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ロイヤルカスタマー戦略とは?BtoB企業が取り組むべき定義設計・育成施策・MA連携の手順

「やっているのに成果が出ない」状態から抜け出すために

施策を続けているのに商談が増えない、リードの質が上がらない。 こうした課題の多くは、戦略と施策のつながりが設計されていないことが原因です。 Sells upは現状の分析と改善の優先順位整理から支援します。

目次

「ロイヤルカスタマーを増やしたい」と考えながら、何から手をつければいいかわからない。

そんな相談を、BtoB企業のマーケティング担当者からよくお聞きします。

多くの企業では「ロイヤルカスタマー」の定義が曖昧なまま施策が走り、マーケ・営業・CS(カスタマーサクセス)の三部門がバラバラに動いています。

散発的な施策だけが積み重なり、どこから手をつければよいかわからないという状況に陥っている企業は少なくありません。

本記事では以下の5ステップで、ロイヤルカスタマー戦略の全体像を体系的に解説します。

  1. 自社のロイヤルカスタマーを数値で定義する
  2. NPS・LTV・RFMで現状を測定する
  3. カスタマージャーニーとSLAで部門連携を設計する
  4. MAでスコアリング・シナリオ・アラートを実装する
  5. 四半期ごとにKPIを測定して改善サイクルを回す

定義設計から育成手順、MA(マーケティングオートメーション)を活用した仕組み化まで、BtoBビジネス特有の構造を踏まえて解説します。

「ロイヤルカスタマー戦略が機能しない」BtoB企業に共通する3つの問題

BtoB企業でロイヤルカスタマー戦略が機能しない原因は「定義の未設定」「部門連携の設計不足」「MAの未活用」の3点に集約されます。

▼ こんな課題、抱えていませんか?

  • 「ロイヤルカスタマー」という言葉は使っているが、社内で定義した記録がない
  • 顧客情報がSFA(営業支援システム)とMAで分断されており、育成の連携ができていない
  • NPS(ネットプロモータースコア)やLTV(顧客生涯価値)を測定しているが、施策に活かせていない
  • CSチームが属人的なフォローをしており、マーケのシナリオと連動していない

問題①:ロイヤルカスタマーが定義されていない

多くの企業では「継続率が高い顧客」「購買金額が多い顧客」を指してロイヤルカスタマーと呼んでいます。しかし定義が数値で固まっていないため、施策の優先順位も判断基準も部門ごとにずれていきます。

「NPSが9以上かつ継続12カ月以上」のように複数の指標を組み合わせた判定基準がなければ、誰がロイヤルカスタマーで誰が育成対象なのかを統一して議論できません。

問題②:マーケ・営業・CSの役割分担が設計されていない

なぜ部門連携の設計がないとロイヤルカスタマー戦略は失敗するのか?
BtoBでは1社の顧客に対して複数の担当者が関与するため、フォローの抜け漏れが起きやすい構造にあるからです。

マーケがメールシナリオを送りながら、営業が同じ顧客に個別提案を送り、CSが別のタイミングでフォロー電話をかけている。そのような状態では、顧客からの信頼を積み上げるどころか、混乱を招いてしまいます。

問題③:MAやCRMが顧客育成に活用できていない

BtoB企業のMA導入率は年々上昇しています。しかし多くの企業ではMAをメール配信ツールとして使うにとどまり、スコアリングによる顧客分類や育成シナリオの設計まで活用できていないケースが大半です。

MAが育成に機能しない根本原因については、MAを使いこなせない7つの根本原因で詳しく解説しています。

ロイヤルカスタマーとは?BtoB文脈での正確な定義と優良顧客との違い

ロイヤルカスタマーの定義と3つの行動特性

ロイヤルカスタマーとは、商品・サービス・企業に対して強い愛着と信頼を持ち、能動的に関係を深めていく顧客のことです。BtoBでは特に以下の3つの行動特性として現れます。

  • 継続利用:競合が現れても乗り換えず、積極的に契約更新・アップグレードを選択します
  • 社内推薦:担当者が社内の他部門や経営層に自社サービスを推薦し、横展開を後押しします
  • 能動的フィードバック:課題や改善要望を建設的に伝え、製品・サービスの向上に関与します

