LTV向上とは?BtoB企業が取り組むべき施策と成功へのロードマップを徹底解説

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LTV向上、「何から始めるべきか」で悩んでいませんか?
貴社のマーケティング部門で、新たに「LTV向上」というミッションが掲げられたものの、その一歩目をどこから踏み出せばよいか、悩んでおられるのではないでしょうか。
「LTVの重要性は理解しているが、どこから着手すれば成果につながるのか分からない」
「アップセルやチャーンレート改善といった施策は知っているが、自社に合う優先順位がつけられない」
「他部門をどう巻き込めばいいのか、投資判断を経営層にどう説明すればいいのか、材料が足りない」
こうした壁に直面した時、断片的な情報や一般論だけでは、社内を動かすための説得力ある戦略を描くことは困難です。
この記事では、LTV向上の本質的な意味から、BtoB企業、特にSaaSビジネスが実践すべき具体的な施策までを、明日から動き出せるレベルで体系的に解説します。施策のリストアップに留まらず、部門横断の連携体制の構築や、経営層への説明責任といった「実行」のフェーズまで踏み込み、現場で本当に役立つ戦略的ロードマップをお届けします。
LTV(顧客生涯価値)とは?まず押さえるべき基本
LTVの定義とBtoBビジネスにおける重要性
LTV(Life Time Value/顧客生涯価値)とは、一人の顧客、または一社の顧客が、取引を開始してから終了するまでの全期間にわたって、自社にもたらす利益の総額を示す指標です。
特にBtoBビジネスでは、顧客一社あたりの取引額や契約期間が大きくなる傾向にあり、同時に新規顧客の獲得コストも高額になりがちです。そのため、いかにして既存顧客との関係を深め、LTVを最大化するかが、企業の安定的かつ持続的な成長の鍵を握ります。
なぜ今、LTV向上が経営課題になるのか
近年、多くの企業でLTVが重要視される背景には、市場環境の大きな変化があります。
新規顧客獲得コストの高騰と市場の成熟
多くの業界で市場が成熟期を迎え、競争が激化する中で、広告費をはじめとする新規顧客獲得コスト(CAC)は上昇の一途をたどっています。従来の「新規顧客の獲得」のみに依存した成長モデルでは、いずれ限界を迎えることは明らかです。そこで、既存顧客との関係を強化し、一社あたりの利益を最大化するLTV向上の考え方が、経営の最重要テーマとして浮上しています。
サブスクリプションモデル(SaaS)の普及
SaaSに代表されるサブスクリプションモデルの普及も、LTVの重要性を高める大きな要因です。このビジネスモデルは、顧客にサービスを継続利用してもらうことで初めて初期投資を回収し、利益を積み上げていく構造になっています。そのため、LTVは単なるマーケティング指標ではなく、事業そのものの健全性や将来性を測る経営指標として、極めて重要な役割を果たします。
自社のLTVを算出する計算方法
LTVには複数の計算式が存在しますが、まずは基本的な考え方を理解することが重要です。
基本的なLTV計算式
ビジネスモデルを問わず、最も基本的なLTVの計算式は以下の要素で構成されます。
LTV = 平均購入単価 × 収益率 × 購入頻度 × 継続期間
より正確な利益ベースでLTVを把握したい場合は、顧客の獲得と維持にかかったコストを差し引きます。
LTV =(平均購入単価 × 収益率 × 購入頻度 × 継続期間)-(新規顧客獲得コスト + 既存顧客維持コスト)
BtoBビジネスモデル別の計算例
例えば、あるSaaS企業の標準プランについて、年間契約額が120万円、収益率が60%、平均契約期間が3年だとします。この場合のLTVは以下のようになります。
LTV = 120万円 × 60% × 3年 = 216万円
この数値から、一社あたりの顧客獲得・維持コスト(仮に50万円とします)を差し引くことで、より現実に即したLTVが算出できます。
LTV向上を実現する5つの基本要素と具体的な施策
LTVは、分解すると5つの基本要素から成り立っています。それぞれの要素を高めるための具体的なアプローチを見ていきましょう。
①購入単価を上げる:アップセルとクロスセルの勘所
顧客一社あたりの取引額を増やすためには、アップセル(上位プランや追加オプションの提案)やクロスセル(関連サービスの提案)が有効です。重要なのは、顧客のビジネスの成功や課題解決に貢献するという視点から、「顧客にとって価値のある提案」を行うことです。利用状況のデータに基づき、最適なタイミングで提案することで、自然な形で単価向上を実現できます。
