Account Engagement(旧Pardot)の使い方|初期設定から成果を出す運用までを5ステップで解説

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「Account Engagementの主担当になったが、何から手をつければ良いかわからない」
「多機能すぎて、どこから設定すれば成果につながるのか見当がつかない」
「高価なツールなので、使いこなして早く成果を出さなければとプレッシャーを感じる」
BtoB企業で新しくMA(マーケティングオートメーション)ツールの担当になった方から、このようなお悩みをよくお聞きします。
Salesforceが提供するBtoB向けMAツール「Account Engagement(旧Pardot)」は、見込み顧客の獲得から商談化までを効率化し、売上成長に貢献するツールです。しかし、機能が豊富な反面、初期設定や運用設計でつまずいてしまい、十分な成果を得られていない企業も少なくありません。
本記事では、Account Engagementを導入したばかりの担当者に向け、初期設定から施策実行、そして営業連携までの具体的な流れを5つのステップで解説します。
ツールの使い方だけでなく、成果を出すための「考え方」や「活用の勘所」も紹介しますので、ぜひ貴社のマーケティング活動にお役立てください。
Account Engagement(旧Pardot)とは?導入の目的と全体像
Account Engagementは、Salesforceが提供するBtoBマーケティングに特化したMAツールです。まずは、その役割と全体像を整理しておきましょう。
BtoBマーケティングにおけるAccount Engagementの役割
Account Engagementを導入する目的は、単にメール配信やフォーム作成を自動化することではありません。最も重要な目的は、マーケティング活動と営業活動をデータでつなぎ、効率的に売上を創出する仕組みを構築することです。
近年、BtoBビジネスにおける顧客の情報収集はオンラインが主流となり、購買プロセスも複雑化しています。属人的な営業活動だけでは、見込み顧客の検討状況(熱量)を見極め、適切なタイミングでアプローチすることが難しくなっています。
Account Engagementは、以下のような役割を担うことで、これらの課題を解決します。
見込み顧客の行動を可視化する:Webサイトの閲覧履歴や資料ダウンロードなど、オンライン上の行動を追跡・記録します。
興味度・適合度を数値化する:蓄積されたデータをもとに、見込み顧客の「興味度」や「自社ターゲットへの適合度」を可視化します。
最適なコミュニケーションを実現する:見込み顧客の状況に合わせて、パーソナライズされた情報提供を自動化します。
営業部門へ質の高いリードを引き渡す:十分に検討意欲が高まった見込み顧客を特定し、最適なタイミングで営業部門に引き渡します。
特に、世界No.1のCRMであるSalesforceとシームレスに連携できる点が、Account Engagementの大きな特徴です。
PardotからAccount Engagementへの名称変更について
2022年、Pardotは「Account Engagement」へ名称が変更されました。これは、Salesforce Marketing Cloudの製品群の一つとして位置づけが明確化されたためです。
機能面や操作画面に大きな変更はありませんが、「アカウント(企業)単位でのエンゲージメント(関係性)を強化する」という意図が込められています。BtoBマーケティングで重要視されるABM(アカウントベースドマーケティング)の推進にも適したツールであるといえます。
Account Engagement活用の全体像と5つのステップ
Account Engagementは多機能なため、導入直後は「何から手をつければ良いか」と迷ってしまうかもしれません。しかし、成果創出までの流れは、以下の5つのステップに集約されます。
Step.1:初期設定(基盤構築):データ計測やSalesforce連携など、ツールを正しく動作させるための基盤を整えます。
Step.2:プロスペクト管理の設計(データ蓄積・可視化):見込み顧客(プロスペクト)のデータを管理し、質を評価する基準(スコアリングなど)を設計します。
Step.3:最初のマーケティング施策の実行(コミュニケーション):フォームやメールを作成し、「最初の小さな成功体験」を目指して施策を実行します。
Step.4:営業部門との連携構築(リード引き渡し):営業部門と連携し、質の高いリードを引き渡すルールと仕組みを構築します。
