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優良顧客分析の完全ガイド|BtoB担当者が最初に設計すべき定義・RFM・デシル分析と施策連携の手順

「やっているのに成果が出ない」状態から抜け出すために

施策を続けているのに商談が増えない、リードの質が上がらない。 こうした課題の多くは、戦略と施策のつながりが設計されていないことが原因です。 Sells upは現状の分析と改善の優先順位整理から支援します。

目次

「優良顧客を特定したはずなのに、施策が何も変わらない」

BtoBマーケティング担当者から、弊社にもこうしたご相談が寄せられます。

分析手法を知ることと、分析結果を自社の定義に基づいて施策に落とし込むこととの間に、大きなギャップがあるからです。

本記事では、RFM分析・デシル分析など主要な優良顧客分析手法の手順を解説するとともに、BtoBならではの定義設計・MA(マーケティングオートメーション)連携・施策設計まで一気通貫でお伝えします。

この記事でわかること

  • BtoBに合った「優良顧客の定義」のつくり方
  • デシル分析・RFM分析の手順と使い分けの判断軸
  • セグメント別の施策設計と、MAを使った仕組み化の考え方
  • 継続的に機能させるPDCAとKPI設計

BtoBにおける「優良顧客」の定義設計から始める理由

分析手法を選ぶ前に、「自社にとっての優良顧客とは何か」を言語化することが先決です。定義のない分析は施策につながらず、コストと時間だけが積み上がっていきます。

BtoBの優良顧客分析が行き詰まる最大の理由は、「手法から入ってしまうこと」にあります。RFM分析やデシル分析は効果的な分析手法です。しかし「自社にとっての優良顧客」が言語化されていなければ、分析結果を見ても「で、どうすればいいのか」という問いに答えられません。定義設計・分析手法・施策連携の3つは、この順番で組み立てることが基本です。

BtoCとBtoBでRFMが変わる3つの理由

BtoBには、以下3つの固有の特性があります。BtoBならではのこの特性を踏まえた定義設計が、分析の実用性を左右します。

①購買頻度(F)が構造的に低い
年2〜3回しか発注しない製造業の顧客は、ECでの月1購入顧客と同じ「F(Frequency)」の尺度では評価できません。BtoBでは「年間の取引回数が自社の取引先平均より多い」という相対的な定義に変換する必要があります。

②契約単価(M)が高く1件の重みが異なる
BtoBでは1件あたりの取引金額が数百万〜数千万円規模になる案件もあります。そのため、MスコアはBtoCのように「購入額の絶対値」ではなく、「自社の取引先全体の中での相対的な位置づけ」で評価することが多くなります。

③意思決定者が複数いる
BtoBの購買では、担当者・部門責任者・経営層など複数人が関与します。このため「顧客企業単位」でのRFM設計が必要であり、「担当者個人」を分析単位にすると誤った結論に至ります。

BtoBで優良顧客を定義する4つの指標

BtoBで優良顧客を定義するには、RFMの3指標に加えて、LTV・契約継続率・アップセル実績・NPS(ネット・プロモーター・スコア)の4軸を組み合わせることが有効な手法です。いきなり4軸全部を揃えようとせず、まず取得できるデータから始めて段階的に拡張する進め方がお奨めです。

指標定義測定方法
LTV(顧客生涯価値)顧客が契約期間全体を通じて自社にもたらす累計収益年間取引額×平均継続年数
契約継続率一定期間内に契約更新した顧客の割合更新顧客数÷更新対象顧客数
アップセル実績上位プランへの移行・追加発注の有無と金額CRM・SFAの商談履歴から抽出
NPS自社サービスを他社に推薦する可能性の度合い定期サーベイ(0〜10点)

LTVの具体的な計算方法と業種別の活用法については、LTV計算の実践フレームワークで詳しく解説しています。

SaaSやサブスクリプション型ビジネスを中心に、「チャーンレート(解約率)」を優良顧客定義の逆指標として組み込む企業も見られます。解約リスクが高い顧客をあらかじめセグメント化しておくことで、事前のフォローが可能になります。

なぜ「分析だけして施策が変わらない」のか?

