ナレッジ 2025.09.11 最終更新 2026.10.04

Salesforceのリードスコアリング|Einstein・行動スコアリングとMQL閾値

この記事を書いた人 武田 大 株式会社Sells up 代表取締役

Salesforceのリードスコアリングとは、Account Engagement(旧Pardot)やEinstein(AI型)を使って見込み客の行動スコアと属性スコアに点数を付け、そのスコアをもとに営業の優先順位を判断する仕組みを指します。

弊社にご相談いただく企業では、スコアリングの設定そのものはできているものの、「何点になったら営業に渡すのか」という閾値や、SLA(マーケティングと営業の引き継ぎルール)が定まっておらず、その段階で運用が止まっている例が多く見られます。

本記事では、Einstein リードスコアリング、Account EngagementのEinstein 行動スコアリング、ルールベースのスコアリングの違いと使い分けを整理したうえで、設定手順、MQL閾値、営業への割り当て、スコア減衰、SLAの作り方までを順に解説します。

本記事はリード(見込み客)段階のスコアリングを扱います。案件化した後の受注確度のスコアリングは、商談スコアリングの考え方と導入のポイントで解説しています。

SalesforceのリードスコアリングがMAに欠かせない理由

リードスコアリングとは、見込み客の行動履歴や属性情報に点数を付けて検討の進み具合を数値で表し、営業が優先してアプローチすべきリードを見極めるための仕組みです。スコアは次の3つに分けて管理します。

  • 行動スコア
  • 属性スコア
  • 2つを合わせた総合スコア

スコアリングを設計すると、マーケティングと営業の間に共通のものさしができ、「誰に・いつアプローチするか」の判断を担当者の勘や経験だけに頼らずに済みます。スコアリングがない場合、営業はハウスリストの上から順番に電話するしかなく、検討が進んでいないリードに時間を割いて、優先すべきリードへの連絡が後回しになりがちです。

Salesforceに限らないリードスコアリング全体の進め方は、リードスコアリングの設計6ステップで解説しています。

行動スコアと属性スコアの2軸

行動スコアは、見込み客がWebサイトやメール、フォームなどで取った行動に対して付ける点数です。価格ページの閲覧、資料ダウンロード、問い合わせフォームの送信などが代表的な対象です。

属性スコアは、役職や企業規模、業種といった静的な情報に基づく点数です。BtoBマーケティングでは、部長以上の役職、ターゲット業種、従業員数100名以上といった条件を満たす場合に加点する設計がよく使われます。

2つの軸を分けて管理するのは、行動スコアだけでは採用候補者や競合企業の調査目的のアクセスまで高く評価してしまい、属性スコアだけではターゲットに合う企業でも、まだ検討を始めていない相手を拾ってしまうからです。属性と行動の両方が基準を超えた場合にMQL(マーケティング・クオリファイド・リード)とみなすと、営業へ渡すリードの絞り込みが安定します。

スコアリングが活用されない組織に共通する課題

スコアリングを設計したのに使われない原因は、主に次の3つです。

1つ目は、行動スコアの配点が担当者の感覚で設定され、メール開封のような検討の進み具合を表しにくい行動に点数を付けすぎていることです。

2つ目は、MQLの閾値が設定されておらず、「何点になったら営業に渡すのか」が曖昧なままになっていることです。

3つ目は、営業側にスコアの意味が伝わっておらず、SLAもないため、スコアが日々の活動に使われていないことです。

弊社にご相談いただく企業では、3つ目のパターンが多く見られます。配点を細かく作り込んでも、営業が「このスコアは何を表しているのか」を理解していなければ、ハウスリストの上から順に電話する進め方に戻ってしまいます。スコアリングの見直しとSLAの設計は、同時に進めることを前提にしてください。

Salesforceのリードスコアリング機能の違い|Einstein・行動スコアリング・ルールベース

Salesforceでリードスコアリングを行う方法は、Sales CloudのEinstein リードスコアリング(AI型)、Account EngagementのEinstein 行動スコアリング(AI型)、Account Engagementのスコアリングルール(ルールベース型)の3つに分けて考えると整理しやすくなります。どれが優れているかではなく、データの蓄積状況と、スコアで何を判断したいかによって使い分けます。違いを曖昧にしたまま設定を進めると、営業から見て「どのスコアが何を表しているのか」がわからなくなり、連携が進みにくくなります。

