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製造業のマーケティングオートメーションを導入から活用まで全解説

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目次

「製造業でマーケティングオートメーションを導入したいけれど、どう始めたらいいのかわからない」
「営業担当の属人的なやり方に頼っていて、組織的な営業体制が築けていない」

このような課題は、多くの製造業の経営者や、営業・マーケティング担当者が直面している現実ではないでしょうか。

足で稼ぐ従来の営業スタイルだけでは、知らぬ間に大きな商機を逃し、競合に差をつけられてしまう危険性があります。そこで重要となるのが「マーケティングオートメーションの活用」です。

本記事では、製造業におけるマーケティングオートメーション(MA)について、基礎から導入までしっかり解説します。

【この記事を読むと得られるメリット】

・製造業にMAが必要な理由と、解決できる課題がわかる

・目的別の実践的な活用シナリオを習得できる

・MAツールの選び方や導入を成功させるステップがわかる

製造業ならではの課題を解決し、限られた人員で最大の成果を上げるために、ぜひ本記事を参考にしてください。

1.製造業でマーケティングオートメーションが重要な理由

最初に、なぜマーケティングオートメーションが製造業にとって重要なのか、目的意識を明確にしましょう。以下の4つのポイントを解説します。

1. Webでの情報収集が主流になった購買行動に対応するため

2. 属人化した営業スタイルから脱却し仕組み化するため

3. 長い検討期間の見込み客をつなぎ留め育成するため

4. 眠っている過去の名刺情報を資産に変えるため

1-1.Webでの情報収集が主流になった購買行動に対応するため

近年、BtoBの購買行動は大きく変化しています。営業担当者が初めて訪問する段階では、購買プロセスの多くがすでに完了しているともいわれます。顧客企業の担当者は、営業と接触する前に、自らインターネットで製品情報を調べるようになっているためです。

たとえば、製品の性能データ・ROI(投資対効果)を示すデータ・同業他社の導入事例といった情報を、顧客は検討段階ですでに精査しています。

マーケティングオートメーションを導入すると、自社サイト上で提供する技術資料や事例コンテンツへのアクセス状況を把握できます。どの見込み客がどのページを何回閲覧したかを追跡し、興味度合いの高い顧客を特定して適切なタイミングでアプローチできるのです。

1-2.属人化した営業スタイルから脱却し仕組み化するため

製造業では、営業担当者の経験や人脈に依存した属人的な営業が行われてきた企業も、多く見られます。

特定のベテラン社員だけが、過去の提案履歴や顧客の細かいニーズを把握している状況では、その担当者が異動・退職した際に、商談機会の損失や顧客フォロー漏れが発生しかねません。

マーケティングオートメーションツールを活用すれば、対応履歴や商談状況を一元管理して、チーム全員がリアルタイムで顧客情報を把握できるようになります。

顧客のステージごとに必要なアクションをテンプレート化しておけば、誰が担当しても一定水準のフォローを実現できます。あるいは、成績優秀な営業担当者のアプローチ方法をシナリオ化してマーケティングオートメーション上に落とし込み、そのノウハウを組織全体で活用することも可能です。

マーケティングオートメーションは、属人的営業から組織的営業への転換を実現し、営業力を底上げする鍵となるツールです。

1-3.長い検討期間の見込み客をつなぎ留め育成するため

製造業の商談は、検討から受注まで長期間を要するケースが少なくありません。高額な設備の導入やカスタマイズ製品の場合、顧客企業内での稟議や複数部門での検討が必要となり、意思決定まで数カ月から1年以上かかるためです。

マーケティングオートメーションのスコアリング機能を活用すると、顧客の熱度や検討の熟成度を、数値で把握できます。たとえば、「製品比較ページを3回閲覧した」「価格シミュレーションツールを使用した」といった行動が検出されれば、検討が具体化したサインと判断できるでしょう。

あるいは、資料請求後に定期的なメールで技術情報や業界トレンドを提供し続ければ、顧客の検討リストから外れることを防げます。

検討期間が長い製造業の見込み客との関係性を維持しながら育成し、商談化のタイミングを逃さず確実に捉えるために、マーケティングオートメーションが強力な武器となります。

1-4.眠っている過去の名刺情報を資産に変えるため

製造業の営業現場では、展示会や商談で交換した大量の名刺が活用されないまま眠っているケースがあります。以前に名刺を交換したが、その後フォローできていないリードが社内に蓄積されているなら、それは大きな機会損失です。

