ナレッジ 2026.09.19

インテントデータのツールと使い分け|外部データを買う前に決めること

この記事を書いた人 武田 大 株式会社Sells up 代表取締役

「今このテーマを調べている企業がわかる」というサービスの案内を受け取り、導入するかどうかを検討している。あるいは、営業から「他社が使っているインテントセールスの仕組みを入れられないか」と相談された。そうした場面で最初に決めるべきなのは、どのサービスを選ぶかではありません。

決めるのは「自社のデータで読める範囲をどこまで使い切ったか」と「外部のデータを足したときに何が変わるか」です。ここが決まっていないまま契約すると、シグナルのリストだけが増えて対応が追いつかない状態になります。

この記事では、BtoBマーケティングを80社以上支援してきたSells upが、インテントデータを扱うツールの3つの類型と、外部データを買う前に決める4つのこと、自社データで足りる段階と外部データが必要になる段階の分かれ目を解説します。特定の製品を比較して推奨する記事ではなく、判断の軸を整理します。

インテントデータそのものの定義や、自社のMAデータからシグナルを読み取る手順はインテントデータの定義と3つの種類で解説しています。

インテントデータを扱うツールの3つの類型

インテントデータに関わるサービスは数多くありますが、データの出どころで見ると3つに分かれます。どれを検討するかによって、費用も、わかることの粒度も変わります。

類型 データの出どころ わかる粒度 費用の考え方
自社のMA・CRM 自社サイトの行動履歴・フォーム・メールの反応 フォームを通過したリードは個人単位 既存のツールの範囲内で追加の費用がかからない
外部のインテントデータ提供サービス 提携メディアの閲覧行動、レビューサイトの比較行動 企業単位。担当者個人までは特定しない 別途の契約が必要で、年単位の契約が前提になることが多い
複数のデータを統合するプラットフォーム 自社データと外部データを取り込み、独自のモデルで推定 企業単位のスコアと購買段階の推定 上位の価格帯。運用する人員も前提になる

自社のMA・CRM(ファーストパーティ)

MAツールが取得している自社サイトの行動履歴、フォームの入力、メールの開封やクリックがこれに当たります。自社サイトに来た相手しか見えないという制約はありますが、自社の商材に対する関心を直接反映しているため、シグナルとしての解釈がしやすいのが特徴です。

MAツールを導入していれば、この種類のデータはすでに蓄積されています。新しく契約するものではなく、いま持っているデータをどこまで読めているかという話になります。

外部のインテントデータ提供サービス(セカンドパーティ・サードパーティ)

自社サイトの外での行動を集めて提供するサービスです。出どころによってさらに2つに分かれます。

1つは、多数のBtoBメディアと提携してコンテンツの閲覧行動を集め、トピックごとのスコアとして提供するものです。Bomboraのようなサービスがこの形で、自社と接点のない企業も対象に入ります。

もう1つは、レビューサイトや比較メディアが、自社のサイト上で起きた閲覧・比較の行動を提供するものです。G2やTrustRadiusがこれに当たり、提供元にとっては自社で取得したデータのため、受け取る側から見るとセカンドパーティに分類されます。

国内でも、提携メディアや広告配信の行動を企業単位に紐づけて提供するサービスがあります。いずれも自社と接点のない企業を含めて「いま何を調べているか」を推定する点は共通しています。

複数のデータを統合するプラットフォーム

自社のデータと、レビューサイト由来のデータ、提携メディア由来のデータをまとめて取り込み、独自のモデルで購買段階まで推定するサービスです。6senseやDemandbaseがこの区分に入ります。1つのツールで検知から広告配信、営業への通知までをつなげられる一方、扱うデータが増えるぶん設定と運用に人員が要ります。自社のデータが整理されていない状態では、統合する材料が揃いません。

インテントセールスという呼び方との関係

近年は、これらのデータを使って「今検討している企業」から順にアプローチする進め方をインテントセールスと呼ぶことがあります。特定のツールの名前ではなく、営業の進め方を指す言葉です。

やっていることは「関心が高まっていそうな相手を先に確認する」ことで、外部データを使わず自社のMAデータから同じ判断をしている企業もあります。ツールの名前ではなく、どのデータで何を判断するのかで考えたほうが検討が進みます。

