セグメントメールとは、リストを業種・役職・行動履歴・検討状況などの条件で分け、グループごとに内容を変えて配信するメール施策です。
「メルマガを毎週送っているのに反応が下がり続けている」「リードは増えたのに、営業から質が低いと言われる」。こうした状態は、全員に同じ内容を送っていることが一因になっている場合があります。
BtoBでは、1つの購買に担当者・承認者・予算を持つ役員が関わり、検討期間が半年以上に及ぶこともあります。そのため、誰に・何を・いつ届けるかを分けて考える必要があります。
本記事では、BtoBマーケティングを80社以上支援してきたSells upが、セグメントの切り口5つ、配信を組み立てる5つのステップ、MAツールでの運用、よくある失敗、効果の測り方を順に見ていきます。
セグメントメール(セグメント配信)とは?定義と一斉配信との違い
セグメントメールとは、持っているリストを特定の条件でグループ分けし、グループごとに内容を変えて配信するメール施策のことです。セグメント配信とも呼ばれます。
一斉配信との違いは次の2つです。
1つ目は、配信する前に「誰に届けるか」を決める点です。
2つ目は、開封やクリックだけでなく、その後の商談化まで見ながら内容を変えていく点です。
BtoBでは、担当者・マネージャー・役員がそれぞれ別の情報を必要とします。製造業の担当者には日々の業務に関わる活用事例を、役員には投資対効果の試算を届けるというように、同じリストの中でも内容を変えて配信します。
一斉配信で反応が下がる理由
受信者は毎日多くのメールを受け取っており、件名と冒頭で自分に関係がないと判断したメールは読みません。全員向けの内容は、誰にとっても少しずつ関係が薄くなります。
BtoCの手法をそのままBtoBに当てはめた場合も、同じことが起きます。弊社が支援した株式会社ブリューアス様では、BtoC(プログラミングスクール)のマーケティング手法をそのままBtoBに転用していたことが、取り組み前の大きな課題でした。BtoBでは購買に関わる人ごとに関心が違うため、BtoCと同じ組み立てでは届く内容がずれます。
一斉配信とセグメント配信の使い分け基準
| 配信種別 | 向いているコンテンツ | 向いていないコンテンツ |
|---|---|---|
| 一斉配信 | 新製品リリース情報・会社の公式アナウンス・誰もが関心を持つ業界ニュース | 特定業種向けの事例・役職別の投資対効果の説明・検討状況に合わせた案内 |
| セグメント配信 | 業種別事例・役職別の課題提起・行動をきっかけにしたフォロー | 全社向けの告知・緊急連絡・キャンペーン案内 |
セグメントメールは単独の施策ではなく、見込み客を商談まで育てる取り組みの一部です。育成全体の進め方は、BtoBリードナーチャリングの手法と始め方で解説しています。
BtoBでセグメントメールが重視される3つの理由
BtoBでセグメントメールが重視される理由は、主に次の3つです。
1つ目は、営業と話す前の情報収集が長くなっていることです。
2つ目は、購買に関わる人が複数いて、それぞれ関心が違うことです。
3つ目は、検討期間が長く、配信のタイミングが反応に影響することです。
営業と話す前の情報収集が長くなっている
見込み客は、Webサイト・事例記事・比較サイトで情報を集め、候補をある程度絞ってから営業に問い合わせることが増えています。営業が接点を持つ前の期間に、自社に関係のある情報をメールで届けられるかどうかが、比較候補に残れるかに関わります。
この期間に届くのが自社に関係のない一般論ばかりだと、見込み客は他社の資料を読み進めます。業種や関心に合わせて内容を変えることで、読んでもらいやすくなります。
購買に関わる人ごとに関心が違う
BtoBの購買では、現場の担当者・部門マネージャー・役員・情報システム部門・調達部門が関わることが多く、それぞれ求める情報が違います。
| 役職 | 主な関心事 | 届けるコンテンツ例 |
|---|---|---|
| 担当者 | 操作性・日常業務への影響 | 操作チュートリアル・FAQ・導入事例 |