名刺情報をマーケティングオートメーションに取り込み、業種・企業規模・関心領域ごとにリスト化すれば、ターゲットに合わせた情報配信ができます。

あるいは、新製品が発表されたタイミングで過去に接点のあった企業に情報を一斉配信すれば、再び引き合いにつながる可能性が高まります。マーケティングオートメーションは名刺管理ツールと連携してこれらのリード情報を最大限に活用し、過去の接点を商談機会に変える仕組みづくりをサポートしてくれます。

2.マーケティングオートメーションで実現できること

続いて、具体的にマーケティングオートメーションツールで何ができるのか、見ていきましょう。代表的な5つの機能を紹介します。

1. 散在する見込み客情報を一元管理する

2. 顧客のWeb行動を可視化しニーズを把握する

3. シナリオに基づきメール配信を自動化する

4. 見込み度合いを点数化(スコアリング)する

5. ホットリードを営業へ自動で通知する

なお、マーケティングオートメーションツールの効果については、以下の記事も参考にしてみてください。


【フェーズ別】MAツールの7つの効果と効果を実感するためのポイント

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2-1.散在する見込み客情報を一元管理する

マーケティングオートメーションツールを導入すると、社内のあちこちに点在していた見込み客情報を統合して管理できます。展示会・セミナー・Web広告・問い合わせフォームなど、多様な経路で獲得したリードの情報を、マーケティングオートメーション上で一カ所にまとめることができるのです。

取りまとめたデータは、業種・企業規模・地域といった属性情報に加え、過去の資料ダウンロード履歴や問い合わせ内容に基づいてグループ化できます。「電子部品を製造する業界で従業員300名以上」「昨年の技術展示会で名刺交換済み」といった条件設定で、ターゲットリストを瞬時に抽出できるようになります。

マーケティングオートメーション上でリード情報を一元管理すれば、部署間での情報共有がスムーズになります。営業とマーケティングが同じデータを見ながら連携できるので、製造業のように取引先が多岐にわたる場合でも、効率的に管理できることがメリットです。

2-2.顧客のWeb行動を可視化しニーズを把握する

マーケティングオートメーションツールは、見込み顧客のWebサイト上での行動履歴を自動で収集・可視化します。「誰が」「いつ」「どのページを」「何回訪れたか」といったデータを蓄積し、顧客の興味関心を客観的に把握できることは、非常に有益です。

たとえば、特定の製品ページへのアクセス回数が増えている見込み客は、その製品に強い関心を抱いているサインです。配信したメールのどのリンクがクリックされたかを分析すれば、興味分野を特定できます。

このようにWeb行動データを可視化していくと、営業現場では把握しにくかった潜在ニーズも浮かび上がります。「まだ問い合わせはないが、Webサイトで頻繁に情報収集している企業」を早期に発見し、競合より先にアプローチできる点が、大きなアドバンテージとなります。

2-3.シナリオに基づきメール配信を自動化する

マーケティングオートメーションツールの代表的な機能のひとつが、メール配信の自動化です。あらかじめ設定したシナリオに沿って、顧客に対するメールを自動送信できます。

具体的には、顧客の特定の行動をトリガーとして、自動でメールを送信します。たとえば、「ホワイトペーパーをダウンロードした瞬間に、関連する導入事例のメールを送る」といった即時対応が可能です。

メール配信を自動化すると、人手では難しいタイムリーで継続的なアプローチができるようになります。担当者の作業負担を減らしつつ、顧客ごとに最適化したコミュニケーションで購買意欲を醸成できることがメリットです。

2-4.見込み度合いを点数化(スコアリング)する

先にも触れたとおり、製造業の商材は検討期間が長く、すべての見込み客がすぐに商談に進むわけではありません。マーケティングオートメーションのスコアリング機能を使えば、見込み客の温度感を数値化して可視化できます。

スコアリングは、Webサイト訪問・資料請求・メールクリック・セミナー参加といった行動ひとつひとつに点数を設定し、行動のたびに自動加点していく仕組みです。合計スコアがしきい値を超えた時点で「ホットリード(購買意欲が高い見込み客)」として浮かび上がります。

スコアリングにより、担当者の勘や主観に頼らず、データに基づいて見込み客の選別ができます。営業は成約確度の高いリードに集中でき、フォローすべき優良見込み客の取りこぼしを防げるようになります。

