「高額なマーケティングオートメーション(MA)を導入したのに、結局メルマガ配信ツールとしてしか使えていない」
「ライセンス費用に見合う成果(ROI)を示せず、経営層からのプレッシャーが強い」
「営業部門からは『リードの質が低い』と不満を言われ、関係性が悪化している」
自社がこのような状況に直面しているとしても、珍しいことではありません。特にBtoBマーケティングの業務では、MAツールを導入したものの、期待した成果が出ずに運用が形骸化してしまうケースが多く見られます。
MAは導入すれば自動的に成果が出るツールではありません。複雑な機能、リソース不足、部門間の連携不足といった要因が重なり、多くの担当者が「何から手をつければ良いのか分からない」と行き詰まりを感じています。
BtoBマーケティングを100社以上支援してきたSells upが、MA運用がうまくいかない原因を仕組みの面から整理し、自社の現状を客観的に把握して立て直すための手順を解説します。
MA運用がうまくいかない理由|「使いこなせない」状態が生まれる仕組み
MAツールは、「導入すれば自動的に商談が増える」と期待されがちですが、実際には容易に成果が出るものではありません。多くの企業がMA運用でつまずく経緯には、機能の理解不足や人手不足といった表面的な問題だけでなく、仕組みの面での要因があります。
うまくいかない原因にある3つの要素とその相互関係
MA運用が機能しない原因は、以下の3つの要素に分類され、これらが相互に影響し合っています。
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戦略・目的が定まっていない:「何のためにMAを使うのか」という上流の戦略や目的が曖昧な状態。
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運用プロセスの不備:戦略に基づいた具体的な計画(誰に、何を、いつ届けるか)や、効果検証の仕組みが整っていない状態。
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リソース・体制の不足:運用に必要なコンテンツや人員、そして部門間の連携体制が不足している状態。
「戦略が定まっていないこと」が引き起こす負の連鎖
MA運用がうまくいかない原因の多くは、「戦略や目的が明確でないこと」にあります。目的が曖昧なまま導入が進むと、適切な「運用プロセス」を設計できません。その結果、場当たり的な施策しか打てず、成果が出ないため「リソース・体制」も確保されない(あるいは、リソースを投下しても効果が出ない)という負の連鎖に陥ってしまうのです。
たとえば、「コンテンツが足りない」という問題は、表面的には「リソースの不足」に見えます。しかし、その原因は、「誰に、どのようなコンテンツが必要か」を定義する「戦略」や「プロセス(カスタマージャーニー設計)」が定まっていないことにあるかもしれません。
このように、問題の仕組みを理解し、表層的な課題にとらわれずに原因を見極めることが、MA運用を立て直すために最初に行うステップになります。
【チェックリスト】MAが機能しない7つの原因
自社のMA運用がどこでつまずいているかを、3つの分類に沿って確認します。ここではMAが機能しない7つの原因をチェックリスト形式で整理しました。当てはまるものがないか、客観的に評価してみてください。
分類1:戦略・目的が定まっていない
MA運用の土台となる戦略レイヤーでの設計が不十分だと、その上に積み上げる施策はすべて不安定になります。
原因1:導入目的が「効率化」や「自動化」で止まっている
MAの導入目的が「メルマガ配信の効率化」や「手作業の自動化」といった業務効率化に留まっているケースです。MAは本来、見込み顧客(リード)を育成し、質の高い商談を創出することで事業成長に貢献するためのツールです。目的が戦術レベルに留まっていると、成果につながる戦略的な運用には発展しません。
【チェック項目】
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[ ] MA導入の目的を問われた際、「商談創出」や「売上向上」ではなく、「作業効率化」が真っ先に挙がる。
-
[ ] MAを通じて、どのような顧客を、どのような状態に引き上げたいのかが定義されていない。
原因2:KGI・KPIが設定されていない、または形骸化している
MA運用の成否を評価するための具体的な指標(KGI・KPI)が設定されていない、あるいは設定はされているものの、日々の運用で意識されていない状態です。指標がなければ、施策の効果測定ができず、何を改善すべきかも判断できません。
【チェック項目】
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[ ] MA運用における最終目標(KGI)や中間指標(KPI)が明確に定められていない。
-
[ ] 設定したKPIが「メール開封率」などに偏っており、「商談化数」や「受注貢献度」といった事業成果に結びついていない。

