ナレッジ 2026.10.02

インサイドセールスの立ち上げ手順|体制・KPI・つまずきと事例

この記事を書いた人 武田 大 株式会社Sells up 代表取締役

インサイドセールスの立ち上げとは、電話・メール・Web会議などで見込み客に接触し、商談につながる案件をフィールドセールスへ引き渡すチームを、自社に新しく設けることです。

手順は目的の設定から少人数での開始までの5段階で整理されることが多い一方、実際に止まりやすいのは「いつ始めるか」「誰と何を取り決めるか」「最初に何の数字を追うか」という判断です。

本記事では、立ち上げの手順を簡潔に整理したうえで、始める時期の判断、体制と引き渡しのルール、立ち上げ初期のKPI、つまずきやすい点を、弊社の支援事例とあわせて解説します。

インサイドセールスの立ち上げ手順|5つのステップ

インサイドセールスの立ち上げ手順とは、担う役割を決めてから、少人数で運用を始めて見直すまでの一連の進め方のことです。

ポイントは次の2つです。

1つ目は、人を集める前に、担う範囲とフィールドセールスへ引き渡す条件を決めることです。

2つ目は、最初から大きな体制にせず、少人数で始めて記録をもとに見直すことです。

その理由は、担う範囲と引き渡す条件が決まっていないと、担当者ごとに架電する相手も、営業へ渡す基準もばらつくためです。

立ち上げの5ステップ

Step.1:目的と担う範囲を決める

問い合わせや資料請求などのリードに対応するSDR(反響型)と、まだ接点のない企業へ働きかけるBDR(新規開拓型)のどちらを担うかを決めます。リードが一定数ある企業ではSDRから始めることが一般的とされますが、ターゲットとするリードが足りない場合はBDRを先に進める考え方もあります。

Step.2:フィールドセールスへ引き渡す条件を決める

どの状態になったら商談としてフィールドセールスへ引き渡すかを、営業部門と取り決めます。条件があいまいなまま始めると、引き渡した案件の扱いをめぐって部門間で認識が分かれます。

Step.3:担当者を決め、トークスクリプトを用意する

担当者と、チームの運用を見る責任者を決めます。あわせて、流入経路ごとの会話の流れと質問をトークスクリプトにまとめます。作り方は、
インサイドセールスのトークスクリプトの作り方で解説しています。

Step.4:記録する項目をCRM・SFAにそろえる

架電の結果、聞き取った内容、次の連絡予定をCRMやSFAに同じ項目で記録します。自由記述だけにすると、どこで商談につながっていないのかを後から集計できません。

Step.5:少人数で始めて見直す

初期は3〜5人程度の規模で始める進め方が紹介されることが多いものの、人数より先に、1人あたりで対応できるリード数と、引き渡した案件の結果を見て体制を調整します。

インサイドセールスを立ち上げる時期の判断|早すぎと遅すぎの見極め

立ち上げる時期の判断とは、インサイドセールスに任せる仕事が継続的にある状態かどうかを見極めることです。

ポイントは次の3つです。

1つ目は、リードが継続的に入っていて、フィールドセールスが全件に対応しきれていないことです。

2つ目は、問い合わせから初回の連絡までに時間がかかっている、または連絡できていないリードがあることです。

3つ目は、どの状態のリードを営業へ引き渡すかを、言葉にできる段階にあることです。

その理由は、対応するリードが少ない段階で立ち上げると担当者の時間が余り、反対に立ち上げが遅れると、連絡されないまま検討が進まなくなるリードが積み上がるためです。

早すぎる立ち上げで起きること

リードの供給が足りないまま立ち上げると、架電する相手がいないため、ターゲットリストを急いで作って新規開拓に回すことになります。リストの条件が定まっていない状態では、商談につながらない架電が増え、担当者の評価もしにくくなります。

遅すぎる立ち上げで起きること

リードが増えても体制が追いつかないと、フィールドセールスが確度の低い案件にも時間を使うようになり、対応できなかったリードは連絡がないまま放置されます。

弊社が支援した株式会社日本テレビアート様は、社員の8割以上がデザイナーで、営業とマーケティングのノウハウがない状態から新規事業を始めました。サービス内容の言語化に約10ヶ月をかけた後、Meta広告によるリード獲得を始め、毎月の広告予算を10万円程度に抑えながら、多い月で100件以上のリードを獲得するようになりました。架電が追いつかないほどのリード数になった段階で、インサイドセールスチームを新設しています。


