ナレッジ

少人数チームでナーチャリングを回すための考え方|セグメントの優先順位と、管理できる範囲での設計

BtoBマーケティングをどこから始めればいいか、一緒に整理します

「マーケティングに取り組みたいが、何から始めればいいかわからない」。 Sells upへのお問い合わせは、多くの場合このようなご相談です。 初回のお打ち合わせでは、現状のヒアリングと優先順位が高いと考えられる施策をお伝えします。

目次

「やるべきことは分かった。でも、とても回せる気がしない」

セグメントを切って、シナリオを組んで、フェーズごとにコンテンツを用意して…

ナーチャリングに取り組もうとしたものの、途中で複雑になりすぎて止まってしまった、あるいは結局「全員に同じメールを送る一斉配信に戻った」というケースは少なくありません。

一斉配信に戻ってしまう理由のひとつが、「One to Oneでやろうとすると、セグメントが増えすぎて管理できなくなる」という問題です。

セグメントを細かく切れば切るほど、用意すべきコンテンツが増え、確認すべき指標が増え、MAの設定が複雑になります。

担当者が1〜3人しかいないチームでは、そのメンテナンスだけで手が回らなくなってしまいます。

この記事では、完璧な設計を目指すのではなく、「今のチームで回せる範囲で成果を出す」ための優先順位の付け方が中心に据え、少人数でも継続できるナーチャリングの設計の考え方を整理します。

「管理できない」と感じる原因はどこにあるか

ナーチャリングの設計が複雑になりすぎる原因は、多くの場合「完璧な状態から始めようとすること」にあります。よくある3つのパターンを整理します。

よくあるパターン

何が起きるか

セグメントを細かく切りすぎる

「業種×規模×役職×フェーズ」を全部掛け合わせると、ほとんどの場合、セグメントが20個以上になります。それぞれにコンテンツを用意しようとすると、準備だけで止まってしまいます。

全フェーズのコンテンツを揃えようとする

認知・検討・比較選定の全段階に使えるコンテンツを一度に作ろうとすると、コンテンツ制作だけで数ヶ月かかります。その間、施策は何も動かない状態が続きます。

MAの設定を最初から作り込みすぎる

細かい分岐条件やスコアリングを最初から組み込もうとすると、設定が複雑になりすぎて、担当者が変わった途端に誰も触れなくなってしまいます。

これらに共通しているのは、「理想の状態」から設計を始めていることです。理想を追うほど設計は複雑になり、複雑になるほど少人数では回らなくなります。

一斉配信の方が楽、という選択は間違いではありません。ただ、「一斉配信より少しだけ精度を上げた設計」を「継続できる形」で動かすことが、少人数チームにとって現実的なゴールになります。

少人数チームに必要なのは「削る設計」

理想のナーチャリングを縮小して動かすのではなく、「今のチームで継続できる範囲で設計する」という発想に切り替えることが重要です。

完璧なナーチャリングが月に1回しか改善できないより、シンプルなナーチャリングを毎週少しずつ改善できる方が、長期的には成果につながります。

設計の精度より、継続できること・改善できることを優先しましょう。

少人数チームの設計原則

① 動かせる範囲で始める(準備に時間をかけすぎない)
② 管理できる数に絞る(セグメント・シナリオ・指標の数を意識的に減らす)
③ 続けながら広げる(最初から完成形を作らず、動かしながら足していく)

セグメントの優先順位の考え方

「2〜3セグメント」から始めれば十分

セグメントを切ることの目的は「刺さる相手に、刺さる内容を届けること」です。その目的を果たすために、最初から10も20もセグメントを作る必要はありません。

少人数チームであれば、最初は2〜3セグメントで十分です。セグメントの数が少なくても、「全員に同じ内容を送る一斉配信」と「セグメントごとに内容を変える配信」の間には、リードの反応に明確な差が出ることが多いです。

