ナレッジ 2025.10.06 最終更新 2026.10.18

MAとインサイドセールスの連携方法|引き渡しルール・設定手順・KPI

この記事を書いた人 武田 大 株式会社Sells up 代表取締役

マーケティングオートメーション(MA)とインサイドセールスの連携とは、MAで集めた見込み客の行動をインサイドセールスが連絡の順番と会話に使い、その結果をMAへ戻して次の配信や引き渡しの条件を直していく仕組みのことです。

「MAから通知は来るが、連絡しても商談にならない」「インサイドセールスが対応した結果がマーケティングに戻ってこない」。MAとインサイドセールスを両方持っている企業から、こうした相談をいただくことがあります。通知の仕組みはあっても、どの見込み客に、いつまでに、どう対応し、結果をどう戻すかがはっきりしていないことが多いためです。

本記事では、MAとインサイドセールスの役割分担、引き渡しのルール、MAの設定手順、インサイドセールスに見せる情報、連携で追うKPIを、表と手順で解説します。

MAとインサイドセールスの役割分担

MAは「誰が、いつ、何に関心を示したか」を記録して知らせる役割、インサイドセールスは「その人と話して、検討状況を確かめる」役割です。インサイドセールスとは、電話やメール、オンライン会議で見込み客とやり取りし、商談につながる状態まで関係を進める営業の役割です。

担当 主な役割 使う情報・道具
MA(マーケティング) 行動の記録、点数付け、メール配信、引き渡し対象の通知 Webの閲覧、資料ダウンロード、フォーム、メールの反応
インサイドセールス 通知を受けた見込み客への連絡、検討状況の聞き取り、商談への引き継ぎ MAの行動履歴、SFA・CRMの記録、電話・メール
フィールドセールス 商談の実施、提案、受注 インサイドセールスから受け取った聞き取り内容

連携がうまくいかないのは、MAが「渡したら終わり」、インサイドセールスが「連絡したら終わり」になり、結果が戻らないときです。結果が戻らないと、どの行動が商談につながるのか分からず、通知の条件も直せません。

インサイドセールスの体制の作り方は、インサイドセールスの立ち上げ手順で解説しています。

引き渡しのルールで決める5つの項目

MAからインサイドセールスへの引き渡しのルールは、渡す条件・知らせ方・対応期限・連絡の回数と期間・結果の戻し方の5つを決めます。条件だけを決めても、対応期限や結果の戻し方があいまいなままだと、通知が放置されたり、商談にならなかった理由が分からなかったりします。

項目 決めること 決め方の例
渡す条件 どの状態の見込み客を渡すか 狙う企業の条件に合い、料金ページ閲覧や相談フォームなど、検討が進んだと見られる行動がある
知らせ方 誰に、どの手段で知らせるか 問い合わせ・デモ依頼はすぐ担当者へ通知し、それ以外は1日1回の一覧にする
対応期限 通知から何時間以内に連絡するか 問い合わせ・デモ依頼は当日中、その他は2営業日以内
連絡の回数と期間 何回・何日まで連絡を続けるか 10営業日で電話とメールを数回。つながらなければMAの配信へ戻す
結果の戻し方 対応の結果をどこに、どの区分で記録するか 商談化・時期尚早・対象外・連絡不可を選び、理由を一言残す

引き渡しの段階は、MQL・SAL・SQLの3つに分けると、どこで止まっているかが分かります。MQLとは、マーケティング部門が営業へ引き渡す対象として判定した見込み客、SALとは、インサイドセールスが受け取って対応すると決めた見込み客、SQLとは、会話を通じて商談に進めると営業が判断した見込み客のことです。

段階 判定する人 判定の目安
MQL マーケティング(MA) 合意した条件を満たした
SAL インサイドセールス 重複・対象外でないことを確かめ、担当を引き受けた
SQL インサイドセールス・営業 課題・検討時期・関わる人が分かり、次の打ち合わせが決まった

引き渡しの基準そのものの決め方は営業へ引き継ぐ基準と手順、マーケティングと営業の連携がうまく回る企業の共通点は営業連携が機能している企業の共通点で詳しく解説しています。

対応の速さの目安

問い合わせやデモ依頼のように本人が連絡を求めている行動では、対応は早いほどよいです。一方で、資料のダウンロードのように情報を集めている段階の行動なら、すぐに電話しなくてもかまいません。