導入そのものが目的になっていた場合の立て直し方は、MAツールの失敗パターンと立て直し手順でも解説しています。
分類2:運用プロセスの不備
戦略が定まっていても、それを実行するためのプロセスが整備されていなければ、MAは期待通りに機能しません。
原因3:顧客解像度が低く、シナリオが独りよがりになっている
ターゲット顧客の理解や、購買に至るまでのプロセス(カスタマージャーニー)の解像度が低いまま、企業側の視点だけでシナリオやコンテンツを設計している状態です。顧客が抱える課題や情報収集のタイミングを無視したアプローチは、たとえ自動化されていても成果にはつながりません。
【チェック項目】
-
[ ] ペルソナやカスタマージャーニーが作成されておらず、担当者の経験則で施策が進められている。
-
[ ] 提供しているコンテンツが、顧客の検討段階(認知・興味関心・比較検討など)に合っていない。

株式会社ベーシックが実施した「BtoBマーケティング調査レポート2025 MAツール編」では、MAツールを活用する企業の54.5%が「シナリオ設計やスコアリングが難しい」と回答しています。

調査方法:Webアンケート
調査対象:BtoBマーケティング業務に関わる方
有効回答数:330
調査期間:2025年5月30日〜6月3日
参考:株式会社ベーシック「BtoBマーケティング調査レポート2025 MAツール編」
どの行動を起点にどの順番で配信するかは、シナリオ設計の手順で具体的に解説しています。
原因4:リード(見込み顧客)の質と量が不足している
MAを動かすためには、アプローチ対象となるリードが一定数以上必要です。リードの総量が少ない場合、どれほど精緻なシナリオを組んでも、創出できる商談の数は限られてしまいます。また、リードの質(確度)が低すぎる場合、営業部門に引き渡しても商談獲得にはつながりません。
【チェック項目】
-
[ ] MAに登録されているリード数が少なく、常に枯渇している。
-
[ ] 新規リードを獲得するための施策(Web広告、SEO、展示会など)が計画的に実行されていない。
-
[ ] リードの定義が曖昧で、質の低いリードが大量に混入している。
原因5:効果検証と改善のサイクル(PDCA)が回っていない
施策を実行したものの、その結果を振り返り、改善につなげる仕組みがない状態です。MA運用は一度設定したら終わりではなく、継続的な改善が欠かせません。効果検証を怠ると、成果が出ない施策を延々と続けることになります。
【チェック項目】
-
[ ] 施策の結果を定期的に分析・報告する場が設けられていない。
-
[ ] 過去の失敗や成功の要因が分析されず、次の施策に活かされていない。
分類3:リソース・体制の不足
戦略とプロセスが整っていても、それを実行するためのリソースや、組織としての体制が不足していれば、運用は形骸化します。
原因6:MAを動かすためのコンテンツが大きく不足している
MAによるリード育成(ナーチャリング)には、顧客の検討段階に応じた多様なコンテンツ(ホワイトペーパー、導入事例、セミナー動画など)が必要です。しかし、コンテンツ制作のリソースが不足し、常に同じようなメルマガしか配信できていない企業は少なくありません。
【チェック項目】
-
[ ] MAで活用できるコンテンツの種類が少なく、施策の幅が広がらない。
-
[ ] コンテンツ制作の体制やスケジュールが整っておらず、場当たり的に作成している。

