MAツールの導入・活用の相談はSells upへ。

MAツールの導入や、導入後の成果最大化に課題をお持ちでしたら、ぜひSells upにご相談ください。50社以上の導入・活用を支援してきた担当者が貴社の状況・目標に向き合い、最適なツールの導入プラン / 統計知識を用いた活用プラン描き、戦略策定から実装 / 実行 / 効果測定までをご支援いたします。

目次

マーケティングオートメーション(MA)ツールの導入目的は、マーケティング活動を効率化し、最終的に企業の売上・利益に貢献することです。しかし、MAツールはリード獲得から育成、選別まで広範なプロセスをカバーするため、その効果測定は複雑になります。特にBtoBビジネスでは検討期間が長く、施策が受注に繋がるまでの過程を正確に把握することは容易ではありません。

データドリブンな経営環境において、マーケティング部門は単なるコストセンターではなく、事業成長を牽引する役割を期待されています。経営層に対して投資の正当性を証明し、営業部門と連携して事業成長を推進するためには、客観的なデータに基づいた効果測定が不可欠です。

本記事では、MAツールの効果測定に必要な目標設定のフレームワーク、具体的なKPIと高度な分析手法、ROIの証明方法、そして効果測定を機能させるためのデータ基盤構築と組織連携までを体系的に解説します。

MAツール効果測定の全体像と2つの目的

MAツールの効果測定には、大きく分けて2つの目的があります。この目的を明確にすることが、適切な指標設定と分析の出発点となります。

目的1:説明責任の達成とROIの証明(対経営層・他部門)

第一の目的は、マーケティング投資の正当性を証明することです。MAツールの導入・運用コストや広告費といった投資が、どれだけのリターン(売上・利益)を生んだのかを金額で説明する責任がマーケティング部門にはあります。ROI(投資対効果)を明確に提示することで、予算確保と組織内でのマーケティング部門の価値を高めることができます。

目的2:施策の評価と継続的な改善(対マーケティングチーム)

第二の目的は、実行した施策をデータに基づいて客観的に評価し、改善点を見つけることです。どの施策が効果的で、どこにボトルネックがあるのかを特定し、PDCAサイクルを回すことで、マーケティング活動の効率と成果を継続的に向上させます。

これら2つの目的を達成するためには、場当たり的な数値の確認ではなく、事業目標から逆算した効果測定の設計が必要です。

KGIから逆算するKPI設計フレームワーク

効果測定を成功させるためには、「何を計測すべきか」を論理的に導き出す必要があります。目標から逆算して計測すべき指標を絞り込むために、KGI、KSF、KPIの階層構造を利用します。

KGI・KSF・KPIの階層構造を理解する

  • KGI (Key Goal Indicator:重要目標達成指標)

    組織全体の最終的な目標を定量的に把握したものです。「年間売上高〇〇円達成」などが該当します。

  • KSF (Key Success Factor:重要成功要因)

    KGIを達成するために、重要となる要因を言語化したものです。「ターゲット企業からの質の高い商談を安定的に創出すること」などが挙げられます。

  • KPI (Key Performance Indicator:重要業績評価指標)

    KSFの達成度合いを測るための中間的な指標です。日々の活動が正しく進んでいるかを定点観測するための具体的な数値目標です。

KPIツリーの作成手順:目標達成の構造を可視化する

KGIからKPIへの分解を可視化するために、「KPIツリー」を作成します。これにより、各指標がどのように最終目標に繋がっているのかを明確に把握できます。

Step.1 KGIを設定する

まずは最終目標であるKGIを設定します。(例:新規顧客からの年間売上1億円)

Step.2 KGIを構成要素に分解する

KGIを達成するための主要な構成要素に分解します。売上は「受注数 × 平均受注単価」に分解できます。(例:受注数50件 × 平均受注単価200万円)

Step.3 ファネル構造に沿ってプロセスを分解する

受注数をさらに分解します。「受注数 = 商談数 × 受注率」「商談数 = SQL数 × 商談化率」「SQL数 = MQL数 × SQL化率」といった形で、マーケティングファネルのプロセスに沿って分解していきます。

(※MQL:Marketing Qualified Lead、SQL:Sales Qualified Lead)