| 部門マネージャー | チームの生産性・KPI達成 | 導入後の効果測定事例・他社比較 |
| 役員・経営者 | 投資対効果・競合との差・リスク | 投資対効果の試算・導入企業リスト |
役職を考えずに同じ内容を送り続けると、マネージャーには担当者向けの話ばかりが届き、役員には判断に使える数字が届きません。役職別に訴求を分けておくと、営業に引き渡したあとも、相手が何に関心を持っているかを営業が把握しやすくなります。
検討期間が長く、タイミングが成果を左右する
BtoBの検討期間は業種やサービスによって違いますが、半年から1年以上に及ぶことも珍しくありません。この間に関心に合った情報が届かなければ、見込み客の関心は少しずつ薄れていきます。
「資料ダウンロード後の2週間は反応があったが、その後3か月メールを開いていない」というリードに同じメルマガを送り続けても、配信数と工数が増えがちです。行動履歴に応じて配信を分けると、反応が止まったリードへの掘り起こしと、関心が高まった時期のフォローを分けて行えます。
BtoBセグメントメールの切り口5選
BtoBのセグメントメールでは、BtoCでよく使われる年齢・性別・地域ではなく、BtoBならではの分け方を使います。主な切り口は次の5つです。
1つ目は、企業属性(業種・規模・エリア)です。
2つ目は、役職と、その立場が持つ課題です。
3つ目は、検討の段階です。
4つ目は、Webサイト上の行動履歴です。
5つ目は、MAツールのスコアです。
切り口1:企業属性(業種・規模・売上・エリア)
企業属性とは、業種・従業員数・売上規模・所在地といった、時間がたっても変わりにくい情報を指します。
同じサービスでも、製造業には「担当者ごとに分かれていた知識を共有できるようにした事例」、SaaS企業には「オンラインでの見込み客の育成を自動化した事例」というように、反応しやすい事例は変わります。
業種を考えずに配信すると、受信者に「自分たちの話ではない」と受け取られやすくなります。企業属性を分類する際の項目として整理する方法は、BtoB向けセグメンテーション分析の進め方で解説しています。
切り口2:役職と、その立場が持つ課題(担当者・マネージャー・役員)
役職セグメントとは、受信者の組織内での立場と、その立場が持つ課題で分ける方法です。担当者・マネージャー・役員では、関心が作業の効率、チームの生産性、投資対効果と変わります。
役員向けのメールで操作手順を詳しく説明しても、読まれにくくなります。役職の情報は、問い合わせフォームの入力項目・名刺データ・SFA(営業支援システム)の商談情報から集められます。役職が分からないリストでは、企業規模を代わりの手がかりにする方法もあります。
切り口3:検討の段階(情報収集・比較検討・導入直前)
検討の段階とは、リードが購買までのどのあたりにいるかで分ける方法です。
課題をまだはっきり認識していない人と、複数の会社を比べている人では、届ける内容が違います。前者には課題を整理するチェックリストを、後者には自社と他社の違いをまとめた比較資料を届けます。ただし、検討は一直線に進むとは限らず、比較の途中で情報収集に戻ることもあります。段階は行動データだけで分けず、営業の会話で分かったことも反映します。
既存顧客にも、追加提案の候補・継続利用中・解約の兆しがある顧客といったグループがあり、それぞれに合った連絡を分けて行います。カスタマーサクセス部門と連携してこのグループを運用する方法は、既存顧客のリテンションとCS連携の進め方を参考にしてください。
切り口4:Webサイト上の行動履歴(閲覧ページ・ダウンロード資料・フォーム送信)
行動履歴セグメントとは、リードがWebサイト上で取った行動(閲覧したページ・ダウンロードした資料・フォーム送信など)で分ける方法です。
「料金ページを3回以上閲覧した」「導入事例を読んだあとに離脱した」「ホワイトペーパーをダウンロードしたが2週間たっても次の行動がない」といったパターンごとに、送るメールを変えます。料金ページを何度も見たリードには、費用の試算シートや個別相談の案内を送ります。ただし、閲覧回数が多いことは関心の手がかりであって、購入に進むことの証拠ではありません。