ただし、「検討段階ごとにすべてのコンテンツを揃える」必要はありません。
まずは、
・問い合わせ前によく聞かれる内容
・商談で頻繁に説明している内容
・営業が何度も送っている資料
・顧客が比較検討時に確認する情報
などから優先して作成すると、営業活動でも使いやすくなります。
MAツールを使いこなせていない原因が、ツールの設定ではなく「届けられる情報がないこと」にあるケースもあります。
その場合は、新しいシナリオを増やすより先に、必要なコンテンツを整理する方が有効です。
原因7:マーケティング部門と営業部門の連携が取れていない
MA運用で特に大きな課題になるのが、マーケティング部門と営業部門の連携が切れていることです。マーケティング部門がMAを駆使してリードを育成しても、その情報が営業部門に適切に共有されなかったり、営業部門が求めるリードの質と乖離があったりすると、最終的な成果にはつながりません。
【チェック項目】
-
[ ] 「ホットリード」の定義について、マーケティング部門と営業部門で認識が揃っていない。
-
[ ] 営業部門から「マーケティングが渡してくるリードは質が低い」という不満が出ている。
-
[ ] マーケティング部門から渡したリードが、その後どのようにフォローされているか把握できていない。
MAツールの機能と、自社で使う範囲の決め方
MAツールにどのような機能があり、自社の目的に対して何を使えばよいかを整理できていないと、メール配信など一部の機能だけで運用が止まりやすくなります。
MAツールには、メール配信だけでなく、見込み客情報の管理、フォーム、シナリオ、スコアリング、通知、分析、CRM・SFAとの連携など、さまざまな機能があります。

| MAツールの主な機能 | できることの例 |
|---|---|
| 見込み客の情報管理 |
オンライン・オフラインで獲得した見込み客情報を管理する |
| メール配信 |
条件に応じてメールを配信する |
| LP・フォーム作成 |
資料請求や問い合わせなどのページ・フォームを作成する |
| シナリオ |
条件や行動に応じて配信・処理を自動化する |
| スコアリング |
行動や属性に点数を付け、優先順位付けの参考にする |
| 通知 |
特定の行動が発生した際に担当者へ知らせる |
| 分析 |
配信やキャンペーンなどの結果を確認する |
| 外部ツール連携 |
CRMやSFAなどへデータを連携する |
※利用できる機能はMAツールや契約プランによって異なります。
よくあるのが、MAツールを「メール配信システム」としてしか使っていないケースです。
たとえば、すべての見込み客に同じ内容のメールを同じタイミングで送り続けている場合、MAツールの持つ条件分岐や自動化の機能を十分に活かせていません。

一方で、
・過去にダウンロードした資料に応じて案内内容を変える
・ウェビナー参加者へ後日フォローを送る
・特定ページを閲覧した企業を営業へ通知する
・一定期間反応のないリードには別の情報を届ける
といった形で、目的に応じて複数の機能を組み合わせることができます。

大切なのは、すべての機能を使うことではありません。
自社の目的に対して「どの機能が必要なのか」を把握し、必要な範囲から使い始めることです。
【MAツールを使いこなせない原因チェックリスト】
・メール配信以外にどのような機能があるか把握していない
・機能は知っているが、自社でどこに使えばよいか判断できない
・使っていない機能が多いこと自体を課題だと考えている
・契約しているMAツールやプランで利用できる機能を整理できていない
導入直後に何から設定するかは、MAツールの初期設定5つの手順で整理しています。
MA運用を成功させるポイントは「セールス・マーケティング一体運用」
7つの原因の中でも「原因7:部門間の連携」は、MA運用の成否を分ける重要なポイントです。
MAはマーケティング部門だけのものではない
MAツールは、その名称からマーケティング部門の専任ツールと思われがちです。しかし、MAの目的が「事業成長への貢献」である以上、最終的な成果を生み出す営業部門との連携が欠かせません。
マーケティング部門が独断でMA運用を進めてしまうと、以下のような問題が発生します。
-
営業が本当に必要としているリードの条件が反映されない。
-
マーケティング部門が「ホット」と判断したリードが、営業部門にとっては「コールド」である。
-
MAで得られた顧客情報が営業活動に活かされないままになる。
こうした状況が続くと、両部門の認識のずれが広がり、結果として「MAは使えない」という評価につながります。
事業成長を実現する「運用の仕組み」を構築する
MA活用を成功させるためには、MAを「マーケティング部門と営業部門が共有する、事業成長のためのプラットフォーム」として再定義する必要があります。
そして、両部門が共通の目標(KGI/KPI)と共通の言語(リードの定義や評価基準)を持ち、一連のプロセスとして機能する「セールス・マーケティング一体運用」の仕組みを構築することが求められます。
具体的には、以下のような取り組みが必要です。
-
目標の共有:売上目標から逆算し、必要な商談数、リード数を両部門で合意する。
-
リード定義のすり合わせ:どのようなリードを育成し、どのタイミングで営業に引き渡すかを共同で定義する(スコアリング設計など)。
-
フィードバックループの構築:営業活動の結果(商談化・受注・失注理由)をマーケティング側にフィードバックし、施策の改善に活かす。
Sells upでは、この「セールス・マーケティングでの一体運用」が、MA活用の成果を高めるうえで重要な施策だと考えています。