Step.4 各指標の目標値を設定し、実現可能性を検証する

分解した各指標に対して、過去の実績や市場データに基づき、現実的な目標値を設定します。この際、各転換率(CVR)の実現可能性を検証することが重要です。

Step.5 行動可能なKPI(先行指標)まで落とし込む

最終的に、日々のマーケティング活動でコントロール可能な指標(先行指標)まで落とし込みます。「MQL数」を増やすための「資料ダウンロード数」や「特定セグメントへのメールクリック率」などが該当します。

【具体例】KPIツリーの構造例

  • KGI:年間売上1億円

    • 受注数:50件(←平均受注単価200万円)

      • 商談数:200件(←受注率25%)

        • SQL数:400件(←商談化率50%)

          • MQL数:1000件(←SQL化率40%)

            • 資料ダウンロード数:5000件(←MQL化率20%)

            • ウェビナー参加者数:1000件

【Sells upの視点】KPI設定における部門間連携と現実性検証の重要性

KPIツリーの作成、特にファネル後半の転換率(商談化率や受注率)の設定は、マーケティング部門単独で行うべきではありません。過去の実績データや現在の営業リソース(インサイドセールスの体制など)を踏まえずに、非現実的な数値を設定しても、目標達成は困難です。

例えば、SQL化率(MQLからSQLへの転換率)は、インサイドセールスの架電品質やリソースに大きく依存します。もし過去の実績が20%であるにもかかわらず、リソース増強なしに40%という目標値を設定すれば、目標未達の原因がマーケティング施策にあるのか、営業リソースにあるのかが不明瞭になります。

MAツールの効果測定を成功させるためには、初期段階から営業部門(インサイドセールス含む)を巻き込み、データに基づいた現実的な前提条件(各転換率)について認識を合わせることが不可欠です。

投資対効果(ROI)の算出と証明方法

効果測定の第一の目的である、投資対効果(ROI)の証明方法について具体的に解説します。これは経営層への説明を行う上で重要な要素です。

マーケティングROIの計算方法と具体例

ROI(Return On Investment)の計算式は一般的に以下のように定義されます。

ROI(%) = (マーケティング経由の利益 - マーケティング投資コスト) ÷ マーケティング投資コスト × 100

※利益は、売上から原価や販管費を引いた粗利益を用いるのが一般的です。

【具体例】

  • マーケティング投資コスト:年間500万円(MAツール費用、広告費、コンテンツ制作費など)

  • マーケティング経由の粗利益:年間1,500万円

(1,500万円 - 500万円) ÷ 500万円 × 100 = 200%

ROI算出を阻む3つのハードルと解決策

ROIの計算式はシンプルですが、実際に算出する際にはいくつかのハードルが存在します。

ハードル1:データ分断による貢献度の不明瞭さ

MAとCRM/SFA(営業支援システム)が連携されていない、あるいは連携されていてもデータが不整合を起こしている場合、どの施策がどの売上に繋がったかを追跡できず、正確なROIが算出できません。

  • 解決策:データ連携基盤を構築し(後述)、リードソースや接触した施策情報が、商談情報と紐づくようにシステムと運用ルールを整備します。

ハードル2:マーケティング投資コストの範囲定義が曖昧

どこまでを「投資コスト」に含めるかが曖昧になりがちです。MAツールの費用や広告費だけでなく、人件費や外注費も含めるべきか、事前に定義しておく必要があります。

  • 解決策:経理部門やマネージャーなどと連携し、マーケティング費用として計上する範囲を明確に定義します。人件費を含める場合は、稼働時間などを基に按分するルールを定めます。

ハードル3:利益貢献の計測期間が不明確

BtoBでは検討期間が長いため、投資した期間と利益が生まれた期間にズレが生じます。いつまでの売上をROI計算に含めるかを決める必要があります。

  • 解決策:コホート分析などを用いて平均的なリードタイム(リード獲得から受注までの期間)を算出し、それを基に計測期間を設定します。例えば、平均リードタイムが6ヶ月であれば、当月の投資は6ヶ月後の売上に貢献すると見なします。

高度な評価指標:LTVとCACによるユニットエコノミクス

特にSaaSやサブスクリプションモデルでは、初期の受注金額だけでなく、長期的な視点が重要です。LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)とCAC(Customer Acquisition Cost:顧客獲得単価)を算出し、ユニットエコノミクス(顧客1人あたりの採算性)を評価することも重要です。