Step.5:効果測定と改善(最適化):施策の結果をレポートで確認し、改善サイクルを回します。
この5つのステップを順番に進めることで、つまずくことなくAccount Engagementの活用を進めることができます。
ここからは、各ステップの具体的なAccount Engagementの使い方と活用のポイントを解説します。
Step.1 導入したら最初に行うべき必須の初期設定
Account Engagementを導入した直後は、必ず押さえておきたい初期設定があります。ここでの設定が、その後の施策の精度やデータ計測の成否を左右するため、丁寧に進めることが重要です。初期設定で間違えて、後々大きな問題になることを避けるためにも、慎重に進めましょう。
初期設定は大きく「技術的な設定」と「マーケティング基盤の設定」の2つに分けられます。
技術的な設定項目
まずは、ツールが正しく動作するための技術的な設定を行います。社内のIT部門やWebサイト管理担当者と連携しながら進めましょう。
トラッキングコードの設置と検証
Account Engagementの「トラッキングコード」を自社Webサイトの全ページに設置します。これにより、訪問者の行動(ページ閲覧、フォーム送信など)を追跡できるようになります。
この設定をしないと、見込み顧客の行動データが蓄積されず、MAツールとしての役割を果たせません。設置後は、管理画面で実際にアクセスログ(ビジターの行動履歴)が記録されているかを必ず確認(検証)しましょう。
Salesforceコネクタの接続
Account Engagementの大きな特徴は、Salesforce CRMとのシームレスな連携です。「Salesforceコネクタ」の設定を行い、マーケティング部門と営業部門が同じデータをリアルタイムで共有できる環境を構築します。
接続時には、以下の点を確認しましょう。
アカウント連携が正常に動作しているか(システム連携ユーザーの設定)
データ同期のタイミング(基本はリアルタイム同期を推奨)
Salesforce側の「リード」「取引先責任者」と、Account Engagement側の「プロスペクト」のデータマッピング(項目の紐付け)
メールドメインの設定(SPF/DKIM認証)
メール配信の到達率を高めるためには、送信元ドメインの認証設定が不可欠です。SPF(Sender Policy Framework)とDKIM(DomainKeys Identified Mail)の設定を行い、自社ドメインからのメールが迷惑メールとして判定されないようにします。
設定完了後は、必ず複数の環境(Gmail、Outlookなど)でメール配信テストを行い、正しく受信できるかを確認しましょう。
マーケティング基盤の設定項目
次に、マーケティング活動の土台となる設定を行います。
ユーザー管理と権限設定
Account Engagementは複数のメンバーで運用するため、初期段階でユーザーごとに適切な権限を設定し、セキュリティを確保します。
管理者、マーケティング担当者、営業担当者など、役割に応じて操作できる範囲(データの閲覧、編集、エクスポートなど)を明確に分けましょう。
カスタム項目の同期設定
Salesforce側で独自に管理している顧客情報(例:製品の利用状況、業界、従業員規模など)がある場合、Account Engagementとカスタム項目を同期させます。
これにより、より詳細な顧客属性に基づいたセグメント分けやスコアリングが可能になります。初期段階で必要な項目を洗い出し、マッピング設定を行いましょう。
スコアリングカテゴリの設定(推奨)
製品やサービスが複数ある場合、「スコアリングカテゴリ」の活用をおすすめします。これは、製品・サービスごと、あるいは特定のコンテンツごとに、見込み顧客の関心度を個別に計測する機能です。
例えば「A製品」「B製品」それぞれに対してスコアを集計し、顧客が「何に」興味を持っているかを深く理解できるようになります。
【Sells upの視点】初期設定で「後から後悔しない」ために
Account Engagementの初期設定は、その後の運用全体に影響を及ぼす重要なプロセスです。多くの企業が陥りがちな失敗を避けるため、以下の3点を意識してください。
「検証」の重要性を軽視しない
トラッキングコードの設置やSalesforceコネクタの接続は、「設定して終わり」ではありません。必ずテスト用のデータを使って、意図した通りにデータが計測・同期されているかを検証するプロセスを設けましょう。可能であれば、検証環境(Sandbox)での事前テストが望ましいです。この一手間が、後々の大きなトラブルを防ぎます。設定内容のドキュメント化を徹底する(属人化の防止)
