ナレッジ 2026.09.05

MAツールの初期設定5つ|導入直後に整える基盤と設定の順番

この記事を書いた人 武田 大 株式会社Sells up 代表取締役

MAツールを契約したその日から、シナリオを組んでメールを送り始めたくなります。ただ、基盤の設定が整わないままシナリオを動かすと、データが正確に取れない、スコアが意味をなさない、そもそもメールが届かないという問題が後から出てきます。

この記事では、MAツールを導入した直後に整えるべき5つの初期設定を、設定する順番とあわせて解説します。ツールを問わず共通して必要になる項目を扱うため、HubSpot・Account Engagement・Marketoのいずれを導入した場合でも使えます。

初期設定を後回しにすると起きること

最初の1〜2週間は「動かす前の準備期間」と割り切るほうが、その後の運用が安定します。基盤が整っていない状態でシナリオを動かすと、次の3つが起こります。

1つ目は、メールが届かないことです。送信ドメインの認証を設定していないと、迷惑メールに振り分けられるか、受信側で拒否されます。

2つ目は、データを後から分類できないことです。タグの設計を決めずにリストを取り込むと、獲得経路やフェーズで絞り込めないリードが積み上がります。

3つ目は、スコアが判断材料にならないことです。配点を決めないまま運用すると、営業に渡す基準を数値で示せません。

弊社がMA導入を支援したSmartHR様は、Account Engagementを導入済みで社内に運用経験を持つマーケターがいない状態からのスタートでしたが、2023年7月から初期設定に着手し、約1ヶ月で最初のメルマガ配信まで到達しています。経験の有無より、設定の順番を決めて着手できるかどうかが分かれ目になります。

この事例の詳細はSmartHR様の支援事例で紹介しています。


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なお、そもそも導入する時期が適切かを判断したい場合はMA導入のタイミングの判断軸を、導入の全体像を確認したい場合はMAツール導入の8ステップをご覧ください。

設定①:送信ドメインの認証(SPF・DKIM・DMARC)

最初に完了させるのが送信ドメインの認証です。ここが未設定だと、以降のどの施策も届かないところで止まります。

3つのレコードの役割と設定先

3つとも、自社ドメインのDNSにTXTレコードとして登録します。役割は次のとおりです。

レコード 役割 設定する場所
SPF そのドメイン名で送信してよいサーバー・IPアドレスを宣言する ドメイン直下のTXTレコードに「v=spf1 〜」を登録。MAツールのヘルプに記載された値を追記する
DKIM メールに電子署名を付け、改ざんされていないことを受信側が検証できるようにする 「セレクタ._domainkey.自社ドメイン」のTXTレコードに、MAの管理画面で発行した公開鍵を登録する
DMARC SPFまたはDKIMの結果が送信元(Fromドメイン)と一致しているかを見て、失敗したメールの扱いを決める 「_dmarc.自社ドメイン」のTXTレコードに「v=DMARC1; p=〜」を登録する

SPFとDKIMは「送信元が正しいこと」を証明する仕組み、DMARCは「なりすましを防ぎ、認証に失敗したメールをどう扱うかを決める」仕組みという役割分担です。

DMARCはp=noneから段階的に強める

DMARCのポリシーは、いきなり拒否設定にしないことがポイントです。Googleが公開している導入手順でも、まず監視のみのp=noneから始め、レポートで自社ドメインからの送信元を洗い出したうえで、p=quarantine(隔離)、p=reject(拒否)へ段階的に移行する流れが推奨されています。

最初からp=rejectにすると、社内の別部門が使っている配信ツールや業務システムからのメールが、認証を通らずに届かなくなることがあります。監視から始めて送信元を把握する順番を守ってください。

2024年以降のGoogle・Yahooの送信者要件

2024年に、GoogleとYahooが送信者要件を強化しました。1日あたりおよそ5,000通以上を送る送信者には、次の対応が求められます。

  • SPF・DKIM・DMARCをすべて設定する:SPFとDKIMは両方が認証を通ること、DMARCはレコードを公開していること(p=noneでも可)
  • ワンクリックでの配信停止に対応する:マーケティングメールでは、メールヘッダー(List-Unsubscribe/List-Unsubscribe-Post)による1クリックの配信停止を用意する
  • 迷惑メール報告率を0.3%未満に保つ:運用では0.1%未満を目標に置く
  • 配信停止の希望は2日以内に反映する

