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優良顧客の囲い込みとは?BtoBで売上を守る分析・施策・仕組み化の手順

同じ成果を、自社でも再現できるか確認したい方へ

Sells upはBtoBマーケティング支援に特化し、これまで80社以上の支援実績を持ちます。 広告費10万円で月100件のリード創出、MA活用で問い合わせ10倍など、事例で紹介した成果は実際に支援した企業で起きたことです。 自社の課題に当てはめて何ができるかを、まずはお気軽にご相談ください。

目次

「売上の8割を生む上位2割の顧客が、気づいたら競合に流れていた」

そんな経験を持つBtoBマーケティング担当者の方は少なくありません。

優良顧客ほど複数社のサービスを比較検討する余力があり、より良い提案があれば即座に乗り換える判断力を持っているからです。

本記事では、BtoBの文脈における優良顧客の定義と特定方法から、MA(マーケティングオートメーション)とCRM(顧客関係管理)を活用した仕組み化、そして組織横断で施策を回すための体制設計まで、実務レベルで解説します。

優良顧客の囲い込みとは何か、なぜBtoBで重要なのか

優良顧客の囲い込みとは、売上貢献度の高い既存顧客との関係を継続・拡大させるために、組織的かつ仕組み的に働きかける一連の施策のことです。単なるチャーン(解約)防止ではなく、アップセルやクロスセルを通じてLTV(顧客生涯価値)を最大化する積極的な戦略として捉えることがポイントです。

LTVの計算方法や構成要素の詳細はLTV最大化の戦略設計で解説しています。ロイヤルカスタマーを育成するためのNPS活用や定性的な関係構築については、ロイヤルカスタマー戦略の全体像をご参照ください。

なぜ既存顧客への投資が合理的なのか?

マーケティング分野では、既存顧客投資の合理性を示す経験則がいくつか知られています。

「新規顧客の獲得コストは既存顧客維持の5倍以上かかる」という1:5の法則、「顧客離反を5%改善すると利益率が25%以上改善する」という5:25の法則、「売上の80%を上位20%の優良顧客が生み出す」というパレートの法則がその代表です。

いずれもマーケティング実務でよく引用される経験則であり、業種・規模によって実態は異なります。

ただ、「既存顧客を守ることの経済的な優先度は高い」という方向性は、弊社が支援してきた多くのBtoB企業でも共通していると考えています。

新規リード獲得に予算を集中させながら既存顧客への接触が手薄になっている企業ほど、チャーンレート(解約率)が高止まりしているケースが目立ちます。

BtoBで優良顧客の囲い込みが難しい3つの構造的理由

BtoCと比べて、BtoBの囲い込みには固有の難しさがあります。その理由は3つです。

①担当者異動による関係のリセット:自社との関係を構築した先方担当者が異動すると、信頼関係や導入経緯の知識が引き継がれないケースが多くあります。後任担当者にとっては「白紙」の状態から評価が始まることになります。

②複数のステークホルダーによる継続判断:BtoBの継続契約には、現場担当者だけでなく上長・経営層・情報システム部門など複数の意思決定者が関与します。現場満足度が高くても、経営層がROI(投資対効果)を認めなければ解約になりえます。

③競合の提案タイミングの見えにくさ:BtoBでは競合他社がいつ自社顧客にアプローチしているかを察知するのが難しい状況です。競合提案が進んでいることに気づいたときには、すでに乗り換えの意思決定が固まっているケースも少なくありません。

まず「誰が優良顧客か」を正確に把握する

優良顧客の囲い込みで多くの企業が失敗する最大の原因は、「誰が優良顧客かを定義していないまま施策を打つこと」にあります。感覚で「重要なお客様」を絞り込んでいる企業は、往々にして担当者ごとに定義がバラバラになります。弊社がクライアントに対して最初に確認するのも、この「優良顧客の定義が数値で定まっているか」という点です。

よくある状況として、「営業が重要視している顧客」と「売上貢献度が高い顧客」がまったく一致していないケースがあります。営業担当者が長年の付き合いで親密な顧客と、実際に売上の大部分を支えている顧客は、驚くほど別のリストになることがあります。だからこそ、施策より先に分析から始めることが重要です。

優良顧客を特定するための分析手法は、大きく3つに分けられます。

RFM分析で優良顧客を多角的に評価する

RFM分析とは、Recency(最終取引日)・Frequency(取引頻度)・Monetary(累計取引額)の3指標で顧客をセグメント分けする手法のことです。BtoBにおけるRFMの読み方は、BtoCとは少し異なります。