行動をきっかけに自動で送るメールの組み立て方は、行動をきっかけに自動で送るトリガーメールの種類とタイミングで解説しています。
切り口5:MAツールのスコア(ホット・ウォーム・コールド)
スコアリングとは、MA(マーケティングオートメーション)ツールがリードの属性と行動に点数をつけ、営業が優先して対応する相手を見分けるための仕組みです。
スコアが一定の値を超えたリードを別のグループに移し、個別相談の案内に切り替える運用ができます。担当者が手作業でリストを見直す手間が減り、対応を急ぐ相手に時間を使えます。スコアの組み立て方と運用は、スコアリングモデルの設計と運用手順で解説しています。
BtoBでセグメントメールを組み立てる5つのステップ
セグメントメールを「なんとなく分けて送る施策」から「商談につながる運用」に変えるには、次の5つのステップで進めます。
Step.1:ゴールとKPIを商談数から逆算して決めます。
Step.2:ペルソナとカスタマージャーニーを整理します。
Step.3:セグメントの条件を決め、リストを整えます。
Step.4:コンテンツをセグメントごとに割り当てます。
Step.5:MAツールで配信を自動化し、結果を見て改善します。
Step.1:ゴールとKPIを先に決める(開封率ではなく商談数から逆算します)
最初に決めるゴールは、開封率やクリック率ではなく、月間の商談数やMQL(マーケティング部門が営業に渡す基準を満たしたリード)の数といった、営業活動に直結する指標です。開封率やクリック率は途中の指標で、それだけでは売上への貢献を説明しにくくなります。
ゴールから逆算して、必要なMQL数、セグメントごとの配信数、用意するコンテンツの本数を決めます。計算の例を挙げると、「月間商談10件を目標にし、MQLからの商談化率を10%と置くと、月間MQLは100件必要になる」と見立て、どのセグメントから何件のMQLを見込むかを割り振ります。商談化率は自社の過去の実績をもとに置き、実績がなければ仮の値で始めて数か月ごとに見直します。
Step.2:ペルソナとカスタマージャーニーを整理する
ペルソナとは、ターゲットとなる見込み客の典型的な人物像のことです。カスタマージャーニーとは、その人が課題に気づいてから購入するまでの行動と関心の変化を順に並べたものです。
誰の、どの段階に向けて送るのかを決めないまま配信を始めると、内容がずれます。例として、「従業員50名規模のSaaS企業・マーケティング部長・CRM未導入」という人物像に対して、情報収集・比較検討・導入判断の3つの段階を描き、段階ごとに届けるメールの内容を決めます。
人物像と段階を整理したあとのシナリオの組み立て方は、シナリオ設計の具体的な手順と文例を参照してください。
Step.3:セグメントの条件を定義し、リストを整える
セグメントの条件を決めるとは、「どの情報を持つリードを、どのグループに入れるか」の基準を文章にしておくことです。条件決めと既存リストの棚卸しは同時に進めます。整えるタグは次の2種類です。
属性タグ(変わりにくい情報)
- 業種(製造業・SaaS・コンサル等)
- 従業員数(50名以下・50〜300名・300名以上等)
- 役職(担当者・課長・部長・役員等)
行動タグ(変わる情報)
- 資料ダウンロード履歴(資料名・ダウンロード日)
- ウェビナー参加履歴(テーマ・参加日)
- 特定ページの閲覧(料金ページ・導入事例ページ等)
属性の情報が足りないリードは、フォームで少しずつ項目を聞いていく方法(プログレッシブプロファイリング)や、営業がヒアリングした内容をMAツールに入れる方法で補います。
Step.4:コンテンツをセグメントごとに割り当てる
コンテンツの割り当てとは、手元にある事例・ホワイトペーパー・ウェビナー・動画などを、セグメントと検討の段階を組み合わせた表に当てはめる作業です。
| 段階 | 製造業向け | SaaS企業向け | 人材サービス向け |
|---|---|---|---|