②購入頻度を高める:顧客接点を維持する仕組みづくり
BtoB、特にSaaSビジネスでは、継続的な利用が前提となります。定期的な活用促進ウェビナーの開催、ユーザー会の運営、アップデート情報の提供など、顧客との接点を絶やさない仕組みを構築しましょう。顧客がサービスを「使い続ける理由」を能動的に提供し続けることが、LTV向上に直結します。
③契約期間を延ばす:解約率(チャーンレート)を下げるアプローチ
解約率の低減は、LTV向上における最重要課題の一つです。導入初期のオンボーディング支援の充実、定期的な活用状況のヒアリング、ヘルススコアを用いた解約リスクの早期発見など、顧客が離れる兆候を未然に防ぐ仕組みを整えましょう。顧客の声を真摯に受け止め、製品やサポート体制を改善し続ける姿勢が不可欠です。
④顧客獲得・維持コストを最適化する
LTVの金額が大きくても、獲得や維持にかかるコストがそれを上回っていては利益は生まれません。マーケティング施策のターゲット精度を高める、MAやCRMといったツールを活用して業務を効率化するなど、コストを最適化する視点を常に持ちましょう。特に、LTVとCAC(顧客獲得コスト)の比率を継続的にモニタリングすることが重要です。
⑤顧客ロイヤルティを高める:ファン化を促進する関係構築
単にサービスに満足してもらうだけでなく、顧客が自社の「ファン」となり、長期的なパートナーとして関係を築ける状態を目指しましょう。ユーザーコミュニティの運営や、顧客の成功事例の共有、顧客の声を反映した製品開発など、顧客と「共創」する姿勢が、揺るぎないロイヤルティの醸成につながります。
【Sells upの視点】施策の羅列で終わらせない。LTV向上を「プロジェクト」として推進する3ステップ
LTV向上は、個別の施策を打ち続けるだけでは達成できません。組織横断で推進する「プロジェクト」として捉え、戦略的に進める必要があります。ここでは、断片的なアイデアを成果につながるプロジェクトへと昇華させるための3つのステップを解説します。
Step1:診断と目標設定 ― どこに注力すべきかを見極める
LTV向上の第一歩は、自社の現状をデータに基づいて正確に診断し、最も効果的な打ち手を見極めることです。
RFM分析で優良顧客セグメントを特定する
RFM分析(Recency:最終購入日、Frequency:購入頻度、Monetary:購入金額)は、LTVが高い優良顧客の傾向を把握するのに有効な手法です 。BtoB SaaSであれば、最終ログイン日、利用頻度、契約金額などに置き換えて分析することで、「どの顧客層のLTVをさらに伸ばすべきか」「どのような顧客が離脱しやすいか」といったインサイトを定量的に得ることができます。
LTVを軸としたKPIツリーの作り方
最終目標であるLTVを頂点に置き、それを構成する要素(購入単価、契約期間、アップセル率、チャーン率など)を分解してKPIツリーを作成します。これにより、どの指標を改善することがLTV全体の向上に最もインパクトを与えるのかが可視化され、施策の優先順位を明確にすることができます。
Step2:実行計画の策定 ― 高い効果が期待できるプログラムの設計
現状分析で明らかになった課題に対し、具体的な実行計画を策定します。
顧客の成功体験を創出する「オンボーディングプログラム」の設計図
SaaSビジネスにおいて、LTVを左右する最も重要な期間が「初期定着」のフェーズです。顧客が導入初期からサービスの価値を実感し、成功体験を得られるよう、体系的なオンボーディングプログラムを設計しましょう 。例えば、利用開始から30日、60日、90日後に達成すべきマイルストーンを設定し、顧客と進捗を共有しながら伴走する仕組みが有効です。
成功事例に学ぶ、BtoBのアップセル・クロスセル戦略
アップセルやクロスセルを単なる「追加の売り込み」で終わらせないためには、顧客の事業成長に貢献する提案として位置づけることが不可欠です。顧客の利用データから活用度が一定の水準を超えたタイミングを検知し、「さらなる成果向上のため、上位プランへの移行をご提案します」といった、データに基づいた説得力のある提案を行いましょう。成功した提案のパターンを社内で共有し、営業部門やカスタマーサクセス部門のベストプラクティスとして標準化することが重要です。
Step3:測定と改善 ― PDCAサイクルを回し続ける文化の醸成
