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MA導入後、最初の3ヶ月で何をするか|動き続けるチームの優先順位とロードマップ

ツールの設定よりも、「何をどう設計するか」で成果が変わります

HubSpot・Account Engagement・Marketoに精通した担当者が、 ツールの設定支援だけでなく、リード育成シナリオやスコアリング設計まで一貫してサポートします。 まずは現状のツール活用状況をお聞かせください。

目次

導入したのに、何も変わっていない。MA導入の3ヶ月後に起きがちなこと

MAを導入してから3ヶ月。シナリオもいくつか設定し、メール配信も始めた。ただ、商談が増えた実感はあまりなく、営業からもこれといった反応がない。社内からは「効果は出ているの?」という質問がくる。

こうした状況は、MAを導入した多くの企業でよく起こります。

この背景には多くの場合、「最初に何から着手するか」という優先順位を決めないまま、思いついた施策に次々と手を出してしまい、結果としてどれも中途半端に終わってしまう、というパターンがあります。

この記事では、MA導入後の最初の3ヶ月をどう使うかについて、優先順位を明確にしたロードマップを整理します。「完璧な設計を作り込む」ことではなく、「3ヶ月以内に最初の成果を見せる」ことをゴールに据えた考え方をご紹介します。

最初の3ヶ月でやるべきことの全体像

3ヶ月間を3つのフェーズに分けて考えると、どこから手をつけるべきかがぐっと分かりやすくなります。

フェーズ

期間の目安

このフェーズのゴール

フェーズ1:基盤整備

1〜4週目

MAが「いつでも動かせる状態」になること。データ連携・リスト整理・基本設定を一通り整える

フェーズ2:最初のシナリオを動かす

5〜8週目

シナリオを1本に絞って実際に稼働させ、最初の指標データを取る

フェーズ3:成果を確認して次に進む

9〜12週目

指標を確認し、営業に渡したリードがあれば、その状況まで含めて報告できる状態にする

この順番を守ることが重要です。基盤が整わないうちにシナリオだけ動かしても、正しいデータが取れないため、改善のしようがありません。落ち着いて順番どおりに進めることが、3ヶ月で成果を出すいちばんの近道です。

フェーズ1(1〜4週目):基盤を整える

やること①:ハウスリストの棚卸しとインポート

MAに取り込むリストの質が低いと、その後のすべての施策の精度が下がります。まずはリストの棚卸しを行い、有効なリードだけをMAにインポートします。

インポートの際に最低限確認しておきたいのは、メールアドレスの有効性・配信停止フラグ・獲得経路・獲得日の4項目です。

やること②:SFA/CRMとの連携設定

MAとSFA/CRMが連携されていないと、「どのリードが商談化したのか」というデータが取れず、スコアリングの見直しもできません。導入後、なるべく早い段階で連携設定を終えておくことが大切です。

連携設定で最低限決めておきたいのは、次の3点です。

決めること

内容

どのデータをMAに持つか

リードの基本属性はSFA/CRM側に集約し、閲覧履歴やメール開封などの行動データはMA側を主とする、といった役割分担をあらかじめ決めておく

商談ステータスの定義

「商談化」「有効商談」「失注」などのステータス名と定義を、MAとSFA/CRMの両方で揃えておく。名称がずれていると正しく集計できない

スコアのSFAへの書き戻し

MAで算出したスコアをSFA/CRMのリードレコードに反映する設定を行い、営業がCRMを見ればスコアが確認できる状態にしておく

やること③:タグ・リスト設計の方針を決める

MAのタグやリストの設計は、後から大きく変更しようとすると、これまでのデータにも影響が出ます。最初に「どんな軸でリードを分類するか」という方針を決めておくことが重要です。

最低限決めておくべき分類軸

・獲得経路(展示会・フォーム・ウェビナー・紹介など)
・業種・企業規模(自社のターゲットセグメントに合わせて)
・フェーズ(認知・検討・比較・選定など)
・配信ステータス(アクティブ・スリーピング・配信停止)

フェーズ2(5〜8週目):最初のシナリオを動かす

1本だけに絞って動かす

このシリーズの「少人数チームでナーチャリングを回すための考え方」でも触れていますが、最初に動かすシナリオは1本に絞ります。「入口の1通」は、たとえば資料ダウンロード直後のお礼メールと補足情報などから始めるのが、もっとも安全で進めやすいパターンです。

最初の1本として向いているシナリオ

理由

資料DL後のフォローシナリオ

行動トリガーが明確で、配信タイミングのブレが少ない。資料のテーマから相手の関心領域が読みやすく、コンテンツを選びやすい

問い合わせ後のフォローシナリオ

温度感の高いリードに対する最初の接点として成果が出やすい。営業との連携プロセスを整える練習にもなる

ウェビナー参加後のフォローシナリオ

参加という行動自体が明確な興味を示している。Q&Aの内容をそのままメールコンテンツに転用しやすく、素材準備の負荷も低い

シナリオの最小構成

最初は3〜5通の構成で十分です。「完璧なシナリオ」を目指すより、「実際に回っているシナリオ」のほうがずっと価値があります。

通数

タイミング

内容

1通目

トリガー発生から即時(〜数時間以内)