  • LTV(顧客生涯価値):1人の顧客が取引期間中にもたらす利益の総額。

  • CAC(顧客獲得単価):1人の顧客を獲得するためにかかった費用(マーケティング費用+営業費用)。

LTVがCACを上回っている状態(一般的にはLTV/CACが3倍以上)を維持することが、健全なビジネス成長の条件となります。MAデータとCRMデータを連携させることで、「どのチャネルから獲得した顧客が、LTVが高くなる傾向にあるか」を分析し、長期的な利益貢献を最大化する戦略を立案できます。

【フェーズ別】BtoBマーケティングで見るべき重要KPI一覧

KPIツリーに基づき、マーケティングファネルの各段階で注視すべきKPIを整理します。

リードジェネレーション(見込み客獲得)段階のKPI

「量」だけでなく「質」も評価することが重要です。

  • コンバージョン率(CVR):サイト訪問者のうち、資料請求や問い合わせなどに至った割合。

  • チャネル別リード獲得数:自然検索、広告、外部メディアなど、流入経路別の獲得数。

  • CPL(Cost Per Lead:リード獲得単価):1件のリードを獲得するためにかかった費用。

  • (チャネル別)有効リード率・MQL化率:獲得したリードのうち、ターゲット条件を満たす割合や、その後のプロセスで有望(MQL)になった割合。CPLが安くてもMQL化率が低ければ、施策の質を見直す必要があります。

リードナーチャリング(見込み客育成)段階のKPI

リードの行動の変化(エンゲージメント)を測定します。

  • メール開封率・クリック率(CTR)

  • 反応率(CTOR:Click to Open Rate):開封者のうちクリックした割合。コンテンツへの関心度を測れます。

  • エンゲージメントスコアの推移:リードの行動に応じたスコアの変動を追跡。

  • 特定コンテンツ(例:料金ページ、導入事例)へのアクセス数

  • 休眠リードの掘り起こし数(再アクティブ化数)

クオリフィケーション&商談化段階のKPI

営業への貢献度を測定します。

  • MQL数、SQL数

  • 商談化率:MQLが商談に転換した割合。リードの質を測る指標です。

  • 案件化率・受注率:マーケティング活動の売上貢献度を測る指標です。

  • リードタイム:リード獲得から受注までにかかった期間。

MAツールを活用した具体的な分析手法

MAツールに蓄積されたデータを活用し、施策の評価や改善点の発見に繋げるための具体的な分析手法を紹介します。これらの分析は、効果測定の第二の目的である「施策の評価と継続的な改善」に不可欠です。

1. ファネル分析(ボトルネックの特定と深掘り)

ファネル分析は、KPIツリーで設定したリード獲得から受注までの一連のプロセスにおいて、各段階のリード数と転換率(CVR)を可視化する手法です。

  • 目的:どのプロセスで離脱が多く発生しているか(ボトルネック)を特定する。

  • 深掘り分析:

    ボトルネックを特定したら、さらにセグメント別(例:業種別、チャネル別、接触コンテンツ別)にファネルを分析します。例えば、「全体ではMQL→SQL転換率が低い」という課題に対し、「ウェビナー経由のリードは転換率が高いが、広告経由のリードは低い」といった具体的な原因を特定できます。

2. スコアリング精度の検証と統計的アプローチ

スコアリングは、ホットリードを自動抽出する機能ですが、設定したルールが常に正しいとは限らないため、定期的な精度の検証とチューニングが不可欠です。

  • 目的:スコアリングルールが受注確度の高い行動を正しく反映しているかを確認する。

  • 検証方法:

    スコアが高いリード群と低いリード群で、実際の商談化率や受注率に明確な差が出ているかを確認します。もし差が出ていない場合、ルールが不適切である可能性があります。

【Sells upの視点】主観からの脱却:統計的スコアリングの実践手順

多くの企業では担当者の主観で「この資料をダウンロードしたら10点」といったルールが設定されがちですが、その精度には限界があります。Sells upでは、データに基づいた統計的アプローチによるスコアリング設計を推奨しています。