広告予算10万円で毎月100件のリードを創出。新規事業のマーケティング基盤を構築

サービスの言語化とフック抽出を経て、Meta広告・LP・Web改修・コンテンツを同時進行。HubSpot導入でリード管理とメール施策を効率化し、提供範囲をブランディング領域まで拡大。

sellsup.co.jp

日テレアート(NIPPON TELEVISION ART)のロゴが刻まれた壁の前で、3人が笑顔で立ち話をしている写真

リードの件数や状態を部門をまたいで管理する方法は、
リード管理の仕組みづくりと実践5ステップで解説しています。

立ち上げ時の体制とSLA|マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールスの役割分担

立ち上げ時の体制とは、マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールスの3者が、どこからどこまでを担い、何を引き渡すかを決めた分担のことです。

ポイントは次の2つです。

1つ目は、引き渡す条件だけでなく、引き渡した後の対応期限と、商談にならなかった案件の戻し方まで決めることです。

2つ目は、決めた内容をSLA(Service Level Agreement)として3者で合意し、定期的に見直すことです。

その理由は、引き渡しの仕組みがあっても、渡した後の扱いが決まっていないと、営業が対応しない案件や、理由がわからないまま止まる案件が生まれるためです。

3者の役割分担

担当 主な役割 次の担当へ渡すもの
マーケティング リードの獲得と育成、優先して連絡するリードの抽出 連絡の優先度と、閲覧した資料などの行動履歴
インサイドセールス 初回の連絡、課題と検討状況の聞き取り、商談の設定 聞き取った内容と、引き渡し条件を満たした根拠
フィールドセールス 商談の実施と提案、受注・失注の判断 商談の結果と、商談にならなかった理由

引き渡し条件のうち、予算や導入時期などをどの順番で聞き取るかは、
BANT条件の意味とヒアリングの順番で解説しています。

SLAで決めておく4つの項目

  • 引き渡す条件(どの状態のリードを商談として渡すか)
  • 対応期限(引き渡しを受けてから、フィールドセールスが連絡するまでの期間)
  • 引き渡し時に渡す情報(聞き取った内容と、行動履歴)
  • 戻すルール(商談にならなかった案件を、理由とともにインサイドセールスやマーケティングへ戻す)

引き渡しの条件と部門間の取り決めを整える手順は、
トスアップの仕組みと部門連携の手順で解説しています。

調査で見た「引き渡しの仕組み」と「連携の状況」の違い

弊社が実施したBtoB企業480名の調査で、MAが商談・売上に貢献していると回答した企業(貢献群)と、そうでない企業(非貢献群)を比べると、営業への通知やトスアップの運用があると回答した割合は61.9%と60.9%でほとんど差がありませんでした。

一方、営業との連携がスムーズに取れていると回答した割合は、貢献群で78.6%、非貢献群で6.5%でした。引き渡す仕組みがあるかどうかより、引き渡した後の扱いを部門間でそろえられているかどうかで差が出ています。

貢献群 n=42/非貢献群 n=92。調査主体:株式会社Sells up/調査ツール:Surveroid(2026年9月, n=480)

なお、この結果は相関を示すものであり、連携の体制を整えれば成果が出るという因果関係を示すものではありません。調査の詳細はBtoB企業のMA活用実態調査(第0回)で公開しています。営業連携が機能している企業の取り組みは、
営業連携が機能している企業の共通点で解説しています。

立ち上げ初期に追うKPIの選び方

立ち上げ初期のKPIとは、運用を始めてから最初の数ヶ月に、体制と引き渡し条件が機能しているかを見るための少数の指標のことです。

ポイントは次の2つです。

1つ目は、指標の数を2〜3個に絞ることです。

2つ目は、架電数などの活動量だけでなく、引き渡した後に商談になったかどうかを含めることです。

その理由は、立ち上げ直後は指標を増やしても比べる基準となる実績がなく、活動量だけを追うと、商談につながらない連絡が増えても気づけないためです。

指標を2つに絞って始めた事例

弊社が支援した株式会社CLUE様は、2019年時点で社内にマーケティング経験者が一人もいない状態から、KPI設計に着手しました。ターゲット属性に合致するリード数と、商談獲得数の2つを指標に設定しています。


