施策を続けても成果が出ないとき、多くの場合は一つひとつの施策そのものではなく、施策を前後の流れと切り離して評価していることに原因があります。どんな経路で入ってきた人に、どんな内容を、どの手段で届け、商談や受注までどう進んだかを一続きで記録して振り返ると、直すべき点が伝える内容なのか、届ける手段なのかを分けて判断できます。
メールを配信した、広告を出した、電話をかけた、商談になった・ならなかった。結果を施策ごとに記録していても、それぞれが独立したままでは、次に何を変えればよいかが分かりません。分からないまま次の施策を打つと、記録だけが増え、成果は変わらない状態が続きます。
本記事では、100社以上のBtoBマーケティングを支援してきたSells upが、施策が「やりっぱなし」になる理由と、施策を一続きの流れ(線)として振り返る手順、伝える内容(訴求)と届ける手段(チャネル)の切り分け方、広告の成果を受注まで追う方法を解説します。報告の形を変える方法は活動量ではなく成果で説明する報告の手順で扱っています。
施策が「点」になっている状態とは?
施策が「点」になっている状態とは、一つひとつの施策を、実施したかどうかと直後の結果だけで評価し、前後の施策や相手の経緯とつなげずに次へ進んでいる状態のことです。活動の記録は積み上がりますが、記録どうしの関係が見えないため、何が成果に効いたのかを説明できません。
次のような状態が続いていれば、施策は点になっています。
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メールは配信数・開封率・クリック率、広告はクリック数とリード単価だけを見ており、その後に商談や受注になったかを施策ごとに追っていない
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リードがどの経路で入ってきたのか(展示会・資料ダウンロード・広告・紹介など)が、施策の評価に使われていない
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前月の施策の結果を見て、次の施策の内容を変えたという記録がない
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同じリストに、毎回同じ内容の配信を続けている
こうした状態は珍しくありません。ファストマーケティング株式会社が2026年5月に行った調査(BtoBの商品・サービスを提供する企業でマーケティング・営業に関わる会社員432名)では、「アクセス数や問い合わせは増えているのに、商談・受注の増加にはつながっていないと感じる」ことが「よくある」「ときどきある」と答えた人が合わせて約6割でした。定期的に把握している指標として「新規受注金額」を挙げた人は15.0%にとどまっています。
出典:ファストマーケティング株式会社「BtoBマーケティングに関する実態調査 2026」(PR TIMES、2026年7月)。回答者の認識を集めたもので、業界の平均を示すものではありません。
点のままだと、なぜ直すべきところが分からないのか?
結果に影響した要素を、あとから分けられないからです。商談につながらなかった理由には、伝えた内容が相手の関心と合っていなかった場合と、メールや電話という届け方がその相手に合っていなかった場合があります。この2つでは、次に取る対応がまったく違います。
例:資料ダウンロードで入ってきたリードと、展示会で名刺を交換したリードに、同じ製品紹介のメールを送り、商談がほとんど生まれなかったとします。施策単位で見ると、「このメールは効かなかった」という評価で終わります。しかし、資料ダウンロードのリードは関心のあるテーマがはっきりしているため、内容を合わせれば反応することがあります。一方で、展示会のリードはそもそもメールを読んでもらえる関係ができておらず、電話や個別の連絡のほうが合っている場合もあります。経路を分けずに合計で見ると、この違いが見えません。
原因が分からないと、次の施策も根拠なく選ぶことになります。内容と手段を同時に変えれば、どちらが効いたのかも分からないままです。点のまま施策を増やしても成果が変わりにくいのは、このためです。
施策を「線」にして振り返るには、何を記録すればよいか?
