Account Engagementシナリオ設計の教科書|成果を出すための戦略と具体例

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Account Engagement(旧Pardot)を導入し、リードナーチャリングの自動化に取り組んでいるものの、以下のような課題を感じてはいないでしょうか。
「リード獲得数は安定しているが、MQL(Marketing Qualified Lead)への転換率が伸び悩んでいる」 「リードの興味関心に合わせた個別のアプローチが自動化できていない」
「シナリオ機能を使っているが、投資対効果(ROI)を明確に示せていない」
これらの課題を解決する中心的な機能が「Engagement Studio」、通称「シナリオ」機能です。
しかし、この機能を最大限に活用し、成果に繋げるためには、単に操作方法を覚えるだけでは不十分です。「自社のビジネスで成果を出すために、どう考え、どう設計すれば良いのか」という戦略的な視点が不可欠です。
本記事では、単なる操作マニュアルではなく、BtoBマーケティング支援で培ってきた知見をもとに、成果に直結するシナリオの「戦略設計」から「具体的な構築手順」「ROIを可視化する効果測定の方法論」、そして「失敗を避けるための運用ノウハウ」までを体系的に解説します。
貴社のマーケティング活動が次の段階へ進み、営業部門に貢献する質の高いMQLを安定的に創出するための指針となれば幸いです。
Account Engagementのシナリオ機能(Engagement Studio)とは?
BtoBマーケティングにおいて、リード(見込み顧客)の育成(ナーチャリング)を自動化・最適化することは、営業成果に直結する重要なテーマです。Account Engagementの「Engagement Studio」は、その中核を担う機能であり、リードの行動や属性に基づいた複雑なコミュニケーションシナリオを設計・自動実行できます。
シナリオ機能で実現できること:一斉配信からの脱却
従来のメールマーケティングでは、すべてのリードに同じタイミングで同じ内容を一斉配信する手法が一般的でした。しかし、顧客の興味・関心や検討段階は一人ひとり異なります。画一的なアプローチでは、エンゲージメントを高めることは困難です。
Engagement Studioを活用することで、以下のような高度な施策が実現できます。
顧客ごとの行動(メール開封、リンククリック、Webサイト閲覧、フォーム送信など)に応じて、配信内容やタイミングを自動で最適化する
スコアや属性情報(業種、役職、企業規模など)をもとに、リードの温度感・検討度合いに合わせた分岐・アクションを設計する
マーケティング部門から営業部門へのスムーズなリード引き渡し(MQL創出)を自動化する
一斉配信から脱却し、リード一人ひとりに最適化された体験(カスタマージャーニー)を設計できる点が、Engagement Studioの最大の価値です。
シナリオを構成する3つの基本要素:「アクション」「トリガー」「ルール」
Engagement Studioでシナリオを構築する際、理解しておくべき3つの基本要素があります。これらを組み合わせることで、複雑なマーケティング施策を自動化できます。
アクション(Action):リードに対してAccount Engagementが実行する具体的な処理です。(例:メールを送信、スコアを加算、営業担当に通知)
トリガー(Trigger):リードが特定の行動を起こしたかどうかを判断し、分岐させる「きっかけ」です。(例:メールを開封したか、リンクをクリックしたか)
ルール(Rule):リードが特定の条件を満たしているかどうかを評価し、分岐させる要素です。トリガーが「行動」を評価するのに対し、ルールは「状態」や「属性」を評価します。(例:スコアが一定以上か、業種が〇〇か)
他の自動化機能(オートメーションルール・完了アクション)との使い分け
Account Engagementには、Engagement Studio以外にも自動化機能があります。それぞれの特徴を理解し、使い分けることが重要です。
Engagement Studio:複数のステップと複雑な分岐を組み合わせた「シナリオ(ジャーニー)」設計に最適です。中長期的なナーチャリングや段階的な情報提供に強みを発揮します。