よく引用される研究に、MITとInsideSales.comがWebフォームからの問い合わせ約15,000件を分析したLead Response Managementの研究があります。5分以内に連絡した場合、30分後と比べて、商談候補として資格付けできる確率(オッズ)が約21倍とされています。また、Harvard Business Reviewの記事(2011年)では、米国企業2,241社に問い合わせを送ったところ、1時間以内に返信したのは37%で、23%は返信しなかったと報告されています。

ただし、これらは電話が中心だった時期のデータです。測っているのも、連絡がつくか、資格付けできるかであり、受注率が何倍になるという意味ではありません。対応期限は、行動の種類ごとに分けて決めます。

行動の種類 対応期限の目安 最初の対応
問い合わせ・デモ依頼・見積もり依頼 できるだけ早く、遅くとも当日中 担当者からの電話・個別のメール
料金ページ・導入事例の閲覧が続いた 当日〜翌営業日 行動に沿った話題で連絡
セミナー参加 1〜2営業日 参加のお礼と、聞きたいことを伺う連絡
一般的な資料のダウンロード すぐには電話しない MAのメールで接点を続け、条件を満たしたら連絡

出典:Harvard Business Review「The Short Life of Online Sales Leads」

MAとインサイドセールスを連携させる設定手順

MAの設定は、通知の条件を作り、インサイドセールスに見せる項目を決め、対応結果を戻す項目と戻ってきた見込み客向けの配信を用意し、最後に数字を見る画面を作る、という順で進めます。

手順 やること できあがるもの
Step.1 渡す条件を満たしたら知らせる設定を作る 通知の条件と通知先
Step.2 インサイドセールスに見せる項目を決める SFA・CRMに表示する行動履歴と点数
Step.3 対応の結果を戻す項目を作る 結果の区分と理由の入力欄
Step.4 戻ってきた見込み客向けの配信を用意する 時期尚早・連絡不可の人へのメール
Step.5 段階ごとの数字を見る画面を作る MQL→SAL→SQL→受注の推移

Step.1:渡す条件を満たしたら知らせる

Step.1では、MAで渡す条件を満たした見込み客を、インサイドセールスへ知らせる設定を作ります。問い合わせやデモ依頼は1件ずつすぐに知らせ、点数が一定を超えた人は1日1回の一覧で知らせるなど、行動の重さで分けておくと、通知が多すぎて見られなくなる状態を避けやすくなります。

Step.2:インサイドセールスに見せる項目を決める

Step.2では、インサイドセールスが普段使うSFA・CRMの画面に、MAの情報のうち何を出すかを決めます。点数だけでなく、最後に見たページ、ダウンロードした資料、参加したセミナーも見られるようにすると、会話に入りやすくなります。

Step.3:対応の結果を戻す項目を作る

Step.3では、インサイドセールスが対応した結果を記録する項目を作り、MAと同期します。区分は選ぶだけで済むようにし、商談化・時期尚早・対象外・連絡不可・重複などに絞ります。入力が自由記述だけだと集計しにくく、渡す条件を直す材料にもなりません。

Step.4:戻ってきた見込み客の配信を用意する

Step.4では、時期尚早や連絡不可でMAへ戻った見込み客に送るメールを用意します。戻した日、次に連絡する目安の時期、関心のありそうなテーマを記録しておくと、戻した見込み客をそのままにせず接点を続けやすくなります。

Step.5:段階ごとの数字を見る画面を作る

Step.5では、MQL・SAL・SQL・受注の件数と、段階ごとの移り変わりの割合を1つの画面で見られるようにします。どの段階で止まっているかが分かれば、渡す条件、対応期限、配信内容のどれを直すかを決めやすくなります。

インサイドセールスに見せる情報と会話での使い方

インサイドセールスに見せる情報は、点数と、点数が上がった理由になった行動の2つです。点数だけでは、いまこの人に連絡する理由が分からず、行動の履歴だけでは連絡の順番を決めにくいためです。

見せる情報 会話での使い方の例
最後に見たページ 料金ページなら費用の考え方、事例ページなら同じ業種の進め方を話題にする
ダウンロードした資料 資料のテーマに沿って、いま困っていることを聞く
参加したセミナー 参加のお礼と、自社に当てはめたときの疑問を聞く
過去の対応の記録 前回の会話の内容と、時期尚早とされた理由を踏まえて話す

注意したいのは、行動の履歴だけで「購買意欲が高い」と決めつけないことです。料金ページを見たのは、相場を知りたいだけかもしれません。行動は話題を選ぶ材料として使い、検討の状況は会話で確かめます。また、「昨日このページを3回ご覧になっていましたね」のように閲覧の細部をそのまま伝えると、追跡されている印象を与えることがあるため、話題の選び方に使うのにとどめます。