施策を「線」にするとは、一人ひとり(BtoBでは一社ごと)について、入ってきた経路から受注までを一続きで記録し、その単位で振り返ることです。記録する項目は、まず次の5つで足ります。
| 項目 | 記録する内容 | 例 |
|---|---|---|
| 入ってきた経路 | 最初の接点と、リードになったきっかけ | 展示会、資料ダウンロード、検索広告、セミナー、紹介 |
| そのときの関心 | ダウンロードした資料、見ていたページ、問い合わせの内容 | 料金ページ、事例、特定の機能の資料 |
| 届けた内容(訴求) | 何を伝えたか。テーマと主張 | 導入事例の紹介、費用の比較、課題の整理 |
| 届けた手段(チャネル) | どの手段で届けたか | メール、電話、広告、セミナー、営業の訪問 |
| その後の結果 | 反応、商談化、受注・失注と、その理由 | 返信あり→商談→失注(予算の時期が合わない) |
ポイントは、結果を施策の直後だけで終わらせず、商談と受注・失注まで同じ記録の中でつなげることです。受注・失注の理由は営業が持っている情報なので、営業管理の仕組み(SFA・CRM)にリードの経路と施策の履歴が残るようにしておきます。どの項目を営業と共有するかはリード管理の仕組みづくりで、マーケティングと営業で数字の定義をそろえる方法はマーケティングと営業の連携で扱っています。
あわせて、施策を始める前に「何と何を比べるか」と「どの数字なら続けるか」を決めておきます。リード獲得が目的ならリード数と商談化の割合、広告なら受注1件あたりの広告費と受注金額のように、目的ごとに見る数字を先に決めます。施策の後で数字を選ぶと、良く見える数字だけを拾いやすくなるためです。
振り返りは、この記録を経路ごとに並べて、毎月同じ形で見るところから始められます。
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経路ごとに、リード数・商談数・受注数を並べる(リード数だけで経路を評価しない)
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同じ経路の中で、届けた内容と手段ごとに商談化の割合を比べる
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受注した案件と失注した案件で、それまでに受け取った内容と手段がどう違ったかを見る
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次の月に変えることを1つだけ決め、記録に残す
記録は「分かったこと」「次に変えること」「変えないこと」「次回見る数字」に分けて残すと、翌月の振り返りで前月の判断と結果を並べて見られます。
受注と失注で行動を比べて基準を決める考え方は、Sells upのナーチャリングの設計方法で詳しく説明しています。
訴求が悪いのか、チャネルが悪いのかは、どう切り分けるか?
入ってきた経路をそろえたうえで、内容か手段のどちらか一方だけを変えて比べます。経路が違う相手どうしを比べると、内容や手段の違いではなく、もともとの関心の違いが結果に出てしまうためです。
Step.1:比べる相手を、同じ経路・同じ関心のリードにそろえます(例:同じ資料をダウンロードした人)。
Step.2:手段は同じまま、内容だけを変えて送ります(例:メールで、製品の紹介と、同じ立場の企業の事例を送り分ける)。
Step.3:内容は同じまま、手段だけを変えて届けます(例:同じ事例を、メールで送る相手と、電話で伝える相手に分ける)。
Step.4:反応だけでなく、商談化や受注までを同じ期間で追い、下の表で読み取ります。
| 結果の出方 | 考えられる原因 | 次に変えること |
|---|---|---|
| 内容を変えると反応や商談が増えた | 伝える内容が相手の関心と合っていなかった | 反応した内容をほかの経路でも試す |
| 内容を変えても、どれも反応が少ない | 手段が合っていない、または相手の検討がまだ早い | 同じ内容を別の手段で届ける |
| 手段を変えると商談が増えた | その経路の相手には、その手段が合っている | 経路ごとに手段を分ける |
| 反応はあるが商談にならない | 商談に進む理由や次の一歩が伝わっていない、または営業へ渡す条件が合っていない | 営業へ渡す条件と、商談に誘う内容を見直す |
| 商談にはなるが受注しない | 集めている相手が受注しにくい層に寄っている | 受注した案件の経路と関心に寄せて、集める相手を見直す |
切り分けるときは、次の点に気をつけます。
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件数が少ないうちは、差が偶然の範囲に収まります。1回の結果で判断せず、同じ比べ方を数か月続けて傾向を見ます
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メールの開封率は、AppleのMail Privacy Protectionのように、受信側の機能によって実際の閲覧と一致しないことがあります。内容の良し悪しは、開封率よりもクリックや返信、商談化で見ます
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行動の記録だけで相手の意図を決めつけず、商談や電話で分かったことを記録に戻します
メールの配信が「送ること」自体で止まっている場合の原因はナーチャリングがメール配信だけになる理由で、ナーチャリングの成果の測り方はナーチャリングの指標の選び方で扱っています。
広告の成果を受注まで追うには、どうすればよいか?