2-5.ホットリードを営業へ自動で通知する

スコアリングによってホットリードが見つかったら、その情報をすぐに営業担当者へ共有する機能も、マーケティングオートメーションは備えています。あらかじめ設定した基準スコアに達したリードや特定の重要行動があった際に、自動で担当営業にメールなどで通知します。

たとえば、「Webで料金プランのページを閲覧した」「製品の比較表をダウンロードした」など、購買意欲が高まる行動があれば、即座に営業に知らせます。営業担当者はその情報を受けて数時間以内にコンタクトを取り、熱が冷めないうちにアプローチできるというわけです。

ホットリード通知機能があると、営業とマーケティングの連携も円滑になります。マーケティング部門が育成したリードをタイムリーに営業へ引き渡せば、組織全体で効率よく商談を創出する仕組みが構築できます。

3.【目的別】製造業におけるマーケティングオートメーションの活用シナリオ

一方、マーケティングオートメーションツールを導入しても、具体的にどう活用すればよいか迷う企業は少なくありません。ここでは、製造業でよくある4つの場面ごとに、マーケティングオートメーションを使った実践的な活用シナリオを紹介します。

1. 【展示会後】お礼メールと資料送付を自動化する

2. 【Web問い合わせ後】ステップメールで継続的に育成する

3. 【休眠顧客】技術情報の発信で再アプローチする

4. 【既存顧客】関連製品の案内でクロスセルを狙う

3-1.【展示会後】お礼メールと資料送付を自動化する

製造業では新規顧客との出会いの場として展示会が重要ですが、展示会後のフォローが商談化率を左右します。マーケティングオートメーションを活用して、展示会終了直後の一連のフォローアップを自動化しましょう。

具体的には、名刺情報をマーケティングオートメーションに取り込み、展示会当日の夜または翌朝に自動でお礼メールを配信します。初回のお礼メールから1週間後に「導入事例集のご案内」、2週間後に「技術ウェビナーへのご招待」といった段階的フォローをシナリオ化しましょう。

メールの開封やリンククリックがあった場合は、営業担当者に自動通知して、即座にアプローチできるよう設定します。マーケティングオートメーションを使った展示会後フォローの仕組みを整えれば、展示会の費用対効果を大幅に向上できます。

3-2.【Web問い合わせ後】ステップメールで継続的に育成する

Webサイトから問い合わせフォーム経由で入ったリードには、迅速かつ丁寧なフォローが欠かせません。問い合わせ受付直後から複数回にわたる自動メール配信で、リードを継続育成する戦略が効果的です。

たとえば、問い合わせ後24時間以内に初回の回答や資料送付を徹底すれば、商談化率が上昇します。また「資料ダウンロードから5日後に『ご質問はありませんか』というフォローメール」「2週間後に『同業他社の導入事例集』を案内」など、相手の検討フェーズに合わせて、段階的にアプローチしていきましょう。

問い合わせした見込み客の興味を途切れさせず、ステップメールで関心を深めていく施策は、限られた人的リソースでも高い成約率を実現する鍵となります。

ステップメールについては、以下の記事もあわせてご覧ください。


BtoB向けステップメールで商談化率UP!自動でリード育成する設計術

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3-3.【休眠顧客】技術情報の発信で再アプローチする

一度取引があったものの、その後音沙汰がなくなった休眠顧客に対しては、掘り起こし施策が有効です。自社製品・サービスに一定の理解を持つ休眠顧客は、適切なアプローチ次第で再度商談化する可能性があります。

たとえば、オンライン技術セミナーの案内や、業界動向・技術トレンドを解説するホワイトペーパーの提供などが挙げられます。

休眠顧客が自社サイトに久々に訪問した場合、マーケティングオートメーションがそのアクセスを検知して、営業にリアルタイム通知するように設定することもできます。

新規開拓よりもコスト効率の高い休眠顧客の掘り起こしは、マーケティングオートメーション活用の大きなメリットのひとつです。

3-4.【既存顧客】関連製品の案内でクロスセルを狙う

マーケティングオートメーションは、既存顧客へのクロスセルの場面でも、力を発揮します。

たとえば、マーケティングオートメーション上で既存顧客の行動ログを監視しておけば、別製品ページを頻繁に閲覧し始めた場合に、「他製品に興味を持ち始めた」シグナルとして検知できます。その情報を営業に通知し、すかさず追加提案の連絡を取れば、ニーズが顕在化したタイミングで確実にアプローチできるでしょう。