初期設定を特定の担当者だけに任せきりにすると、担当者の異動や退職時に運用がブラックボックス化してしまいます。必ず設定手順やその「意図」(なぜその設定にしたのか)をドキュメント化し、チーム内で共有できる状態にしておきましょう。初期段階から営業部門との認識を合わせる
特にSalesforceとのデータ連携に関しては、マーケティング部門だけでなく、データを受け取る営業部門との認識合わせが不可欠です。どのデータを、どのような形式で連携するのか。初期設定の段階から営業担当者を巻き込み、運用ルールを明確にしておくことが、連携成功のポイントです。
Step.2 見込み顧客(プロスペクト)管理の基本と設計
初期設定が完了したら、次は見込み顧客のデータを管理し、評価するための仕組みを設計します。Account Engagementでは、見込み顧客のことを「プロスペクト」と呼びます。
プロスペクトの登録とリスト管理
プロスペクトをAccount Engagementに登録する方法は、主に以下の3つです。
フォーム経由での自動登録:Webサイトの資料請求や問い合わせフォームから自動的にプロスペクトが生成されます。これが最も一般的な運用方法です。
インポート(CSVファイル):展示会で獲得した名刺リストや、既存の顧客リストなどを一括で登録する場合に利用します。
手動登録:管理画面から直接入力します。少数のデータ登録やテスト時に利用します。
登録したプロスペクトは、「リスト」機能を使って目的に応じてセグメント管理します。特定の条件に合致するプロスペクトを自動で抽出・更新する「ダイナミックリスト」を活用することで、効率的な管理が可能になります。
スコアリングとグレーディングの違いを理解する
プロスペクトの「質」を評価するために、Account Engagementでは「スコアリング」と「グレーディング」という2つの重要な指標を使います。この違いを正しく理解することが、質の高いリードを創出するポイントです。
スコアリング:行動に基づく「関心度」の可視化
スコアリングとは、プロスペクトが貴社の製品・サービスにどれだけ関心を持っているかを、行動データに基づいて数値化する仕組みです。
例:料金ページ閲覧(+10点)、資料ダウンロード(+50点)、メール開封(+5点)
目的:スコアが高いほど、今まさに検討意欲が高い(ホットな状態)と判断できます。
グレーディング:属性に基づく「適合度」の評価
グレーディングとは、そのプロスペクトが自社のターゲット像にどれだけ合致しているかを、属性情報(業種、役職、企業規模など)で評価する指標です。A(高)~F(低)などのランクで表示されます。
例:ターゲット業種(適合度+)、決裁権のある役職(適合度+)、競合他社(適合度-)
目的:グレードが高いほど、自社にとって優先的にアプローチすべき理想的な顧客像に近いと判断できます。
2つの指標を組み合わせて「今アプローチすべき顧客」を見つける
スコアリング(関心度)とグレーディング(適合度)を組み合わせることで、「自社のターゲットであり、かつ今まさに検討意欲が高まっている」理想的な見込み顧客を自動的に特定できます。
スコアリングとグレーディングの設計(考え方)
これらの指標は、デフォルト設定のまま使うのではなく、自社のビジネスモデルやターゲット像に合わせてカスタマイズすることが非常に重要です。
設計のポイントは、「商談化や成約につながりやすい行動は何か?」「理想的な顧客像はどのような属性か?」を、営業部門と協力して明確に定義することです。過去の受注データや、営業担当者の経験則をヒアリングしながら基準を設定しましょう。
【Sells upの視点】スコアリング設計は「シンプル」から始める
スコアリング設計において、陥りがちな失敗は「最初から複雑なルールを設定しすぎてしまう」ことです。
ルールが複雑すぎると、なぜそのスコアになったのかが分かりにくくなり、営業部門も納得感を持てません。また、運用しながら調整することも難しくなります。
Sells upでは、まずは以下の3つの観点で、シンプルにスコアリングを開始することを推奨しています。
明確なCV(コンバージョン)ポイント:資料請求、問い合わせなど、明確な検討意欲を示す行動には高いスコアを付与する。
重要なコンテンツへの接触:料金ページ、事例ページなど、購買検討に直結するコンテンツの閲覧にスコアを付与する。
直近のアクティビティ:過去の行動よりも、直近の行動を重視する(古いスコアは減点する仕組みも有効)。