定義が曖昧なまま分析に入ると、全顧客に同じ施策を打ち続けるだけになってしまいます。その理由は、担当者によってセグメントの解釈が異なるからです。

具体的には、「RFMスコアで上位20%を優良顧客に分類しました」という報告は正しくても、そこに「だから何をするか」が紐づいていなければ施策は変わりません。弊社の支援先でも、半年間分析を続けながら施策がまったく変わらなかったクライアントのほとんどに、「優良顧客の定義書が存在しない」という共通点がありました。これは分析手法の問題ではなく、定義の問題です。

分析を施策につなげるには、以下の流れを設計することが出発点になります。

  1. 定義設計:自社にとっての優良顧客を4指標で言語化する
  2. 分析実施:定義に基づいてRFM・デシルなどの手法でスコアリングする
  3. セグメント設計:スコアに応じて顧客を分類し、各セグメントの「次の一手」を決める
  4. 施策実行:MAやインサイドセールスと連携して実行する
  5. PDCA:一定期間後に定義とスコアを見直す

優良顧客分析の主要手法と使い分け

デシル分析・RFM分析・CPM分析・ABC分析の4手法は、それぞれ「何を知るための分析か」が異なります。手法を選ぶ際の判断軸は、

  1. データ量
  2. 分析目的
  3. 運用リソース

の3点です。大局の把握にはデシル分析、状態の詳細把握にはRFM分析、という段階的な活用が使いやすい順序です。

デシル分析とは:購入金額で10分割する最初の一手

デシル分析(Decile Analysis)とは、全顧客を購入金額の累計で上位から10グループ(デシル1〜10)に均等分割し、各グループの売上構成比を把握する分析手法のことです。

実施ハードルが低く、Excelさえあれば1〜2時間程度で完成します。初めて顧客分析に取り組む企業や、データ整備がまだ不十分な企業から始めやすい手法です。

BtoBでデシル分析を使う際の注意点:「1件あたりの金額が突出して高い顧客」が存在するとデシル1に集中してしまい、実態の把握が難しくなります。この場合は、外れ値を別に管理したうえで分析を適用するか、取引回数で補正した分析への切り替えを検討してください。

Excelを使った実施手順の詳細は、デシル分析のExcel実施手順で解説しています。

RFM分析とは:3指標で顧客の「いま」を立体的に把握する

RFM分析とは、顧客の取引データをR(Recency:最終取引日)・F(Frequency:取引頻度)・M(Monetary:取引金額)の3指標でスコアリングし、顧客の状態を多角的に把握する分析手法のことです。

BtoBでの各指標の定義例は以下の通りです。業種によって「最近」の定義が大きく異なる点が、BtoCとの最大の違いです。

指標BtoCの一般的定義BtoB製造業の定義例BtoB SaaSの定義例
R(最終取引日)30日以内に購入6ヶ月以内に発注当月ログインあり
F(取引頻度)月3回以上購入年4回以上発注月次利用が継続
M(取引金額)累計1万円以上年間500万円以上年間契約額100万円以上

RFM分析のやり方 5ステップ

Step.1:定義設計
自社の業種・商材・取引サイクルに合わせて、R・F・Mそれぞれの閾値を設定します。このステップを曖昧にすると以降の分析がすべて崩れます。最初に時間をかける価値が最もあるのがここです。

Step.2:データ収集・整形
CRMやSFAから取引履歴データを抽出します。必要項目は「顧客ID・取引日・取引金額・取引回数」です。データのクレンジング(重複削除・欠損値の処理)はこの段階で完了させます。

Step.3:スコア付け
各指標を1〜5の5段階でスコアリングします。たとえばRスコアなら、「6ヶ月以内の発注→5点」「6〜12ヶ月→3点」「12ヶ月超→1点」のように設定します。

Step.4:セグメント分類
R・F・Mの合計スコアまたは組み合わせパターンで顧客を分類します。「優良顧客(RFMすべて高)」「安定顧客(M高・F中)」「休眠顧客(R低・F低)」のようなラベルを設計します。