株式会社CLUE様では、3日連続でサービスページを訪問したユーザーを検知し、インサイドセールスへ自動で連携する運用を構築しました。
誰がどのタイミングで対応するかを条件として決めておくことで、MAツール上の行動データを次のアクションにつなげやすくなります。

運用として何をどの順番で回すかは、MA運用の業務内容と5ステップにまとめています。
MA運用を立て直す4フェーズ
現状の課題を特定できたら、次はいよいよMA運用の立て直しに着手します。しかし、理想的な運用を一気に目指す必要はありません。限られたリソースの中で着実に成果を出すためには、実行可能なフェーズに分け、段階的に改善を進めることが重要です。
ここでは、MA運用を立て直す手順を4つのフェーズに分けて解説します。
フェーズ0:現状把握と課題の特定
立て直しの最初のステップは、現状を正しく把握し、重要な課題を特定することです。思い込みや感覚ではなく、客観的な事実に基づいて判断しましょう。
Step.1:自社の状況を客観的に把握する
「【チェックリスト】MAが機能しない7つの原因」を使い、自社のMA運用がどの分類(戦略・プロセス・体制)で、どのようにつまずいているのかを分析します。関係者間で認識を共有し、優先的に解決すべき課題を絞り込みましょう。
Step.2:関係者(特に営業部門)へのヒアリングを実施する
マーケティング部門の視点だけでなく、営業部門やカスタマーサクセス部門など、顧客接点を持つ関係者へのヒアリングを実施します。
【ヒアリング項目例】
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営業部門が求めるリードの質や量はどのようなものか?
-
現状のマーケティング施策に対してどのような不満や要望があるか?
-
商談化しやすい顧客にはどのような特徴があるか?
-
営業活動の中で、MAでサポートしてほしいことは何か?
こうした声から、MA運用を改善する具体的な手がかりが得られます。
フェーズ1:基盤の再構築
現状把握ができたら、MA運用の土台となる「戦略・目的」を再構築します。
Step.3:事業目標から逆算したKGI・KPIを再定義する
MAの目的を「事業成長への貢献」と再定義し、事業目標(売上目標など)から逆算して、MAで達成すべきKGI・KPIを設定します。
-
KGI例:四半期の新規商談数を〇件創出する、MA経由の受注金額を〇円達成する。
-
KPI例:月間のMQL(Marketing Qualified Lead:マーケティングが認定した質の高いリード)数を〇件創出する。
Step.4:ターゲット顧客とカスタマージャーニーを具体化する
営業部門へのヒアリング内容も参考にしながら、ターゲットとなる顧客像(ペルソナ)と、購買に至るまでのプロセス(カスタマージャーニー)を具体的に描き直します。「誰に、どのような情報を提供すれば、次の検討段階に進むのか」を明確にすることで、施策の精度を高めます。
Step.5:社内(営業部門)での合意形成を得る
このフェーズで重要なのは、再定義した目的や指標について、上層部や営業部門との合意形成を図ることです。立て直しには関係部門の協力が欠かせないためです。
【合意形成のポイント】
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現状の課題と、それを放置した場合のリスク(投資対効果の悪化など)を客観的なデータで示す。
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立て直しによって期待できる事業上のメリット(商談数の増加見込みなど)を具体的に示す。
-
営業部門の意見を反映した計画であることを強調し、協力を依頼する。
フェーズ2:運用の正常化(スモールスタート)
基盤が固まったら、次は運用を正常化させ、小さな成功体験を積むフェーズです。最初から完璧を目指さず、スモールスタートで始めましょう。
Step.6:成果に近いセグメントに絞ってシナリオを設計する
すべての顧客セグメントを対象にするのではなく、事業インパクトが大きい、あるいは成果が出しやすいセグメントに絞って、シンプルなシナリオを設計します。
-
例:特定の製品に関心が高いリードへの集中アプローチ、過去に失注したリードの掘り起こしなど。
株式会社SmartHR様でも、MAツールの運用経験を持つマーケティング担当者がいない状態から初期設定に着手し、約1ヶ月で初回のメールマガジンを配信しました。その後、配信する文面を1〜2パターンから20〜30パターンへ広げ、問い合わせ件数は1年で約10倍になっています。