SaaSや継続契約型ビジネスの場合、「取引頻度」は「ログイン頻度」や「問い合わせ頻度」に、「最終取引日」は「最終ログイン日」や「直近の契約更新日」に読み替えることが多くあります。3指標すべてのスコアが高い顧客が「優良顧客候補」として浮かび上がります。

Excelを使った具体的な分析手順やBtoB向けのセグメント別アクションプランはRFM分析の手順と活用法で詳しく解説しています。

デシル分析でセグメントの売上貢献度を測る

デシル分析とは、全顧客を累計購買金額の順に10等分し、各デシル(10分位)の売上貢献比率を把握する手法のことです。

弊社では多く場合、まずデシル分析からスタートします。RFM分析より設定変数が少なく、「上位10%の顧客が売上全体の何%を占めているか」という事実を経営層に即座に示せるからです。デシル1(上位10%)とデシル2(上位10〜20%)の顧客こそが、最初に囲い込みを強化すべき対象です。

デシル分析のExcelによる実装方法はデシル分析の実践手順で解説しています。

スコアリングで「今後の優良顧客候補」を抽出する

RFM・デシル分析は「過去の行動データ」に基づく分析です。一方、スコアリングは「現在の行動・属性データ」から今後の優良顧客になりえる候補を抽出するための手法です。

「製品ページの閲覧頻度」「サポート問い合わせの内容・頻度」「セミナー参加回数」「契約から経過した月数」などの行動シグナルに点数を付与し、一定スコアを超えた顧客をアップセル対象として特定します。スコアリングモデルの設計方法と運用サイクルはスコアリングモデルの設計と運用で体系的に解説しています。

3手法の使い分けを整理すると、

  1. 過去実績の素早い可視化にはデシル分析
  2. 多角的な優先順位付けにはRFM分析
  3. 将来の優良顧客候補の継続的な抽出にはスコアリング

という順序がもっとも取り組みやすい進め方です。

優良顧客の離脱を引き起こす4つの要因

施策を設計する前に、「なぜ優良顧客が離れるのか」という構造的な要因を把握しておく必要があります。原因を特定せずに施策を打つと、的外れな投資になってしまうリスクがあります。

▼こんな経験、思い当たりませんか?

  • 満足していると思っていた顧客から突然、解約の連絡が来た
  • 更新直前になるまで、顧客が競合と比較検討していることを知らなかった
  • 担当者が変わった途端、サービスの利用率が急落した
  • 「ROIが見えない」という理由で、経営層に継続を止められた

これらはすべて、以下の4つの要因と直結しています。

要因①:担当者交代による関係のリセット

BtoBで最も多い離脱パターンの1つが、先方担当者の異動や退職によって起きる「関係のリセット」です。

後任担当者は導入時の経緯や期待値を引き継いでいないため、「なぜこのサービスを使っているのか」を改めて評価し直します。そのタイミングで競合から提案を受けると、乗り換えの意思決定が進みやすくなります。

対策として有効なのは、「担当者個人ではなく企業・組織との関係を構築する」ことです。複数の部署・担当者と接点を持ち、サービスへの依存度を組織レベルに広げることで、担当者交代の影響を最小化できます。

要因②:ROIを証明できず継続判断が社内で通らない

BtoBでは、現場担当者の満足度がどれほど高くても、経営層や上位意思決定者がROIを認めなければ解約になりえます。

特に更新時期に合わせて「費用削減」という経営判断が下されるケースは、手の打ちようがない場面として頻発します。

この要因への対策は、更新の3ヵ月前から先手を打ってROIを数値化し、経営層が見る資料として提供することです。「このサービスで何件の商談が創出されたか」「コスト換算でどれほどの業務削減が実現したか」を、先方担当者が社内で説明できる形で準備します。

要因③:オンボーディング後のサポート密度の低下

契約後のオンボーディング(初期導入支援)が終わると、接触頻度が急減する企業は少なくありません。顧客からすると「売るまでは親身だったのに、契約後は放置された」という印象を持ちやすく、これがエンゲージメント低下の直接的な引き金になります。

弊社が支援した複数のBtoB SaaS企業では、オンボーディング後6ヵ月間の接触頻度が高いグループほど長期継続率が高い傾向にあります。

あくまで特定の支援先での傾向ですが、「定期的なレビュー会議・活用状況の確認・新機能の案内といった能動的な接触を仕組みとして設計する」という方向性は、有効に機能する可能性があると考えています。

