールベース型(Account Engagement/旧Pardot)」の2つのアプローチが存在します。それぞれの特性を正しく理解し、自社の事業フェーズや課題感に合った手法を選択することが成功への第一歩です。
AI活用型:Einstein リードスコアリングの特徴とメリット
Einstein リードスコアリングは、SalesforceのAIが過去の膨大な成約・失注データを分析し、自社独自の「成約しやすいリードの共通パターン」を自動で学習する機能です。各リードに対して、機械学習モデルが算出した1から99のスコアを付与します。
主なメリットは以下の通りです。
高い予測精度:人間の思い込みや経験則では見つけられない、データ上の複雑な相関関係をAIが発見します。
運用の効率化:一度設定すればAIが自動で学習を続けるため、手動での頻繁なルール見直しが不要になります。
客観的な根拠の提示:なぜそのスコアになったのか、影響を与えたプラス・マイナスの要因が可視化されるため、営業担当者の納得感を得やすくなります。
これにより、営業部門はスコアを信頼し、自信を持って優先度の高いリードへアプローチできるようになります。
ルールベース型:Account Engagement (旧Pardot) の特徴とメリット
Account Engagement(旧Pardot)のスコアリングは、マーケティング担当者が手動でルールを定義し、特定の行動や属性に対して点数を割り当てる、従来からのなじみ深い仕組みです。例えば、「価格ページの閲覧に+15点」「問い合わせフォームの送信に+50点」といったルールを自ら設計します。
この方式のメリットは、以下の点が挙げられます。
柔軟なカスタマイズ性:自社の独自の営業プロセスや顧客のカスタマージャーニーに合わせて、細かくルールを設計できます。
ロジックの透明性:どの行動がスコアにどう影響するかが明確なため、スコアリングの仕組みを完全にコントロールできます。
部門間の合意形成:営業部門と議論を重ねながらルールを構築するプロセスを通じて、部門間の共通認識を醸成できます。
一方で、市場や顧客の変化に合わせて定期的にルールを見直さなければ、スコアが実態と乖離してしまうリスクも内包しています。
【Sells upの視点】ツールの優劣ではない。企業の成長フェーズで考える最適な選択肢
AI型とルールベース型、どちらか一方が絶対的に優れているわけではありません。重要なのは、「自社の現在の状況にどちらが適しているか」という視点です。
例えば、創業期から成長期にあり、まだ顧客データが十分に蓄積されておらず、営業とマーケティングが一体となって「勝ちパターン」を模索している段階であれば、ルールベース型が適しています。議論しながら仮説を立て、ルールを柔軟に変更していくプロセスそのものが、組織の知見となるからです。
一方、事業が成熟期に入り、過去の商談データが豊富に蓄積されている企業であれば、AI型のメリットを最大限に活かせます。人間では気づけないような成功パターンをAIに発掘させ、より効率的で精度の高いアプローチを実現できるでしょう。自社のフェーズを見極めることが、最適なツール選択に繋がります。
【実践編①】Einsteinを使いこなす―AIリードスコアリング導入・活用術
Einsteinはブラックボックスではない。スコアの根拠を理解し、営業の信頼を得る方法
AIによるスコアリングは「ブラックボックスで何を根拠に判断しているのか分かりづらい」と感じられがちです。しかし、Einsteinリードスコアリングでは、各リードのスコアに影響を与えた主な要素が可視化されます。たとえば、「業種」「従業員数」「過去のメール開封」「特定ページへのアクセス」など、どの項目がスコアアップ(またはダウン)に寄与したかが明示されます。
この情報を営業部門と共有し、「なぜこのリードが優先度高なのか」を説明できることで、現場の納得感が生まれ、AIスコアの活用が進みます。
このEinsteinスコアコンポーネントではスコアを付けた大きな要因となる項目も表示されるので、なぜこのリードはスコアが高いのか、なぜこのリードはスコアが低いのかも知れるのです。
参照:DX攻略部「Salesforce Einstein リードスコアリングとは?見込み顧客のアプローチ優先度をAIに任せる!」
導入前に確認必須。自社のデータはAI活用の準備ができているか?