製造業では、一社の顧客が複数の製品ラインを必要とするケースも多く見られます。マーケティングオートメーション上で全顧客の製品の利用状況や商談履歴が共有できていれば、事業部門の垣根を超えた横断的営業が可能です。

マーケティングオートメーションを駆使したクロスセル戦略は、売上の底上げに有効です。

4.製造業向けマーケティングオートメーションツールの選び方

マーケティングオートメーションツールは国内外に数多く存在し、機能や価格帯もさまざまです。

しかし、ツール選定で陥りがちな失敗は、機能や価格といった「How(手段)」から検討を始めてしまうことです。「導入したが成果が出ない」「活用が定着しない」という問題の根本原因は、戦略設計の欠如にあります。

まず「Why(なぜ)」「What(何を)」「Who(誰に)」という戦略を明確にし、その後で戦略を実現する手段としてツールを選ぶ「戦略ファースト」のアプローチこそが、マーケティングオートメーション導入成功の鍵です。

以下のポイントを確認しましょう。

1. ステップ1:導入目的と達成目標を明確にする

2. ステップ2:戦略実現に必要な機能要件を定義する

3. ステップ3:自社の実行体制に合った運用性を確認する

4. ステップ4:サポート体制を評価する

4-1.ステップ1:導入目的と達成目標を明確にする

マーケティングオートメーションツール選定の第一歩は、自社が達成したい目的と具体的な目標を言語化することです。戦略が曖昧なままツールを導入しても、目的を見失ってしまうため、最終的な事業成果に結びつきません。

まずは「Why(なぜマーケティングオートメーションが必要か)」を明確にします。新規リード獲得の強化か、既存顧客の育成か、営業とマーケの連携強化か、などが挙げられます。

次に「What(何を実現するか)」として、経営目標やKPIを数値で設定しましょう。「新規案件数を前年比20%増」「問い合わせから商談への転換率を15%向上」といった具体的な指標です。

目的と目標が明確になって初めて、それを実現するツールの要件が見えてきます。この戦略設計のステップを省略すると、どんなに高機能なツールを導入しても成果は得られません。

4-2.ステップ2:戦略実現に必要な機能要件を定義する

戦略が明確になって初めて、それを実現する手段としてツールの機能要件を検討できます。すでにSFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理)を導入済みの企業では、連携についても考慮しましょう。

「What(何を実現するか)」で定義した目標を達成するには、どんな機能が必要かを洗い出します。営業とマーケの連携強化が目的なら、既存システムとのAPI連携は必須要件です。見込み客がマーケティングオートメーション上で商談化熱度に達したら、SFA上で自動的に案件登録される仕組みが理想的でしょう。

重要なのは、機能ありきではなく戦略ありきで要件を定義することです。「高機能だから」「他社が使っているから」という理由でツールを選ぶと、自社の戦略と合わず失敗するリスクが高まります。

4-3.ステップ3:自社の実行体制に合った運用性を確認する

戦略と機能要件が定まったら、次は「自社が実際に運用できるか」という実行可能性の検証です。高機能なツールほど複雑になりがちで、使いこなすには相応の知識と経験が必要になります。

製造業ではマーケティング専任の人材が少ない場合も多く、担当者が初心者でも直感的に操作できるかが重要です。多くのマーケティングオートメーションベンダーが、無料トライアル期間を提供しているため、実際に触ってみて操作感を確かめましょう。

マーケティングオートメーションツールを導入したものの、「機能は優れているが使い方が難しく使いこなせない」という声は少なくありません。戦略を実現できる必要十分な機能を備え、かつ自社のスキルレベルで運用可能なツールを選ぶことが、マーケティングオートメーション導入を成功させるために大切です。

4-4.ステップ4:サポート体制を評価する

マーケティングオートメーションツールの導入は、あくまでもスタートに過ぎません。本当の成果は、運用を軌道に乗せてから現れます。戦略を実行し続け、目標を達成するには、ベンダーのサポート体制も重要です。

ベンダーが導入時の初期設定を一緒に行ってくれるか、操作トレーニングを提供してくれるかを確認します。問い合わせ窓口のレスポンスの早さや、対応品質もチェックしましょう。

不安があれば、ベンダーだけに頼らず、支援企業からのサポートを受けることも、重要な選択肢です。

「ツールの選び方に迷う」「導入後のサポートが不安」というときには、ぜひSells upにご相談ください。Why・What・Whoを明確にするところから伴走し、製造業のマーケティング戦略の構築をサポートします。