BtoBでロイヤルカスタマーが特に価値を持つのは、「担当者の異動後も関係が継続する」点にあります。BtoCでは個人の愛着が主軸ですが、BtoBでは組織全体へのロイヤリティが醸成されると、担当者が変わっても取引が続く構造が生まれます。

優良顧客・一般顧客・ロイヤルカスタマーの違い

顧客区分購買行動ロイヤリティの特性解約リスク
一般顧客単発または低頻度愛着なし
優良顧客高頻度・高額惰性・コスト優先の場合あり中(代替品が現れると離脱)
ロイヤルカスタマー継続・拡大傾向ブランドへの信頼と愛着

優良顧客の中には「乗り換えが面倒だから」「他に選択肢がないから」という消極的な理由で継続しているケースも含まれます。

一方、ロイヤルカスタマーは「このサービスでなければならない」という積極的な動機を持っており、この違いがLTV・口コミ・フィードバック品質の差として数値に現れます。

なぜBtoBでロイヤルカスタマー戦略が特に重要なのか?

BtoBでロイヤルカスタマーが重要な理由は、

  1. 新規獲得コストが高い
  2. 意思決定に複数部門が関与する
  3. 契約期間が長く離脱時のインパクトが大きい

の3点です。

一般に、新規顧客を1件獲得するコストは、既存顧客の継続維持コストの数倍から数十倍かかると言われることが多く、BtoBでは1社の解約が月次・年次収益に与えるダメージも大きくなります。

解約後の再獲得は容易ではないため、既存顧客をロイヤルカスタマーに育てる戦略は、新規獲得施策と並ぶ重要課題に位置づけられます。

ロイヤルカスタマー戦略をBtoBマーケティングの全体フレームの中に位置づけたい場合は、BtoBマーケ8ステップの全体像も合わせてご参照ください。

ロイヤルカスタマーを測定する4つの指標と閾値設計の方法

ロイヤルカスタマーの判定には単一指標ではなく「NPS×LTV」の2軸マトリクスを基本とし、RFMとチャーンレートで補完する設計が再現性の高いアプローチです。

ここで紹介する閾値はあくまで設計の一例であり、自社のビジネスモデルやデータに合わせて暫定定義することが出発点になります。

NPS(ネットプロモータースコア)の測定と判定基準

NPS(ネットプロモータースコア)とは、「このサービスを他社に推薦したいか」を0〜10点で測定し、企業への推奨意向を数値化した指標のことです。計算式は「推奨者の割合(%)- 批判者の割合(%)」で、0〜6点を批判者、7〜8点を中立者、9〜10点を推奨者として分類します。

NPSスコアが+20程度を一つの目安として、自社の業界平均と比較しながら判断する企業もあります。

ただし業界・サービス形態によって適切な水準は異なるため、自社の過去データとの比較を基準にした判断が実務的です。

NPS調査はMAを使って定期的に自動配信を設定し(弊社の支援では四半期〜半期に1回の実施例が多い傾向にあります)、調査結果をCSチームに即時共有することで、批判者への早期フォローを仕組み化できます。

LTV(顧客生涯価値)の計算式とBtoB向け閾値の考え方

LTV(顧客生涯価値)とは、1顧客が契約開始から終了までに企業にもたらす累計利益のことです。BtoBでよく使われる計算式は以下の2つです。

サブスクリプション型:LTV = 月次平均単価 × 粗利率 ÷ 月次チャーンレート

プロジェクト型・受託型:LTV = 年間取引額 × 粗利率 × 平均継続年数

閾値設定については、全顧客のLTVを算出して分布を確認し、上位層の範囲を自社で定義するアプローチが実務的です。弊社の支援では「全顧客平均LTVの1.5〜2倍以上」を暫定閾値として設定し、運用しながら精緻化していくケースが多くなっています。

LTVの計算方法と向上施策の詳細は、LTV向上施策と計算方法の全手順で体系的に解説しています。

RFM分析でのセグメント分類とロイヤルカスタマー層の特定

RFM(アール・エフ・エム)分析とは、Recency(最終購入日)・Frequency(購入頻度)・Monetary(購入金額)の3軸で顧客をセグメントする手法のことです。以下は弊社の支援実務でよく用いる設計例の一つです。自社のデータに合わせてスコア区分を調整することが前提です。