点数の付け方は、リードスコアリングの設計6ステップで解説しています。

連携で追うKPI

MAとインサイドセールスの連携では、通知の件数ではなく、通知した見込み客が商談や受注まで進んだかを見ます。KPIとは、目標に向けた取り組みがうまく機能しているかを測る指標のことです。

KPI 計算・見方 低いときに見直すところ
SAL率 SAL数÷MQL数 渡す条件(対象外が多くないか)
初回対応までの時間 通知から最初の連絡までの時間 知らせ方・担当の割り振り
SQL率 SQL数÷SAL数 会話の進め方・見せる情報
商談・受注の割合 受注数÷SQL数 引き継ぎの内容・商談の進め方
対象外の理由 区分ごとの件数 渡す条件・除外の設定
再MQLの割合 MAへ戻した人のうち再びMQLになった割合 戻した人への配信内容

連携の数字は、マーケティングだけ、インサイドセールスだけで見ると、直すところが偏ります。月に1回など頻度を決め、MQLの条件、SALにした理由、SQLにならなかった理由、MAへ戻した後の反応を同じ画面で見ます。参加者はマーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスの責任者に絞り、次回までに変える条件は少数に限ります。議題を固定しておくと、通知の条件を細かく変えすぎたり、会話の進め方だけに理由を求めたりするのを避けやすくなります。

インサイドセールスのKPIの決め方は、インサイドセールスKPIの決め方で解説しています。

弊社がBtoB企業480名を対象に実施した調査では、MAを導入している企業のうち、営業への通知やトスアップの運用があると回答した割合は、MAが商談・売上に貢献している企業(42名)で61.9%、貢献していない企業(92名)で60.9%と、ほとんど差がありませんでした。一方、マーケティングと営業の連携がスムーズに取れていると回答した割合は、貢献している企業で78.6%、貢献していない企業で6.5%でした。通知の仕組みがあるかどうかより、渡した後の対応と結果の共有で差が出ていると考えられます。なお、この結果は関連を示すものであり、因果関係を示すものではありません。

出典:調査主体:株式会社Sells up/調査ツール:Surveroid(2026年9月、n=480)。詳細はBtoB企業のMA活用実態調査(第0回)をご覧ください。

連携の成果を投資の判断に使う場合は、KPIを金額に置き換えて見ます。ROIの計算手順と、費用に含める項目は、MAツールの費用対効果とROIの計算手順で解説しています。

MAとインサイドセールスの連携の事例

弊社が支援した株式会社CLUE様では、2019年当時、マーケティングの経験者がいない状態でした。KPIの設計から着手して追う指標を2つに絞り、3日連続でサービスページを訪問している見込み客を検知して、インサイドセールスへ自動で連携する仕組みを作っています。行動の条件を決めて知らせるところまでをMAで行い、会話はインサイドセールスが担う分担です。


スタートアップのマーケ立ち上げ。商談・受注を創出するリードが安定獲得できる仕組みを構築

顧客データで目標設定し、運用型広告を媒体選定から刷新。営業インサイトを反映したLP改修とセミナー・オウンドメディア改善により、商談・受注を創出するリードの安定獲得を実現。

sellsup.co.jp

スタートアップのマーケ立ち上げ。商談・受注を創出するリードが安定獲得できる仕組みを構築のサムネイル

株式会社日本テレビアート様では、新しく立ち上げた事業でリードが増え、架電が追いつかなくなったことを受けて、インサイドセールスのチームを新設し、トークスクリプトの作成と監修を行いました。


広告予算10万円で毎月100件のリードを創出。新規事業のマーケティング基盤を構築

サービスの言語化とフック抽出を経て、Meta広告・LP・Web改修・コンテンツを同時進行。HubSpot導入でリード管理とメール施策を効率化し、提供範囲をブランディング領域まで拡大。

sellsup.co.jp

日テレアートのロゴが掲げられた壁の前で、3人が立ち話をしている写真

MAとインサイドセールスの連携を急がなくてよい場合

次のような状態であれば、MAとインサイドセールスの連携を細かく作り込むことを急がなくてもかまいません。

  • 入ってくるリードが少なく、営業が全員に自分で連絡できている
  • 狙う企業が数十社に絞られていて、企業ごとに営業が直接連絡している
  • インサイドセールスの人数に対して通知が多すぎて、対応しきれていない
  • SFA・CRMに対応の結果が記録されておらず、どの見込み客がどうなったかが分からない