比較項目 Einstein リードスコアリング(Sales Cloud・AI型) Einstein 行動スコアリング(Account Engagement・AI型) スコアリングルール(Account Engagement・ルールベース型)
何をもとに点数を付けるか リードの項目データと、過去の取引開始・不成立のパターン メール・フォーム・Webページなどへのエンゲージメントの内容と新しさ 担当者が決めた行動・属性ごとの配点
スコアの範囲と更新 モデルの再学習とスコアの更新はSalesforceが自動で行う 0〜100。通常4時間ごとに更新 行動が発生するたびに加点。配点の変更は手動
データの目安 直近200日(約6か月)に作成されたリード1,000件以上、うち取引開始120件以上。満たさない場合はグローバルモデルを使用 6か月以上のエンゲージメントデータと、商談に紐づいたプロスペクト20件以上が推奨 データ量の条件はない
利用できる製品 Sales Cloud Einsteinを含むライセンス(Performance・Unlimitedには含まれ、Enterpriseは追加ライセンス) Account Engagementの一部のエディション(対象のエディションは改定されることがある) Account Engagementの各エディション
ロジックの透明性 スコアに影響した要因は表示されるが、判断の過程すべては追えない 影響の大きい行動の傾向は見られるが、配点は自分で決められない どの行動に何点付くかをすべて明示できる

エディションの構成と含まれる機能は改定されることがあるため、導入前にSalesforceの公式ページで現行の条件を参照してください。

Einstein リードスコアリングの仕組み

Einstein リードスコアリングは、Sales Cloud上で過去のリードの項目データと取引開始・不成立の結果を学習し、今のリードが取引開始に至ったリードのパターンにどの程度近いかをスコアとして表示する機能です。リードの画面には、スコアにプラス・マイナスの影響を与えている要因も表示されるため、営業担当者は「なぜこのスコアなのか」をその場で把握できます。

モデルの再学習とスコアの更新はSalesforceが自動で行い、市場や営業プロセスが変わっても、新しいデータにあわせてモデルが更新されます。再学習の間隔は利用者が設定するものではないため、数時間単位で判断が変わる場面では、直近の行動データとあわせて見るほうが安全です。自社のデータが目安に届かない段階では、Salesforceが複数企業の匿名データから作ったグローバルモデルが使われます。自社固有の傾向を反映させるには、一定量の取引開始データが蓄積されていることが前提です。

Einstein 行動スコアリング(アインシュタイン行動スコア)の仕組み

Einstein 行動スコアリングは、Account Engagementの機能で、機械学習を使ってプロスペクトのエンゲージメントの中から購入に結びつきやすい行動のパターンを見つけ、0〜100のスコアを付けます。スコアは通常4時間ごとに更新され、有効化してから最初のスコアが表示されるまでに48時間までかかることがあります。

Salesforceのヘルプでは、6か月以上のエンゲージメントデータと、商談に紐づいたプロスペクトが20件以上あることが推奨されています。スコアの対象になるのは、過去1年以内にエンゲージメントがあったプロスペクトです。有効化した時点で商談に紐づいているプロスペクトは、モデルの学習には使われますが、スコアは付きません。重複したプロスペクトはそれぞれ別のスコアになるため、有効化の前に重複を整理しておく必要があります。

Einstein 行動スコアは、従来のスコアリングルールで計算されるスコアとは別の値として、リードや取引先責任者の画面に表示されます。「ルールベースのスコアは高いが、行動スコアは低い」といった食い違いが起きることもあるため、営業とどちらのスコアをどう読むかを先に決めておくことが重要です。

Account Engagementのスコアリングルール(ルールベース型)

Account Engagementのスコアリングルールは、マーケティング担当者が行動ごとに点数を割り振ることで、検討の進み具合を数値で表す仕組みです。メールのクリック、Webページの閲覧、フォームの送信など、行動の種類ごとにスコアを設定できます。

スコアは「スコアリングルール」でまとめて設定できるほか、「オートメーションルール」や「完了アクション」を使えば、条件を組み合わせた加点もできます。複数の製品ラインや事業部を持つ企業であれば、「スコアリングカテゴリ」を使って、製品Aと製品Bへの関心度をそれぞれ別のスコアとして管理できます。