広告から入ったリードに、媒体と広告(広告文やバナー)の情報を付けたまま営業管理の仕組みへ渡し、商談と受注まで同じ記録で追います。リード数やリード単価だけで広告を見ていると、リードは安く集まるものの、受注につながりにくい広告に予算が寄りやすくなります。
進め方は次の3段階です。
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経路の情報を残す:広告のリンクに媒体と広告を区別するパラメータを付け、フォーム送信時に一緒に保存して、SFA・CRMのリードに引き継ぎます。最低限残すのは、媒体、キャンペーン名、広告名、検索広告であればキーワード、ランディングページ、送信日時です。広告の管理画面・MA・SFA・CRMで名前の付け方がずれると集計できないため、命名のルールを先にそろえます
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媒体・広告ごとに受注まで並べる:媒体と広告ごとに、リード数・商談数・受注数・受注金額を並べ、受注1件あたりの広告費で比べます
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受注したリードのニーズから訴求を見直す:受注した案件の問い合わせ内容や商談の記録から、相手が何に困って問い合わせてきたかを抜き出し、広告文やランディングページの内容に反映します
Google広告やMeta広告には、CRMにある商談・受注データを広告側へ戻し、計測や配信の調整に使う仕組みもあります(Google広告のオフラインコンバージョンのインポート、Metaのコンバージョン APIなど)。ただし、戻せる期間には媒体ごとの決まりがあり、検討期間が長い商材では受注が期間に間に合わないこともあります。仕様は変わることがあるため、各社の公式ヘルプで最新の内容を確かめたうえで、受注までの評価は自社のSFA・CRMの記録を基本にします。
BtoBでは一つの受注に複数の担当者と接点が関わるため、受注を一つの広告だけに結びつけることはできません。最初の接点と商談の直前の接点を分けて見る、受注件数が少ないうちは媒体単位や期間単位でまとめて見るなど、比べ方を決めておきます。フォームに「当社を知ったきっかけ」の項目を設けると、記録に残らない紹介や口コミも拾えます。
株式会社CLUE様では、過去の配信データや反応をもとに、どの媒体・どの広告枠に、どのような広告を出すかを決め、データの分析結果を広告の改善につなげてきました。その中で、建築業界では検索での情報収集が活発ではなく、Meta広告やディスプレイ広告のように相手に届けにいく広告のほうが獲得効率が良いと分かっています。ランディングページも、インサイドセールスや営業が顧客との会話で得た課題をもとに、機能の説明中心から、課題の解決に焦点を当てた内容へ変えました。その結果、安定してリードを獲得できるようになりました。手段の判断と内容の見直しを、それぞれ顧客の反応と営業の情報から行った例です。顧客がネットで検索しない業界の進め方は検索されない業界のリード獲得で扱っています。

弊社がBtoB企業480名を対象に実施したMA活用実態調査では、MAが商談・売上に貢献している企業(貢献群・42名)のうち、ROIを定量的に測定している割合は54.8%でした。貢献していない企業(非貢献群・92名)では17.4%でした。回答者の認識を集計したもので、成果と測定の関連を表しています。測定すれば成果が上がる、という因果関係を示すものではありません。
出典:弊社「MA活用実態調査(第0回)」。調査主体:株式会社Sells up/調査ツール:Surveroid(2026年9月、n=480)。
なぜ施策は点のままになりやすいのか?