外部インテントデータを買う前に決める4つのこと

外部データの検討でつまずくのは、サービスの機能比較から入ってしまう場合です。先に決めておくことを4つに整理します。

Step.1:自社のMAデータで読める範囲を把握する

自社サイトの行動データから、どのリードがいま動いているかをすでに読めているかを確認します。料金ページの閲覧、長く動きのなかったリードの再訪、同じページの複数回の閲覧といった条件で抽出できているなら、その運用が回っているかどうかが判断の土台になります。

確認する項目は3つです。

1つ目は、いま抽出している条件があるか。2つ目は、抽出した結果に誰かが対応しているか。3つ目は、対応した結果が記録されているか。3つとも空白なら、外部データを足しても同じ状態が増えるだけです。

自社のMAでどこまで運用できているかはMA運用の進め方の観点で確認できます。

Step.2:ターゲット企業のリストを定める

外部データは「どの企業を優先して確認するか」を決めるために使うものです。そもそも対象にしたい企業の範囲が決まっていないと、返ってきたシグナルのうちどれが自社に関係するかを判断できません。

業種、従業員規模、地域、利用しているツールといった条件で対象を書き出し、おおよその社数を数えます。数百社程度で営業が1社ずつの状況を把握できているなら、外部データで優先順位をつける必要性は小さくなります。

対象企業への接点をどう作るかはリード獲得施策の選び方で整理しています。

Step.3:シグナルを受けた後の担当と期限を決める

外部データが返すのは「この企業がこのトピックを調べている」という情報です。誰がどの順で確認し、いつまでに何をするかを決めていないと、通知だけが積み上がります。

決めるのは、通知を受け取る担当、確認までの期限、対象外だった場合に理由を記録する場所の3点です。外部データは企業単位のため、担当者を特定するところから始まります。その手間を誰が負担するのかも合わせて決めます。

引き渡しのルールづくりは営業への引き渡しルールの設計で解説しています。

Step.4:費用対効果を測る式を先に決める

外部データは年単位の契約が前提になることが多く、途中でやめにくい費用です。契約する前に、何をもって効果があったと判断するかを決めておきます。

「外部データをきっかけに接触した企業数」「そのうち商談になった件数」「その商談の受注率と単価」を追える形にして、年間の費用と比べます。自社データ経由の商談と分けて記録しておかないと、契約更新の判断が印象だけになります。

自社データで足りる段階と、外部データが必要になる段階

どちらが優れているかではなく、段階によって使い分けるものです。外部データは「自社サイトに来る前の企業」を対象にできる点が自社データとの違いで、その必要性は自社の状況によって変わります。

自社の状況 向いている進め方
保有リードのフォローが追いついていない 自社のMAデータで優先順位をつけ、対応できる件数まで絞る
自社サイトへの訪問が少なく、接点そのものが不足している 先にリード獲得の施策を増やす。外部データがあっても接点は増えない
対象企業が数百社以内で、営業が1社ずつ把握している 直接の接触を増やす。優先順位づけの必要性が小さい
対象企業が数千社以上あり、どこから当たるかを決めかねている 外部データで優先順位をつける価値が出てくる
自社サイトに来る前の段階で接触したい 外部データを検討する。ただし営業が動ける体制が前提になる

組み合わせるときの使い方

外部データを入れる場合も、単独で判定に使うより自社データと掛け合わせるほうが扱いやすくなります。外部データで「このトピックを調べている」と出た企業のうち、自社サイトにも訪問があるリードを先に確認する、という順序です。

この形にすると、外部データは対象を広げる役割、自社データは確度を確かめる役割に分かれます。外部データだけで営業へ引き渡すと、次に説明する精度の限界が対応の負担になります。

外部インテントデータでわかること・わからないこと

企業単位までで、担当者は特定されない

外部データの多くは、アクセス元のIPアドレスから企業を推定し、その企業がどのトピックのコンテンツを読んでいるかを集計しています。そのため出てくるのは企業名であって、社内の誰が読んでいるかは含まれません。

同じ企業の中でも、購買を検討している部署の閲覧なのか、既存顧客としてのサポート情報の確認なのか、競合調査のための閲覧なのかは区別されません。担当者の特定と、その人が購買に関わるかどうかの確認は、受け取った側の作業として残ります。

IPアドレスから企業を推定する精度には幅がある

在宅勤務やモバイル回線、VPN経由のアクセスが増えたことで、IPアドレスと企業の対応づけは以前より難しくなっています。提供元によって企業を特定できる割合には差があり、公開されている検証では3割から6割程度という数字も示されています。従業員規模の大きい企業ほど対応づけやすく、小規模な企業では下がる傾向があります。