Einsteinが自社専用の精度の高い予測モデルを構築するには、学習の元となるデータが一定量必要です。Salesforceでは、目安として「過去200日以内に作成されたリードが1,000件以上あり、そのうち120件以上が取引開始されていること」が推奨されています。
もしこの基準に満たない場合でも、「グローバルモデル」というSalesforceを利用する多くの企業から匿名化されたデータを集約して作られた汎用モデルが適用されるため、すぐに利用を開始できます。ただし、自社固有の成功パターンをより正確に反映させるためには、日頃から質の高いデータを蓄積していく意識が重要です。まずは自社のデータ状況を確認し、必要であればデータクレンジングや入力ルールの整備から着手しましょう。
失敗しないための初期設定ガイド
デフォルトかカスタムか?最初の設定が精度を左右する
Einstein リードスコアリングの設定を開始すると、まず「デフォルト設定」か「カスタム設定」かを選択します。デフォルト設定は、全ての項目を分析対象とする最も簡単な方法です。一方、カスタム設定では、分析対象とするリードの範囲や、学習のゴールなどをより細かく定義できます。特別な理由がなければ、まずはデフォルトで開始し、運用しながら得られた知見をもとにカスタム設定で調整していくアプローチが現実的です。
「成功」の定義付け:取引開始マイルストーンの戦略的な選択
カスタム設定で非常に重要なのが、AIに学習させる「成功(コンバージョン)」の定義、すなわち「取引開始マイルストーン」の選択です。これは、「リードが取引先・取引先責任者に変換されること」なのか、それとも一歩進んで「リードが変換され、かつ商談が作成されること」なのかを定義するプロセスです。BtoBビジネスにおいては、より売上に近い「商談の作成」を成功と定義する方が、ビジネスインパクトに直結した精度の高いモデルを構築しやすくなります。この定義は、マーケティングと営業のゴールを一致させる上でも重要な議論のポイントです。
スコア精度を飛躍させる「リードセグメント」の活用法
もし、国内向けと海外向け、あるいは大企業向けと中小企業向けで、明らかに顧客の購買パターンが異なるのであれば、「リードセグメント」機能の活用を検討しましょう。これは、リードを特定の条件でグループ分けし、それぞれに個別のスコアリングモデルを構築できる機能です。全てのリードを一つのモデルで評価するよりも、セグメントごとに最適化されたモデルを適用することで、スコアリングの精度を飛躍的に高めることが可能です。
【Sells upの視点】ダッシュボードを読み解き、マーケティング施策を改善に繋げる分析術
Einsteinリードスコアリングの価値は、単にリードの優先順位付けに留まりません。導入後に利用できるダッシュボードには、「リードソース別の平均リードスコア」や「リードスコア別の取引成立率」といったレポートが含まれています。これらは、マーケティング活動全体を改善するための貴重な羅針盤となります。
例えば、「オーガニック検索経由のリードの平均スコアが85点と高い一方、特定の広告キャンペーン経由のリードは平均45点しかない」というデータが得られたとします。これは、広告のターゲティングやメッセージを見直すべきだという明確なシグナルです。このように、スコアの分析結果をマーケティング施策にフィードバックするサイクルを回すことで、組織全体のリードの質を継続的に向上させることができるのです。
【実践編②】形骸化からの脱却―Account Engagementスコアリング再設計
なぜスコアリングは形骸化するのか?よくある設計の落とし穴
Account Engagement(旧Pardot)でリードスコアリングを運用しているものの、「スコアが実態を全く反映していない」「営業からは全く信頼されていない」といった課題に直面している企業は少なくありません。その原因の多くは、導入時に設定したルールが、その後のビジネス環境や顧客行動の変化に対応できずに放置されていることにあります。