| 情報収集期 | 製造業の営業デジタル化事例 | SaaS向けリード獲得事例 | 人材業界のMA活用チェックリスト |
| 比較検討期 | ツール比較ホワイトペーパー | 投資対効果の試算シート | 他社比較レポート |
| 導入直前期 | 導入スケジュール例・FAQ | デモ申込みのご案内 | 個別相談のご案内 |
手元のコンテンツを表に当てはめると、空いているマスが見えてきます。その空きが、優先して用意するコンテンツです。ホワイトペーパーをMAと連携させて配信に使う方法は、ホワイトペーパーとMAを連携した仕組みで解説しています。セグメントごとのメール文面は、セグメント別ナーチャリングメールの文例で具体例を紹介しています。
Step.5:MAツールで配信を自動化し、結果を見て改善する
リードの行動は毎日変わるため、手作業でグループを入れ替えながら配信を続けるのは難しくなります。条件に合ったリードを自動でグループに入れ、決めたメールを送る仕組みをMAツールで作ります。
弊社が支援した株式会社SmartHR様では、SmartHR Plusで提供する40以上のアプリについて、毎週、ターゲットの要件定義・タグ設定・メール文面の作成を一気通貫で進めました。メール文面は初期の1〜2パターンから週1パターンのペースで積み上げ、20〜30パターンに広げています。マーケティングチーム全体の成果として、目標に掲げていた問い合わせ数は1年間で約10倍になりました。

自動化で最初に取り組むのは、いちばん単純なシナリオを1本動かすことです。はじめから細かく作り込もうとして止まるより、2〜3のセグメントで小さく始めて結果を積み上げるほうが、改善の材料が早く集まります。
配信を始める前には、送信ドメインの認証(SPF・DKIM・DMARC)とワンクリックでの配信停止に対応しておきます。Googleは1日あたりおおむね5,000通以上をGmailに送る送信者に対し、これらに加えて配信停止の依頼を2日以内に反映すること、迷惑メールの報告率を0.3%未満に保つことを求めています。設定の手順はMAツールの初期設定5つの手順で解説しています。
セグメントメールの成果を上げるMAツール活用の3つのポイント
MAツールを導入したものの、配信内容は以前の一斉配信と変わっていない、という相談を受けることがあります。多くの場合、ツールの機能よりも、条件の決め方や運用の問題です。押さえておきたい点は次の3つです。
1つ目は、スコアとセグメントを連動させることです。
2つ目は、行動に応じてメールを分岐させることです。
3つ目は、営業との間で引き渡しのルール(SLA)を決めることです。
ポイント1:スコアとセグメントを連動させる
スコアとセグメントの連動とは、MAツールが計算したスコアが一定の値を超えたときに、自動でグループを変え、配信するシナリオを切り替える仕組みのことです。考え方が伝わりやすいよう、点数で分けた例を挙げます。
- スコア0〜30点:コールドのグループ→業界ニュースや基礎知識のコンテンツを週1回
- スコア31〜60点:ウォームのグループ→事例や比較のコンテンツ
- スコア61点以上:ホットのグループ→個別相談の案内を送り、営業に通知
この点数は説明のための例で、一般的な基準はありません。区切りの値は、過去の受注データをもとに決めます。Sells upの支援で使用している設計例では、複数の支援先の6か月分のデータからロジスティック回帰で重みを算出し、Engagement(反応の深さ)0.45、Recency(直近性)0.385、Frequency(頻度)0.165としています。MQLは属性スコア20点以上かつ行動スコア40点以上、優先して連絡する対象はRFEスコア0.75以上かつ直近7日以内に質の高い行動があった場合です。これらはSells upの支援で使用している設計例であり、一般的な基準ではありません。
また、スコアが高いことと購買意欲が高いことは同じではありません。スコアは、営業が優先して連絡する相手を絞るための材料として使います。営業から「スコアが高いのに話が進まないリードが多い」と言われるようなら、点数のつけ方を見直す時期です。