主要なMAツールはワンクリック配信停止に対応していますが、有効化されているかは管理画面で確認が必要です。導入直後に一度確認しておくと、後から届かなくなる事態を避けられます。

設定できているかを確認する方法

3つのレコードを登録したら、認証が通っているかを外部から確認します。MXToolboxなどの無料ツールで、自社ドメインのSPF・DKIM・DMARCの状態を照会できます。

あわせてGoogle Postmaster Toolsに自社ドメインを登録しておくと、Gmail宛ての認証状況と迷惑メール報告率を継続して把握できます。要件の0.3%を超えていないかを月次で見る運用にしておくと安全です。

設定②:リストのインポートとタグ設計

ハウスリストを取り込む前に、タグとリストの分類方針を決めます。取り込んだ後に方針を変えると、既存リードすべてに手を入れることになるためです。

最初に決める3軸のタグ

最小構成として、次の3軸から始めます。

タグの例 何に使うか
獲得経路 展示会_YYYYMM/フォーム_サービス名/ウェビナー_テーマ名/紹介 どの施策から獲得したリードが商談につながったかを後から集計する
検討フェーズ phase_awareness/phase_consideration/phase_decision 検討段階に応じて配信する内容を出し分ける
配信ステータス active/sleeping/unsubscribed 配信対象を絞り込む。休眠リードの掘り起こし対象を抽出する

タグを増やしすぎない

タグは後から追加できます。最初から細かく分けると、付け忘れや表記ゆれが発生し、かえって絞り込めなくなります。3軸で運用を始めて、必要になった時点で足す進め方が扱いやすくなります。

弊社がSmartHR様を支援した際も、毎週異なる性質の40以上のアプリ向けに、ターゲットの要件定義・タグ設定・メール文面の作成を一気通貫で対応しました。対象が多い場合ほど、タグの設計を先に固めておくことが後の工数を左右します。

設定③:スコアリングの初期値

スコアリングの精緻な設計は後回しで構いません。ただし「何もない」状態より「単純な初期スコアがある」状態のほうが、運用を始めやすくなります。

最初は単一スコアで始める

導入直後は、行動に対する加点だけの単一スコアで動かします。次の配点は、弊社が支援先で初期値として置くことが多い水準です。

行動 初期スコア この配点にする理由
メール開封 +2点 関心の弱いシグナル。頻繁に起きるため低めに置く
メールクリック +5点 開封より能動的な行動のため、開封より高くする
資料ダウンロード +10点 検討が進んでいる中程度のシグナル
料金・プランページの閲覧 +15点 検討意向が強いシグナル。導入を具体的に検討している段階で見られる
30日間の無反応 -5点 関心が下がったことを反映させる(スコアの減衰)

まずは合計スコアが一定の閾値を超えたリードを営業へ渡す運用から始め、実際の商談化率を見ながら閾値を調整します。

運用が回り始めたら属性と行動の2軸に移す

単一スコアには限界があります。行動が活発でも、対象外の業種や決裁に関わらない担当者であれば商談にはつながりません。運用が回り始めたら、企業や担当者の属性を評価する属性スコアと、行動を評価する行動スコアの2軸へ移行します。

弊社では属性スコアと行動スコアの両方が一定水準に達したリードをMQLとする設計を標準にしています。2軸への移し方はスコアリング設計の詳しい手順で解説しています。

設定④:CRM/SFAとの連携(データの主管を決める)

MAとCRM/SFAをつなぐとき、最初に決めるのは「どのデータをどちらが主として持つか」です。両方が同じ項目を持ったまま同期すると、どちらが正しいかを判断できなくなります。

どのデータをどちらが持つか

データの種類 主として持つ側 連携の方針
行動データ(閲覧・開封・クリック) MA CRMへ書き戻すのはスコアと直近の行動サマリに絞る
商談・受注データ CRM/SFA MAはこれを参照し、スコアリングの精度を上げる材料に使う
基本属性(会社名・役職・業種) CRM/SFA MAはCRMから受け取って利用する
配信停止フラグ どちらでも更新可 どちらかで更新したら即座に双方へ反映されるよう双方向で同期する