統計的スコアリングの実践手順

Step.1 データの準備:過去一定期間(例:1年間)の受注顧客と失注顧客の行動データをMAツールから抽出します。

Step.2 変数の設定:「〇〇ページ閲覧回数」「△△セミナー参加有無」「メールクリック回数」など、受注に関係しそうな行動を変数として設定します。

Step.3 統計解析の実行:抽出したデータを用いて、統計解析(例えばロジスティック回帰分析や決定木分析など)を実行し、「どの行動が受注に強く影響を与えているか(影響度)」を算出します。

Step.4 スコアリングルールの実装:算出された影響度に基づき、スコアリングルールを設計し、MAツールに実装します。

このアプローチにより、「過去30日以内に導入事例ページを2回以上閲覧したリードは、受注確率が3倍高い」といった客観的な根拠に基づいたルール設定が可能となり、スコアリングの精度が飛躍的に向上します。

3. コンテンツ分析(貢献度の評価)

どのコンテンツ(ホワイトペーパー、導入事例、ブログ記事など)がリード獲得や育成、そして最終的な受注に貢献しているかを評価します。

  • リード獲得貢献度:コンテンツごとのダウンロード数や、その後のMQL化率を測定します。

  • ナーチャリング貢献度:メールで配信したコンテンツのクリック率や、そのコンテンツ接触後のスコア上昇率などを測定します。

  • 受注貢献度:アトリビューション分析を用いて、受注に至るプロセスで接触したコンテンツの貢献度を評価します。これにより、「検討初期に役立つコンテンツ」と「商談化の決め手になるコンテンツ」を区別して評価できます。

4. チャネル別分析(流入施策の評価)

どのチャネル(Web広告、自然検索、ウェビナー、展示会など)が効果的かを評価します。

  • 量と質の評価:チャネルごとのリード獲得数(量)だけでなく、その後の商談化率や受注率(質)まで追跡します。

  • 費用対効果の評価:チャネルごとのCPLやCPAを算出し、投資効率を比較します。例えば、リード獲得数は少ないが受注率が高いチャネルは、投資を強化すべき有望なチャネルと判断できます。

5. アトリビューション分析(複数施策の貢献度評価)

アトリビューション分析は、受注や商談化に至るまでに接触した複数の施策やチャネルの中で、どれがどれだけ成果に貢献したかを評価する手法です。

  • 目的:予算配分の最適化の判断材料を得る。

  • アトリビューションモデルの種類

    • ファーストタッチモデル:最初に接触した施策に貢献度を100%割り当てます。新規リード獲得施策の評価に適しています。

    • ラストタッチモデル:商談化直前に接触した施策に貢献度を100%割り当てます。クロージング施策の評価に適しています。

    • 均等配分モデル:接触したすべての施策に貢献度を均等に割り当てます。BtoBのように検討期間が長い場合に有効です。

多くのMAツールにはアトリビューション分析機能が搭載されています。自社のビジネスモデルに合わせて適切なモデルを選択することが重要です。

6. コホート分析(長期的な効果検証)

コホート分析は、特定の期間にリードを獲得した集団(コホート)ごとに、その後の行動や成果を時系列で追跡する手法です。

  • 目的:ナーチャリング施策の効果を長期的に評価する。平均的なリードタイムの把握。

  • 分析例:「1月に獲得したリード」と「2月に獲得したリード」で、6ヶ月後の受注率を比較します。これにより、実施したナーチャリング施策の長期的な効果を検証できます。