スタートアップのマーケ立ち上げ。商談・受注を創出するリードが安定獲得できる仕組みを構築

顧客データで目標設定し、運用型広告を媒体選定から刷新。営業インサイトを反映したLP改修とセミナー・オウンドメディア改善により、商談・受注を創出するリードの安定獲得を実現。

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打ち合わせスペースの木製テーブルを挟んで、2人が向かい合って笑顔で話している写真

活動量・転換率・成果の3層で指標を整理し、KGIから逆算して数値を決める方法は、
インサイドセールスKPIの決め方で解説しています。

連絡の優先順位をデータで決める

CLUE様では、3日連続でサービスページを訪問しているユーザーを検知し、インサイドセールスへ自動で連携する仕組みを構築しました。どのリードから連絡するかをデータで決めると、担当者ごとの判断のばらつきを抑えられます。

弊社の支援で使用している設計例では、MQLを「属性スコア20点以上かつ行動スコア40点以上」、SQLを「デモ・相談の申込み、またはスコア70点以上かつ直近7日以内に検討後期の行動がある状態」としています。これらはSells upの支援で使用している設計例であり、一般的な基準ではありません。

また、スコアが高いことと、商談に進める見込みが高いことは同じではありません。行動データは連絡の順番を決める材料として使い、商談として引き渡すかどうかは、聞き取った内容で判断します。配点の決め方は、
リードスコアリングの設計6ステップで解説しています。

インサイドセールスの立ち上げでつまずきやすい3つの点

立ち上げでつまずきやすい点とは、体制を整えて運用を始めた後に、商談につながらない状態が続く原因になりやすい準備不足のことです。

ポイントは次の3つです。

1つ目は、トークスクリプトがないまま架電を始めることです。

2つ目は、連絡するリードの供給が足りないことです。

3つ目は、フィールドセールスとの間で、有効な商談の定義がそろっていないことです。

その理由は、どれも担当者の努力では補えず、体制や取り決めを見直さないと改善しないためです。

スタートアップからプライム上場企業まで80社以上のBtoBマーケティングを支援してきた中でも、弊社にご相談いただく企業では、インサイドセールスを置いたものの、引き渡した案件の扱いが部門間で取り決められていないことがあります。

トークスクリプトがないまま架電を始める

会話の流れと質問が担当者任せになると、聞き取る内容がそろわず、引き渡しの判断もばらつきます。日本テレビアート様では、インサイドセールスチームを新設し、弊社はトークスクリプトの作成・監修も支援しました。

連絡するリードの供給が足りない

問い合わせや資料請求が少ない段階では、架電の対象がすぐに尽きます。マーケティング側で獲得の計画を立て直すか、BDRとして対象企業を絞ったリストを用意してから始めます。

有効な商談の定義がそろっていない

インサイドセールスが「商談」として引き渡した案件を、フィールドセールスが「まだ早い」と判断するとき、多くは両者の定義が違っています。商談にならなかった理由を記録して戻し、引き渡し条件を見直す場を定期的に設けます。インサイドセールスがリードの育成を担う進め方は、
インサイドセールスによるリードナーチャリングで解説しています。

インサイドセールスを立ち上げなくてよい場合

インサイドセールスを立ち上げなくてよい場合とは、専任のチームを置かなくても、リードへの連絡と引き渡しの判断が滞らない状態のことです。

ポイントは次の3つです。

1つ目は、リードの数が少なく、フィールドセールスが全件に自分で連絡できることです。

2つ目は、対象とする企業が少数に限られ、営業担当者が継続して関係を築くことが中心であることです。

3つ目は、対面での説明を前提とする商材や市場で、電話やメールでの最初の接触が受け入れられにくいことです。

その理由は、こうした状況では、引き渡しの工程を増やすと、情報の受け渡しにかかる手間に見合う効果が出にくいためです。

専任チームを置く前にできること

専任チームを置かない場合でも、どの状態のリードから優先して連絡するか、問い合わせから何日以内に連絡するかを決めておくと、対応の遅れや漏れを防げます。リードが増えて全件への連絡が難しくなった時点で、インサイドセールスの立ち上げを検討します。