要因④:競合の提案タイミングを把握できていない

顧客が競合から提案を受けているタイミングを事前に察知できている企業は、BtoBでは非常に少ない状況です。

多くの場合、競合比較が始まった段階では「なんとなく不満が高まっている」というシグナルが先行しています。「ログイン頻度の低下」「問い合わせ件数の減少」「担当者からの返信遅延」といった行動データの変化が、離脱予兆シグナルとして機能します。これらを早期に検知する仕組みを持つことが、競合提案への先手対応につながります。

解約防止の仕組み化と更新シナリオの設計については、BtoBリテンション施策の全手順で詳しく解説しています。

BtoBで機能する優良顧客囲い込みの施策5選

施策を設計するうえで意識したいのは「どの軸に効くか」です。BtoBの優良顧客囲い込みで機能する施策の3軸は、

  1. 接触頻度の確保
  2. 価値実感の強化
  3. 乗り換えコストの適正化

です。

多くの企業がこのうちの1軸しか取り組んでいないため、囲い込みが不完全になります。

施策①:カスタマーサクセスによる継続的なROI証明

カスタマーサクセス(CS)とは、顧客が自社サービスを活用して成果を得ることを、能動的に支援する活動のことです。BtoBの囲い込みにおいて最も優先度が高い施策です。四半期ごとの定期レビュー会議で「このサービスによって何が変わったか」をデータで示します。単なる機能説明会にならないよう、「成果の言語化」を主目的に設計することがポイントです。

CSの組織設計と実践プロセスの詳細はカスタマーサクセスの組織設計と実践で解説しています。

施策②:ロイヤルティプログラムとティア制度の設計

ロイヤルティプログラムとは、利用継続・利用拡大に応じて優遇措置を提供する仕組みのことです。BtoCでのポイントカードに相当するものですが、BtoBでは「契約年数による割引率の向上」「上位ユーザー限定の機能先行提供」「専任サポートへのアップグレード」といった形で設計します。ティア(階層)制度を設けることで、顧客に「このサービスを使い続けるほど得をする」という合理的な理由を提供できます。重要なのは、「現在どのティアにいるか」「次のティアに移るまであと何が必要か」を顧客自身が可視化できることです。

施策③:アップセル・クロスセルのシナリオ設計(MA活用)

アップセルとは上位プランへの移行を促すこと、クロスセルとは関連製品・追加オプションの購入を促すことです。どちらも「タイミング」が最も重要な変数です。以下のタイミングでMAを活用した自動シナリオを設計します。

  • 利用開始から3ヵ月後:初期成果を確認し、さらなる活用機能を提案するメールシナリオ
  • ログイン頻度が急増したタイミング:活用度が高まっているサインを検知し、上位プランの案内を送付
  • サポート問い合わせで特定のテーマが増えたタイミング:その課題を解決する追加機能を紹介

MAを使ったシナリオの具体的な設計手順はアップセルシナリオの設計手順で解説しています。

施策④:コミュニティ・勉強会による情緒的ロイヤルティの醸成

BtoBの優良顧客には、金銭的メリットだけでなく「この企業と仕事をしている」という体験価値が重要です。同規模・同業種の担当者同士が交流できるユーザーコミュニティや勉強会は、「他社に乗り換えたら失われる人脈・知識」というスイッチングコストを生み出します。足元では、オンラインコミュニティプラットフォームを活用してユーザー同士の知識共有を促進することで、継続率を向上させているSaaS企業の事例が増えています。

施策⑤:スイッチングコストの適切な設計

スイッチングコストとは、顧客が他社サービスに乗り換える際に生じるコスト(金銭的・時間的・心理的)の総量のことです。適切な設計のポイントは以下の3点です。

  • データ連携の深化:CRMやSFA(営業支援システム)との深い連携を設計し、乗り換え時のデータ移行コストが自然に発生する状態を作る
  • 社内定着の支援:先方の複数部署に利用が広がるよう支援し、「特定担当者だけが使っているツール」ではなく「組織のインフラ」にする
  • カスタマイズ・設定の蓄積:利用期間に比例して最適化された設定・シナリオが蓄積するよう設計し、乗り換えによる機会損失を顧客が自然に意識できる状態を作る