どのセグメントを優先すべきか

限られたリソースでセグメントを設計するとき、「どのセグメントから始めるか」の判断基準として使いやすいのは以下の2つです。

判断基準

考え方

商談化率が高い属性

過去の商談データを振り返り、「どういう属性のリードが商談につながりやすいか」を確認。そのセグメントに特化した設計から始めると、投資対効果が出やすい

リードが多く集まっている属性

母数が多いセグメントに対して設計を最適化すると、影響範囲が広い。少人数チームでは1つの改善が多くのリードに効くセグメントを優先する方が効率的

この2つが重なる「商談化しやすく、かつリードが多い」セグメントがあれば、そこを最優先にします。両方の条件を満たすセグメントがなければ、商談化率の高さを優先した方が成果につながります。

「やらないセグメント」を決めることも設計のうち

セグメントの優先順位を決めるということは、「今は対応しないセグメント」も決めることを意味します。

これを曖昧にしておくと、「全セグメントに対応しなければ」という気持ちが生まれ、結果として全部中途半端になりやすくなります。少人数チームで最初に動かすセグメントは1〜2個に絞り、残りは一斉配信で対応する、と割り切ることが重要です。

セグメント設計の現実的な出発点の例

【やること】
・フェーズ別に2つのセグメントを作る(認知段階 / 検討段階以降)
・それぞれに合ったコンテンツを既存素材から選んで配信する 

【やらないこと(当面)】
・業種・役職での細かい分類
・3つ以上のフェーズ区分
・セグメントをまたぐ複雑な分岐シナリオ

シナリオと運用の「最小構成」

シナリオは「1本だけ」から始める

シナリオを複数本同時に走らせようとすると、管理コストが一気に上がります。最初は「最も商談化しやすいセグメントに向けた1本だけ」から始めます。

1本のシナリオが安定して動くようになってから、2本目を追加する。この順番を守るだけで、運用がしやすくなります。

自動化するのは「入口の1通だけ」でも十分

MAを使ったナーチャリングと聞くと、全部自動化しなければいけないイメージを持ちがちですが、そんなことはありません。

最初に自動化すべきなのは、「入口の1通目」です。たとえば「資料DL直後にお礼と補足説明のメールを送る」だけでも、何もしない状態と比べてリードの反応は変わります。2通目以降を手動で送るとしても、入口が自動化されているだけで必要な工数は大きく変わります。

優先度

自動化の対象

理由

① まず着手

入口の1通目(資料DL後・問い合わせ後など)

反応が出やすく設定もシンプル。効果が見えやすいので改善のサイクルが回しやすい

② 次に着手

行動トリガーの主要な1〜2個(料金ページ閲覧後など)

検討度の高いリードに自動でアプローチできます。営業への引き渡しタイミングの判断にも使える

③ 余力があれば

フォローシナリオの分岐(未開封者への再送など)

精度は上がるが設定が複雑になるため、①②が安定してから取り組む

手動でいい部分と自動化すべき部分を切り分ける

すべてをMAで自動化しようとすると、設定の複雑さが運用コストになります。少人数チームでは「自動化が本当に必要な部分」と「手動で対応できる部分」を意識的に分けることが大事です。

自動化すべき部分

手動でいい部分

毎回同じ内容・同じタイミングで送るもの(DL直後のお礼など)

内容をカスタマイズした方が効果が出るもの(商談化が近いリードへの個別フォローなど)

大量のリードに対して一定の条件で発火するもの

件数が少なく、営業との連携が必要なもの

タイミングが重要なもの(行動直後に届ける必要があるもの)

月次などの頻度でまとめて対応できるもの

週に使える時間から逆算して設計する

ナーチャリングの設計は「理想から考える」より「使える時間から考える」方が、少人数チームでは現実的です。

担当者が週にナーチャリングに使える時間を先に見積もり、その範囲でできる設計に絞る。たとえば「週に3時間しか使えない」なら、シナリオを2本以上同時に走らせて毎週メンテナンスするのは難しいです。1本のシナリオを月次でレビューするくらいの設計の方が続けやすくなります。

使える時間と設計の目安

週1〜2時間程度:入口の自動配信1本+月次での指標確認
週3〜5時間程度:2〜3セグメント×1本のシナリオ+隔週での改善
週5時間以上:複数シナリオ+トリガー配信の拡張+営業連携の運用