Data Cloud(Data 360)でスコアを計算する方法

Salesforce Data Cloudを導入している場合は、「計算済みインサイト」の機能を使って、Webサイト・メール・商談・サポート履歴など複数のシステムのデータを組み合わせたスコアを独自に定義できます。Salesforceのヘルプでは、Data Cloudの分析機能をData 360の名前で案内しており、計算済みインサイトの用途の例としてリードスコアリングが挙げられています。

ただし、Data Cloudは別ライセンスで、データの取り込みと統合の設計が前提になります。Account EngagementやSales Cloudのデータだけでスコアを作る段階であれば、まずはスコアリングルールとEinsteinの機能で始め、複数システムのデータを横断して判断したい要件が出てきた段階で検討するのが無理のない順番です。

フェーズ別の使い分け

弊社では、データが十分にたまっていない段階ではAccount Engagementのスコアリングルールで仮説を立て、取引開始の実績や商談に紐づくプロスペクトがたまってきたら、Einstein リードスコアリングやEinstein 行動スコアリングを追加・併用する進め方をおすすめしています。

スコアリングルールで決めた配点は、AIのスコアを読み解くときの比較対象にもなります。どの機能を使う場合でも、「どの行動を検討が進んだサインとして重視するか」が曖昧なままでは、スコアリングはすぐに使われなくなります。成果を左右するのはツールの種類よりも、スコアの定義と営業との合意です。

Account Engagementのリードスコアリング設定の手順

Account Engagementでスコアリングを設定する際は、Step.1〜Step.3の順に進めます。進めるうえでのポイントは次の3つです。

1つ目は、先に購買プロセスを書き出してから、加点する行動を決めることです。

2つ目は、行動を高・中・低の3段階に分けて、配点に差をつけることです。

3つ目は、複数の製品を扱う場合に、スコアリングカテゴリで製品ごとのスコアを分けられるようにしておくことです。

この順番を飛ばしてスコアリングルールだけを設定すると、営業との共通認識を持てず、「スコアはあるのに誰も見ていない」状態になりやすくなります。

Step.1:スコアリングルールのカスタマイズ|ベースライン設計

Account Engagementには、メールのクリックやフォーム送信、Webページ閲覧といった行動に対して、あらかじめ標準のスコアリングルールが用意されています。標準ではメール開封のスコアは0点ですが、独自に5点・10点といった点数を上乗せした結果、開封だけでスコアが積み上がりすぎるという状況がよく起こります。

メール開封は、受信ボックスで件名が目に入った程度のシグナルにすぎません。メールのセキュリティ製品による自動開封など、実際の閲覧と一致しない開封も含まれます。価格ページやサービス詳細ページへの訪問、資料ダウンロードは、検討が進んでいることを表す行動として配点を高めにし、メール開封は1〜2点程度に抑えるのが無理のない設計です。

以下は行動別スコアの設定例です。一般的な基準ではないため、自社で商談化したリードの行動履歴と照らし合わせて調整してください。

行動カテゴリ 具体的な行動例 設定例 設定の考え方
購買シグナル(高) 問い合わせフォーム送信・製品デモ申込・見積依頼 +50〜100点 導入を検討していることが明確な行動です。閾値を一度に超える配点にします
購買シグナル(高) 価格ページ・サービス詳細ページへの訪問 +15点 検討が進んでいることを表しやすい行動です
購買シグナル(中) 資料ダウンロード・ホワイトペーパー取得 +20点 比較検討の段階に入ったことがうかがえる行動です
購買シグナル(中) 導入事例ページ閲覧・課題解決ウェビナー参加 +10点 情報収集の段階です。ナーチャリングを続ける対象です
購買シグナル(低) メールのクリック +5点 関心の入り口にいる状態です。単独では判断材料として弱い行動です
購買シグナル(低) メール開封 +1〜2点 点数を乗せすぎるとスコアが膨らむ原因になります