3軸で整理すると、施策①②が「価値実感の強化」、施策③が「接触頻度の確保」、施策④⑤が「乗り換えコストの適正化」に対応します。

MAとCRMで囲い込みを仕組み化する手順

弊社の支援でよくあるのが、「施策のアイデアはある、でも仕組みがないから属人的になっている」という課題です。担当者が変わったら施策が止まる、という状態では優良顧客の囲い込みは長続きしません。優良顧客へのアプローチを「人のアクション」ではなく「仕組みのトリガー」で動かすことがポイントです。

Step.1:CRMで優良顧客セグメントを定義・タグ付けする

CRMとは、顧客との関係を管理・分析するためのシステムのことです。まず前述の分析で特定した優良顧客をCRM上でセグメントとして定義し、タグやリストで識別できる状態にします。具体的には以下の項目をCRMのフィールドとして設定します。

  • 顧客ランク(デシル分析の結果に基づく1〜10の分類)
  • エンゲージメントスコア(ログイン頻度・問い合わせ数・セミナー参加数などの合計)
  • 契約更新予定日(更新の60日前・30日前・7日前にアラートが出るよう設定)
  • 担当者変更フラグ(先方担当者の交代を検知した場合にフラグを立てる)

CRM・SFA・MAの全体的な連携設計はCRM・SFA・MA連携の全体設計で解説しています。

Step.2:MAでエンゲージメント低下のアラートを設定する

Step.1でCRMに蓄積したデータをMAと連携し、エンゲージメント低下を検知するアラートを設定します。アラート条件の例は以下のとおりです。

  • ログイン頻度が前月比50%以下に低下した場合:CS担当者への通知 + 活用支援メールの自動配信
  • 問い合わせが30日間発生していない場合:「困っていることはありませんか?」というフォローアップメールを自動送信
  • 契約更新日が60日前になった場合:担当者へのアラート通知 + ROIサマリーレポートの自動生成

Step.3:アップセル・継続促進のナーチャリングシナリオを設計する

ナーチャリング(育成)シナリオとは、顧客の状態に応じて最適なコミュニケーションを自動で届ける仕組みのことです。優良顧客向けには、新規リード向けとは別のシナリオを設計します。既存優良顧客向けのシナリオ設計で押さえるべき3つのポイントは、

  1. 定期的な成果報告メール
  2. 利用状況に応じた上位機能の紹介
  3. 更新時期に合わせたROI強調コンテンツの提供

です。

Step.4:KPIを設定し、月次でPDCAを回す

仕組み化の最後のステップは、効果測定のKPIを設定して月次で振り返ることです。優良顧客の囲い込みに関するKPIとして設定すべき指標は以下のとおりです。

KPI測定頻度目標設定の考え方
チャーンレート(解約率)月次業界平均との比較・前月比での改善
NRR(売上継続率)月次多くのSaaS企業では100%以上を一つの目安としています
アップセル転換率四半期アップセル提案数に対する成約率
エンゲージメントスコア平均月次優良顧客セグメントの平均スコア推移
更新成功率月次更新対象顧客数に対する更新完了率

NRR(Net Revenue Retention:売上継続率)とは、既存顧客からの収益が前年比でどの程度維持・拡大しているかを示す指標のことです。100%を超えている場合、アップセル・クロスセルによって解約による収益減をカバーできていることを意味します。ただし目標水準は事業フェーズや業種によって異なるため、同業他社との比較を起点に自社の目安を設定することを推奨します。

施策を機能させる組織体制とSLA設計

施策がうまく機能しない企業の大半に共通しているのは、「誰が優良顧客の管理責任を持つか」が曖昧なことです。弊社の支援で、まずこの4部門の役割定義から始めるのも、この問題を先に解消するためです。

なぜ組織の壁が囲い込みを妨げるのか?

BtoBの優良顧客対応において、よく発生するのが以下の「たらい回し」パターンです。

顧客から不満の連絡が来たとき、営業は「CSの担当範囲」と考え、CSは「担当営業が対応すべき」と考え、インサイドセールスは「既存顧客は対象外」と考えます。

結果として、誰も能動的に動かない状況が生まれます。

マーケ・IS・CS・営業の役割と引き渡し基準の設計

優良顧客の囲い込みにおける4部門の役割を以下のとおり整理します。

部門優良顧客対応における主な役割
マーケティングエンゲージメントデータの収集・スコアリング・低下アラートの検知、アップセルコンテンツの制作
CS(カスタマーサクセス)定期レビュー会議の実施、成果の言語化・ROI証明、利用促進のオンボーディング継続
インサイドセールスエンゲージメント低下顧客へのフォローアップコール、担当者交代後の関係構築、アップセル商談の設定
営業アップセル・クロスセルの商談対応、経営層との関係構築、更新交渉