スコアRecencyFrequencyMonetary
530日以内月1回以上平均の2倍以上
390日以内四半期1回平均前後
1180日超年1回以下平均の半分以下

3軸合計で最上位スコア(13〜15点)に位置する顧客層をロイヤルカスタマー候補として扱う設計が一例です。この層に対してNPS調査を追加し、NPSが9〜10点の顧客と重なる場合に「確定ロイヤルカスタマー」として判定する二段階設計を、弊社の支援ではよく採用しています。

次の表は、NPS×LTVの4象限ごとに優先すべきアクションをまとめたものです。自社の顧客分布と照らし合わせながら、どの象限に最も多くの顧客が集まっているかを確認することから始めてください。

象限NPSLTV顧客の状態優先アクション
確定ロイヤルカスタマー維持・深耕対象事例インタビュー依頼・ロイヤリティプログラム案内
推薦者候補育成でLTV拡大余地ありアップセル提案・活用深化のサポート
惰性継続層解約リスク潜在CS主導での課題ヒアリング・早期フォロー
離脱リスク層早期フォローが必要解約防止シナリオの発動・原因調査

解約率(チャーンレート)をロイヤリティ指標として活用する方法

チャーンレート(解約率)とは、一定期間に解約した顧客の割合のことです。計算式は「解約顧客数 ÷ 期初顧客数 × 100」です。

チャーンレートの低さそのものをロイヤルカスタマーの証拠とは判断しません。「乗り換えが面倒」という理由での継続は、ロイヤリティではなく惰性だからです。NPS・LTVと組み合わせて初めて有効な指標になります。

BtoB SaaSのチャーンレートについては、多くのベンチマーク事例で月次1〜2%前後が一つの理想的な目安として紹介されています。

ただし業種・平均単価・契約形態によって適正水準は異なるため、自社の過去実績との比較を基本にした判断が重要です。チャーンレートが低い状態でNPSも高い顧客群が、ロイヤルカスタマーの本命層になります。

ロイヤルカスタマー戦略の設計手順:Step.1〜Step.5

ロイヤルカスタマー戦略の設計は、Step.1で定義、Step.2で現状測定、Step.3でジャーニー設計、Step.4で部門連携設計、Step.5でPDCAと進めるのがセオリーです。

Step.1:自社のロイヤルカスタマーを定義・セグメント分け

まずは、「自社にとってのロイヤルカスタマーとは何か」を数値で定義します。定性的な感覚に頼った定義では、マーケ・営業・CSで解釈がずれるからです。

定義設計の手順:

  • NPS・LTV・継続期間のいずれかを主指標に選ぶ
  • 主指標の閾値を数値で暫定設定する(例:NPS 9以上かつLTVが全顧客平均の1.5倍以上)
  • 副指標(チャーンリスクスコア・活用度スコア)を補完情報として設定する
  • 定義を全部門で合意し、MAやCRMのセグメントラベルに反映する

Step.2:現状のロイヤリティをNPS・LTVで測定する

定義が決まったら、現状のロイヤリティを測定します。測定なしに施策を打つと、効果検証ができないまま予算が消費される結果になります。

測定実施の優先順位:

  1. 全顧客のLTVを計算し、分布を可視化する
  2. MAまたはアンケートツールでNPS調査を実施する
  3. NPS×LTVの2軸マトリクスで顧客を4象限に分類する(高NPS高LTV、低NPS高LTV、高NPS低LTV、低NPS低LTV)

この2軸マトリクスにより、現在のロイヤルカスタマー層の規模・比率と、育成すべき候補層(高LTV低NPS)が可視化されます。

Step.3:カスタマージャーニーを設計し、育成フローを可視化する

測定で「育成すべき顧客層」が特定できたら、次はカスタマージャーニー(顧客が初回契約から推奨者になるまでの行動・心理の流れ)を設計します。

BtoBロイヤルカスタマー育成のジャーニー設計では、以下の4フェーズを軸にします。フェーズの区切り期間はビジネスモデルにより異なるため、自社の平均オンボーディング期間や契約更新サイクルに合わせて調整してください。