Step.5:施策立案
各セグメントに対して「次の一手」を決めます。施策が決まらないセグメントがあれば、定義を見直すサインです。

躓きやすいポイント: Step.2のデータ整備に最も時間がかかります。SFAに入力漏れがある企業では、まずデータ品質の改善から着手することになります。

デシル分析とRFM分析の使い分け:どちらをいつ使うか

手法を選ぶ際の3つの判断軸は、①分析目的、②データの質、③運用リソースです。

比較軸デシル分析RFM分析
目的売上構成の大局把握顧客状態の詳細把握
必要データ取引金額のみ取引日・頻度・金額
実施ハードル低い(目安1〜2時間)中程度(目安半日〜1日)
施策設計精度粗い細かい
更新頻度の目安四半期〜年次月次〜四半期

推奨する活用順序は、まずデシル分析で「どのグループに売上が集中しているか」を把握し、次にRFM分析で「なぜそのグループが優良なのか・いつ離脱リスクがあるか」を掘り下げるという段階的なアプローチです。

顧客規模がまだ小さい段階では、デシル分析だけでも有効な判断材料が得られます。一方、MAやCRMにデータが蓄積されている企業ほど、RFM分析の活用余地が広がります。どの段階から始めるかは、現在のデータ整備状況に合わせて判断してください。

CPM分析・ABC分析:補完的に使う2手法

CPM分析(Customer Portfolio Management)とは、顧客の購買行動の変化を時系列で追跡し、「活性顧客→離脱顧客→復帰顧客」のような移動パターンを可視化する手法のことです。RFM分析が「今の状態」を見るのに対し、CPM分析は「状態の変化」を見ます。離脱の予兆を早期に検知し、掘り起こしシナリオを設計したい場合に向いています。

ABC分析とは、全顧客を売上貢献度でA(上位20%)・B(中位30%)・C(下位50%)に分類し、リソース配分の優先順位を決める手法のことです。施策投資対効果を最大化したい場面で活用します。

組み合わせの一例: RFM分析でセグメントを設計し、ABC分析でリソース配分を決め、CPM分析で離脱の予兆を監視するという3段構造は、BtoBにおける優良顧客分析の一つの完成イメージです。自社の運用リソースに合わせて、段階的に組み合わせを広げていく進め方が現実的です。

分析結果をSFAやMAに実装する具体的な手順については、顧客ランク分けのSFA/MA実装手順で詳しく解説しています。

BtoB向けRFM分析の実践手順:Excelでできる具体的なやり方

BtoBのRFM分析でよくある誤りは、BtoCの手順書をそのまま使ってしまうことです。「どのデータを使うか」「指標の閾値をどう設定するか」は業種によって大きく異なります。以下ではBtoBに特化したデータ設計の考え方を中心にお伝えします。

分析に必要なデータ項目と収集方法

BtoBのRFM分析に必要な最低限のデータ項目は以下の通りです。

必須項目(RFM分析の基本)

  • 顧客ID(企業単位で付与)
  • 最終発注日
  • 発注累計金額
  • 発注回数

BtoBで追加すべき項目

  • 担当者情報・部署(意思決定者の特定に必要)
  • 契約種別(スポット・定期・年間契約など)
  • 業種・企業規模(スコアの閾値設計に使用)

データ収集のポイント: CRMやSFAからExcelにエクスポートする際、「企業ID」と「担当者ID」が混在しているケースが少なくありません。BtoBでは企業単位で集計することが原則のため、データ整形の段階で統一が必要です。

SFAにデータが入力されていない場合は、請求データや注文管理システムからの抽出が代替手段になります。まず「どのシステムにどのデータがあるか」を棚卸しすることから始めます。

BtoBでのRFMスコア設計例(製造業・SaaS・サービス業)

以下はあくまで参考のモデルケースです。業種・商材・取引サイクルは企業によって異なりますので、自社の実データをもとに閾値は必ず調整してください。スコアの数値をそのまま使うと、自社の顧客構成に合わない分類になる可能性があります。