スコアリングルールの設定画面と標準の配点の見方は、Account Engagementのスコアリングの仕組みと設定画面で解説しています。

Step.2:オートメーションルールと完了アクションによるスコア調整

スコアリングルールに加えて、「この条件がそろったら追加で加点したい」という複合的な条件には、オートメーションルールを使います。たとえば、「フォームを送信していて、なおかつホワイトペーパーもダウンロードしている」という条件を満たしたときに、追加で50点加算するといった設定ができます。

オートメーションルールでは、「すべてに一致」で複数の条件を組み合わせ、「プロスペクトのスコアを50点加算」のようにアクションを指定します。完了アクションはフォームやランディングページごとに個別に設定するのに向いており、特定の製品デモ申込フォームだけ追加で加点したい場合に使えます。

展示会やセミナーの参加者リストをインポートする際は、CSVに「スコアに追加」の列を用意しておけば、一括でスコアを加算できます。

Step.3:スコアリングカテゴリの設定|複数製品・複数事業対応

スコアリングカテゴリは、複数の製品ラインや事業部を持つ企業が、製品ごと・事業ごとに独立したスコアを管理するためのAccount Engagementの機能です。コンテンツをフォルダーごとに整理し、そのフォルダー単位でスコアリングカテゴリと紐づけます。カテゴリごとのスコアは、全体のスコアとは別に記録されます。

たとえば、数十のアプリケーションを提供するサービスであれば、アプリごとにコンテンツのフォルダーを分けてスコアリングカテゴリを設定すると、「どのアプリへの関心が高まっているか」をスコアで把握できます。営業は、総合スコアで連絡する相手を決め、カテゴリ別のスコアで提案する製品を選べます。

フォルダーとカテゴリの具体的な紐づけ方は、スコアリングカテゴリの設定方法で解説しています。

MQL閾値とSLAの設計|スコアは何点で営業に渡すか

MQL(マーケティング・クオリファイド・リード)は、マーケティング部門が定めた基準を満たし、営業がアプローチする対象と判断したリードを指します。設計のポイントは次の3つです。

1つ目は、行動スコアと属性スコアの片方だけで判定しないことです。

2つ目は、閾値に根拠を持たせ、商談化の結果を見て調整することです。

3つ目は、SLAで引き渡しの方法を文書にしておくことです。

この3つが決まっていないと、スコアは営業から見て意味のわからない数字の一覧になり、連携に使われません。

MQL判定の2軸設計|属性スコア×行動スコアのAND条件

MQLの2軸設計とは、属性スコアと行動スコアの両方が一定の基準を超えたときに初めてMQLとみなす考え方です。属性スコアだけが高い場合(ターゲット企業からのアクセスだが、まだ検討を始めていないケース)や、行動スコアだけが高い場合(採用候補者など関係者のアクセスが混ざっているケース)は、片方だけで判定すると誤りにつながりやすくなります。

弊社がスコアリング設計に用いているRFEスコアモデルでは、MQLの条件を属性スコア20点以上かつ行動スコア40点以上としています。行動の重みは、複数の支援先の6か月分のデータからロジスティック回帰で算出したもので、Engagement(関与の深さ)0.45、Recency(直近性)0.385、Frequency(頻度)0.165です。これはSells upの支援で使用している設計例であり、一般的な基準ではありません。業種や商材、検討期間によって適切なラインは変わるため、自社で商談化したリードの属性と行動履歴をもとに初期値を決め、四半期ごとに商談化率を見ながら見直します。

また、スコアが高いことと購買意欲が高いことは同じではありません。スコアは営業が連絡する順番を決めるための材料として使い、実際の検討状況は営業の会話で確かめます。

MQL判定の設計や運用の詳細は、MQL判定基準の設計と運用も参考にしてください。

スコアにもとづくリードの割り当て|割り当てルール・フロー・完了アクション

スコアが閾値を超えたリードを営業へ渡す方法は、Salesforce側で割り当てる方法と、Account Engagement側で割り当てる方法の2つに分けられます。

Salesforce側では、国・地域・製品ラインといった固定の条件は「リードの割り当てルール」で振り分け、スコアの組み合わせで担当を変えたい場合はレコードトリガーフローを使います。たとえば、ルールベースのスコアが閾値を超え、かつEinstein 行動スコアも高いリードをインサイドセールスの担当者へ再割り当てする、といった条件を組めます。