オートメーションルール:特定の条件を満たした際に、自動処理を継続的に実行します。「スコアが100点以上になったら営業担当に割り当てる」といった、全社共通のルールに基づく自動化に適しています。
完了アクション:フォーム送信やファイルダウンロードなど、特定のアクションが発生した直後に紐づく自動処理です。資料請求直後のサンクスメール送信など、即時性の高い対応に向いています。
【Sells upの視点】最適な自動化機能を選ぶための判断基準
どの自動化機能を使うべきか迷った際は、「時間軸の長さ」と「分岐の複雑さ」で判断すると良いでしょう。 数日から数ヶ月にわたる長期的な育成プロセスや、リードの反応に応じた複数の分岐が必要な場合は、Engagement Studioが最適です。一方、即時的な対応や単発のデータ処理であれば、完了アクションやオートメーションルールが適しています。 特にBtoBの長期検討商材では、リードの状態変化に応じて柔軟にアプローチを変えられるEngagement Studioの活用が、MQL創出の質を高めるポイントとなります。
なぜ貴社のシナリオは成果に繋がらないのか?よくある3つの原因
多くの企業がEngagement Studioを活用しているにも関わらず、期待した成果を得られていないケースが見受けられます。その背景には、主に3つの原因が存在します。
原因1:戦略設計の欠如(How先行のアプローチ)
最も多いのが、「Engagement Studioで何ができるか」という機能起点(How)でシナリオを考えてしまうケースです。ツールの操作方法を学ぶことに集中するあまり、「そもそも、なぜこのシナリオが必要なのか(Why)」「誰に、どのような価値を提供するのか(Who/What)」という戦略設計が抜け落ちてしまいます。
目的が曖昧なまま作られたシナリオは、たとえ複雑な分岐が設定されていても、リードに態度変容させることはできません。
原因2:シナリオの「出口」と営業連携が設計されていない
シナリオのゴール設定が曖昧なまま運用されているケースも散見されます。「メールを5通送ること」がゴールになってしまい、その結果としてリードをどのような状態に引き上げたいのか、どのタイミングで営業部門に引き渡すのかが定義されていない状態です。
BtoBマーケティングの目的は、最終的に商談や受注に繋げることです。マーケティング部門だけで完結する自己満足なシナリオではなく、営業部門がスムーズにアクションを起こせるような「出口設計」が不可欠です。
原因3:効果測定の仕組みがなく、PDCAが回らない
シナリオを開始したものの、それが実際にMQL創出や商談化にどれだけ貢献しているのかを測定できていない場合、PDCAサイクルを回すことができません。成果が可視化されなければ、どのシナリオが効果的で、どこに改善点があるのかを判断できず、結果として効果の薄いシナリオが放置されてしまいます。
成果を出すためのシナリオ設計戦略フレームワーク
Engagement Studioで成果を最大化するためには、管理画面を開く前に「戦略設計」を行うことが不可欠です。ここでは、ツールを触る前に整理すべき5つの要素(Goal, Who, What, When, How)を体系化したフレームワークを解説します。
Step.1:Goal(目的とKPIの設定)- 何のために実行するのか
まずは、シナリオの目的(Goal)と、その達成度を測るためのKPIを定義する必要があります。ゴールが不明確なままでは、シナリオ全体の設計がブレてしまいます。
目的の例:新規リードからのMQL創出、休眠顧客の再活性化、特定製品のクロスセル促進など。
KPIの例:MQL化数、シナリオ経由の商談創出数、特定のメールのクリック率など。
「このシナリオを通じて、どのようなビジネス成果を得たいのか」を必ず言語化しましょう。
Step.2:Who(ターゲットの明確化)- 誰を対象にするのか
次に、「誰に」シナリオを届けるのか、ターゲットを明確にします。ターゲット像が曖昧なままでは、心に響くメッセージや適切な分岐条件を設定できません。
属性によるセグメント:特定の業種、役職、企業規模など。
行動や状態によるセグメント:セミナー参加者、特定の資料請求者、過去半年間アクションがない休眠顧客など。
ターゲットの解像度を上げることが、シナリオの成功につながります。
Step.3:What(提供コンテンツとオファー)- 何を提供するのか
ターゲットが決まったら、「何を」提供するのかを設計します。シナリオの各ステップで使用するコンテンツ(メール、ホワイトペーパー、事例など)とオファー(個別相談会、デモ依頼など)を準備します。