「やっているのに成果が出ない」状態から抜け出すために

施策を続けているのに商談が増えない、リードの質が上がらない。こうした課題の多くは、戦略と施策のつながりが設計されていないことが原因です。Sells upは現状の分析と改善の優先順位整理から支援します。

相談してみる →

まとめ

インサイドセールスの立ち上げは、目的と担う範囲、フィールドセールスへ引き渡す条件を決めてから、少人数で始めて見直す進め方が基本です。人を集める前に、引き渡し後の対応期限と、商談にならなかった案件の戻し方まで決めておきます。

立ち上げる時期は、リードが継続的に入り、フィールドセールスが全件に対応しきれなくなっているかで判断します。立ち上げ初期のKPIは2〜3個に絞り、活動量だけでなく、引き渡した後に商談になったかどうかを含めます。

トークスクリプトの不足、リードの供給不足、有効な商談の定義のずれは、立ち上げ後に起きやすいつまずきです。体制と取り決めを定期的に見直すと、インサイドセールスが商談を生む工程として機能しやすくなります。

よくある質問

インサイドセールスの立ち上げにはどのくらいの期間がかかりますか?

リードの件数や、引き渡し条件を取り決めるまでの社内調整によって異なり、一律の目安はありません。体制と取り決めを決めて少人数で始め、引き渡した案件の結果を見ながら数ヶ月単位で見直していく進め方が一般的です。

インサイドセールスは何人から始めればよいですか?

初期は3〜5人程度の規模で始める進め方が紹介されることが多いものの、適切な人数はリードの件数で変わります。1人あたりで対応できるリード数と、引き渡した案件の結果を見て人数を調整します。

SDRとBDRのどちらから始めるべきですか?

問い合わせや資料請求などのリードが一定数ある場合は、SDRから始めることが一般的とされます。ターゲットとするリードが足りない場合は、対象企業を絞ったリストを用意してBDRを先に進める考え方もあります。

フィールドセールスへの引き渡し条件は何で決めますか?

聞き取った課題・導入時期・検討に関わる人などの内容と、デモや相談の申込みといった行動を組み合わせて決めることが多くあります。条件は営業部門と合意し、商談にならなかった理由をもとに見直します。

立ち上げ初期のKPIはいくつ設定すればよいですか?

2〜3個に絞って始めると、運用の状況を把握しやすくなります。弊社が支援したCLUE様では、ターゲット属性に合致するリード数と商談獲得数の2つを指標に設定しました。

社内にインサイドセールスのノウハウがない場合はどう進めればよいですか?

トークスクリプトや引き渡し条件を外部の支援を受けて作り、運用しながら社内に知見を残す進め方があります。日本テレビアート様の支援では、毎週の勉強会でHubSpotの操作方法やマーケティングの基礎を共有し、組織内にノウハウを蓄積しました。

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株式会社Sells up 代表取締役
武田 大
株式会社AOKIにて接客業、株式会社リクルートライフスタイル(現:株式会社リクルート)にて法人営業を経験後、株式会社ライトアップでBtoBマーケティングを担当。デジタルマーケティングエージェンシーを経て2023年に株式会社Sells upを設立。戦略設計・KPI設計を起点に、リードジェネレーション、ナーチャリング、MA/SFA活用、営業連携までBtoBマーケティングを一気通貫で支援。KGI逆算のKPI設計やリードスコアリングの統計的設計、営業連携SLAの構築を強みとし、業界・規模を問わず80社以上に提供。Account Engagement SpecialistおよびTableau Desktop SpecialistのSalesforce認定資格を保有。
保有資格Salesforce Certified Marketing Cloud Account Engagement Specialist/Tableau Desktop Specialist
専門領域BtoBマーケティング/リードジェネレーション/リードナーチャリング/マーケティングオートメーション/HubSpot導入活用支援/Account Engagement導入活用支援/Marketo活用支援/インサイドセールス/統計解析によるスコアリング設計/商談化率向上/マーケティングROI改善