この段階では、問い合わせとデモ依頼だけを対象に、対応期限と結果の記録を決めるところから始めます。結果の記録がたまり、どの行動が商談につながるかが見えてから、通知の条件を広げます。

「やっているのに成果が出ない」状態から抜け出すために

施策を続けているのに商談が増えない、リードの質が上がらない。こうした課題の多くは、戦略と施策のつながりが設計されていないことが原因です。Sells upは現状の分析と改善の優先順位整理から支援します。

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まとめ

MAとインサイドセールスの連携は、MAが見込み客の行動を記録して知らせ、インサイドセールスが会話で検討の状況を確かめ、その結果をMAへ戻す仕組みです。引き渡しのルールでは、渡す条件・知らせ方・対応期限・連絡の回数と期間・結果の戻し方の5つを決めます。

対応期限は行動の種類で分け、問い合わせやデモ依頼にはできるだけ早く対応し、資料のダウンロードはメールで接点を続けます。インサイドセールスには点数と行動の履歴をセットで見せ、行動だけで購買意欲を決めつけず、会話で確かめます。

連携では、通知の件数ではなく、SAL率・初回対応までの時間・SQL率・対象外の理由を追い、どの段階で止まっているかを見て条件を見直します。リードが少ない段階では、問い合わせとデモ依頼への対応から始めます。

よくある質問

MAからインサイドセールスに渡したリードが商談になりません。何から見直せばいいですか?

まず、渡したリードのうち対象外と判断された割合と、その理由を見ます。対象外が多ければ渡す条件、連絡がつかないことが多ければ対応期限と知らせ方、会話はできても商談にならないなら見せる情報と会話の進め方を見直します。結果の区分が記録されていなければ、区分を作るところから始めます。

インサイドセールスへの引き渡しの条件は、点数だけで決めてもいいですか?

点数だけで決めるのはおすすめしません。点数は関心の高さの目安で、狙う企業に合っているかまでは表さないためです。業種や企業規模などの属性の条件と、問い合わせ・料金ページ閲覧といった検討の進んだ行動を組み合わせて決めます。

通知を受けてから、どのくらいの時間で連絡すればいいですか?

問い合わせやデモ依頼のように本人が連絡を求めている場合は、できるだけ早く、遅くとも当日中が目安です。一般的な資料のダウンロードではすぐに電話せず、メールで接点を続けます。行動の種類ごとに期限を分けて決めます。

インサイドセールスの対応結果は、MAにどう戻せばいいですか?

SFA・CRMに、商談化・時期尚早・対象外・連絡不可などを選んで記録する項目を作り、MAと同期します。選ぶだけで済む区分にしておくと集計でき、渡す条件や配信の内容を直す材料になります。時期尚早の人には、次に連絡する目安の時期も残します。

MAとインサイドセールスの連携で、最初に見るべきKPIは何ですか?

SAL率(渡したうち受け取った割合)、通知から最初の連絡までの時間、SQL率(受け取ったうち商談に進んだ割合)の3つから始めます。通知の件数だけを見ていると、渡した後に止まっていることに気づけません。

インサイドセールスの人数が少なくても、MAと連携したほうがいいですか?

人数が少ないほど、連絡する相手を絞るうえでMAの情報が役立ちます。ただし、通知が多すぎると対応しきれないため、最初は問い合わせとデモ依頼だけを通知の対象にし、対応期限と結果の記録が回るようになってから広げます。

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株式会社Sells up 代表取締役
武田 大
株式会社AOKIにて接客業、株式会社リクルートライフスタイル(現:株式会社リクルート)にて法人営業を経験後、株式会社ライトアップでBtoBマーケティングを担当。デジタルマーケティングエージェンシーを経て2023年に株式会社Sells upを設立。戦略設計・KPI設計を起点に、リードジェネレーション、ナーチャリング、MA/SFA活用、営業連携までBtoBマーケティングを一気通貫で支援。KGI逆算のKPI設計やリードスコアリングの統計的設計、営業連携SLAの構築を強みとし、業界・規模を問わず100社以上に提供。Account Engagement SpecialistおよびTableau Desktop SpecialistのSalesforce認定資格を保有。
保有資格Salesforce Certified Marketing Cloud Account Engagement Specialist/Tableau Desktop Specialist
専門領域BtoBマーケティング/リードジェネレーション/リードナーチャリング/マーケティングオートメーション/HubSpot導入活用支援/Account Engagement導入活用支援/Marketo活用支援/インサイドセールス/統計解析によるスコアリング設計/商談化率向上/マーケティングROI改善