リードの検討段階や興味関心に合わせたコンテンツを用意できているか。
次のステップへ誘導するための魅力的なオファーが設計できているか。
【Sells upの視点】シナリオ成功の可否はコンテンツが握る
どれほど精緻なシナリオを組んだとしても、提供するコンテンツに魅力がなければリードは反応しません。シナリオ設計とコンテンツ制作は表裏一体といえます。自社の強みや優位性を明確にし、ターゲット顧客の課題解決に直結する質の高いコンテンツを用意することが、ナーチャリングの成果を左右するします。コンテンツが不足している場合は、複雑なシナリオを組むよりも、まずはコンテンツの拡充にリソースを投下すべきです。
Step.4:When(タイミングとトリガー)- いつアクションを起こすのか
「いつ」アクションを起こすかは、リードの興味を引きつけ、温度感を維持するために重要です。
トリガーの設定:メール開封、リンククリック、フォーム送信など、どのアクションを起点(引き金)にするか。
タイミングの最適化:資料請求後24時間以内、セミナー後3日以内など、リードの熱量が高いタイミングを逃さない設計。
待機時間の設定:次のメールを送るまでに何日間隔を空けるか。
適切なタイミング設計は、開封率や反応率の向上に直結します。
Step.5:How(出口設計と営業連携)- どのように連携するのか
最後に、「どのように」アクションを実行し、シナリオのゴール(出口)を迎えるかを設計します。特にBtoBにおいては、マーケティングから営業への引き渡し、すなわち「出口設計」が成果の分水嶺となります。
MQL基準の明確化:どの条件を満たしたリードを、どのタイミングで営業部門に引き渡すか。
営業連携アクションの設計:Salesforce上でのToDo(タスク)作成、担当者への割り当て、通知など。
引き渡す情報の整理:営業がアクションを起こすために必要な情報(行動履歴、興味関心の度合いなど)をどう伝えるか。
出口設計が曖昧だと、せっかく育成したリードが放置され、機会損失に繋がってしまいます。
【Sells upの視点】営業が「最も動きやすい状態」を作る出口設計
BtoBマーケティングにおけるシナリオのゴールは、単にリードのスコアを上げることではありません。最終的なゴールは「営業担当者が最も効率的かつ効果的にアクションを起こせる状態を作ること」です。 そのためには、シナリオ設計の段階で営業部門と連携し、「どのような情報が付与されていれば、優先的にフォローできるか」をすり合わせておく必要があります。例えば、SalesforceのToDo(タスク)を作成する際、「〇〇の資料をダウンロードし、△△のメールに反応したリードです。まずは□□の観点でヒアリングを実施してください」といった具体的な情報を付与することで、営業の初動の質とスピードは格段に向上します。マーケティング部門の自己満足で終わらせず、営業成果に直結する出口を設計することがポイントです。
【解説】Engagement Studioでのシナリオ作成手順
戦略設計が完了したら、実際にEngagement Studioでシナリオを構築していきます。ここでは、設定の流れと、運用時に迷いやすいポイントについて解説します。
Step.1:Engagementプログラムの基本設定
まずはシナリオの土台を作成します。管理画面から「オートメーション」>「Engagement Studio」を選択し、「+Engagementプログラムを追加」をクリックします。
主な設定項目は以下の通りです。
名前:目的が明確に伝わる名称を設定(例:【資料請求後フォロー】〇〇サービス導入事例)。
フォルダ/タグ:施策やキャンペーンごとに整理できるよう設定。
受信者リスト:シナリオの対象となるリードリスト(ダイナミックリストまたはスタティックリスト)を指定。
業務時間・タイムゾーン:メール配信の最適な時間帯を設定(例:平日10:00〜17:00、Asia/Tokyo)。深夜や休日のメール送信を防ぎます。
プロスペクトの再エントリを許可:同じリードが再度シナリオの対象になった場合、再エントリを許可するかどうかを設定します。目的に応じて設定しましょう。
Step.2:シナリオの骨格組み立て(3要素の配置)
基本設定が完了したら、Engagement Studioのキャンバス上で、「+」アイコンをクリックし、アクション・トリガー・ルールを選択してシナリオの流れをビジュアル的に組み立てていきます。