まずはシンプルなルールで運用を開始し、営業部門からのフィードバックを受けながら、継続的にチューニングすることこそが、精度を高めるポイントです。
Step.3 最初のマーケティング施策を設計・実行する
データ管理の仕組みが整ったら、いよいよ具体的なマーケティング施策を実行します。多機能なツールを前にすると複雑な施策を考えがちですが、まずはシンプルで効果を実感しやすい施策から着手し、「小さな成功体験」を積むことが重要です。
「小さな成功体験」を目指す最初の施策プラン
導入初期は、ツール操作に慣れながら「成果が出た」という実感を得ることが、その後の活用を推進する上で重要です。最初から複雑なシナリオ(ナーチャリング)を組もうとせず、以下のようなシンプルな施策から始めましょう。
施策例:ホワイトペーパーダウンロード後の自動フォロー
目的:ホワイトペーパーをダウンロードした見込み顧客に対し、関連情報を提供して興味関心を高める。
流れ:
見込み顧客がLPからホワイトペーパーをダウンロードする。
自動でサンキューメール(資料URL付き)を送信する。
3日後、関連する事例紹介メールを送信する。
メール内のリンクをクリックしたら、営業担当者に通知する。
これだけでも、「リード獲得の自動化」と「即時フォロー」というMAツールのメリットを体感できます。この一連の流れを構築するために必要な機能を見ていきましょう。
コンテンツと受け皿の作成(LP・フォーム・メール)
施策を実行するためには、フォーム、ランディングページ(LP)、メールといったアセット(部品)を作成する必要があります。
ランディングページ(LP)の作成方法
Account Engagementには、専門知識がなくてもランディングページ(LP)を作成できる機能が備わっています。
テンプレートを活用すれば比較的簡単に作成できます。作成したフォームをLP内に埋め込み、公開前には複数のデバイス(PC、スマートフォン)で表示崩れやリンク切れがないか必ずチェックしましょう。
フォームの作成と設定のポイント
フォームは、プロスペクトの情報を収集するための非常に重要な「入口」です。フォームの設計次第で、リード獲得数や質が大きく変わります。
設定のポイントは以下の通りです。
入力項目は最小限に:項目が多すぎると入力ハードルが上がり、離脱の原因になります。目的に合わせて必要最低限の情報(会社名、氏名、メールアドレスなど)に絞りましょう。
サンクスページの設定:フォーム送信後に表示するページ(お礼ページや資料ダウンロードページ)を設定します。
完了アクションの設定:フォーム送信後に行う自動処理を設定します。これが非常に重要です。
完了アクションの設定例(ホワイトペーパーの場合)
自動返信メール(サンキューメール)を送信する。
プロスペクトを特定のリストに追加する。
スコアを付与する(例:+50点)。
営業担当者へ通知する。
このように、フォームを起点として様々なアクションを自動化できます。
メールの作成と登録
メールは、見込み顧客とのコミュニケーションの中心となります。
開封率を高める件名:具体的でメリットが伝わる件名を意識します。
パーソナライズ:本文中に会社名や氏名を差し込む「変数タグ(差し込み項目)」を活用し、1to1のコミュニケーションを演出します。
明確なCTA(Call To Action):メールを読んだ後に取ってほしい行動(資料の閲覧、セミナーへの申込など)を明確に記載します。
Engagement Studioでナーチャリングシナリオを組む
フォームから登録されたプロスペクトに対して、段階的なコミュニケーション(ナーチャリング)を自動化するのが「Engagement Studio」です。これはAccount Engagementの中核機能の一つです。
シナリオの全体像を設計する
Engagement Studioでは、フローチャート形式でシナリオを作成します。いきなりツールを操作するのではなく、まずは「誰に」「何を」「どのタイミングで」「どのような条件で」届けるのか、シナリオの全体像を整理しましょう。
Engagement Studioは、以下の3つの要素で構成されます。
アクション(実行):メール送信、リストへの追加、スコアの変更など、システムが行う処理。
トリガー(評価):メールの開封・クリック、フォームの送信など、プロスペクトの行動を評価する条件分岐。
ルール(条件):スコアやグレード、特定の項目の値など、プロスペクトの属性情報に基づく条件分岐。
待機時間と分岐の設定
Engagement Studioの利点は、プロスペクトの反応に応じて次のアクションを変えられる点にあります。