Account Engagement側では、完了アクションやオートメーションルールの「ユーザーに割り当て」「Salesforceキューに割り当て」を使います。デモ申込や問い合わせフォームの送信のように、行動そのものが営業への連絡を求めている場合は、スコアを待たずにこちらで即時に割り当てるほうが対応が早くなります。

どちらの方法でも、割り当てた後に誰が・いつまでに対応するかが決まっていなければ、リードは放置されます。割り当ての仕組みは、次に説明するSLAとセットで決めてください。

SLAに盛り込む5つの項目

SLA(Service Level Agreement)は、マーケティングと営業のあいだで取り決める「リードの定義」「引き渡しの条件」「フォローの仕方」などのルールをまとめた合意文書です。最低限、次の5点を盛り込みます。

MQLの定義:「業種が製造業かつ役職が部長以上、かつ価格ページ閲覧済み、かつ行動スコア40点以上」など、誰が読んでも解釈がぶれないレベルまで具体的に定義します。

リード引き渡しのプロセス:Salesforce上のリードステータスの変え方、担当者を割り当てる方法、共有すべき情報を決めておきます。

初回フォローアップのルール:引き渡し後、何時間以内に、どの手段で初回の連絡をするかを決めます。MITとInsideSalesが約15,000件のWebフォームリードを対象に行ったLead Response Managementの研究では、5分以内に連絡した場合、30分後と比べて商談候補として資格付けできる確率が約21倍でした。すべてのMQLに即時対応する必要はなく、問い合わせやデモ申込など本人が連絡を求めている行動を優先し、資料ダウンロードのみといった行動とは対応期限を分けて設定します。

フィードバックの方法:商談化・失注・対象外などの結果を、マーケティング側にどう返すかを取り決めます。この結果が、配点と閾値を見直すときの根拠になります。

定期レビューの場:月次または四半期に一度、マーケティングと営業の責任者が集まり、SLAの運用状況を一緒に振り返る定例会を設けます。

SLAは、文書を完成させることよりも、作成の過程でマーケティングと営業が一緒に議論し、「どのリードを営業に渡すべきリードとみなすか」の認識をそろえられる点に価値があります。

MQLを営業へ引き継ぐときの基準と手順は、営業へ引き継ぐ基準と手順で詳しく解説しています。

スコア減衰とスコアリセットの設計

スコア減衰とは、一定期間行動が見られないリードのスコアを下げる仕組みです。時間がたつほど過去の行動の価値は薄れるという前提をルールにすると、同じスコアでも最近動いているリードを優先しやすくなります。

スコア減衰の設定がないと、過去に高いスコアを持っていたものの、その後は関心が薄れているリードがいつまでも営業の優先リストに残ります。半年前に資料をダウンロードしただけで、その後まったく動きのないリードへ何度も電話してしまうのは、この状態から起きます。

スコア減衰の設定例|オートメーションルールで実装する

Account Engagementには、スコアを時間の経過に応じて自動的に下げる標準機能がありません。スコア減衰は、最終アクティビティの日付を条件にしたオートメーションルールで設定し、同じプロスペクトに対しても一定の間隔で再適用されるようにして運用します。以下は設定例で、一般的な基準ではありません。

条件 スコアの変動(設定例) 運用上の考え方
30日間Webサイト訪問なし −5点 関心がやや落ち始めた段階。ナーチャリングは続けつつ様子を見ます
60日間Webサイト訪問なし −15点 休眠に近づいている状態。ナーチャリング専用リストへの移行を検討します
180日間非活動(Web訪問・メールクリックなし) −30点 休眠に近い状態。再活性化キャンペーンの対象候補にします
採用ページ閲覧 −10点 求職者の可能性があるため、営業の対象から一段下げます
メール配信停止(オプトアウト) −50点 関心がなくなったことを表す行動です

弊社のRFEスコアモデルでは、ステージの上昇は緩やかに、下降は厳しく設計しています。1つのアクションで上がるのは1ステージまでとし、14日間行動がなければ最初のステージに戻します。スコアが高くても最後の行動から日数が空いているリードは、連絡の優先度を下げて扱ってください。