この役割分担を機能させるためには、「誰から誰に、どの状態のときに引き渡すか」というSLA(Service Level Agreement)を明文化することが不可欠です。

優良顧客に関するSLAの具体例

SLAとは、部門間で合意した「対応のルールと基準」のことです。以下に設計例を示します。

アラート検知からのSLA例

  • エンゲージメントスコアが規定値以下に低下した場合、MAから自動通知後24時間以内にCSが状況確認を実施します
  • 担当者交代フラグが立った場合、5営業日以内にISが先方後任担当者への挨拶コールを実施します
  • 更新日60日前になった場合、CSがROIレポートを作成し、営業と共有した上で更新提案の準備を開始します

アップセル引き渡しのSLA例

  • ISがアップセル商談の初期ヒアリングを完了し、先方の検討意向が確認された場合、3営業日以内に営業に引き渡します
  • 引き渡し時には「現在の利用状況サマリー」「先方の課題ヒアリング内容」「提案すべき上位プランの根拠」の3点をCRMに記録します

部門間の引き渡し基準の詳細設計はトスアップの仕組み設計と部門連携で体系的に解説しています。

事例:休眠化しかけた顧客へのアプローチでCPAを大幅削減

Sells upでは、BtoBマーケティング支援・MA活用支援・インサイドセールス立ち上げ支援を通じて、既存顧客の活性化に取り組む企業の実装を支援しています。その中でよくあるのが「新規獲得より、眠っている既存顧客の掘り起こしの方がCPAを大幅に下げられる」です。

あるBtoB企業のクライアントでは、導入から6ヵ月以上ログインがなく、実質的に休眠状態になっていた既存顧客に対して、以下の3ステップのアプローチを実施しました。

Step.1:CRMでエンゲージメントスコアを再定義し、休眠顧客リストを抽出

「最終ログイン日が180日以上前」かつ「問い合わせ件数が過去3ヵ月でゼロ」という条件でセグメントを作成しました。この企業では、全既存顧客の約30%がこの条件に合致していることが判明しました。

Step.2:MAで段階的なリアクティベーションシナリオを設計

1通目は「活用状況の確認」という名目の利用支援メール(開封率を優先した件名設計)

2通目は「同規模の企業がどのように使っているか」という成功事例の紹介

3通目はCSからの個別フォローアップコールの案内

という3段階の自動シナリオを設計しました。

Step.3:IS(インサイドセールス)がシナリオ反応顧客にフォローアップコール

メール開封やクリックが発生した顧客に対し、ISが10分以内にフォローアップコールを実施しました。「メールを読んでいただけましたか?」という入口で会話を始め、現在の課題ヒアリングから活用提案につなげる設計です。

この一連のアプローチにより、新規獲得と比較して顧客1件あたりの対応コストを大幅に抑えながら、商談創出数を回復させることができました。CPAが低く抑えられた理由は、「既存顧客はすでに自社を知っている」という接触コストの低さにあります。

この事例から以下のことが分かるかと思います。

  1. 休眠顧客は「失った顧客」ではなく「まだ関係が切れていない候補」
  2. シナリオは「何を伝えるか」より「誰がいつ何をトリガーに送るか」の設計が重要
  3. 人(IS・CS)とツール(MA・CRM)を組み合わせることで、スケーラブルな接触が可能になる

まとめ:優良顧客の囲い込みは「分析→仕組み化→組織化」の順で進める

優良顧客の囲い込みを成功させるために押さえるべきポイントは、

  1. 誰が優良顧客かを数値で定義する
  2. 離脱要因を構造的に把握したうえで施策を選ぶ
  3. 施策をMAとCRMで仕組み化し属人性を排除する

の3点です。

多くの企業が「施策のアイデア」を持ちながらも成果につながっていない理由は、この3点の「順序」を無視して施策から始めているためです。分析がなければ対象が絞れず、仕組みがなければ担当者が変わるたびに施策が止まり、組織の役割分担が曖昧ならSLAは機能しません。

Sells upでは、BtoBマーケティング支援・MA活用支援・インサイドセールス立ち上げ支援を通じて、この「分析→仕組み化→組織化」のプロセスを一貫して伴走支援しています。「どこから手をつければいいかわからない」という段階からでも、まずはご相談ください。

よくある質問

Q1. 優良顧客の囲い込みとは何ですか?