ポイント2:行動に応じてメールを分岐させる
シナリオの分岐とは、メールのクリック・フォーム送信・特定ページの閲覧といった行動をきっかけに、次に送るメールを自動で変える仕組みのことです。ウェビナー後のフォローでは、次のような分岐を設定できます。
- ウェビナー後のアンケートで「導入を検討中」と回答→翌日に個別相談の案内を送る
- ウェビナー後の案内メールのリンクを3日間クリックしていない→件名を変えて再送する
- 資料ダウンロードページのリンクをクリックした→ダウンロードから7日後に関連事例を送る
全員に同じメールを送るのではなく、相手の行動に応じて次の連絡を変えることが、一斉配信との違いです。分岐を組む手順は、MAシナリオ設計の4ステップと事例を参照してください。
ポイント3:営業との引き渡しルール(SLA)を決め、連絡漏れを防ぐ
SLAとは、マーケティング部門と営業部門が「どの状態のリードを、いつまでに、誰がフォローするか」を文書にした取り決めのことです。
セグメント配信が商談につながらない原因は、MAツールよりも、マーケティング部門が渡したリードに営業が動けていない状態にあることが多くあります。SLAには次の6項目を書いておきます。
- 営業に渡すリードの条件(スコア・行動の条件)
- 営業が対応を始めるまでの時間(例:通知から24時間以内)
- 対応の優先順位
- フォロー結果をMAツールに入力するルール
- 条件を見直す頻度
- 失注・保留になったリードを育成の配信に戻すルール
SLAで使うMQLとSQLの定義は、MQLとSQLの定義と営業連携の設計で詳しく解説しています。
セグメントメールを急がなくてよい場合
セグメント配信は、どの企業でも最初から必要になるわけではありません。次のような場合は、細かく分ける前に、別の取り組みを優先したほうがよいことがあります。
1つ目は、保有リードが数百件ほどの場合です。300件を3つに分けると、1グループは約100件になります。開封率が20%なら開封は約20件、クリック率が2%ならクリックは約2件です。この件数では、グループ間の差が内容の違いによるものか、偶然なのかを見分けにくくなります。HubSpotはメールのA/Bテストに、少なくとも1,000件のコンタクトを推奨しています。
2つ目は、グループごとに内容を変えて送るコンテンツを用意できない場合です。同じ文面を送るなら、分ける意味がありません。
3つ目は、営業がリードを1件ずつ見て対応できる規模の場合です。この段階では、全員に役立つメルマガを送りつつ、資料ダウンロードや料金ページの閲覧といった行動をきっかけに個別にフォローするほうが、手間に見合った結果が出やすくなります。
セグメントメールでよくある3つの失敗パターンと対策
セグメント配信を始めても成果が出ない原因は、ツールそのものよりも条件の決め方や運用にあることが多いです。よくある失敗は次の3つです。
1つ目は、細かく分けすぎて運用が回らなくなることです。
2つ目は、コンテンツが足りず、シナリオが途中で止まることです。
3つ目は、営業と「渡すリード」の条件が合っておらず、商談につながらないことです。
失敗パターン1:セグメントを細かく分けすぎて運用が回らなくなる
セグメントを増やすほど、用意するコンテンツと管理の手間も増えます。はじめから業種×役職×段階を掛け合わせて10以上のグループを作ると、コンテンツがそろわず、配信を始める前に見直しが必要になることがよくあります。
はじめは2〜3のグループから始めます。「最近反応があるリード」と「しばらく反応がないリード」の2つで運用し、結果を見ながら少しずつ分けていく進め方です。

細かい設計より、いま動いている配信を止めないことを優先する場面もあります。株式会社ブリューアス様では、Account Engagementのアカウント移行時に重要なアクティビティデータが消えるリスクを避け、ステップメールを続けて配信できる最低限のラインを守りました。その後のMA運用の改善でステップメールから継続的な受注につながり、一度失注した休眠顧客への掘り起こしメールで大型案件も受注しています。