スコアリセットが必要なケース

スコアリセットは、特定の条件を満たしたプロスペクトのスコアをゼロに戻す設定です。主な対象は次のとおりです。

  • 競合他社の担当者
  • 自社の社員やインターン
  • 学生・求職者
  • 一定期間、特定の行動条件をまったく満たさない非活性リード

Account Engagementでは、オートメーションルールでスコアをリセットできます。スコアリングカテゴリのスコアは手作業で個別に修正できないため、リセットはオートメーションルールや完了アクション経由で行います。条件が曖昧なままだと有望なリードまでリセットしてしまうため、営業とすり合わせたうえで定義してください。

弊社の支援事例で見るリードスコアリングと営業連携

事例①:SmartHR様|1年間で問い合わせ数約10倍

株式会社SmartHR様が展開する「SmartHR Plus」は、2023年12月に正式リリースされたBtoB向けアプリストアサービスです。Account Engagement(旧Pardot)は導入済みでしたが、運用経験のあるマーケティング担当者が社内におらず、初期設定に悩まれていました。弊社は2023年7月から初期設定の支援に入り、約1ヶ月で最初のメルマガを配信しました。

40以上のアプリを提供するサービスのため、毎週、性質が異なるアプリごとに、ターゲットの要件定義・タグ設定・メール文面の作成までを一気通貫で行いました。メール文面は初期の1〜2パターンから、週1パターンのペースで積み上げ、20〜30パターンに拡充しています。2024年1月からはSmartHRユーザーの行動データをもとにしたトリガーメールの配信を開始し、2024年3月にはAccount Engagement上に全アプリ向けの問い合わせフォームを整備しました。マーケティングチーム全体の成果として、目標に掲げていた問い合わせ数がこの1年間で約10倍に伸びています。


1年間で約10倍の問い合わせを獲得。メールを1〜2から20〜30パターンへ拡充

Account Engagementの初期設定からメール文面作成まで一貫支援。メールラインナップを20〜30パターンに拡充し、行動データを基にしたトリガーメールと30以上のフォームを展開。

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1年間で約10倍の問い合わせを獲得。メールを1〜2から20〜30パターンへ拡充のサムネイル

事例②:CLUE様|行動データを活用したインサイドセールスへの自動連携

株式会社CLUE様は、2019年時点でマーケティング経験者が社内に一人もいない状態からのスタートでした。弊社は、Account EngagementとSalesforceの選定・導入初期設定・活用までを5年間支援しています。KPI設計から着手し、ターゲット属性に合致するリード数と商談獲得数の2つを指標に設定しました。

リードの見極めでは、3日連続でサービスページに訪問しているユーザーを検知し、インサイドセールスに自動で連携する仕組みを構築しました。訪問が続いていることを、担当者が気づくのを待たずにインサイドセールスへ伝えられるようにしたものです。

5年間の支援で、「営業が自分の足でリードを獲得する状態」から「組織として施策でリードを獲得できる状態」へと変わりました。


スタートアップのマーケ立ち上げ。商談・受注を創出するリードが安定獲得できる仕組みを構築

顧客データで目標設定し、運用型広告を媒体選定から刷新。営業インサイトを反映したLP改修とセミナー・オウンドメディア改善により、商談・受注を創出するリードの安定獲得を実現。

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リードスコアリングが使われなくなる3つの原因と対処法

リードスコアリングが使われなくなった状態とは、スコアリングを作成したものの営業の判断ではほとんど参照されていない、スコアを見ても営業の行動が変わらない、といった状況を指します。主な原因は次の3つです。

原因①:行動スコアの配点が感覚で決まっている

よくあるのが、「どの行動を、検討がどれくらい進んだサインとみなすか」が担当者の感覚だけで決まっているケースです。とりあえずメール開封にもスコアを付けた結果、数か月後には開封のスコアが積み重なり、営業から「スコアが高いのに商談にならない」と言われてしまいます。

これを避けるには、過去に商談化したリードと、商談化しなかったリードの行動履歴を比べ、どの行動に差があるかをデータで見ることが重要です。価格ページの閲覧や資料ダウンロードのように本人が能動的に取る行動と、メール開封のような受動的な反応は、配点の段階で分けて扱います。データが十分にたまっていれば、ロジスティック回帰などで行動ごとの重みを算出する方法もあります。