待機時間の設定:資料ダウンロード後、すぐに次のメールを送るのではなく、「3日間待機する」といった設定が可能です。適切な間隔を空けることで、しつこい印象を与えずにコミュニケーションを継続できます。
分岐の設定:例えば、「メールを開封した人には追加情報を送り、未開封の人には件名を変えてリマインドメールを送る」といった分岐を設定できます。
【Sells upの視点】多機能なツールに惑わされない「スモールスタート」の重要性
多機能なAccount Engagementを導入したばかりの頃は、「あれもこれもやりたい」と、優先順位をつけづらい状況になるかもしれません。しかし、最初から全ての機能を使いこなそうとすると、準備に時間がかかりすぎたり、運用が煩雑になったりして、かえって成果につながりづらくなってしまう可能性があります。
重要なのは「スモールスタート」です。特にEngagement Studioでは、複雑なシナリオを組みたくなりますが、分岐が多いシナリオは設定ミスのリスクが高まるだけでなく、効果測定や改善が難しくなります。
まずは「メールを2〜3通送るだけ」といったシンプルなシナリオから始め、運用に慣れてきたら徐々に分岐を追加していくのが、着実に成果につながる進め方です。
Step.4 営業部門との連携を設計し、仕組み化する
Account Engagementの効果を最大化し、売上につなげるためには、マーケティング部門と営業部門の連携が不可欠です。MAツールを導入したものの、「マーケティング部門の自己満足で終わってしまう」「営業がリードをフォローしてくれない」といった課題は、多くの場合、この連携プロセスの設計が不足していることに起因します。
ここでは、単なるツールの設定方法だけでなく、部門間の「連携方法」と「フィードバックループ構築」という組織的な課題解決策を具体的に解説します。
MQLの定義と連携のプロセス
まずは、「どのような状態の見込み顧客を営業に引き渡すか」という基準を明確にすることです。この基準を満たした見込み顧客をMQL(Marketing Qualified Lead)と呼びます。
MQLの定義を決める
Step.2で設計したスコア、グレード、特定のアクションなどを組み合わせてMQLの基準を設定します。
例1:スコアが100点以上、かつグレードがB以上。
例2:料金問い合わせフォームからの送信を完了した場合。
営業部門との連携が最も重要
MQLの定義は、マーケティング部門だけで決めてはいけません。必ず営業部門のマネージャーや担当者と協議し、双方が合意した基準を設定することが非常に重要です。多くの企業で発生する「マーケティングのリードは質が低い」という不満は、この連携プロセスが不足していることに起因します。
以下のプロセスで連携を進めましょう。
現状の共有とヒアリング:過去の商談データ分析や、営業部門へのヒアリングを通じて、「アプローチしたい」と感じるリードの条件(属性、関心度)を把握します。
基準のすり合わせ:マーケティング部門で基準の「たたき台」を作成し、営業部門と議論します。
定義の明文化:合意したMQLの定義(スコア基準など)を明文化し、Account Engagement上に設定します。
定期的な見直し:運用開始後、定期的にMQLの質や商談化率をレビューし、基準を見直す前提を共有します。
このプロセスを経ることで、営業部門が納得感を持ってリードに対応できるようになります。
Salesforceへの自動連携と通知設定
MQLに到達したプロスペクトは、迅速に営業担当者へ引き渡す必要があります。Account EngagementとSalesforceを連携させ、リードの引き渡しを自動化しましょう。
リード・タスクの自動割り当て
Account Engagementの「完了アクション」や「オートメーションルール」を使って、以下の処理を自動化できます。
Salesforce上に「リード」または「取引先責任者」として自動登録・更新する。
担当エリアや製品に応じて、営業担当者にリードを自動で割り当てる(Salesforceの割り当てルールと連携)。
営業担当者に対して「フォローアップ依頼」のタスク(ToDo)を自動生成する。
リアルタイム通知の設定
リードの対応遅延は機会損失に直結します。営業担当者が即座にアクションを起こせるよう、メール通知やSalesforceのChatter機能などを活用し、リアルタイム通知を設定します。
営業担当者が見るべき情報とその活用法
営業担当者に引き渡すのは、単なる顧客情報だけではありません。Account Engagementで蓄積した「行動履歴」を共有することで、営業活動の質が大きく向上します。