分岐の設計例: 「1通目のメールを送信(アクション)」→「メールを開封したか?(トリガー)」で分岐。
Yes(開封した)の場合:「スコアを10点加算(アクション)」し、「次のステップのメールを送信(アクション)」。
No(開封しなかった)の場合:「3日待機」し、「件名を変えたリマインドメールを送信(アクション)」。
Step.3:各ステップの詳細設定(評価期間の使い分け)
骨格ができたら、各要素の詳細を設定します。特にトリガー設定時の「評価期間」は、シナリオの流れを制御する重要な設定です。2つの選択肢があり、挙動が異なります。
待機(最大〇日間)(Wait up to):指定した期間内(最大期間)にリードがアクションを起こすのを待ちます。アクションを起こした時点で、即座に次のステップ(Yes分岐)に進みます。期間内にアクションを起こさなかった場合は、No分岐に進みます。
例:「メール開封を最大5日間待つ」。3日目に開封すればその時点でYes分岐へ、5日間開封しなければNo分岐へ進みます。
待機(〇日間)(Wait):指定した期間、必ず待機します。期間が終了した時点で、それまでに行動があったかどうかを評価します。
例:「5日間待機」。3日目に行動しても、必ず5日間待機。5日経過時点で評価し、分岐。
リードの反応速度を重視し、即時性を求める場合は「待機(最大〇日間)」を選択するのが一般的です。目的に応じて使い分けることが、効果的なシナリオ設計のポイントです。
Step.4:テストと有効化
シナリオを作成したら、公開前に必ず「テスト」タブを使用して動作確認を行います。
テストタブを開き、「開始」をクリックします。
画面上のシミュレーションで、シナリオの流れを確認します。
各分岐点で「はい」「いいえ」のどちらに進むかを選択し、想定通りのアクションが実行されるかを確認します。
テストログで、各ステップの通過日時や挙動を詳細にチェックします。
テストで問題がないことを確認したら、「開始」ボタンをクリックし、シナリオを有効化(本番稼働)します。
【Sells upの視点】本番環境で失敗しないためのテスト手法
Engagement Studioのテスト機能は便利ですが、あくまでロジックの確認に留まります。実際のメール表示やSalesforceとの連携動作までは確認できません。 本番稼働前には、必ずテスト用のリード(自分や関係者のメールアドレス)を用意し、実際にシナリオにエントリさせてテストを実施することを強く推奨します。特に以下の点を確認しましょう。
メールの表示崩れやパーソナライズ項目(差し込み項目)が正しく反映されているか。
営業担当者への通知(ToDo作成など)が意図したタイミングで、正しい内容で作成されているか。
複数の属性パターンや分岐条件でテストを実施し、関係者にも確認してもらうことで、現場での運用ミスや想定外の挙動を未然に防ぐことができます。
今すぐ使える!目的別シナリオテンプレート3選
ここでは、BtoBマーケティングで頻繁に活用される、具体的なシナリオのテンプレートを3つご紹介します。貴社の状況に合わせてカスタマイズしてご活用ください。
シナリオ例1:資料請求後の段階的ナーチャリング
資料請求はリードの関心が高い状態ですが、すぐに商談化するとは限りません。段階的に情報提供を行い、検討度合いを高めるシナリオです。
Goal:MQL化(個別相談への誘導)
Who:特定の資料をダウンロードしたリード
シナリオの流れ:
Step.1(当日):資料ダウンロード完了後、お礼と補足情報のメールを送信。
Step.2(3日後):関連する導入事例やFAQを紹介するメールを送信。
Step.3(7日後):課題解決策や競合比較情報を提供するメールを送信。
Step.4(分岐):ここまでのメールの反応(開封・クリック)やスコアに基づき分岐。
反応が良い場合:個別相談会やデモ依頼のオファーを提示し、営業へ通知。
反応が薄い場合:長期ナーチャリングリストへ移動し、定期的な情報提供へ移行。
シナリオ例2:セミナー・ウェビナー後のフォローアップと営業連携
セミナーやウェビナー参加者の熱量を維持し、効率的に営業へ引き渡すためのシナリオです。参加状況(参加・欠席)に応じた分岐がポイントです。
Goal:商談創出
Who:セミナー・ウェビナー申込者
シナリオの流れ:
Step.1(開催直後):参加状況を確認(ルール)。
Step.2(分岐):