業種別の具体的な導入事例については、SaaS・製造業のRFM分析事例もあわせてご参照ください。

製造業の場合(モデルケース)

スコアR(最終発注日)F(年間発注回数)M(年間取引金額)
53ヶ月以内8回以上1,000万円以上
43〜6ヶ月5〜7回500〜999万円
36ヶ月〜1年3〜4回200〜499万円
21〜2年1〜2回100〜199万円
12年超0回(休眠)100万円未満

SaaSの場合(モデルケース)

スコアR(最終ログイン)F(月間アクティブ利用日数)M(年間契約額)
57日以内20日以上500万円以上
47〜14日15〜19日200〜499万円
314〜30日10〜14日100〜199万円
230〜90日5〜9日50〜99万円
190日超4日以下50万円未満

サービス業(コンサル・支援業)の場合(モデルケース)

スコアR(最終契約更新日)F(年間プロジェクト数)M(年間受注額)
53ヶ月以内3件以上3,000万円以上
43〜6ヶ月2件1,000〜2,999万円
36ヶ月〜1年1件500〜999万円
21〜2年スポット100〜499万円
12年超終了100万円未満

セグメント分類と顧客ラベルの設計

RFMスコアに基づいて、顧客を5つのセグメントに分類します。各セグメントの特徴と「次の一手」をセットで設計することが、施策設計の出発点になります。なお、以下のスコア範囲はあくまで設計の参考です。自社の顧客分布に合わせて境界値を調整してください。

セグメントRFMの特徴(参考)施策の方向性
優良顧客R高・F高・M高(合計スコア13〜15が目安)LTV最大化・アップセル・紹介促進
安定顧客R中・F中・M高(合計スコア10〜12が目安)利用頻度向上・優良顧客への引き上げ
成長顧客R高・F低・M中(合計スコア8〜11が目安)関係深化・クロスセル提案
休眠顧客R低・F中〜高・M中〜高(合計スコア6〜9が目安)再接触・掘り起こしシナリオ
離反顧客R低・F低・M低(合計スコア3〜5が目安)コスト効率を見極めたうえでアプローチ

分析結果を施策に落とし込む:セグメント別アクション設計

RFM分析のExcel手順を解説する記事は多くあります。しかし「分析結果を実際にどう施策に落とし込むか」を業種別・セグメント別で整理している記事はほとんどありません。ここが、弊社が支援でもよく問われる箇所でもあります。

セグメントが決まったら、数日以内に「各セグメントへの最初のアクション」を決めることをお勧めしています。経験上、設計からアクション開始まで間が空くほど、施策定着率は下がります。

優良顧客層:LTV最大化とロイヤルカスタマー育成

優良顧客への施策で最も優先したいのは、関係の「深化」です。新規接触よりも、既存の信頼をどう広げるかに集中します。弊社が支援したBtoB SaaS企業では、優良顧客セグメントへの専任フォロー体制を設けた結果、6ヶ月でアップセル率が改善しました。打ち手の種類よりも、担当者が「この顧客を担当している」という意識を持てる体制設計のほうが効いたケースです。

  • アップセル提案の設計:優良顧客の業務課題を定期的にヒアリングし、上位サービス・オプション追加の提案機会を設計します。Rスコアが落ちる前(最終取引から4〜5ヶ月が一つの目安)に提案タイミングを設定します。
  • カスタマーサクセスとの連携:優良顧客のLTV維持には、カスタマーサクセス(CS)チームとの連携が欠かせません。マーケティングが分析したセグメントデータをCSに共有し、アカウントプランを共同設計します。
  • VIP向けコンテンツ設計:優良顧客のみが参加できる勉強会・先行情報提供・個別相談会を設計することで、ロイヤルティの向上とNPS改善が期待できます。

優良顧客をロイヤルカスタマーとして育成するための戦略設計の詳細は、ロイヤルカスタマー育成の戦略設計で解説しています。

安定顧客層:優良顧客へ引き上げるナーチャリング設計

安定顧客の特徴は「取引金額は高いが頻度が伸びていない」または「頻度はあるが金額が伸びていない」という点です。どちらのパターンかによって、打ち手が変わります。

  • Mは高いがFが低い場合:取引頻度を上げる施策(定期発注の仕組み化・利用シーンの提案)を優先します。
  • Fは高いがMが低い場合:単価引き上げのための上位サービス提案・まとめ発注の促進を検討します。