「やらないこと」を決めるのも設計のうち

少人数チームで最も大切な判断のひとつが、「何をやらないか」を意識的に決めることです。

やるべきこと・やりたいことをリストアップすると、ナーチャリングの理想形はいくらでも膨らみます。ただ、全部を同時にやろうとすると、どれも中途半端になるか、1担当者当たりの工数が多くなりすぎてしまい施策自体が止まってしまいます。

当面やらなくていいことの例

以下は、初期段階では優先度を下げてよい項目の目安です。

当面やらなくていいこと

理由

細かいスコアリングの設計

フェーズの移行条件をシンプルな行動(料金ページ閲覧など)で代替できる段階では、複雑なスコアリングは管理コストだけが増える

セグメントを3つ以上作ること

2セグメントでも「全員同じ」より成果は変わる。管理できる数から始める方が継続できる

全フェーズのコンテンツを揃えること

入口と出口が機能してから中盤を補う。最初から全部揃えようとすると動き出せない

細かい指標を全部追うこと

最初は「フェーズ移行率」と「商談化率」の2つだけ追えれば十分。指標が多すぎると何を改善すべきか分からなくなる

複雑なシナリオ分岐

「開封したか否かで次のメールを変える」などの分岐は、シナリオが安定してから追加する。最初は全員同じ流れで動かす

これらを「いつかやること」として置いておくのは良いです。ただ、「今の自分たちの状態では、これはやらない」と明示的に決めることで、設計がシンプルに保てます。

まとめ

少人数チームでナーチャリングを回すためのポイントをまとめると、以下の3つに集約されます。

ポイント

具体的な考え方

削る設計をする

理想から始めるのではなく、今のチームで継続できる範囲に絞って設計する。完璧なナーチャリングより続けられるナーチャリングを優先する

セグメントは2〜3個から

商談化しやすく・母数が多いセグメントを優先し、当面対応しないセグメントも明示的に決める。一斉配信と並行させながら少しずつ対象を広げていく

小さく始めて広げる

シナリオは1本から、自動化は入口の1通から始めます。安定して動くものを一つ作ってから次に進む

「メール配信=ナーチャリング」という状態から抜け出せない理由のひとつが、「ちゃんとやろうとすると大変すぎる」という感覚です。

今のチームで動かせる範囲で始めて、続けながら少しずつ精度を上げていくのが、少人数チームでナーチャリングを根付かせるための一番の近道です。

今日からできること

  • 過去の商談データを見て、商談化しやすいリードの属性を1〜2個確認する
  • その属性を「最初に対応するセグメント」として決め、当面は他のセグメントを一斉配信で対応すると割り切る
  • MAで「入口の1通目」だけを自動化する設定を組んでみる
  • 週に使えるナーチャリングの時間を見積もり、それに見合った設計の範囲を確認する

BtoBマーケティングをどこから始めればいいか、一緒に整理します

「マーケティングに取り組みたいが、何から始めればいいかわからない」。 Sells upへのお問い合わせは、多くの場合このようなご相談です。 初回のお打ち合わせでは、現状のヒアリングと優先順位が高いと考えられる施策をお伝えします。

株式会社Sells up 代表取締役
武田 大
株式会社AOKIにて接客業を、株式会社リクルートライフスタイル(現:株式会社リクルート)にて法人営業を経験した後、株式会社ライトアップでBtoBマーケティングを担当。その後、デジタルマーケティングエージェンシーにてBtoBマーケティングの戦略設計/施策実行支援、インサイドセールスをはじめとしたセールスやカスタマーサクセスとの連携を通じたマーケティング施策への転換といった支援を行い、2023年に株式会社Sells upを設立。BtoBマーケティング支援会社として、デジタルマーケティング戦略設計・MA/SFA導入・リードジェネレーション・ナーチャリング・営業連携SLA構築を80社以上に提供し、売上成長への貢献実績を持つ。Salesforce Certified Marketing Cloud Account Engagement SpecialistおよびTableau Desktop SpecialistのSalesforce認定資格を保有。