施策は実行して終わりではありません。設定したKPIを定期的にモニタリングし、改善活動を継続するPDCAサイクルを組織文化として根付かせることが、持続的なLTV向上には不可欠です。チャーン率やアップセル率といった主要KPIをダッシュボードで可視化し、定例会議で進捗をレビューする仕組みを構築しましょう。
【Sells upの視点】LTV向上は部門横断のチームスポーツ。組織の壁を乗り越える連携術
LTV向上は、マーケティング部門だけの努力で達成できるものではありません。営業、カスタマーサクセス、製品開発といった複数部門の密な連携が成功の鍵を握ります。
なぜマーケティング部門だけではLTVを最大化できないのか
LTVを構成する要素を考えれば、その理由は明らかです。契約単価やアップセル率は営業部門が、顧客満足度やチャーン率はカスタマーサクセス部門が、そして製品価値そのものは開発部門が大きく関わっています。マーケティング部門が獲得した顧客を、営業が適切な期待値で受注し、カスタマーサクセスが成功体験へと導く。この一連の流れ全体を最適化しなければ、真のLTV最大化は実現できません。
成功の鍵を握る「営業・マーケ・CS」の三位一体モデル
各部門の役割と責任分担の明確化
LTV向上プロジェクトを成功させるには、まず各部門の役割と責任範囲を明確に定義することが不可欠です。例えば、マーケティングは「LTVが高くなる傾向のある優良顧客層のリード獲得」、営業は「顧客の課題に即した適切なプランの提案とクロージング」、CSは「顧客の成功支援を通じた定着・活用促進とアップセル機会の創出」といった形で、それぞれのミッションをLTVという共通目標に紐づけます。
LTVを共通言語にするためのKPI設計と情報共有の仕組み
LTVを全社共通の最重要指標(KGI)と位置づけ、その構成要素を各部門のKPIに落とし込みます。そして、それらの数値を部門横断で共有できるダッシュボードを導入しましょう。CRMなどを活用して顧客情報を一元化し、部門間のサイロ化を防ぐことが、一貫した顧客体験を提供する上で極めて重要です。
「守り」のCSから「攻め」の収益化へ。カスタマーインサイドセールス(CIS)という選択肢
従来のカスタマーサクセス(CS)は「解約防止」といった守りの側面が強い役割でした。しかし近年、既存顧客からのアップセル・クロスセルを能動的に創出する「カスタマーインサイドセールス(CIS)」という役割が注目されています 。顧客の利用状況や課題を最も深く理解しているCSが、その知見を活かして収益拡大に貢献する「攻め」の役割を担うことで、LTV向上をさらに加速させることができます。
誰が責任を持つ?BtoB最大の課題「契約更新」の最適な担当モデル
契約更新の担当者を誰にするかは、多くのBtoB企業が直面する課題です。営業が担当するのか、CSが担当するのか、あるいは専任の更新担当チームを置くべきか。最適なモデルは、製品の価格帯や複雑性、営業サイクルの長さによって異なります 。自社のビジネスモデルに合わせて、顧客との関係性を最も円滑に維持・発展させられる体制を戦略的に設計することが求められます。
【Sells upの視点】経営層を動かす。LTV向上のための投資を正当化する説明責任の果たし方
LTV向上のための施策には、新たなツールの導入や人材の増強など、一定の投資が伴います。経営層の理解と協力を得るためには、その投資対効果を定量的かつ説得力をもって説明する必要があります。
事業の健全性を示す経営指標「ユニットエコノミクス」とは
ユニットエコノミクスとは、顧客一人あたり、あるいは一社あたりの採算性を示す経営指標です。特にSaaSビジネスでは、「LTV ÷ CAC(顧客獲得コスト)」の比率が重要視されます。これは、一社の顧客を獲得するためにかけたコストに対して、その顧客が将来どれだけの利益をもたらしてくれるかを示すものです。
LTV/CAC比率を用いて投資対効果を明確にする方法
一般的に、SaaSビジネスでは「LTV/CAC > 3」の状態が健全であるとされています 。この指標を用いることで、新たなツール導入や人材採用といった投資を提案する際に、「この投資によってチャーン率が1%改善し、結果としてLTV/CAC比率が3から3.5に向上する見込みです」といった具体的なシミュレーションを提示できます。これにより、投資の妥当性を客観的に示すことが可能になります。
予算獲得に繋がるビジネスケースの作り方