自社のターゲットが在宅勤務の比率が高い業種や小規模な企業を中心とする場合は、この前提を確認してから判断します。トライアルで自社のターゲットリストがどれだけ該当するかを確かめられるなら、契約前に試す価値があります。

シグナルが出ていることと、購買意欲があることは同じではない

これは自社データでも外部データでも変わりませんが、外部データは企業単位でノイズが混ざるぶん、より強く意識する必要があります。トピックの閲覧が増えているという事実は、その企業の中で誰かが情報を集めていることを表すだけで、購買の意思決定が進んでいることを保証しません。

「スコアが高い=商談になる確度が高い」と扱って営業へ渡すと、外れが続いて仕組み自体が使われなくなります。営業が確認する順番を決めるための材料として位置づけ、実際の状況は対話で確かめる前提にします。

弊社では、受注したリードとそうでないリードの行動を比較し、ロジスティック回帰を用いて配点を検討することがあります。これはSells upの支援で使用している設計例であり、一般的な基準ではありません。配点の決め方はリードスコアリングの設計6ステップで解説しています。

外部インテントデータの導入を急がなくてよい場合

次のいずれかに当てはまる場合は、外部データの契約より先に取り組むことがあります。

1つ目は、自社のMAデータで優先順位をつける運用がまだ回っていない場合です。読み取る条件も、対応する担当も決まっていない状態で対象を広げると、未対応のリードが積み上がります。

2つ目は、シグナルを受けてから動けるインサイドセールスの体制がない場合です。外部データは企業単位で返ってくるため、担当者を調べて接触するところまでを誰かが担います。その時間を確保できないなら、検知の量を増やす意味は小さくなります。

3つ目は、対象企業が数百社以内で、営業がすでに各社の状況を把握している場合です。どこから当たるかを決める材料としての価値が出にくくなります。

4つ目は、効果を測る仕組みがない場合です。外部データ経由の接触と商談を分けて記録できないと、年単位の費用を続けるかどうかを判断できません。

これらに当てはまらず、自社データを使った運用が回ったうえで「接点のない企業まで対象を広げたい」という段階になったときが、外部データを検討する時期です。

国内の費用相場と利用状況を示す公開データは確認できない

検討にあたって参照できる国内データは限られています。日本国内のBtoB企業を対象に、インテントデータ提供サービスの料金相場や導入率、導入による効果を横並びで示した公開調査は確認できませんでした。

主要なサービスは国内外を問わず公式の料金表を公開しておらず、見積もりで示されるのが基本です。第三者の価格分析サイトが契約事例を集計した情報では、海外の主要サービスで年額2万5,000ドル前後から、上位のプランでは10万ドルを超える例もあるとされています。国内のサービスでも、月額で数十万円台と初期費用がかかり、最低1年の契約という情報が出ています。いずれも公式に公表された定価ではないため、自社の条件で見積もりを取って判断します。

自社のMAデータだけでインテントに即応した事例

外部データを入れなくても、自社サイトの行動データだけで「今動いている相手」を捉えて営業へつなぐことはできます。

弊社が5年間支援している株式会社CLUE様では、マーケティング経験者がいない状態から立ち上げを進め、その取り組みの一つとして、3日連続でサービスページを訪問しているユーザーを検知してインサイドセールスへ自動で共有する仕組みを構築しています。セミナー後のアンケートから関心のあるテーマを分析し、フォローアップメールを出し分ける運用も合わせて行っています。

ここで使っているのは購入したデータではなく、自社サイトの行動データです。条件も「3日連続の訪問」という単純なもので、外部データを検討する前にできることが残っている例といえます。


スタートアップのマーケ立ち上げ。商談・受注を創出するリードが安定獲得できる仕組みを構築

顧客データで目標設定し、運用型広告を媒体選定から刷新。営業インサイトを反映したLP改修とセミナー・オウンドメディア改善により、商談・受注を創出するリードの安定獲得を実現。

sellsup.co.jp

打ち合わせスペースの木製テーブルを挟んで、2人が向かい合って笑顔で話している写真

自社のMAツールをこれから選ぶ段階であればBtoB向けMAツールの選び方もあわせてご覧ください。

「やっているのに成果が出ない」状態から抜け出すために

施策を続けているのに商談が増えない、リードの質が上がらない。こうした課題の多くは、戦略と施策のつながりが設計されていないことが原因です。Sells upは現状の分析と改善の優先順位整理から支援します。