Salesforceのリードや取引先責任者の画面上で、プロスペクトの行動履歴を確認できるように設定します(Engagement Historyコンポーネントの設置など)。
直近でどのWebページを閲覧したか
どの資料をダウンロードしたか
どのメールに反応したか
これらの情報があることで、営業担当者は「このお客様は〇〇に興味があるはずだ」と仮説を立て、初回アプローチの質を高めることができます。例えば、「〇〇の資料をご覧いただきましたが、△△についてお困りではありませんか?」といった具体的なアプローチが可能になります。
成果を高める「フィードバックループ」の構築方法
マーケティング施策の精度を高めるためには、営業部門からのフィードバックが不可欠です。リードを引き渡して終わりではなく、「引き渡したリードがその後どうなったのか(商談化したか、失注したか、放置されているか)」を追跡し、改善につなげる仕組み(フィードバックループ)を構築しましょう。
具体的には、Salesforce上で以下のような仕組みを整備します。
Salesforce上でのステータス管理の徹底:営業担当者がリードに対応した結果(アポイント獲得、商談中、対象外など)を、Salesforceの「リード状況」や「商談」オブジェクトに必ず入力するルールを定めます。
フィードバックの収集と具体化:「対象外」となった理由(例:時期尚早、予算不足、ターゲット外)を具体的に記録してもらう項目を設けます。「質が悪い」という曖昧な表現ではなく、具体的な理由を収集することが重要です。
データ分析と改善:収集したフィードバックを分析し、MQLの定義やスコアリング基準、ナーチャリングシナリオの改善に活かします。
【Sells upの視点】マーケと営業の連携が失敗する典型パターンと解決策
MAツールを導入したものの、マーケティングと営業の連携がうまくいかず、成果につながらないケースは少なくありません。典型的な失敗パターンと解決策を整理します。
失敗パターン1:「MQLの定義が曖昧」または「合意形成されていない」
マーケティング部門が独自の基準でリードを引き渡すと、営業部門は納得感が得られず、対応が後回しになりがちです。
解決策:前述の通り、営業部門と徹底的に議論し、双方が納得するMQL定義を定めることが不可欠です。定期的なレビュー会議を設け、基準が実態に合っているかを継続的に見直します。
失敗パターン2:「リード情報の一方通行」でフィードバックがない
営業からのフィードバックが得られない状態では、施策の改善サイクルが回りません。
解決策:Salesforce上でのステータス管理を徹底し、フィードバックを収集・分析する仕組みを作ることが重要です。入力項目をシンプルにするなど、営業担当者の負担を減らす工夫も必要です。
失敗パターン3:営業部門での「ツールの活用が浸透しない」
せっかく有益な行動データを蓄積しても、営業担当者がその情報の見方や活用方法を理解していない場合、データが活かされません。
解決策:営業部門向けに勉強会を開催し、「このデータを見ると、こんなメリットがある」という具体的な活用シーンを提示しましょう。成功事例を共有することも有効です。
Step.5 施策の効果を測定し、改善につなげる
マーケティング施策は実行して終わりではありません。必ず効果を測定し、データに基づいて次の改善アクションにつなげていくことが重要です。上司や経営層にMAツール導入の投資対効果(ROI)を説明するためにも、レポーティングは重要です。
初期段階で見るべき主要KPIと確認場所
運用初期の段階では、多くの指標を追うよりも、主要なKPIに絞って状況を把握することが効率的です。ここでは、「リード獲得」「リード育成」「営業貢献」の3つの目的に分けて、見るべきKPIと確認場所をご紹介します。
1.リード獲得の状況を確認する
施策ごとのリード獲得状況や効率性を評価します。
見るべきKPI:新規プロスペクト獲得数、フォーム通過率(CVR)
確認場所:Account Engagementの「フォームレポート」「ランディングページレポート」
分析の視点:どのコンテンツ(ホワイトペーパーの種類など)がリード獲得に貢献しているか。通過率が低い場合は、LPの内容やフォームの入力項目に改善の余地があります。
2.リード育成(ナーチャリング)の状況を確認する
ナーチャリングシナリオの効果やメールコンテンツの反応率を評価します。
見るべきKPI:メール開封率、クリック率(CTR)、シナリオの進行状況、MQL創出数
確認場所:Account Engagementの「メールレポート」「Engagement Studioレポート」