フェーズ顧客の状態主な施策
導入期(目安:0〜3カ月)サービス活用に不安があるオンボーディング支援・活用ガイド提供
定着期(目安:3〜12カ月)基本機能を活用できている活用事例の共有・アップセル提案
深耕期(目安:12カ月以上)成果を実感している他部門紹介依頼・NPS調査・フィードバック収集
推奨期社内外で推薦しているロイヤリティプログラム・共同コンテンツ制作

Step.4:マーケ・営業・CSの役割分担とSLAを設計する

カスタマージャーニーを設計したら、各フェーズで「誰が・何を・いつ実行するか」をSLA(サービスレベル合意:部門間の対応ルールを数値で定めた取り決め)として明文化します。

BtoBロイヤルカスタマー育成のSLA設計例:

  • マーケ:MAでロイヤルカスタマースコアが閾値を超えた顧客を自動検知し、CSに通知する
  • CS:通知から一定期間内(例:48時間)に顧客へコンタクトし、深耕提案を実施する
  • 営業:CS経由でアップセル・クロスセルの商談機会を得た場合、速やかに初回提案を実施する

SLAを数値で定めることで、フォローの抜け漏れが防止でき、各部門が「何をもって成功か」を共通言語で判断できるようになります。

Step.5:施策を実行し、KPIで効果測定・改善サイクルを回す

施策の実行後は、四半期ごとにKPI(重要業績評価指標)をレビューし、改善サイクルを継続します。

ロイヤルカスタマー戦略の主要KPI:

  • ロイヤルカスタマー比率(全顧客に占めるロイヤルカスタマーの割合)
  • NPS平均スコアの推移
  • LTV平均値の推移
  • 月次チャーンレート
  • アップセル・クロスセル成約率

弊社の支援事例としては、SLAを設計してCSとマーケの連携を仕組み化した複数のBtoB企業において、導入後6カ月の観測期間でロイヤルカスタマー比率が大幅に向上するケースがありました。

ただし業種・規模・既存の顧客基盤によって結果は異なるため、自社の現状測定を起点とした設計が重要です。

MAを活用したロイヤルカスタマー育成の具体的な実装手順

MAによるロイヤルカスタマー育成の実装は、

  1. スコアリングで顧客を自動分類
  2. フェーズ別シナリオで育成
  3. 解約リスクをCSにアラート

の3段階で設計します。

スコアリングで「ロイヤルカスタマー予備軍」を自動判定する設計

MAのスコアリング機能を使って、ロイヤルカスタマー予備軍を自動判定する設計が機能します。

ここでのスコアリングは、新規リード向けの購買意欲スコアリングとは目的が異なります。既存顧客の「ロイヤリティ度合い」を測定するためのモデルを別途設計する必要があります。

ロイヤリティスコアリングの設計例:

行動・属性スコア
ログイン頻度が月10回以上+20点
活用機能数が3つ以上+15点
NPS調査で9〜10点回答+30点
他部門からの新規契約あり+25点
サポート問い合わせが月3回以上(活用課題の可能性)-10点
ログイン30日以上なし(離脱リスク)-20点

上記の例では合計スコアが70点以上の顧客を「ロイヤルカスタマー確定」、40〜69点を「育成対象」として自動セグメントする設計です。点数配分や閾値は自社の顧客データをもとに継続的に見直すことが前提になります。

スコアリングモデルの設計手順の詳細は、ロイヤリティスコアリングの設計方法で体系的に解説しています。

育成シナリオの具体例(フェーズ別:導入期・定着期・推奨期)

MAのシナリオ機能を使って、各フェーズに応じたコンテンツを自動配信します。フェーズ別のシナリオ設計例は以下のとおりです。

導入期(0〜90日)のシナリオ:

  • 契約翌日:ウェルカムメール+初期設定ガイドの送付
  • 14日後:活用状況確認メール。ログインなしの場合はCSへアラート
  • 30日後:「30日でできること」事例コンテンツの配信

定着期(3〜12カ月)のシナリオ:

  • 四半期ごと:活用度レポートの自動送付
  • スコアが40点超:アップセル提案メールをマーケから配信
  • CS担当者からの個別フォローをシナリオのトリガーとして記録

推奨期(12カ月以降)のシナリオ:

  • NPS調査の自動配信(9〜10点回答者には「導入事例インタビュー」の依頼メールを自動送信)
  • ロイヤリティプログラムの案内(限定コンテンツ・先行情報の提供)

解約リスク顧客の早期検知とCS部門へのアラート設計

ロイヤルカスタマー育成と並行して、解約リスクの早期検知の仕組みも設計します。ロイヤリティスコアが急落した顧客をMAが自動検知し、CSにSlackやメールでアラートを送る設定が機能します。

解約リスクアラートのトリガー例(自社の契約形態に合わせて調整してください):

  • 30日間ログインなし
  • NPS調査で6点以下の回答
  • サポート問い合わせが一定期間に集中している
  • 解約・プラン変更ページの閲覧

CSとMAを連携させた解約リスク対応の設計については、CSと連携した解約リスク対応の設計で詳しく解説しています。

NPS調査の自動配信とフィードバック収集の仕組み化

NPS調査はMAで定期的な自動配信を設定し、回答結果をCRMに自動記録する仕組みを構築します。CSが毎回手動で調査を設計する手間が省け、継続的なロイヤリティ測定が定着します。

NPS自動配信の設計ポイント(運用例):

  • 配信タイミング:契約から6カ月後・12カ月後・以降は12カ月ごとを一例として設定し、自社の更新サイクルに合わせて調整する
  • 回答後のアクション:9〜10点回答者にはインタビュー依頼メールを自動送信、0〜6点回答者にはCSへアラートを自動送信
  • データ連携:回答結果をCRMの顧客データに自動付与し、営業・CSが即時参照できる状態にする

ロイヤルカスタマー戦略でよくある失敗パターンと対処法

「施策を実行したのに効果が出なかった」企業に共通するのは、施策そのものの問題ではなく、施策を動かす前段階の「設計の問題」です。

ロイヤルカスタマー戦略の失敗は

  1. 定義の曖昧さ
  2. 部門間のデータ分断
  3. MAの低活用

の3つに起因します。

失敗パターン①:定義が曖昧なまま施策を走らせる

「ロイヤルカスタマーを大切にしよう」という方針だけが社内に走り、定義が数値化されていないケースです。

この状態では、マーケが「NPS高スコア顧客」を対象にメール施策を打つ一方で、営業は「売上上位顧客」を優先するという分断が起きます。

対処法:Step.1で説明した「NPS×LTV」2軸による判定基準を最初に設計し、全部門で合意することを最優先にしてください。

失敗パターン②:部門間のSLAがなく顧客情報が分断される

マーケのMAとCSのCRMが連携しておらず、顧客の状態が各部門で個別に管理されている状態です。

この場合、マーケがロイヤルカスタマー候補と判断した顧客に、CSが同時期に解約防止の電話をかけるという矛盾した対応が発生します。

対処法:CRM・MA・SFAのデータ統合と、部門間のSLAを同時に設計してください。データが統合されても、SLAがなければ「誰がいつ動くか」が定まらず、うまく機能しません。

失敗パターン③:MAをメール配信にしか使っていない

ロイヤルカスタマー施策としてメルマガを定期配信しているが、配信先のセグメントが「全既存顧客」になっているケースです。

ロイヤルカスタマー候補と解約リスク顧客に同じ内容を送ることは、育成とは言えません。

対処法:本記事で解説したロイヤリティスコアリングを設計し、セグメントごとに異なるシナリオを動かす「パーソナライズ育成」への移行が必要です。

リテンション施策の実装手順を詳しく知りたい場合は、BtoBリテンション施策の実装手順を合わせてご参照ください。

よくある質問

ロイヤルカスタマー戦略とはどのような取り組みですか?

ロイヤルカスタマー戦略とは、自社の商品・サービスに強い愛着と信頼を持つ「ロイヤルカスタマー」を定義し、育成・維持することで売上の安定と事業成長を図る取り組みです。単なる施策の実行ではなく、定義設計・指標測定・部門連携・MAを活用した仕組み化まで含めた包括的な設計が必要です。BtoBでは複数担当者が関与するため、マーケ・営業・CS三部門の連携設計が特に重要になります。

ロイヤルカスタマーとはどういう意味ですか?優良顧客との違いは?