7. ABM(アカウントベースドマーケティング)の効果測定

特定のターゲット企業(アカウント)に焦点を当てるABM戦略では、リード単位ではなくアカウント単位での効果測定が必要です。

  • 目的:ターゲット企業に対するアプローチの効果を測定する。

  • 主要指標

    • アカウントエンゲージメントスコア:企業単位でのWebアクセスやメール反応などを集計したスコア。

    • ターゲットアカウントからの商談創出率・受注率。

    • ターゲットアカウントカバレッジ:ターゲット企業リストのうち、どれだけの企業のリード情報を獲得できているか。

データに基づく施策改善(PDCA)とフロー

効果測定の目的は、データから課題を発見し、継続的に施策を改善していくことです。ここでは、KPIが目標に達していない場合の改善フローを解説します。

改善フローの基本ステップ

Step.1 課題の特定:ファネル分析を用いて、KGI達成のボトルネックとなっているKPIを特定します。

Step.2 仮説の設定:なぜそのKPIが低いのか、考えられる原因について仮説を立てます。

Step.3 データによる検証:仮説が正しいかを、MAツールや関連ツールのデータを用いて検証します(セグメント分析、コンテンツ分析などを活用)。

Step.4 改善アクションの実行:検証結果に基づき、具体的な改善アクション(A/Bテストなど)を実行します。

【ケース別】低パフォーマンス指標の改善フロー例

ケース1:リード獲得数が不足している

  • 仮説:WebサイトのCVRが低い

    • 分析:ランディングページの直帰率やフォームの離脱率を確認。コンテンツ分析で人気のあるオファーを確認。

    • アクション:EFO(入力フォーム最適化)、CTAボタンの改善、魅力的なホワイトペーパーの追加。

ケース2:ナーチャリングの反応率(メールクリック率など)が低い

  • 仮説:コンテンツがターゲットの関心と合っていない

    • 分析:セグメント別にクリックされたコンテンツの傾向を分析。シナリオ分析で離脱ポイントを確認。

    • アクション:ペルソナを見直し、関心度の高いテーマでコンテンツを企画。A/Bテストによるクリエイティブ改善。

ケース3:商談化率が低い

  • 仮説1:リードの質が低い(MQL定義が不適切)

    • 分析:スコアリング精度の検証(統計的アプローチの活用)。営業部門へのヒアリング(なぜ商談化しなかったのか)。

    • アクション:スコアリングルールの見直し。MQL定義の厳格化。

  • 仮説2:営業への引き渡し後のフォローが遅い

    • 分析:リード放置時間(MQLアサインから初回コンタクトまでの時間)をCRM/SFAのデータで確認。

    • アクション:SLA(後述)に基づくフォローアップルールの徹底。

効果測定の精度を左右するデータ基盤の整備

精度の高い効果測定を行うためには、ツール間の連携とデータマネジメントが不可欠です。効果測定の精度は、データ基盤の品質に大きく依存します。

MA・GA4・CRM/SFAの連携ステップ

リード獲得から受注までを一気通貫で分析するためのデータ連携基盤を構築します。

Step.1 データフローの設計

どのデータを、どのツールからどのツールへ、どのような形式で連携するかを設計します。

Step.2 連携キーの確保と流入元計測

ツール間でデータを紐づけるためのキー(例:メールアドレス、顧客ID)を確保します。特にMAとGA4を連携する場合は、UTMパラメータの付与ルールを徹底し、流入元を正確に把握できるようにします。

Step.3 連携機能の実装とテスト

各ツールの標準連携機能やAPIを用いて連携を実装します。項目マッピング(どの項目をどの項目に対応させるか)を慎重に行い、連携が正常に行われているかをテストします。

データマネジメントとデータガバナンス

ツールを連携しても、入力されるデータの質が低ければ、分析結果の信頼性も低下します。効果測定の精度を高めるためには、「データマネジメント」と、それを維持するための「データガバナンス(管理体制)」が不可欠です。

  • データ定義の統一:各指標(例:MQL、商談フェーズ、失注理由)の定義を文書化し、関係者全員の認識を合わせます。

  • 入力ルールの標準化:企業名の表記揺れを防ぐための入力ルールや、必須入力項目の設定を行います。特に営業担当者がCRM/SFAに入力する情報の精度が重要です。

  • データクレンジングと名寄せ:重複したリード情報や古いデータを定期的に整理(クレンジング)し、同一人物・同一企業のデータを統合(名寄せ)します。

  • 管理体制の構築(データガバナンス):データの品質を維持管理する責任者を定め、定期的な監査や改善活動を行う体制を構築します。

【Sells upの視点】データ品質が低い状態で分析を行うリスク

多くの企業がMAツールの分析機能に注目しますが、その土台となるデータマネジメントの重要性は見過ごされがちです。経験上、効果測定がうまくいかない企業の多くは、データ基盤に問題があります。

例えば、データが重複していたり(名寄せ不足)、企業名の表記が揺れていたりすると、正確なスコアリングやセグメンテーションが機能しません。その結果、本来アプローチすべき優良顧客を見逃したり、不適切なタイミングでアプローチしてしまったりする可能性があります。また、CRM/SFAとの連携時にも不整合を引き起こし、ROI算出の精度を著しく低下させます。