5.マーケティングオートメーションの導入を成功させる4ステップ

マーケティングオートメーションツールを選定したら、次は実際の導入プロセスです。ツールを入れただけでは成果は出ません。適切な準備と運用体制の構築に向けて動きましょう。

1. ステップ1:営業部門と連携し運用体制を構築する

2. ステップ2:リード育成のためのシナリオを設計する

3. ステップ3:配信する技術資料や事例などのコンテンツを準備する

4. ステップ4:スモールスタートでPDCAサイクルを回す

5-1.ステップ1:営業部門と連携し運用体制を構築する

マーケティングオートメーションの導入プロジェクトでは、営業部門とマーケティング部門の密な連携が欠かせません。「どの時点で営業にバトンを渡すか」「営業側はどうフォローするか」という部門間の役割分担と連携フローを明確に定める必要があるためです。

【部門間連携の具体的な進め方】

事前協議を実施する:導入前に関連部署を交えたディスカッションの場を持ち、マーケティングオートメーション導入の目標や運用フローについて共通認識を作ります。マーケティング部門が考える「理想のリード育成プロセス」と、営業部門が求める「引き渡してほしいリードの条件」をすり合わせていきましょう。

具体的なルールを設定する:「スコア120点以上で製品ページを3回以上閲覧したリードは営業へパス」「営業は受け取ったホットリードに対し2営業日以内に架電する」といった具体的ルールを定めます。マーケティングオートメーションで育成したリードを、営業が引き継ぐ基準を合意していきます。

定期的に情報を共有する:運用開始後も、営業部門とマーケティング部門の定期ミーティングを設定し、組織横断でPDCAを回す体制を築きます。営業現場の生の声を、マーケティング施策に反映することも大切です。

製造業では営業主導の文化が根強い場合もありますが、マーケティングオートメーション導入成功のためには経営層が音頭を取り、営業部門とマーケティング部門一体の運用体制を推進することが重要です。

5-2.ステップ2:リード育成のためのシナリオを設計する

マーケティングオートメーション導入時には、ツール設定に先立ち、顧客育成のシナリオを緻密に設計します。シナリオとは「どの見込み客に・いつ・何のコンテンツを提供し・どう行動を促すか」を体系立てた計画です。

【シナリオ設計の具体的手順】

購買ステージを定義する:認知段階・情報を収集する段階・比較や検討の段階・見積もり段階といった具合に、顧客の検討フェーズを分類します。各段階で顧客が抱える疑問や求める情報を洗い出し、それに応じたコンテンツを用意しましょう。

フローとアクションを設計する:「資料請求があったら即日お礼メールを送り、3日後にフォローアップメール、その後も未商談なら2週間後にセミナー案内を送る」といったフローを設定します。見込み客の属性や関心領域に応じて分岐する、複数パターンのシナリオも用意します。

製造業の場合、扱う製品や顧客業種によって有効なシナリオもさまざまです。初めは1〜2パターンのシンプルなシナリオから開始し、データを見ながら改善・分岐を加えていくことがポイントです。

シナリオ設計については、以下の記事もあわせてご覧ください。


MAシナリオ設計で成果を出す全手順|テンプレートとBtoB事例で学ぶ、売上を最大化する仕組み作り

MAシナリオ設計の進め方にお悩みですか?本記事では、MA担当者がつまずきがちなシナリオ設計の全手順を、BtoBの成功事例やテンプレートを交えて具体的に解説。成果測定や営業連携のコツまで網羅し、売上につながる仕組み作りを支援します。

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5-3.ステップ3:配信する技術資料や事例などのコンテンツを準備する

シナリオの骨格が決まったら、その流れに沿って顧客に届けるコンテンツの制作・準備に取り掛かります。

【コンテンツ準備の進め方】

既存の資料資産を洗い出す:まずは既存の資料資産を洗い出し、マーケティングオートメーション配信用に整備します。営業が個別に送っていたPDF資料をまとめてメール配信用に再編集したり、過去の技術ブログ記事を見込み客向けメールに転用したりといった具合です。

顧客視点で価値を提供する:製造業の顧客は合理的に判断する傾向が強いため、単なる宣伝ではなく技術的な有益情報や実証された効果を示す必要があります。たとえば、「○○業界向けの生産性向上のためのチェックリスト」といったコンテンツは興味を引きやすいでしょう。

ストーリー性を考慮する:「見込み客が資料ダウンロードした内容に合わせて、次に送るメールで関連する事例を紹介する」のように、ストーリー性があると反応率が向上します。「基本編の資料→応用編の解説→実践事例」という流れで段階的に理解を深めてもらう設計が理想的です。