ロイヤルカスタマーとは、商品・サービス・ブランドに対して強い愛着と信頼を持ち、継続利用・社内推薦・能動的フィードバックという3つの行動特性を示す顧客のことです。購買金額や継続年数が高い「優良顧客」とは異なり、ロイヤルカスタマーは「このサービスでなければならない」という積極的な動機を持っています。BtoBでは担当者が異動しても組織全体のロイヤリティが維持される状態が理想です。

ロイヤルカスタマーを測定するための指標と方法を教えてください。

主な指標はNPS・LTV・RFM・チャーンレートの4つです。まず取り組みやすいのはNPS調査とLTV計算の2点で、この2軸を組み合わせた「NPS×LTVマトリクス」で顧客を4象限に分類することがロイヤルカスタマー定義の出発点になります。RFMやチャーンレートはその後の補完指標として順次導入し、複数指標を掛け合わせることで判定精度が高まります。

MAがなくてもロイヤルカスタマー戦略は実行できますか?

MAがなくても、スプレッドシート・CRM・アンケートツールを組み合わせることでロイヤルカスタマー戦略の基本設計は実行できます。まずNPS調査・LTV計算・部門間SLAの設計から始め、顧客分類と対応ルールを手動で運用することが現実的な第一歩です。顧客数や対応工数が増えてきた段階でMA導入を検討すると、ロイヤリティスコアリングやシナリオ自動配信の効率が飛躍的に高まります。

ロイヤルカスタマー育成におけるCSとマーケの役割分担はどう設計すればよいですか?

SLA(サービスレベル合意)として「誰が・何を・いつ実行するか」を数値で明文化することが出発点です。具体的には、マーケがMAでロイヤリティスコアの閾値超えを検知してCSに通知し、CSが一定期間内にコンタクトを取り、営業がアップセル商談を担当するという流れを部門間で合意します。SLAを設計してから施策を動かすことで、フォローの抜け漏れと部門間の矛盾した対応を防止できます。

まとめ:ロイヤルカスタマー戦略の全体像と最初の一歩

本記事で解説した内容を整理します。

ロイヤルカスタマー戦略を機能させるために取り組むべきことは、

  1. 自社のロイヤルカスタマーを数値で定義する
  2. NPS・LTV・RFMで現状を測定する
  3. カスタマージャーニーとSLAで部門連携を設計する
  4. MAでスコアリング・シナリオ・アラートを実装する
  5. 四半期ごとにKPIを測定して改善サイクルを回す

の5点です。

多くのBtoB企業では「どこから手をつければいいかわからない」という状態のまま、散発的な施策だけが積み重なっています。

まず取り組むべきことは、施策の実行ではなく「ロイヤルカスタマーの定義」と「部門間のSLA設計」です。

この2点が決まれば、MAの実装も施策の優先順位も自然と定まります。

Sells upでは、BtoBマーケティング支援・MA活用支援・インサイドセールス立ち上げ支援を通じて、ロイヤルカスタマー戦略の設計から実装まで一貫した支援を行っています。「何から始めればいいかわからない」という段階からのご相談もお気軽にお問い合わせください。

「やっているのに成果が出ない」状態から抜け出すために

施策を続けているのに商談が増えない、リードの質が上がらない。 こうした課題の多くは、戦略と施策のつながりが設計されていないことが原因です。 Sells upは現状の分析と改善の優先順位整理から支援します。

株式会社Sells up 代表取締役
武田 大
株式会社AOKIにて接客業を、株式会社リクルートライフスタイル(現:株式会社リクルート)にて法人営業を経験した後、株式会社ライトアップでBtoBマーケティングを担当。その後、デジタルマーケティングエージェンシーにてBtoBマーケティングの戦略設計/施策実行支援、インサイドセールスをはじめとしたセールスやカスタマーサクセスとの連携を通じたマーケティング施策への転換といった支援を行い、2023年に株式会社Sells upを設立。KGI逆算によるKPI設計・リードスコアリングの統計的設計・営業連携SLAの構築を含むMA活用支援を、業界・規模を問わず80社以上に提供してきた実績を持つ。Salesforce Certified Marketing Cloud Account Engagement SpecialistおよびTableau Desktop SpecialistのSalesforce認定資格を保有。