信頼性の高い効果測定を行うためには、技術的な連携だけでなく、定期的なデータ整備(クレンジング・名寄せ)の体制と、全社的なデータガバナンスの構築が不可欠です。

営業連携の強化とSLA構築の具体的手順

BtoBマーケティングにおいて、MAツールで創出したリードを売上に繋げるためには、営業部門との連携が不可欠です。

データは部門間の「共通言語」となる

連携不足の根源は、「ホットリード(MQL)」の定義が曖昧なことにあります。MAデータは、リードの質を客観的に把握する「共通言語」として機能します。統計的スコアリングなどを用いて、客観的な基準でMQLを定義し、両部門で合意することが可能です。

SLAテンプレート例

部門間の連携を強化するためには、口約束ではなく、文書化されたルール、すなわちSLA(サービスレベル合意書)の締結が有効です。

項目

具体的な記述例(テンプレート)

1. 目的

本SLAは、マーケティング部門と営業部門の連携を強化し、株式会社〇〇の売上目標達成に貢献することを目的とする。

2. 用語の定義

MQLの定義:以下の条件をすべて満たすリード。 
・スコアが100点以上(統計的分析に基づき設定)
・対象業種(〇〇業)かつ従業員数〇〇名以上に属する

SQLの定義:インサイドセールスがヒアリングを行い、BANT条件のうち「ニーズ」と「導入時期(1年以内)」が確認できたリード。

3. マーケティング部門の責任

・毎月50件のMQLを創出し、営業部門に供給する。
・MQLの行動履歴やスコア情報を、〇〇(CRM/SFA名)に遅滞なく連携する。

4. 営業部門(インサイドセールス含む)の責任
・供給されたMQLに対し、24営業時間以内に初回コンタクトを行う。
・初回コンタクト後、7営業日以内にステータスを〇〇に入力する。
・非商談化の場合、その理由(例:時期尚早、ニーズ不一致)を必ず記録する。
5. フィードバックプロセス

毎週金曜日に定例ミーティングを実施し、MQLの質と量、SLA遵守状況について協議する。営業からの失注理由フィードバックに基づき、スコアリングモデルやコンテンツを改善する。

【Sells upの視点】SLAを形骸化させないための計測と運用体制

SLAを締結しても、それが遵守されているかを客観的に計測できなければ、形骸化してしまいます。例えば、「MQLに24時間以内にコンタクトする」というルールがあっても、実際にかかった時間を計測できなければ、守られているかどうかは不明瞭です。

これを解決するのが、MAツールとCRM/SFAのデータ連携と、それに基づいたダッシュボードです。「リードの放置時間」や「ステータス更新率」などを自動で計測し、両部門が見える形で可視化することが、SLAの実効性を担保する上で不可欠です。SLAの運用には、ルールの合意だけでなく、それを支えるデータ基盤と、定期的なレビューを行う会議体の設置が必要です。