経営層への提案資料には、「現状のLTV/CAC」「施策実行後の目標値」「必要な投資内容」「見込まれるROI(投資対効果)」を明確に記載しましょう。加えて、業界のベンチマークや競合の動向、成功企業の事例などを補足情報として活用することで、提案の説得力はさらに増します。LTV向上への投資を単なる「コスト」ではなく、未来の利益を生み出す「成長ドライバー」として位置づけることが、社内の合意形成を円滑に進めるポイントです。
LTV向上を加速させるおすすめのツール
LTV向上の取り組みを効率的かつ効果的に進めるためには、適切なツールの活用が欠かせません。ここでは代表的な3つのツールを紹介します。
顧客情報の一元管理を実現する「CRM」
CRM(Customer Relationship Management)は、顧客情報や商談履歴、コミュニケーションの記録などを一元管理するシステムです。営業、CS、マーケティングの各部門が同じ顧客情報を参照することで、部門間の連携がスムーズになり、一貫性のある顧客対応が可能になります。LTV向上のあらゆる施策の基盤となるツールです。
顧客育成を自動化する「MA(マーケティングオートメーション)」
MA(Marketing Automation)は、見込み顧客の育成(ナーチャリング)や既存顧客へのフォローアップを自動化するツールです。顧客の行動履歴に基づいてパーソナライズされた情報を提供することで、アップセルやクロスセルの機会を創出し、顧客エンゲージメントを高めることができます。
統合された顧客体験の基盤となる「CDP(カスタマーデータプラットフォーム)」
CDP(Customer Data Platform)は、CRMやMA、Webサイトのアクセスログなど、社内に散在するあらゆる顧客データを統合するための基盤です 。データを統合・分析することで、顧客一人ひとりをより深く理解し、チャネルを横断した最適なコミュニケーションを設計することが可能になります。
LTV向上に成功したBtoB企業の事例研究
実際にLTV向上を実現した企業の事例から、具体的なヒントを学びましょう。
事例1:Sansan株式会社 ― 日本で初めてカスタマーサクセスを組織化
名刺管理SaaSのリーディングカンパニーであるSansanは、日本でいち早くカスタマーサクセス部門を立ち上げ、「LTV最大化」を組織のミッションに掲げました 。導入支援、活用促進、契約更新といった顧客のフェーズごとに専門チームを配置し、手厚いサポート体制を構築。これにより高い顧客定着率を維持し、LTV向上を事業成長の強力なエンジンとしています。
参考:Full star「LTV向上の重要ポイント5つと施策10選!LTVを高めた事例も解説」
事例2:Salesforce ― 顧客の成功体験を軸にしたエコシステム戦略
Salesforceは、主力製品であるCRM/SFAを中核に、MAやBIツールなど、周辺サービスをクロスセルすることで顧客のビジネス全体を支援するエコシステムを構築しています 。顧客情報を一元化し、部門横断での活用を促進することで、顧客はSalesforceプラットフォームへの依存度を高め、結果として長期的な契約継続とLTVの向上につながっています。
参考:Full star「LTV向上の重要ポイント5つと施策10選!LTVを高めた事例も解説」
事例3:freee株式会社 ― 同一ターゲットへのクロスセルによるARR向上
クラウド会計ソフトから始まったfreeeは、同じスモールビジネスというターゲット顧客に対し、人事労務や経費精算といった関連サービスを次々と展開 。顧客の事業フェーズや課題に合わせて複数のサービスをクロスセルすることで、一社あたりの取引額(ARPU)と契約期間の両方を伸ばし、LTVの最大化に成功しています。
まとめ:LTV向上は、企業の持続的成長を実現する経営戦略そのものである
LTV向上は、単なるマーケティングの一施策ではありません。それは、企業の成長モデルを「刈り取り型」から「育成型」へと転換させ、持続的な成長基盤を築くための経営戦略そのものです。顧客一社一社との関係性を深め、長期的な成功を支援することが、結果として自社の安定した収益につながります。
本記事でご紹介したフレームワークや事例が、貴社のLTV向上プロジェクトを推進する一助となれば幸いです。LTVを軸とした組織づくりと戦略的なアプローチによって、貴社ならではの成長ストーリーを描いてください。
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