失敗パターン2:コンテンツが足りずシナリオが途中で止まる
セグメントの条件が正しくても、各グループに届けるコンテンツがなければ、シナリオの途中で配信が止まります。セグメント配信で特に多い失敗です。
対策は、Step.4のコンテンツの割り当てをシナリオづくりより先に行うことです。手元の事例・ホワイトペーパー・ウェビナー録画・ブログ記事を一覧にし、どのグループと段階に使えるかを当てはめてから、足りない分の制作計画を立てます。コンテンツを継続して用意する体制は、ナーチャリングコンテンツの運用サイクルを参照してください。
失敗パターン3:営業と「渡すリード」の条件が合っておらず、商談につながらない
マーケティング部門がスコアの高いリードを営業に渡しても、営業が「点数が高いだけで、本当に話が進むのか分からない」と感じて動かないことがあります。SLAがないと、「通知したのに3日たっても誰も連絡していなかった」という状態が起こりがちです。
原因は、スコアの条件をマーケティング部門だけで決めていることにあります。過去の受注データを営業と一緒に見直し、商談につながったリードがどのページを見て、どの資料を読んでいたかを話し合ったうえで、渡す条件を決めます。営業が条件の決め方に関わることで、渡されたリードに対応する理由が生まれます。
リードを営業に渡す手順と部門間の連携は、ホットリードのトスアップと部門連携の進め方で解説しています。
セグメントメールの効果の測り方と、経営層への報告
「開封率が上がりました」という報告だけでは、経営層が投資を続けるかを判断しにくいものです。段階ごとに見る指標を分け、売上とのつながりまで追えるようにします。
段階ごとに見る指標
段階ごとの指標とは、リードがメールを受け取ってから商談・受注に至るまでをいくつかの段階に分け、それぞれで見る数字を決めておく考え方です。
| 段階 | 主な指標 | 見方 |
|---|---|---|
| 配信 | クリック率・配信停止率・迷惑メール報告率・開封率 | グループごとに過去の配信と比べる |
| 育成 | スコアの変化・MQL数 | グループごとに目安を置く |
| 営業連携 | MQLから商談への転換率・商談化率・受注率 | 自社の実績を基準にする |
| 投資対効果 | セグメント配信経由の受注数・獲得単価・ROI | 月ごとに計算する |
開封率とクリック率には、そのまま基準として使える数字はありません。株式会社IDEATECHがBtoB企業でメルマガを担当する103名に行った調査(2024年5月)では、開封率は「11〜20%」「21〜30%」がそれぞれ24.3%でいちばん多く、クリック率は「1〜5%」が24.3%で最多と、回答が広く分かれています。自社の過去の配信を基準にし、同じグループで変化を見るほうが分かりやすいです。
開封率は、AppleのMail Privacy Protection(メールプライバシー保護)の影響で、実際には読まれていないメールも開封として数えられることがあります。開封を条件にグループを分けたり、開封率だけで内容の良し悪しを判断したりせず、クリックやフォーム送信など、相手の行動がはっきりした指標を中心に見ます。
セグメント配信の効果を見るうえで参考になるデータとして、Mailchimpが約2,000のユーザーによる約11,000件のセグメント配信を分析した結果があります。分けて送った配信は、分けない配信に比べて開封率が14.31%、クリック率が100.95%高かったとしています(2017年公表)。海外で、MPPが始まる前のデータのため、自社の目安としてではなく、分けることで反応が変わりうることを見るための参考として扱います。
セグメント配信のROIを計算し、投資を説明する方法
ROI(投資対効果)は「(セグメント配信経由の受注による粗利 – セグメント配信の運用コスト)÷ セグメント配信の運用コスト × 100(%)」で計算します。売上をそのまま使うと利益より大きく見えやすいため、粗利で計算します。