分析の視点:どのメールの反応が良いか、シナリオのどこで離脱が発生しているか(ボトルネックの特定)。開封率やクリック率が低いメールは、件名やコンテンツ内容を見直しましょう。
3.営業貢献の状況を確認する
マーケティング施策が最終的な売上にどれだけ貢献しているかを評価します。これを実現するには、Account EngagementとSalesforceの「キャンペーン」機能を連携させる設定(コネクテッドキャンペーン)が必要です。
見るべきKPI:MQLからの商談化数・率、受注数・率、受注金額
確認場所:Salesforceの「レポート」「ダッシュボード」
これにより、「どの施策(キャンペーン)が、どれだけの商談や受注につながったか」を可視化でき、マーケティング活動の投資対効果(ROI)を明確に示すことができます。
レポートから次のアクションを考える
レポートで得られたデータは、具体的な改善アクションにつなげてこそ意味があります。
例1:開封率やクリック率が低いメールがある。 → アクション:件名を見直す、コンテンツ内容やCTAのデザインを改善する。
例2:Engagement Studioの特定のステップで離脱が多い。 → アクション:メールの内容がターゲットの関心とずれていないか確認し、コンテンツやタイミングを見直す。
例3:特定のホワイトペーパー経由のリードは商談化率が高い。 → アクション:そのホワイトペーパーの露出(広告など)を増やし、関連するナーチャリングシナリオを強化する。
定期的に施策の効果を振り返り、PDCAサイクルを回すことで、Account Engagementの活用精度を高めていくことができます。
困ったときに役立つ学習リソース
Account Engagementの運用を進める中で、操作方法が分からなかったり、不明点が出てきたりすることがあるでしょう。ここでは、困ったときに参照できる公式リソースを紹介します。
Salesforceヘルプポータル
Account Engagementの全機能に関する詳細な説明や設定手順が記載されています。まずはここで検索してみるのが基本です。専門用語が多いですが、最も正確な情報源です。
Trailhead(トレイルヘッド)
Salesforceが提供する無料のオンライン学習プラットフォームです。Account Engagementの基本的な使い方から応用的な機能まで、ハンズオン形式で学ぶことができます。ゲーム感覚で学習を進められるため、初心者に特におすすめです。
Salesforceコミュニティ(Trailblazer Community)
Account Engagementを利用している世界中のユーザーやパートナーが集まるコミュニティです。不明点を質問したり、他社の活用事例を学んだりすることができます。日本語のグループもあるため、気軽に情報交換が可能です。
まとめ:Account Engagementを成果につなげるために最も重要なこと
本記事では、Account Engagementの初期設定から施策実行、営業連携、効果測定まで、具体的な使い方を5つのステップで解説してきました。
Account Engagementは非常に優れたツールですが、導入しただけでは成果は出ません。成果を出すために最も重要なことは、ツールを「使うこと」を目的化せず、「成果を出すための手段」として捉え、組織全体で活用していくことです。
特に、以下の3点は、BtoBマーケティングの成功を左右する重要なポイントです。
丁寧な初期設定とデータ基盤の構築(Step.1)
営業部門との密接な連携(MQL定義の合意形成とフィードバックループ)(Step.4)
「小さな成功体験」から始める継続的な改善サイクル(Step.3,Step.5)
Sells upでは、豊富なBtoBマーケティング支援経験に基づき、データに基づいた戦略設計から現場の運用定着までを一貫してサポートしています。Account Engagementの導入や活用において、「成果につながる運用」にお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
MAツールの導入・活用の相談はSells upへ。
MAツールの導入や、導入後の成果最大化に課題をお持ちでしたら、ぜひSells upにご相談ください。50社以上の導入・活用を支援してきた担当者が貴社の状況・目標に向き合い、最適なツールの導入プラン / 統計知識を用いた活用プラン描き、戦略策定から実装 / 実行 / 効果測定までをご支援いたします。
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