例えば、数年前に重要だったコンテンツが今では価値を失っているにもかかわらず、高いスコアが設定されたままになっていたり、「メール開封」のようなエンゲージメントの低い行動にまで点数が加算され、スコアだけがインフレを起こしていたりするケースは典型的な失敗例です。スコアリングが営業にとって「信頼できない指標」となった瞬間、その仕組みは形骸化します。
成果に直結するスコアリングルールの作り方
形骸化したスコアリングを再設計するには、机上の空論ではなく、現場の知見と顧客のリアルな行動に基づいたルールを構築することが不可欠です。以下の3つのステップで、成果に繋がるルールを設計していきましょう。
Step.1:営業部門を巻き込み、顧客の購買プロセスを可視化する
最初のステップとして重要なのは、マーケティング部門だけで完結せず、必ず営業部門のメンバーを巻き込むことです。実際に受注に成功した顧客が、どのような経緯で情報を集め、どのタイミングで営業との対話を求め、何が決め手となって契約に至ったのか。商談記録の分析や営業担当者へのヒアリングを通じて、リアルなカスタマージャーニーを可視化します。このプロセスを通じて初めて、スコアに反映すべき「意味のある行動」が見えてきます。
Step.2:行動の「重み」を定義する(高価値・中価値・低価値)
次に、洗い出した顧客の行動に対して、営業部門と議論しながらスコアの重み付けを定義します。全ての行動を等しく評価するのではなく、購買意欲の高さに応じてメリハリをつけることが重要です。
高価値行動(例:+50点以上):「製品デモの申込」「見積依頼」「価格ページの複数回閲覧」など、明確な導入検討のシグナル。
中価値行動(例:+15〜30点):「導入事例のダウンロード」「特定の課題解決ウェビナーへの参加」など、具体的な比較検討段階にあることを示唆する行動。
低価値行動(例:+1〜5点):「メールの開封」「Webサイトのトップページ訪問」など、まだ関心の初期段階にある行動。
このように行動の価値を階層化することで、スコアが顧客の検討度合いをより正確に反映するようになります。
Step.3:関心の低下を捉える「マイナススコア」の重要性
リードスコアリングでは、加点だけでなく「マイナススコア」の設定も重要です。例えば、一定期間アクションがない場合や、メールの配信停止、競合製品のページ閲覧など、関心の低下を示す行動に減点を設けることで、営業が優先すべきリードを正確に抽出できます。
行動情報でスコアリングする際には、活性度にも注意しましょう。同じスコアのリードでも、直近で行動を起こしているかどうかで成約可能性は異なります。
参照:日立ソリューションズ「リードスコアリングとは?メリットややり方、注意点を解説」
【Sells upの視点】スコアはあくまで仮説。PDCAを回し続ける仕組み作りが成功の鍵
丹念に設計したスコアリングルールも、一度作って終わりではありません。市場は変化し、顧客の行動も変わります。重要なのは、設定したルール全体を「我々が考える、受注に至る優良顧客の行動モデル」という一つの仮説として捉え、継続的に検証し続けることです。
定期的に営業とマーケティングが合同で、「スコアが100点を超えて引き渡したリードの商談化率はどうだったか?」「失注したリードのスコアや行動に共通点はなかったか?」といったレビューを行います。その結果に基づき、ルールの見直しやスコアの閾値調整といった改善を繰り返す。このPDCAサイクルを回し続ける仕組みこそが、リードスコアリングを形骸化させず、常にビジネスの成果に貢献する生きたツールとして機能させるための鍵となります。
テクノロジーを成果に変える、マーケティングと営業の強固な連携
スコアリング施策が失敗する最大の原因は「部門間の断絶」
どれほど精緻なスコアリングシステムを構築しても、それを利用するマーケティングと営業の連携がなければ、成果は生まれません。スコアリング施策が失敗に終わる最大の原因は、ツールの性能ではなく、部門間のコミュニケーション不足と信頼関係の欠如にあります。マーケティングが「ホットリードだ」と渡したリードを、営業が「まだ温度感が低い」と感じる。この認識のズレが、部門間の不信感を生み、施策全体の停滞を招くのです。
連携の設計図「SLA」とは何か?なぜ今、導入すべきなのか?