統計を使った配点の決め方は、統計的スコアリングのモデル設計の手順で解説しています。

原因②:営業側にスコアの意味が伝わっていない

配点を丁寧に作っても、営業が「このスコアが何を表しているのか」を理解していなければ、スコアは見られません。「スコアが60点だから連絡してと言われても、なぜこの人なのかがわからない」という状況は、スコアの読み方が共有されていないときに起こります。

対策は、SLAの策定とあわせて、スコアの読み方を営業に共有する場を持つことです。たとえば「40点以上は直近で価格ページを見ている可能性が高い」「80点以上は問い合わせフォームまでアクセスしている」のように、スコアの帯と具体的な行動を対応させて説明すると、営業がスコアをもとに連絡の順番を決めやすくなります。

ナーチャリングの施策とスコアをつなげる方法は、ナーチャリングとスコアリングの連携の進め方で解説しています。

原因③:見直しの場がなく、配点が固定されている

スコアリングルールは、一度作って終わりではなく、市場や自社の営業プロセスの変化に合わせて更新していく前提で考えます。少なくとも四半期に一度は、スコアが一定値以上のリードの商談化率と、失注したリードに共通するスコアや行動を、マーケティングと営業で一緒に振り返る機会を持ちます。

振り返りの場がないと、最初の仮説で決めた配点がそのまま固定されます。スコアリングは運用しながら直していく仮説であるという前提を、マーケティングと営業で共有しておくことが、使われなくなるのを防ぐポイントです。

リードスコアリングを作り込まなくてよい場合

リードスコアリングは、営業が対応できる件数を上回るリードがあり、連絡する順番を決める必要がある場合に効果を発揮します。次のような状況では、配点の作り込みを急がず、先に別の打ち手を優先するほうが成果につながりやすくなります。

1つ目は、リードの件数が少なく、営業がすべてのリードに決めた期限内に連絡できている場合です。この段階では、スコアで順番を決めるより、問い合わせやデモ申込に対する初回連絡を早くするほうが効果があります。

2つ目は、商談化や取引開始の実績が少なく、配点の根拠にできるデータがない場合です。Einstein リードスコアリングも、目安となる件数に届かない間はグローバルモデルを使います。まずは商談化の結果をSalesforceに記録し、配点を決める材料をためることから始めます。

3つ目は、狙う企業が少数に絞られており、営業がアカウントごとに直接アプローチしている場合です。この場合は個人のスコアより、企業単位で何人が関与しているか、最後の接点はいつかといった情報のほうが判断に使えます。

いずれの場合も、スコアリングをやめるという判断ではなく、着手する順番の問題です。リードの件数が増え、営業がすべてに対応しきれなくなった段階で、スコアリングルールから始めてください。

「やっているのに成果が出ない」状態から抜け出すために

施策を続けているのに商談が増えない、リードの質が上がらない。こうした課題の多くは、戦略と施策のつながりが設計されていないことが原因です。Sells upは現状の分析と改善の優先順位整理から支援します。

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まとめ

Salesforceのリードスコアリングは、Sales CloudのEinstein リードスコアリング、Account EngagementのEinstein 行動スコアリング、Account Engagementのスコアリングルールの3つで考えると整理しやすくなります。AI型の2つは一定のデータ量が前提で、利用できるライセンスやエディションも限られます。データが少ない段階ではスコアリングルールで仮説を立て、実績がたまってからAI型を追加・併用すると、無理なく進められます。

MQLの判定は、行動スコアと属性スコアをAND条件で組み合わせます。弊社のRFEスコアモデルでは属性スコア20点以上かつ行動スコア40点以上としていますが、これは設計例であり、自社の商談化率を見て調整するものです。あわせてスコア減衰をオートメーションルールで設定すると、同じスコアでも直近で動いているリードを優先できるようになります。

どれだけ精巧なスコアリングを作っても、営業への割り当てとSLAが定まっていなければ連携は回りません。MQLの定義、引き渡しのプロセス、初回フォローのルール、フィードバックの方法、定期レビューの場を盛り込んだSLAを、マーケティングと営業が一緒に作ることが、スコアリングを使い続けるためのポイントです。

よくある質問

スコアリングとは何ですか?