Step.7:既存コンテンツの棚卸しと再活用から着手する
新規コンテンツの制作には時間とコストがかかります。まずは、社内に眠っている既存のコンテンツ(営業資料、過去のホワイトペーパー、導入事例、FAQなど)を棚卸しし、MA施策に再活用できないか検討します。最小限のリソースで施策を開始することを優先しましょう。
Step.8:シンプルなPDCAサイクルを確立する
施策を実行したら、必ず効果検証を行い、改善につなげます。最初は複雑な分析は必要ありません。設定したKPIに対して実績はどうだったか、なぜ成功(失敗)したのかを定期的に振り返る仕組みを作ります。この小さな成功体験の積み重ねが、チームの自信と運用の好循環を生み出します。
フェーズ3:高度化と連携強化
運用が軌道に乗り始めたら、いよいよMA活用の高度化と、営業部門との連携強化に取り組みます。
Step.9:リード評価基準(スコアリング)を営業と共同で策定する
営業部門が「本当に商談したい」と思えるリードを効率的に抽出するために、スコアリング(リードの評価基準)を設計します。
スコアリングは形骸化しやすい施策ですが、以下の点に注意して進めることで成功率が高まります。
【失敗しないスコアリング設計の進め方】
-
マーケティング単独で決めない:必ず営業部門と共同でワークショップなどを開催し、合意を得ながら設計する。
-
シンプルに始める:「資料ダウンロード」「料金ページ閲覧」など、分かりやすい行動履歴を中心に、まずは少数の基準からスタートする。
-
定期的に見直す:運用開始後、実際の商談化状況と照らし合わせながら、基準の妥当性を検証し、定期的に調整する。