経営層・営業部門を納得させるレポーティングと運用体制

効果測定を継続的に機能させるためには、適切なレポーティングと運用体制の構築が必要です。

ステークホルダー別レポーティングのポイント

効果測定のデータは、誰に、何を伝えるかによってその価値が大きく変わります。主要なステークホルダーごとに報告内容を最適化します。

経営層向け:事業貢献度と投資判断

  • 関心事:マーケティング投資が事業成長(売上・利益)にどう貢献しているか。

  • 主要指標:ROI、パイプライン貢献額、CAC、LTV。

  • 伝え方:サマリーと結論(投資判断の材料)を明確に伝えます。レポートはグラフ中心で視覚的に分かりやすく構成します。

営業部門長向け:売上目標達成への支援状況

  • 関心事:質の高いリードがどれだけ供給されているか。

  • 主要指標:MQL数、SQL数、商談化率、リードソース別受注実績、SLA遵守状況。

  • 伝え方:どのチャネルや施策が受注に繋がりやすいかといった傾向(アトリビューション分析結果など)を共有し、営業戦略の立案に役立てます。

マーケティングチーム向け:施策の改善点とネクストアクション

  • 関心事:どの施策が効果的で、どこにボトルネックがあるか。

  • 主要指標:各施策のKPI、ファネル分析結果、A/Bテスト結果。

  • 伝え方:具体的な改善アクションに繋がる示唆を共有します。

【Sells upの視点】数字の羅列で終わらない「示唆」のあるレポートとは

レポートは単なる数値の報告書ではありません。意思決定を促すためには、データから読み取れる「示唆」を盛り込むことが重要です。

具体的には、以下の3つの要素を含めます。

Step.1 事実の報告:KPIの達成状況を客観的に報告する。

Step.2 要因の分析:なぜその数値になったのか、背景や理由をデータに基づいて分析する。(例:「〇〇を実行した結果、特定セグメントのCVRが〇%向上しました。これは△△という要因が影響したと考えられます」)

Step.3 次のアクション提案:分析結果を踏まえ、次に何をすべきか、具体的な改善策を提案する。(例:「CVRが向上した要因を他セグメントにも展開するため、次月は□□を実行します」)

この3ステップを意識することで、レポートは現状報告から、意思決定を促すためのコミュニケーション手段へと変わります。

効果測定の運用サイクル(会議体と頻度)

効果測定は、目的に応じて適切な頻度で実施し、関係者間で共有する運用サイクルを構築することが重要です。

  • 週次(マーケティング定例):

    施策の進捗状況やKPIの推移を確認し、迅速な改善アクションを議論します。

  • 月次(営業・マーケティング合同会議):

    月間の成果報告と次月のアクションプランを共有します。KPIの達成状況や、SLAの遵守状況、リードの質に関するフィードバックなどを協議します。

  • 四半期(経営報告会):

    KGIの達成状況やROIを確認し、マーケティング戦略全体の見直しや予算配分の最適化を提案します。

まとめ:MAツール効果測定は事業成長に貢献するための経営活動

MAツールの効果測定は、単に施策の結果を数値で確認するだけの作業ではなく、マーケティング活動の価値を組織全体に証明し、データという客観的な共通言語を用いて部門間の連携を促進し、継続的な改善サイクルを駆動させるための、重要な経営活動です。

MAツールの効果測定をマスターし、成果を向上させるためには、以下のポイントが不可欠です。

  • KGIから逆算したKPIツリーの作成と、現実的な目標値の設定

  • ROI算出とLTV/CACによる投資対効果の証明

  • ファネル分析、アトリビューション分析など、多様な分析手法の活用

  • 統計的アプローチを取り入れた高精度なスコアリング設計

  • データマネジメントとデータガバナンスを含む、強固なデータ連携基盤の整備

  • SLA締結と定期的な会議体運営による、組織的な運用体制の確立

分析が目的化したり、データが分断されたままになったりしないよう、常に「売上・事業への貢献」という視点を持ち続けましょう。

貴社の現状のデータ環境を把握し、KGIを再設定することから取り組んでください。データに基づいた対話を組織内で開始することで、貴社のマーケティング活動はさらに成果につながる取り組みとなるでしょう。


MAツールの導入・活用の相談はSells upへ。

MAツールの導入や、導入後の成果最大化に課題をお持ちでしたら、ぜひSells upにご相談ください。50社以上の導入・活用を支援してきた担当者が貴社の状況・目標に向き合い、最適なツールの導入プラン / 統計知識を用いた活用プラン描き、戦略策定から実装 / 実行 / 効果測定までをご支援いたします。

株式会社Sells up
武田 大
株式会社AOKIにて接客業を、株式会社リクルートライフスタイル(現:株式会社リクルート)にて法人営業を経験した後、株式会社ライトアップでBtoBマーケティングを担当。その後、デジタルマーケティングエージェンシーにてBtoBマーケティングの戦略設計/施策実行支援、インサイドセールスをはじめとしたセールスやカスタマーサクセスとの連携を通じたマーケティング施策への転換といった支援を行い、2023年に株式会社Sells upを設立。BtoBマーケティングの戦略設計/KPI設計はもちろん、リードジェネレーション施策やナーチャリング、MA/SFA活用を支援し、業界/企業規模を問わずこれまでに約80社以上の支援実績を持つ。Salesforce Certified Marketing Cloud Account Engagement Specialist/Tableau Desktop SpecialistのSalesforce認定資格を保有。