ステップメールの設計では、「現在の活用状況→未活用機能の紹介→成功事例の提供→上位プランの案内」という流れが、弊社の支援現場でも再現性の高い構成です。セミナー・ウェビナーへの誘導を中間に挟むことで、商談化前の温度感を高めやすくなります。

休眠・離反顧客層:掘り起こしシナリオの設計

休眠顧客への掘り起こしシナリオは、最終取引から一定期間経過したタイミングをトリガーにMAで自動検知し、段階的にアプローチする設計が基本です。

シナリオ設計例(SaaS・支援業向け参考):

  • トリガー設定:Rスコアが前月比で2ポイント以上低下、または最終ログインから90日経過
  • Day0:担当者名義の個別メール(近況確認の文面)
  • Day14:新機能・活用事例の紹介コンテンツ送付
  • Day30:無料相談・活用レビュー面談のオファー
  • Day45:インサイドセールスへのトスアップ(MA側でアラートを送信)

離反顧客については、コストと期待効果を慎重に見極める必要があります。RFMスコアが低くても、かつてのM(取引金額)が高かった顧客は優先的に個別アプローチの対象にします。

施策設計でよくある3つの落とし穴

落とし穴①:セグメントを作ったが施策を変えていない
セグメント分類は完成したものの、実際の施策(メール内容・アプローチ頻度・担当者の対応)が全顧客で同じというケースは非常に多くあります。セグメント設計と施策設計は同時に進めることが前提です。

落とし穴②:全セグメントに同じ頻度でメールを送っている
優良顧客に月1回しかコンタクトしない一方、離反顧客に毎週メールを送るような設計は、LTVを下げるリスクがあります。セグメント別の接触頻度設計を明文化することをお勧めします。

落とし穴③:分析の更新頻度が低すぎる
四半期に1度しか更新しない場合、「3ヶ月前は優良顧客だったが今は休眠顧客」という変化を見逃します。SaaSであれば月次、製造業・サービス業であれば四半期が更新頻度の目安ですが、自社の取引サイクルに合わせて設定してください。

MAツール・CRMと連携して優良顧客分析を仕組み化する

Excelによる手動分析は「最初の一歩」として有効です。しかし顧客数が増えるほど管理コストが高まり、更新が追いつかなくなります。月次更新・リアルタイム検知を継続的に実現するには、MAおよびCRMとの連携が必要になります。手動分析を仕組み化することで、分析コストを削減しながら施策のタイムラグをなくせます。

CRM・SFAを使ったデータ整備の優先順位

RFM分析の精度はデータ品質に依存します。まず整えるべきデータ項目の優先順位は以下の通りです。

最優先(分析の基盤)

  1. 企業IDの統一(名寄せ・重複削除)
  2. 取引金額・取引日の入力ルール統一(SFA全担当者への徹底)
  3. 契約種別・業種・企業規模の属性情報整備

次のステップ(分析精度向上)

  1. 商談履歴・アップセル実績の記録
  2. 顧客満足度データ(NPS・サーベイ結果)の連携

よくあるデータ品質の課題: 担当者が変わるたびに顧客情報が分断される、取引金額が見積書と請求書で異なる値で入力されている、といった問題です。これらはデータ整備の投資対効果が高い箇所です。

MAを使った優良顧客スコアリングとの統合

RFM分析の結果をMAのスコアリングルールに組み込むことで、「分析→施策実行」のサイクルを自動化できます。

複合スコアリングの考え方:
RFMスコア(取引実績)と行動スコア(Webサイト閲覧・資料ダウンロード・ウェビナー参加)を掛け合わせることで、「現在の取引実績は高いが最近の関心が低い(離脱予兆)」「取引実績は低いが最近の行動が活発(成長の芽)」といった複合的な判断が可能になります。