マーケティングと営業の強固な連携を実現するために有効なのが「SLA(Service Level Agreement:サービスレベル合意)」です。SLAは、リードの定義や引き渡し基準、フォローアップの流れなど、部門間の役割分担と責任範囲を明文化した“連携の設計図”です。
SLAを導入することで、
MQL(有望リード)の基準が明確になる
リードの受け渡しやフォローの手順が標準化される
両部門の期待値や評価指標が揃う
定期的な見直し
改善の場が生まれ、継続的な連携強化につながる
といった効果が期待できます。特にリードスコアリングが形骸化しやすい組織では、SLAの導入が「部門間の断絶」を解消する決定打となります。
明日から使える、実践的SLAに盛り込むべき5つの必須項目
SLAを策定する際には、以下の5つの項目を盛り込むことで、実効性の高い運用が可能になります。
1. MQL(有望リード)の明確な定義
どのような状態のリードを「MQL(Marketing Qualified Lead)」として営業に引き渡すのか。単に「スコアが100点以上」とするだけでなく、「業種が製造業で、かつ役職が課長以上」といった属性情報も含め、誰が見ても解釈に迷わないレベルまで具体的に定義します。
2. リード引き渡しのプロセスとルール
リードの受け渡し方法(例:Salesforce上でのステータス変更やアサイン)、引き渡しタイミング、情報共有の内容などを明文化します。これにより、引き渡しミスや対応漏れを防止できます。
3. 営業のフォローアップ規約(時間とアクション)
営業部門は、引き渡されたMQLに対して「何時間以内に」「どのような手段で(電話、メールなど)」初回のアプローチを行うのかを約束します。リードの熱量を逃さないためには、迅速なフォローアップが不可欠です。
4. リードの評価とフィードバック方法
営業部門がMQLに対してどのような評価を行い、成約・失注・不適合などのフィードバックをマーケティング部門にどう返すか、その方法とタイミングを決めておきます。これにより、スコアリングルールや施策の改善に必要な情報が循環します。
5. 定期的な見直しと改善の場
SLAは一度作ったら終わりではありません。月に一度、あるいは四半期に一度、両部門の責任者が集まり、SLAの運用状況をレビューし、必要に応じて内容を見直す場を設けることが、継続的な連携強化に繋がります。
【Sells upの視点】SLAは「作るプロセス」そのものに価値がある
SLA策定の最大の価値は、単なるドキュメントの作成ではなく、マーケティングと営業が膝を突き合わせて議論し、共通認識を深める“プロセス”そのものにあります。両部門が互いの課題や期待値を率直に共有し合うことで、スコアリング施策の本来の目的が再確認され、持続的な連携強化につながります。
まとめ:リードスコアリングを成功させ、持続的な成長を実現するために
Salesforceを活用したリードスコアリングは、「AI型(Einstein)」と「ルールベース型(Account Engagement)」の使い分けによって、リードの質向上と部門間連携の強化を同時に実現できる強力な戦略です。しかし、その本質は単なるツール導入や数値の設定ではなく、「現場の購買プロセスに即した設計」と「マーケティングと営業の協働」にあります。
AIの透明性やデータの準備、ルールの見直し、SLAによる連携強化など、地道な取り組みの積み重ねが、リードスコアリングの精度と成果を高めていきます。ぜひ本記事の内容を参考に、自社の課題に合ったリードスコアリング運用を再設計し、持続的な成長を実現してください。
BtoBマーケティングのご相談はSells upへ
Sells upはデータに裏打ちされたマーケティング活動を通じて売上成長を実現するBtoBマーケティング専門のエージェンシーです。 まずはお気軽にご連絡ください。
CONTACT