弊社ではSalesforce認定資格を持つ担当者がこの設計を担当し、接続後のデータ不整合が起きにくい形に整えています。項目の対応づけと重複レコードの扱いを、つなぐ前に決めておくことがポイントです。

配信停止フラグだけは双方向にする

他の項目を片方向で同期する場合でも、配信停止フラグは双方向にしてください。営業がCRM側で配信停止を受け付けたのにMAへ反映されないと、停止を希望した相手へ配信を続けることになります。

設定⑤:配信停止・オプトアウトの導線

配信停止の仕組みは、法令とメール送信者要件の両面から最優先で整えます。設定を後回しにすると、配信そのものを止めざるを得なくなります。

用意すべき2つの導線

確認する項目は次の2つです。

1つ目は、すべての配信メールのフッターに配信停止リンクが入っていることです。

2つ目は、メールヘッダーによるワンクリック配信停止が有効になっていることです。これは前述のGoogle・Yahooの送信者要件に含まれており、受信側のメールソフト上に表示される配信停止ボタンとして機能します。

配信停止リストの定期確認

配信停止の希望は2日以内に反映する必要があります。MAとCRM/SFAの双方に同じ状態が反映されているかを月次で確認する運用にしておくと、取りこぼしを防げます。

5つの設定の順番と、完了までの目安

5つは同時に進めるのではなく、順番があります。前の設定が終わっていないと次が意味をなさないためです。

順番 設定 前提と目安
1 送信ドメインの認証 DNSの変更が必要なため、情報システム部門への依頼を含めて最初に着手する。反映に時間がかかることがある
2 配信停止・オプトアウトの導線 認証と同時に整える。ここが未対応だと配信を開始できない
3 リストのインポートとタグ設計 タグ方針を決めてから取り込む。取り込み後の変更は影響が大きい
4 CRM/SFAとの連携 リストが入った状態で、項目の対応づけと重複の扱いを決める
5 スコアリングの初期値 行動データが溜まり始めてから配点を置く。最後でよい

完了までの期間は体制によって変わりますが、弊社が支援したSmartHR様のケースでは、初期設定の着手から約1ヶ月で最初のメルマガ配信まで到達しました。専任の担当者がいない状態でも、順番を決めて進めれば1ヶ月前後が一つの目安になります。

初期設定でつまずきやすい3つのポイント

弊社が80社以上のMA導入を支援してきたなかで、初期設定の段階で止まりやすい箇所は次の3つに集中しています。

DNSの変更が自部門で完結しない

送信ドメインの認証はDNSの変更を伴うため、マーケティング部門だけでは完了しません。情報システム部門や外部のWeb制作会社に依頼が必要になり、ここで数日から数週間止まることがあります。導入が決まった時点で、DNSを誰が管理しているかを先に確認しておくと待ち時間を減らせます。

タグの表記ゆれが後から効いてくる

複数人でタグを付ける運用にすると、全角と半角、日付の書式、区切り文字の違いで表記がぶれます。ぶれたタグは別のタグとして扱われるため、後から絞り込めません。命名規則を1枚のドキュメントにまとめ、タグを追加するときは既存の一覧を見てから作るルールにしてください。

スコアの閾値を最初から作り込みすぎる

導入直後は、どの行動がどれだけ商談につながるかのデータがありません。この段階で精緻な配点を設計しても、根拠がないまま数字を置くことになります。単純な配点で動かし、商談化したリードの行動を振り返ってから調整するほうが、結果として早く精度が上がります。

「やっているのに成果が出ない」状態から抜け出すために

施策を続けているのに商談が増えない、リードの質が上がらない。こうした課題の多くは、戦略と施策のつながりが設計されていないことが原因です。Sells upは現状の分析と改善の優先順位整理から支援します。

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まとめ

MAツールを導入した直後に整えるのは、送信ドメインの認証・配信停止の導線・リストとタグ設計・CRM/SFA連携・スコアリングの初期値の5つです。この順番で進めることで、データが正しく取れる状態でシナリオを動かし始められます。