具体的な設計例:

  • RFMスコア(合計)が13以上かつ直近30日以内にWebサイト訪問→「アップセル提案タイミング」アラート
  • RFMスコアが前月比で3ポイント低下かつ行動スコアも低下→「離脱予兆」セグメントに自動追加

RFMスコアとMAのリードスコアリングを掛け合わせる設計の詳細については、RFMと連携するリードスコアリング設計で解説しています。

Account Engagement・HubSpot・SATORIでの実装イメージ

各MAツールでの優良顧客セグメントの実装方法は以下の通りです。

Account Engagement(旧Pardot)の場合
SalesforceのカスタムオブジェクトにRFMスコアを格納し、Account Engagementのダイナミックリストでスコア条件を設定します。スコアが変動するたびにリストが自動更新され、Engagement Studioのシナリオがトリガーされる構成が基本です。

HubSpotの場合
カスタムプロパティにRFMスコアを入力し、アクティブリストの条件に使用します。ワークフローでスコア変動を検知してメールやタスクを自動発火させます。HubSpotはCRMとMAが一体化しているため、SFAデータとの連携がシームレスです。

SATORIの場合
SATORIは匿名顧客へのアプローチが強みのため、休眠顧客の再接触シナリオに向いています。既知顧客のRFMスコアはCSVインポートまたはAPI連携でリスト管理し、セグメント別シナリオに接続します。

セグメント別のMAシナリオを具体的に設計する方法については、セグメント別MAシナリオの設計手順で詳しく解説しています。

優良顧客分析を継続的に機能させるPDCAの設計

一度の分析で終わらせないためには、「更新頻度」と「見直しトリガー」をあらかじめ設計しておくことが前提になります。これを決めていない場合、担当者が変わるたびに分析がリセットされるという事態が起きがちです。

分析の更新頻度と見直しタイミングの設計

更新頻度は業種・取引サイクルによって異なります。以下を目安に、自社の基準を設定してください。

月次で見直すことが多い項目

  • 各セグメントの顧客数と構成比の変化
  • Rスコアが低下した顧客リスト(離脱予兆の検知)
  • 施策実施後のセグメント移動率

四半期で見直すことが多い項目

  • RFMスコアの閾値設計(ビジネス環境の変化への対応)
  • セグメント別の施策効果測定(開封率・商談化率・LTV変化)
  • 優良顧客の定義指標の見直し(新しい指標の追加検討)

年次で見直すことが多い項目

  • 優良顧客の定義そのものの妥当性検証
  • 競合環境・市場変化を踏まえた顧客ポートフォリオの評価
  • 来期の優良顧客比率目標の設定

施策効果の測定指標とKPI設計

優良顧客分析の成果を測るKPIとして、以下の指標を参考に設計してください。目標値は自社の顧客構成や事業フェーズによって異なりますので、まず現状の数値を計測することから始めることをお勧めします。

KPI定義目標設定の考え方
優良顧客比率全顧客に占める優良顧客セグメントの割合前年比での変化を追跡し、改善傾向を確認する
セグメント間移動率(上昇)安定→優良、成長→安定への移動数月次で追跡し、施策効果の指標にする
セグメント間移動率(下降)優良→安定、安定→休眠への移動数前月比での増加は施策見直しのサインとする
LTV推移優良顧客セグメントの平均LTV変化半期ごとに計測し、施策投資の妥当性を評価する
優良顧客の解約率優良顧客が離脱した割合全体の解約率と比較し、セグメント別の解約要因を分析する

まとめ

優良顧客分析は、「手法を知ること」がゴールではありません。「自社にとっての優良顧客を定義し、その定義に基づいて分析し、セグメント別の施策をMAや営業と連携して実行する」という一連の流れを設計することが本質です。

BtoCの手順をそのまま転用してもBtoBでは機能しない理由は、購買頻度・契約単価・意思決定構造がまったく異なるからです。本記事で解説したBtoBに特化した定義設計・スコア閾値の設計・複合スコアリングの考え方を、自社の状況に合わせて応用してください。

弊社Sells upでは、BtoBマーケティング支援・MA活用支援・インサイドセールス立ち上げ支援の中で、優良顧客分析の設計から施策設計・MA連携まで一貫してサポートしています。「まず自社の優良顧客を定義するところから始めたい」という段階でのご相談も歓迎しています。お気軽にご相談ください。

よくある質問

優良顧客分析における優良顧客とはどのような顧客ですか?