参加者:お礼とアーカイブ動画、アンケート回答依頼のメールを送信。
欠席者:アーカイブ動画と次回開催案内のメールを送信。
Step.3(3日後):アンケート回答内容を確認(ルール)。
Step.4(分岐):
具体的な課題や導入意欲が高い回答者:営業担当へToDoを作成し、個別フォローを依頼。
情報収集段階の回答者:関連資料を提供するメールを送信し、ナーチャリングを継続。
シナリオ例3:休眠顧客の再活性化
過去に接点があったものの、長期間アクションがない休眠顧客を掘り起こし、再び検討のテーブルに乗せるためのシナリオです。
Goal:リードの再活性化(最新情報への反応獲得)
Who:過去6ヶ月以上アクションがないリード
シナリオの流れ:
Step.1:最新の業界トレンドや製品アップデート情報をまとめたメールを送信。
Step.2(分岐):メールの開封・クリックを確認(トリガー)。
反応あり:最新の導入事例やキャンペーン情報を案内するメールを送信。スコアを加算。
反応なし:3週間待機し、異なる切り口(例:他社の課題解決事例)で再度アプローチ。
Step.3:スコアが一定以上に達した場合、インサイドセールスに通知し、状況確認のコールを実施。
シナリオの成果を証明する「効果測定とROI可視化」
シナリオ運用において見落とされがちなのが、効果測定と投資対効果(ROI)の可視化です。「どのシナリオがどれだけの成果に貢献したのか」が不明確なままでは、マーケティング活動の成果を経営層や他部門に説明することが難しくなります。
Engagement Studioレポートの限界
Engagement Studioには標準のレポート機能があり、メールの開封率やクリック率、シナリオの通過人数などを確認できます。これらはシナリオの改善には役立ちますが、最終的な商談や受注への貢献度を測定するには不十分です。
Salesforceキャンペーン連携によるROIの可視化
マーケティング活動のROIを明確にするためには、Account EngagementとSalesforceの「キャンペーン」機能を連携させることが不可欠です。
これにより、「どのシナリオ(キャンペーン)を経由して、どれだけの商談が生まれ、いくら受注したか」を定量的に把握できるようになります。
ROI可視化の具体的な手順:
Salesforceキャンペーンの準備:シナリオに対応するSalesforceキャンペーンを作成します。
Engagement Studioでの連携設定:シナリオ内の適切なタイミング(例:MQL化した時点)で、アクション「Salesforceキャンペーンに追加」を設定します。キャンペーン名と状況(ステータス:例「MQL」など)を指定します。
成果のトラッキング:Salesforce側で、キャンペーンメンバー経由で発生した商談や受注の状況をトラッキングします(キャンペーンインフルエンスの設定が必要です)。
分析と報告:Salesforceのレポートやダッシュボードで、シナリオごとの費用対効果を可視化します。
【Sells upの視点】ROI可視化はマーケティング部門の責務
BtoBマーケティング活動は、売上に貢献して初めて評価されます。投下したリソース(時間、コスト)に対する成果を定量的に報告することは、マーケティング部門の重要な責務です。Salesforceキャンペーンとの連携は、マーケティング活動の貢献度を明確にし、データに基づいた戦略的な意思決定を可能にします。シナリオ設計の段階から、この「効果測定の仕組み」を組み込んでおくことが、長期的な成功のポイントです。
シナリオ運用で陥りがちな3つの落とし穴と解決策
Engagement Studioは非常に高機能ですが、運用を続ける中で多くの企業が直面する共通の課題があります。ここでは、よくある3つの落とし穴と、それを乗り越えるための具体的な解決策を解説します。
落とし穴1:シナリオが複雑化・ブラックボックス化し管理不能になる
成果を出そうとするあまり、多数の分岐や例外処理を一つのシナリオに盛り込みすぎると、全体像が把握できなくなり、管理不能な状態に陥ります。改修が困難になるだけでなく、担当者の異動や退職に伴いブラックボックス化するリスクもあります。
解決策:シンプルさを保ち、「モジュール化」を意識する
この課題を解決するポイントは、シンプルさを保つことです。最初はシンプルなシナリオから開始し、必要に応じて段階的に拡張していくことが重要です。