相談してみる →

まとめ

インテントデータを扱うツールは、自社のMA・CRM、外部のインテントデータ提供サービス、両者を統合するプラットフォームの3つに分かれます。費用もわかる粒度も異なるため、どれを検討しているのかを先に切り分けます。

外部データを買う前に決めるのは4つです。自社のMAデータで読める範囲を把握する、ターゲット企業のリストを定める、シグナルを受けた後の担当と期限を決める、費用対効果を測る式を先に決める。この4つが空白のまま契約すると、企業名のリストが増えるだけになります。

外部データでわかるのは企業単位までで、担当者の特定は受け取った側の作業として残ります。IPアドレスから企業を推定する精度にも幅があり、シグナルが出ていることと購買意欲があることは同じではありません。自社データと掛け合わせ、営業が確認する順番を決める材料として使います。

よくある質問

インテントセールスとインテントデータは何が違いますか?

インテントデータは、行動履歴から関心の高まりを推定するためのデータそのものを指します。インテントセールスは、そのデータを使って今検討している企業から順にアプローチする営業の進め方を指す呼び方です。特定のツールの名前ではないため、外部データを使わず自社のMAデータで同じ進め方をしている企業もあります。

外部のインテントデータはどのくらいの費用がかかりますか?

主要なサービスは公式の料金表を公開しておらず、見積もりで示されるのが基本です。第三者の価格分析サイトが契約事例を集計した情報では、海外の主要サービスで年額2万5,000ドル前後から、上位のプランでは10万ドルを超える例もあるとされています。国内のサービスでは月額数十万円台と初期費用、最低1年の契約という情報が出ています。なお、日本国内で料金相場や導入率を横並びで示した公開調査は確認できませんでした。

外部のインテントデータを選ぶときは何を見ればよいですか?

確認するのは4点です。1つ目は、自社の対象領域のトピックをどこまでカバーしているか。2つ目は、自社のターゲットリストのうちどれだけの企業が該当するか。3つ目は、自社のMAやCRMへどの方法で取り込めるか。4つ目は、契約期間と解約の条件です。トライアルや対象トピックのサンプルを依頼できるなら、2つ目を契約前に確かめられます。

MAツールがあれば外部のインテントデータは不要ですか?

見える範囲が違うため、どちらかで置き換えられるものではありません。MAツールで見えるのは自社サイトに来た相手の行動、外部データで見えるのは自社と接点のない企業を含む外部での行動です。ただし順序としては、自社のMAデータで優先順位をつける運用が回ってから外部データを検討するほうが、費用の判断がしやすくなります。

インテントデータの取得に法律上の注意点はありますか?

CookieやIPアドレスの扱い、第三者から提供を受ける際の確認義務など、個人情報保護法上の論点があります。どの扱いに当たるかは取得方法や運用によって異なるため、社内の法務や専門家に確認したうえで判断してください。論点の整理はインテントデータの記事のよくある質問で解説しています。

外部データを導入した効果は、どう評価すればよいですか?

外部データをきっかけに接触した企業数、そのうち商談になった件数、その商談の受注率と単価を記録し、年間の費用と比べます。自社データ経由の商談と分けて記録できるようにしておくと、契約更新の判断材料になります。記録の仕組みを契約前に用意しておくのが要点です。

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株式会社Sells up 代表取締役
武田 大
株式会社AOKIにて接客業、株式会社リクルートライフスタイル(現:株式会社リクルート)にて法人営業を経験後、株式会社ライトアップでBtoBマーケティングを担当。デジタルマーケティングエージェンシーを経て2023年に株式会社Sells upを設立。戦略設計・KPI設計を起点に、リードジェネレーション、ナーチャリング、MA/SFA活用、営業連携までBtoBマーケティングを一気通貫で支援。KGI逆算のKPI設計やリードスコアリングの統計的設計、営業連携SLAの構築を強みとし、業界・規模を問わず80社以上に提供。Account Engagement SpecialistおよびTableau Desktop SpecialistのSalesforce認定資格を保有。
保有資格Salesforce Certified Marketing Cloud Account Engagement Specialist/Tableau Desktop Specialist
専門領域BtoBマーケティング/リードジェネレーション/リードナーチャリング/マーケティングオートメーション/HubSpot導入活用支援/Account Engagement導入活用支援/Marketo活用支援/インサイドセールス/統計解析によるスコアリング設計/商談化率向上/マーケティングROI改善