お礼と、資料やウェビナーに関連した補足情報を1つ紹介する。ここでは売り込みは行わない

2通目

3〜5日後

1通目と関連する課題解決コンテンツを紹介する。「こうしたお悩みをお持ちの方に読まれています」という文脈で届ける

3通目

1〜2週間後

事例や他社の取り組みを紹介し、「自分たちと近い状況だ」と感じてもらえる内容にする

4通目(出口)

2〜3週間後

デモや個別相談への案内を行う。「一度お話ししてみませんか」という自然で温度感のある切り出し方を意識する

フェーズ3(9〜12週目):成果を確認して報告する

見るべき指標を3つに絞る

最初の3ヶ月で追いかける指標は、あえて3つに絞ります。「ナーチャリングの成果はどう測るべきか」で整理した3層の指標のうち、まずは次の3つだけを確認します。

指標

確認のポイント

開封率

業界平均(20〜30%)と比べて極端に低くないかを確認する。大きく下回る場合は、件名や送信者名を見直す

クリック率

開封はされているのにクリックが少ない場合は、メール内のコンテンツや訴求が、リードの状態・関心と噛み合っていない可能性がある

シナリオ完走後の営業への引き渡し数

シナリオを最後まで通過したリードのうち、MQL条件を満たした件数を把握する。3ヶ月時点での成果として、もっとも分かりやすく示せる指標になる

社内報告の組み立て方

3ヶ月後の社内報告で「商談化した件数」だけを成果として示そうとすると、この期間ではどうしても数字が小さくなりがちです。実務的には、次のような段階で成果を見せていくほうが現実的です。

3ヶ月後の報告で使えるフレーム

①「動く状態になった」成果:シナリオ本数・配信対象リード数・基盤整備の完了状況
②「反応が出た」成果:開封率・クリック率・スコアが上がったリードの数
③「次につながった」成果:MQLに達したリード数・営業に引き渡した件数

①〜③を順番に示すことで、「商談数そのものはまだ多くないが、仕組みは着実に機能し始めている」という状況を、説得力をもって伝えられます。

3ヶ月で陥りやすい失敗パターン

よくある失敗

対処法

シナリオを複数同時に立ち上げようとする

まずは1本が安定してから次に進む。複数を同時に動かすと管理コストが一気に増え、どれも十分に改善できなくなる

完璧なシナリオを作ってから動かそうとする

まずは3〜4通程度の最小構成で動かし始める。作り込んでから動かすより、回しながら改善していくほうが早く成果にたどり着ける

営業に共有せず1人でMAを回す

週1回でもよいので、営業チームと「今週渡したリードの状況」を共有する場をつくる。信頼関係がないと、MQLを渡しても動いてもらえない

指標を多く追いすぎる

最初は指標を3つに絞る。追いかける指標が増えるほど、「結局どこを改善すべきか」が分かりづらくなる

まとめ

MA導入後の最初の3ヶ月は、「完璧な設計を目指す」のではなく、「3ヶ月以内に最初の成果を見せる」ことを目標に据えます。基盤を整える(1〜4週)→シナリオ1本を動かす(5〜8週)→成果を確認して報告する(9〜12週)という流れが、最短で成果につながる順番です。

3ヶ月の終わりに「MQLを○件営業に渡せた」「シナリオが安定して動く状態になった」と報告できれば、次の投資(シナリオの追加やスコアリングの精緻化)を社内に提案するための十分な根拠になります。焦らず、まずは1本を確実に動かし切ることを最優先にしましょう。

ツールの設定よりも、「何をどう設計するか」で成果が変わります

HubSpot・Account Engagement・Marketoに精通した担当者が、 ツールの設定支援だけでなく、リード育成シナリオやスコアリング設計まで一貫してサポートします。 まずは現状のツール活用状況をお聞かせください。

株式会社Sells up 代表取締役
武田 大
株式会社AOKIにて接客業を、株式会社リクルートライフスタイル(現:株式会社リクルート)にて法人営業を経験した後、株式会社ライトアップでBtoBマーケティングを担当。その後、デジタルマーケティングエージェンシーにてBtoBマーケティングの戦略設計/施策実行支援、インサイドセールスをはじめとしたセールスやカスタマーサクセスとの連携を通じたマーケティング施策への転換といった支援を行い、2023年に株式会社Sells upを設立。メールシナリオ設計・スコアリング連動・コンテンツとフェーズの整合を含むナーチャリング運用の一体設計を80社以上に提供し、リードの商談化率向上を実現してきた実績を持つ。Account Engagement SpecialistおよびTableau Desktop SpecialistのSalesforce認定資格を保有。