一人ひとりの経路と結果をつなげて記録し続けるには、件数が増えるほど手間がかかります。対象が数十件なら手作業でも追えますが、数百、数千になると、施策ごとの合計だけを記録するほうが楽になり、施策は点に戻ります。忙しい時期ほど、この傾向は強くなります。
点に戻りやすい理由は、ほかにもあります。
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広告・メール・展示会・営業で担当者や使うツールが分かれ、記録が別々の場所にある
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受注・失注の情報が営業側にだけあり、マーケティングの記録とつながっていない
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ハウスリストの大半が反応の止まった状態で、リードを状態ごとに分けられず、一律の配信になっている
点に戻さないためには、記録する項目を上の表の5つに絞り、毎月同じ形で振り返ることを決めておきます。項目を増やしすぎると記録が続かなくなります。人の手で追いきれない件数になったら、記録と並べ替えは仕組みに任せ、何を変えるかを決めることに人の時間を使います。
施策を線で振り返ることを急がなくてよいのは、どんな場合か?
次のような場合は、記録の仕組みを作り込むより先に、別のことを進めたほうが成果に近づきます。
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リードが少なく、一件ずつ顔が見えている:担当者が全件の経緯を把握できているなら、まずは週に一度、その経緯を話し合う場をつくるだけで足ります
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受注の件数が少なすぎて比べられない:受注で比べると偶然の差が大きくなるため、商談化までを主に見て、受注は四半期や半期でまとめて見ます
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施策を始めたばかりで、続けて実施していない:比べる材料がないため、まず同じ施策を一定期間続け、記録の5項目だけをそろえておきます
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リードは多いのに営業が対応しきれていない:振り返りより先に、どのリードから営業へ渡すかの条件を決めます
「やっているのに成果が出ない」状態から抜け出すために
施策を続けているのに商談が増えない、リードの質が上がらない。こうした課題の多くは、戦略と施策のつながりが設計されていないことが原因です。Sells upは現状の分析と改善の優先順位整理から支援します。
相談してみる →まとめ
成果が出ない原因は、個々の施策の出来よりも、施策どうしがつながっていないことにある場合が多くあります。実施したかどうかと直後の結果だけで見ていると、伝える内容と届ける手段のどちらを直すべきかを切り分けられず、根拠のないまま次の施策を打つことになります。
施策を線にするには、入ってきた経路、そのときの関心、届けた内容、届けた手段、受注・失注までの結果の5つを一続きで記録します。そのうえで、経路をそろえ、内容か手段の一方だけを変えて比べます。広告は媒体と広告ごとに受注まで追い、受注した相手の困りごとを広告やランディングページの内容に戻します。
件数が増えるほど、施策は点に戻りやすくなります。記録の項目を絞り、毎月同じ形で振り返り、次に変えることを1つ決めるところから始めます。BtoBマーケティングの流れはBtoBマーケティングのプロセスで、KPIの組み立て方はKGIから逆算するKPIの設計で扱っています。
よくある質問
施策の振り返りは、どのくらいの頻度で行えばよいですか?
反応や商談化の数字は毎月、受注・失注は検討期間に合わせて四半期ごとにまとめて見るのが目安です。毎月の振り返りでは、次の月に変えることを1つ決めて記録に残します。変えたことと結果を対にしておくと、数か月後に何が効いたのかを説明できます。
リードの経路が記録されていない場合、どこから始めればよいですか?
これから入ってくるリードから記録を始めます。フォームに経路の情報を残す仕組みと、「当社を知ったきっかけ」の項目を用意し、SFA・CRMのリードに引き継がれるようにします。過去のリードは、分かる範囲で主な経路だけを付ければ十分です。
メールの内容と送るタイミングは、どちらを先に見直せばよいですか?
同じ経路の相手に対して、まず内容を変えて比べます。内容を変えても反応が変わらない場合に、送る時期や手段を見直します。内容と時期を同時に変えると、どちらが効いたのか分からなくなります。
広告のリード単価が上がっても、受注が増えていれば問題ありませんか?
受注1件あたりの広告費と受注金額が見合っていれば、リード単価が上がっていても問題とは限りません。リード単価が安い広告ほど受注しにくい相手を集めている場合もあります。広告の評価は、リード単価ではなく受注までの数字で行います。