スコアリングとは、見込み客(リード)が取った行動や備えている属性に点数を付け、検討の進み具合を数値として表す仕組みです。行動スコア(ページ閲覧、フォーム送信、資料ダウンロードなど)と属性スコア(役職、業種、企業規模など)の2軸で構成するのが一般的です。

SalesforceのEinsteinリードスコアリングとAccount Engagementのスコアリングはどう違いますか?

Einstein リードスコアリングはSales Cloudの機能で、過去のリードの取引開始・不成立のパターンをAIが学習し、自動でスコアを付けます。Account Engagementには、エンゲージメントの内容から0〜100のスコアを付けるEinstein 行動スコアリングと、担当者が配点を設定するスコアリングルールがあります。データが少ない段階ではスコアリングルールで仮説を立て、実績がたまってきたらAI型を追加・併用する進め方をおすすめしています。

Einstein 行動スコアリングを使うには何が必要ですか?

Einstein 行動スコアリングはAccount Engagementの一部のエディションで利用でき、Salesforce側はEnterprise・Performance・Unlimitedのいずれかが前提です。データとしては、6か月以上のエンゲージメントデータと、商談に紐づいたプロスペクトが20件以上あることが推奨されています。有効化してから最初のスコアが表示されるまで最長48時間かかります。エディションの構成は改定されることがあるため、導入前に公式ページで現行の条件を参照してください。

Account Engagement(旧Pardot)のスコアリングカテゴリとは何ですか?

スコアリングカテゴリは、製品ラインや事業部ごとに別々のスコアを持たせるための機能です。コンテンツをフォルダー単位で整理し、そのフォルダーにカテゴリを紐づけることで、「どの製品・サービスへの関心が高いか」をカテゴリ別のスコアで把握できます。全体のスコアとは別に管理されるため、提案する製品を選ぶ材料になります。

MQL閾値はどのように設計すればよいですか?

行動スコアだけ、属性スコアだけといった単独の判定では誤りが増えやすいため、AND条件で組み合わせて判断します。弊社のRFEスコアモデルでは「属性スコア20点以上かつ行動スコア40点以上」としていますが、これはSells upの支援で使用している設計例であり、一般的な基準ではありません。自社で商談化したリードの行動履歴から初期値を設定し、四半期ごとに商談化率を見ながら調整してください。

Salesforceでリードを管理するメリットは何ですか?

Account EngagementやEinsteinのスコアと、Salesforceの商談データを同じ基盤で管理できる点がメリットです。スコアが閾値を超えたリードを割り当てルールやフローで営業へ自動的に割り当て、その後の活動履歴や商談化率、失注理由までをマーケティング側に返せるため、配点と閾値の見直しを1つのプラットフォームの中で進められます。

既存のAccount Engagementスコアリング設定からEinsteinに移行する際の注意点は何ですか?

Einsteinのスコアは、Account Engagementのスコアリングルールとは別のAIモデルとして計算されるため、同じリードにルールベースのスコアとEinsteinのスコアが併存します。移行時には、どちらのスコアを優先して見るのか、どう組み合わせて判断するのかを営業とすり合わせ、SLAに明記しておくことが重要です。AIのモデルが安定するまでには一定期間がかかるため、しばらくは両方のスコアを並べて運用する前提で進めてください。

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株式会社Sells up 代表取締役
武田 大
株式会社AOKIにて接客業、株式会社リクルートライフスタイル(現:株式会社リクルート)にて法人営業を経験後、株式会社ライトアップでBtoBマーケティングを担当。デジタルマーケティングエージェンシーを経て2023年に株式会社Sells upを設立。戦略設計・KPI設計を起点に、リードジェネレーション、ナーチャリング、MA/SFA活用、営業連携までBtoBマーケティングを一気通貫で支援。KGI逆算のKPI設計やリードスコアリングの統計的設計、営業連携SLAの構築を強みとし、業界・規模を問わず80社以上に提供。Account Engagement SpecialistおよびTableau Desktop SpecialistのSalesforce認定資格を保有。
保有資格Salesforce Certified Marketing Cloud Account Engagement Specialist/Tableau Desktop Specialist
専門領域BtoBマーケティング/リードジェネレーション/リードナーチャリング/マーケティングオートメーション/HubSpot導入活用支援/Account Engagement導入活用支援/Marketo活用支援/インサイドセールス/統計解析によるスコアリング設計/商談化率向上/マーケティングROI改善