運用コストには、MAツールのライセンス費用・担当者の工数(時間×時間単価)・コンテンツの制作費を含めます。受注のうちどれがセグメント配信経由かを見分けるには、MAツールのキャンペーン機能で、どのメールから問い合わせや商談に至ったかを記録しておきます。
ただし、BtoBの受注には営業の対応やほかの施策も関わるため、メールだけの成果として言い切ることはできません。報告では、どのグループのどのシナリオから問い合わせや商談が生まれたかを、ほかの施策との関わりも含めて伝えます。KPIの組み立てとROIの計算手順は、MAツール効果測定のKPI設計と分析手法で解説しています。
「やっているのに成果が出ない」状態から抜け出すために
施策を続けているのに商談が増えない、リードの質が上がらない。こうした課題の多くは、戦略と施策のつながりが設計されていないことが原因です。Sells upは現状の分析と改善の優先順位整理から支援します。
相談してみる →まとめ
セグメントメールは、リストを業種・役職・行動履歴・検討状況などで分け、グループごとに内容を変えて届けるメール施策です。一斉配信との違いは、送る前に誰に届けるかを決め、商談につながったかまで見ながら内容を変えていく点にあります。
BtoBでは、企業属性・役職・検討の段階・行動履歴・MAツールのスコアの5つが基本的な切り口になります。組み立ては、ゴールとKPIの設定、人物像と段階の整理、条件の定義とリストの整備、コンテンツの割り当て、MAツールでの自動化と見直しの順に進めます。
最初から細かく分けず、2〜3のグループで始めて結果を見ていきます。保有リードが少ない段階では、一斉配信と行動をきっかけにしたフォローで足りることもあります。一人ひとりに合わせた文面まで踏み込む場合は、One to Oneメールの作り方と場面別シナリオも参考にしてください。
効果は開封率で止めず、MQL数・商談化率・ROIまで段階ごとに追います。営業へ渡す条件を営業側と一緒に決めておくと、配信した結果を商談につなげやすくなります。
よくある質問
セグメントメールとは何ですか?
セグメントメールとは、保有するリストを業種・役職・行動履歴・検討状況などの条件で分け、グループごとに内容を変えて配信するメール施策のことです。全員に同じ内容を送る一斉配信と違い、誰に・何を・いつ届けるかを決めてから送ります。BtoBでは購買に複数の人が関わるため、役職や課題ごとに伝える内容を変えることで、商談につながりやすくなります。
リストが少ない段階でもセグメント配信は必要ですか?
保有リードが数百件程度なら、急いで細かく分ける必要はありません。グループあたりの件数が少ないと、反応の差が内容によるものか偶然かを見分けにくいためです。全員に役立つメルマガを送りつつ、資料ダウンロードや料金ページの閲覧などの行動をきっかけに個別にフォローし、リードが増えてから2〜3のグループに分けていく進め方があります。
セグメント配信のデメリットは何ですか?
主なデメリットは、一斉配信に比べてコンテンツの制作・リストの管理・効果の測定にかかる手間が増えることです。グループを増やすほど文面を個別に用意する必要があり、担当者の負担も増えます。MAツールで自動化すると手間は抑えられますが、はじめの条件の決め方で成果が変わるため、少ないグループで始めて改善を重ねる進め方が向いています。
開封率でセグメント配信の効果を判断してよいですか?
開封率だけで判断するのは避けたほうが安全です。AppleのMail Privacy Protectionの影響で、実際には読まれていないメールも開封として数えられることがあるためです。クリック率・フォーム送信・MQL数・商談化率など、相手の行動がはっきり出る指標も合わせて見て、同じグループの過去の配信と比べます。
BtoBのセグメント配信で最初に取り組むことは何ですか?
まず取り組みたいのは、商談数から逆算したゴールとKPIの設定、既存リストの棚卸しです。どのグループから何件のMQLを生みたいかを先に決めると、分け方とコンテンツの優先順位がはっきりします。そのうえで手元のコンテンツをグループと段階の表に当てはめ、足りない部分を用意してからMAツールでシナリオを設定します。