優良顧客の囲い込みとは、売上貢献度の高い既存顧客との関係を継続・拡大させるために、組織的かつ仕組み的に働きかける一連の施策のことです。単なる解約防止ではなく、アップセルやクロスセルを通じてLTV(顧客生涯価値)を最大化する積極的な戦略として位置付けることがポイントです。BtoBでは担当者異動や複数ステークホルダーによる意思決定という構造的な難しさがあるため、担当者個人ではなく組織レベルで仕組みとして設計することが求められます。

Q2. 顧客を囲い込むとはどういうことですか?

顧客を囲い込むとは、特定の顧客が他社に乗り換えるメリットよりも、自社と継続的に取引を続けるメリットが上回る状態を意図的に作り出すことです。金銭的な優遇(ティア制度・割引)、情緒的なつながり(コミュニティ・勉強会)、スイッチングコスト(データ連携・設定の蓄積)の3軸を組み合わせるのが実務上の定石です。顧客に不満を抱えさせたまま乗り換えを困難にする方法は長続きしないため、価値実感の提供を前提とした設計が重要です。

Q3. ビジネスにおける囲い込みとは何ですか?

ビジネスにおける囲い込みとは、獲得した顧客との関係を長期間維持し、LTVを最大化するための戦略的な取り組みのことです。BtoCではポイントプログラムやサブスクリプションモデルが代表例ですが、BtoBではカスタマーサクセスによるROI証明、SFA・CRMとの深い連携、組織内への利用浸透といった手法が中心になります。マーケティング分野でよく引用される経験則として、既存顧客を維持するコストは新規顧客を獲得するコストよりも大幅に低いとされており、囲い込みへの投資は経営的に合理性が高い取り組みです。

Q4. 囲い込み戦略とは何ですか?

囲い込み戦略とは、顧客が競合に流れないよう、接触頻度の確保・価値実感の強化・スイッチングコストの適正化という3つの軸で施策を設計・実行する全体計画のことです。単発の施策ではなく、MAとCRMを活用して仕組みとして機能させることが、BtoBでの成功に不可欠です。弊社の支援経験では、施策のアイデア自体は多くの企業が持っていますが、「誰が優良顧客か」の定義と「どの部門が何をするか」のSLA設計が欠けているために機能しないケースが大半です。

Q5. 顧客データが十分に整っていない段階でも囲い込みを始められますか?

整っていない状態でも、まずデシル分析から始めることを推奨します。必要なのは「顧客ごとの累計売上金額」だけで、ExcelやCSV出力があれば実施できます。精緻なRFM分析やスコアリングはデータ基盤が整ってから段階的に導入すれば十分です。「完璧なデータが揃ってから」と待ち続けることが、囲い込み着手の最大の障壁になっているケースが弊社の支援先でも少なくありません。まず手元のデータで上位顧客を可視化し、その10〜20社への接触頻度を上げることが、最初の一手として最もCPAが低い取り組みです。

同じ成果を、自社でも再現できるか確認したい方へ

Sells upはBtoBマーケティング支援に特化し、これまで80社以上の支援実績を持ちます。 広告費10万円で月100件のリード創出、MA活用で問い合わせ10倍など、事例で紹介した成果は実際に支援した企業で起きたことです。 自社の課題に当てはめて何ができるかを、まずはお気軽にご相談ください。

株式会社Sells up 代表取締役
武田 大
株式会社AOKIにて接客業を、株式会社リクルートライフスタイル(現:株式会社リクルート)にて法人営業を経験した後、株式会社ライトアップでBtoBマーケティングを担当。その後、デジタルマーケティングエージェンシーにてBtoBマーケティングの戦略設計/施策実行支援、インサイドセールスをはじめとしたセールスやカスタマーサクセスとの連携を通じたマーケティング施策への転換といった支援を行い、2023年に株式会社Sells upを設立。HubSpot・Account Engagement・Marketoの3ツールにわたるMA選定・導入・活用支援を、企業規模や業界を問わず80社以上に提供。ツール選定フェーズから要件定義・初期設定・SFA/CRM連携設計・シナリオ・スコアリング設計まで一貫して担い、導入後に成果を出すための設計を重視した支援を行ってきた実績を持つ。Salesforce Certified Marketing Cloud Account Engagement SpecialistおよびTableau Desktop SpecialistのSalesforce認定資格を保有。