送信ドメインの認証はSPF・DKIM・DMARCの3つをDNSにTXTレコードとして登録し、DMARCはp=noneの監視から段階的に強めます。2024年以降はGoogle・Yahooの送信者要件により、1日5,000通以上を送る場合は3つの認証とワンクリック配信停止、迷惑メール報告率0.3%未満が求められます。

タグは獲得経路・検討フェーズ・配信ステータスの3軸から始め、増やしすぎないこと。スコアリングは単一スコアで開始し、運用が回り始めてから属性と行動の2軸へ移すこと。CRM/SFAとの連携では、どのデータをどちらが主として持つかを先に決めることがポイントです。

初期設定が完了したら、最初のシナリオを動かす段階に移ります。その後の進め方はMA導入後3ヶ月の進め方で解説しています。ツールごとの具体的な操作手順はAccount Engagementの使い方Marketoの使い方HubSpotの使い方をあわせてご覧ください。

よくある質問

初期設定にはどのくらいの期間がかかりますか?

体制によって変わりますが、1ヶ月前後が一つの目安です。弊社が支援したSmartHR様のケースでは、社内に運用経験を持つマーケターがいない状態から初期設定に着手し、約1ヶ月で最初のメルマガ配信まで到達しました。DNSの変更に情報システム部門の対応が必要になるため、その依頼を早めに出しておくと期間を短縮できます。

SPF・DKIM・DMARCは3つとも設定する必要がありますか?

必要です。2024年以降のGoogle・Yahooの送信者要件では、1日あたりおよそ5,000通以上を送る送信者に対して、SPFとDKIMの両方が認証を通ること、DMARCのレコードを公開していることが求められます。送信量がこれを下回る場合でも、届きやすさの観点から3つとも設定しておくことをお勧めします。

DMARCは最初からp=rejectにしてよいですか?

お勧めしません。Googleが公開している導入手順でも、まずp=noneで監視し、自社ドメインからの送信元を洗い出したうえでp=quarantine、p=rejectへ段階的に移行する流れが推奨されています。いきなり拒否設定にすると、社内の別部門が使っている配信ツールからのメールが届かなくなることがあります。

タグはどのくらいの数から始めればよいですか?

獲得経路・検討フェーズ・配信ステータスの3軸から始めるのが扱いやすい構成です。最初から細かく分けると付け忘れや表記ゆれが起き、かえって絞り込めなくなります。タグは後から追加できるため、必要になった時点で足す進め方をお勧めします。

スコアリングは導入直後から細かく設計すべきですか?

導入直後は、どの行動がどれだけ商談につながるかのデータがないため、細かい設計をしても根拠を持てません。開封・クリック・資料ダウンロード・料金ページ閲覧といった5〜6項目の単純な配点で動かし、商談化したリードの行動を振り返ってから調整するほうが、結果として早く精度が上がります。

CRM/SFAをまだ導入していない場合、MAの初期設定はどうすればよいですか?

設定④のCRM/SFA連携を除く4つは先に進められます。ただし商談・受注のデータをMA側に戻せないため、どのリードが成果につながったかを追えません。スコアリングの精度を上げる材料も集まらないため、CRM/SFAの導入を並行して検討することをお勧めします。

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株式会社Sells up 代表取締役
武田 大
株式会社AOKIにて接客業、株式会社リクルートライフスタイル(現:株式会社リクルート)にて法人営業を経験後、株式会社ライトアップでBtoBマーケティングを担当。デジタルマーケティングエージェンシーを経て2023年に株式会社Sells upを設立。戦略設計・KPI設計を起点に、リードジェネレーション、ナーチャリング、MA/SFA活用、営業連携までBtoBマーケティングを一気通貫で支援。KGI逆算のKPI設計やリードスコアリングの統計的設計、営業連携SLAの構築を強みとし、業界・規模を問わず80社以上に提供。Account Engagement SpecialistおよびTableau Desktop SpecialistのSalesforce認定資格を保有。
保有資格Salesforce Certified Marketing Cloud Account Engagement Specialist/Tableau Desktop Specialist
専門領域BtoBマーケティング/リードジェネレーション/リードナーチャリング/マーケティングオートメーション/HubSpot導入活用支援/Account Engagement導入活用支援/Marketo活用支援/インサイドセールス/統計解析によるスコアリング設計/商談化率向上/マーケティングROI改善