さらに高度な運用を目指す場合は、「シナリオのモジュール化」という思想を取り入れましょう。これは、一つの巨大で複雑なシナリオを作るのではなく、目的別にシンプルで小さなシナリオを複数作成し、それらを連携させるアプローチです。
例:「資料請求フォロー」「セミナーフォロー」「長期ナーチャリング」といった目的ごとにシナリオを分割する。
連携方法:あるシナリオが終了したら「リストに追加」や「タグを付与」し、それをトリガーとして次のシナリオを開始させる。
これにより、各シナリオの目的が明確になり、効果検証や改修が容易になります。
落とし穴2:コンテンツが枯渇し、シナリオが途中で止まってしまう
シナリオを設計したものの、「途中で送るべき適切なメールや資料が足りない」という状況はよく発生します。コンテンツが不足すると、リードの育成が途中で止まってしまい、せっかくのシナリオが機能しなくなります。
解決策:コンテンツマップ作成と計画的な制作体制の整備
シナリオ設計とコンテンツ制作は表裏一体です。以下の対策が有効です。
コンテンツマップの作成:シナリオ設計段階で、ターゲットの検討段階ごとに必要なコンテンツを洗い出します。
既存コンテンツの棚卸し:既にあるコンテンツを整理し、不足している部分を明確にします。
優先順位付けと制作計画:不足しているコンテンツについて優先順位をつけ、計画的に制作する体制を整えます。
落とし穴3:効果測定指標が曖昧で、成果を説明できない
「どの指標をもって成果とするのか」が曖昧なまま運用を続けると、改善のための客観的な判断材料が得られず、PDCAサイクルが回りません。また、活動の成果を社内に説明できず、マーケティング活動の価値が正しく評価されません。
解決策:KPI設定とROI可視化の仕組み構築
シナリオごとに「KPI(例:MQL創出数、メールエンゲージメント率)」を明確に設定する(戦略設計フレームワークのStep.1)。
前述した「Salesforceキャンペーン連携」を活用し、商談・受注への貢献度を可視化する。
営業部門と定期的に連携し、引き渡したリードの質やその後の状況についてフィードバックをもらう体制を構築する。
【Sells upの視点】持続可能な運用体制の構築に向けて
シナリオは一度作成して終わりではありません。市場環境や顧客の反応は常に変化するため、定期的な効果測定と改善が不可欠です。持続可能な運用体制を構築するためには、「複雑化の防止」「コンテンツ供給体制の整備」「ROIの可視化」の3つが揃っている必要があります。運用に行き詰まった際は、個別のシナリオ設定を見直すだけでなく、運用体制全体を俯瞰し、どこにボトルネックがあるのかを特定することが重要です。
まとめ:戦略的なシナリオ設計でマーケティング活動を次のレベルへ
Account EngagementのEngagement Studioは、BtoBマーケティングにおけるリードナーチャリングの質を格段に向上させる機能です。リード一人ひとりの興味関心や行動に合わせた最適なアプローチを自動化することで、MQL創出の効率と質を飛躍的に向上させることができます。
しかし、その成果を最大化するためには、単にツールを操作するだけでなく、以下の要素を押さえた戦略的なアプローチが重要となります。
ツールを触る前の「戦略設計フレームワーク(Goal, Who, What, When, How)」の活用
営業部門が動きやすい状態を作る「出口設計」の追求
Salesforceキャンペーン連携による「ROIの可視化」
管理性を高める「シナリオのモジュール化」という思想
貴社の現状やリソースに合わせて、まずはシンプルなシナリオから始め、成果と課題を見極めながら段階的に高度化していくことが、安定的なMQL創出と営業成果への貢献を実現する着実な道筋となります。
マーケティングと営業が一体となり、データに基づく改善を積み重ねることで、Account Engagementを最大限に活用し、ビジネス成長の加速につなげていきましょう。
MAツールの導入・活用の相談はSells upへ。
MAツールの導入や、導入後の成果最大化に課題をお持ちでしたら、ぜひSells upにご相談ください。50社以上の導入・活用を支援してきた担当者が貴社の状況・目標に向き合い、最適なツールの導入プラン / 統計知識を用いた活用プラン描き、戦略策定から実装 / 実行 / 効果測定までをご支援いたします。
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