コンテンツ準備には時間がかかるため、優先順位をつけて進めましょう。良質なコンテンツはマーケティングオートメーション施策の成否を左右する重要な鍵です。

5-4.ステップ4:スモールスタートでPDCAサイクルを回す

マーケティングオートメーション導入後は、小さな範囲から施策を開始して、効果測定と改善を繰り返すことが成功の秘訣です。最初から高度なシナリオを全顧客対象に展開するのではなく、限定したターゲットから開始しましょう。

【PDCAサイクルの回し方】

主要KPIをモニタリングする:運用開始後は定期的にメール開封率・クリック率・フォーム送信率などのKPIをチェックし、シナリオやコンテンツの効果を検証します。反応が芳しくないメールがあれば、件名や配信タイミングを変えてA/Bテストを実施しましょう。

段階的に拡大する:最初は限定的な範囲で運用し、成果と課題を見極めながら徐々に投資規模やシナリオ規模を拡大します。リスクを抑えつつ効果を高めることを意識してください。

組織全体で定着を推進する:必要に応じて戦略や目標を見直しながら、従業員全員で共通の理解を作り、実行していくことが大切です。スモールスタートで得た成功体験を糧に、コツコツとPDCAを回し続けていきましょう。

マーケティングオートメーションを導入したからといって、即座に目に見える効果が出るとは限りません。しかしながら、着実にPDCAを回せば、成果は積み上がっていきます。

6.まとめ

本記事では「製造業におけるマーケティングオートメーション」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。

製造業でマーケティングオートメーションが重要な理由は、以下のとおりです。

1. Webでの情報収集が主流になった購買行動に対応するため

2. 属人化した営業スタイルから脱却し仕組み化するため

3. 長い検討期間の見込み客をつなぎとめ育成するため

4. 眠っている過去の名刺情報を資産に変えるため

マーケティングオートメーションで実現できることとして、以下を解説しました。

1. 散在する見込み客情報を一元管理する

2. 顧客のWeb行動を可視化しニーズを把握する

3. シナリオに基づきメール配信を自動化する

4. 見込み度合いを点数化(スコアリング)する

5. ホットリードを営業へ自動で通知する

製造業におけるマーケティングオートメーションの活用シナリオを解説しました。

1. 【展示会後】お礼メールと資料送付を自動化する

2. 【Web問い合わせ後】ステップメールで継続的に育成する

3. 【休眠顧客】技術情報の発信で再アプローチする

4. 【既存顧客】関連製品の案内でクロスセルを狙う

製造業向けマーケティングオートメーションツールの選び方は以下のとおりです。

1. 導入目的と達成目標を明確にする

2. 戦略実現に必要な機能要件を定義する

3. 自社の実行体制に合った運用性を確認する

4. サポート体制を評価する

マーケティングオートメーションの導入を成功させるステップを解説しました。

1. 営業部門と連携し運用体制を構築する

2. リード育成のためのシナリオを設計する

3. 配信する技術資料や事例などのコンテンツを準備する

4. スモールスタートでPDCAサイクルを回す

マーケティングオートメーションは、自社の明確な戦略と運用体制のもとで初めて効果を最大化できます。本記事の内容を参考に、まずは戦略策定から踏み出してみてください。

BtoBマーケティングのご相談はSells upへ

Sells upはデータに裏打ちされたマーケティング活動を通じて売上成長を実現するBtoBマーケティング専門のエージェンシーです。 まずはお気軽にご連絡ください。

株式会社Sells up
武田 大
株式会社AOKIにて接客業を、株式会社リクルートライフスタイル(現:株式会社リクルート)にて法人営業を経験した後、株式会社ライトアップでBtoBマーケティングを担当。その後、デジタルマーケティングエージェンシーにてBtoBマーケティングの戦略設計/施策実行支援、インサイドセールスをはじめとしたセールスやカスタマーサクセスとの連携を通じたマーケティング施策への転換といった支援を行い、2023年に株式会社Sells upを設立。BtoBマーケティングの戦略設計/KPI設計はもちろん、リードジェネレーション施策やナーチャリング、MA/SFA活用を支援し、業界/企業規模を問わずこれまでに約80社以上の支援実績を持つ。Salesforce Certified Marketing Cloud Account Engagement Specialist/Tableau Desktop SpecialistのSalesforce認定資格を保有。