BtoBにおける優良顧客とは、LTV(顧客生涯価値)・契約継続率・アップセル実績・NPS(推奨度)の4軸で自社への貢献度が高いと判断される顧客企業を指します。単純に「購入金額が多い」だけでなく、継続性・拡張性・推奨意向を組み合わせて定義することで、施策設計に活用できる実用的な分類になります。RFMのMスコアだけで優良顧客を定義すると、成長余地が高い顧客や離脱予兆のある顧客を見落とすリスクがあります。

顧客満足の3原則とRFM分析はどう関係しますか?

顧客満足の3原則として広く参照されるのは、①期待への対応、②継続的な関係構築、③個別最適な対応です。RFM分析はこの③を実現するための土台として機能します。セグメント別に施策を変えることが「個別最適」の実践であり、全顧客に同じアプローチを続けることは満足度の維持に逆行します。分析結果をセグメント別施策に落とし込むことが、顧客満足の3原則を仕組みとして機能させることにつながります。

顧客の4分類とはどのような分け方ですか?

顧客の4分類は、RFMスコアや購買行動をもとに「優良顧客・安定顧客・休眠顧客・離反顧客」に分ける考え方が代表的です。本記事では成長顧客を加えた5分類を採用していますが、分類の数は自社の顧客構成や運用リソースに合わせて設計することをお勧めします。「セグメントごとに施策を変えること」が分類の目的のため、管理しきれる数に絞ることが運用定着の前提になります。

RFM分析とは何ですか?

RFM分析とは、顧客の取引データをR(Recency:最終取引日)・F(Frequency:取引頻度)・M(Monetary:取引金額)の3指標でスコアリングし、顧客の状態を多角的に把握する分析手法です。BtoBでは購買頻度が構造的に低いため、各指標の閾値をBtoCの基準そのままに設定すると全顧客が低評価になりがちです。自社の業種・取引サイクルに合わせた閾値設計が、BtoBでのRFM分析の出発点になります。

RFM分析とデシル分析はどちらから始めればいいですか?

データ整備が進んでいない段階や、顧客規模がまだ小さい場合は、取引金額のみで実施できるデシル分析から始めることをお勧めします。大局の売上構成を把握したうえで、取引日・頻度・金額の3指標が揃ったタイミングでRFM分析に移行する段階的なアプローチが、現場での定着率が高い順序です。両手法は排他的なものではなく、デシルで全体像を、RFMで詳細を掘り下げる組み合わせが実用的です。

「やっているのに成果が出ない」状態から抜け出すために

施策を続けているのに商談が増えない、リードの質が上がらない。 こうした課題の多くは、戦略と施策のつながりが設計されていないことが原因です。 Sells upは現状の分析と改善の優先順位整理から支援します。

株式会社Sells up 代表取締役
武田 大
株式会社AOKIにて接客業を、株式会社リクルートライフスタイル(現:株式会社リクルート)にて法人営業を経験した後、株式会社ライトアップでBtoBマーケティングを担当。その後、デジタルマーケティングエージェンシーにてBtoBマーケティングの戦略設計/施策実行支援、インサイドセールスをはじめとしたセールスやカスタマーサクセスとの連携を通じたマーケティング施策への転換といった支援を行い、2023年に株式会社Sells upを設立。KGI逆算によるKPI設計・リードスコアリングの統計的設計・カイ二乗検定や相関分析をはじめとした統計的手法に基づくMAデータ活用・営業連携SLAの構築を含むMA活用支援を、業界・規模を問わず80社以上に提供してきた実績を持つ。Salesforce Certified Marketing Cloud Account Engagement SpecialistおよびTableau Desktop SpecialistのSalesforce認定資格を保有。