ただし、スコアが高いことと購買意欲が高いことは同じではありません。
たとえば資料をダウンロードした理由が、具体的な導入検討ではなく情報収集である場合もあります。
そのため、
・どの行動が実際の商談につながっているか
・どの企業属性で受注が多いか
・営業が対応した結果どうだったか
を確認しながら、配点や条件を見直す必要があります。
| スコアリングがうまく機能しない例 | 起きていること |
|---|---|
| 特定行動の点数を高くしすぎている |
資料DLなど一つの行動だけで優先度が上がってしまう |
| 行動スコアしか見ていない |
ターゲット外の企業でも高スコアになる |
| 設定後に見直していない |
実際の商談・受注データとのずれが残る |
スコアリングは、見込み客の状態を正確に判定する仕組みというより、営業やインサイドセールスが次に確認する対象を絞るための一つの材料として考える方が適しています。
また、すべての企業がスコアリングを導入する必要もありません。
リード件数が少なく、一件ずつ確認できる場合や、「特定ページを閲覧した」「ウェビナーへ参加した」など明確な条件だけで十分に対応できる場合は、ルールベースで営業へ通知する方法でも運用できます。
Sells upが支援で使用しているRFEスコアモデルでは、受注データをロジスティック回帰で分析し、Engagement 0.45/Recency 0.385/Frequency 0.165という配点を置いています。MQLは属性スコア20点以上かつ行動スコア40点以上、ホットリードはスコア0.75以上かつ直近7日以内に質の高い行動があることを条件にしています。
これは一般的な基準値ではなく、Sells upの支援で使用している設計例です。重要なのは、配点や閾値そのものではなく、なぜその条件を設定しているのかを説明でき、商談や受注の実績をもとに見直せる状態にすることです。
配点と閾値の決め方は、スコアリングの設計6ステップで手順として整理しています。
Step.10:定期的な情報共有会を設け、フィードバックの仕組みを構築する
マーケティングと営業が一体となって運用を進めるために、月次や週次で定期的な情報共有会(定例ミーティング)を設けます。
-
マーケティング側からの報告:施策の成果、創出したリードの状況など。
-
営業側からのフィードバック:引き渡されたリードのその後の状況(商談化・受注・失注理由)、商談で感じる顧客の動向など。
このフィードバックループが、MA運用の精度を継続的に高めるポイントとなります。
Step.11:SFA/CRMとのデータ連携を強化し、顧客情報を一元化する
MAツールだけでなく、SFA(営業支援システム)やCRM(顧客管理システム)とのデータ連携を進めます。MAで得られたリード情報をSFA/CRMに連携し、さらに営業活動の履歴や受注情報をMA側にフィードバックすることで、顧客情報が一元化されます。これにより、「どの施策が最終的な売上につながったのか」というROIの可視化が可能になり、より高度な分析と意思決定が実現します。
MAの本格活用を急がなくてよい場合
ここまで3つの対策を紹介しましたが、MAツールの機能をできるだけ多く使うことが目的ではありません。
企業の状況によっては、シナリオやスコアリングなどの機能をすぐに使わず、基本的な機能だけで運用した方がよい場合もあります。
たとえば、次のようなケースです。
・保有しているリードが少なく、一件ずつ営業が確認・対応できる
・継続的に配信するコンテンツを用意できる体制がまだない
・新規リードの育成よりも、既存顧客の継続や代理店経由の売上が中心になっている
株式会社ベーシックの調査では、BtoB企業のMAツール導入率は33.9%とされています。
MAツールを導入しているからといって、すべての機能をすぐに使う必要はありません。
たとえば初期段階では、
・見込み客情報の管理
・フォーム
・メール配信
・Webサイト上の行動記録
・営業への通知
など、現在必要な機能に絞って運用する方法があります。
その後、保有リードが増えたり、配信するコンテンツが揃ったり、営業との連携条件を細かくする必要が出てきた段階で、シナリオやスコアリングを追加します。
「MAツールを使いこなす=すべての機能を使う」ではありません。
自社の目的と運用できる範囲に合わせて、必要な機能だけを選ぶこともMA活用の一つです。
どの段階から本格的に使い始めるかは、MA導入のタイミングの判断軸で整理しています。
外部支援を検討する場合の比較ポイントは、MA導入支援会社の選び方で解説しています。
外部の支援を受けるかどうかの判断
社内だけでは設計や運用が難しい場合は、外部の知見を取り入れることも選択肢です。
MAツールでは、
・シナリオ設計
・スコアリング
・データ設計
・CRM・SFAとの連携
・効果測定
・運用改善
など、マーケティングとツール双方の知識が必要になる場面があります。
クラウドサーカス株式会社が実施した「マーケティングオートメーションに関するアンケート調査結果レポート」では、MAツールを導入している316人への複数回答で、専門家の意見が必要だと感じた場面として「運用時」が47%、「立ち上げ時」が33%、「社内共有」が22%となっています。

調査方法:インターネットアンケート
調査対象:BtoBマーケティング部門、営業部門の担当者
設問:MAツール運用中(利用中)に専門家の意見が必要と感じた場面はあったか(複数回答)
この設問の回答者数:316人(MA導入者。調査全体の回答者数は629人)
調査期間:2021年10月
Cloud CIRCUS調べ
参考:クラウドサーカス株式会社「マーケティングオートメーションに関するアンケート調査結果レポート」
外部支援を利用する場合も、すべてを委託する必要はありません。
たとえば、
【MAツール活用で外部支援を受けられる内容の例】
・MAツールを使う目的やKPIの整理
・シナリオ、スコアリングの設計
・初期設定や既存設定の見直し
・CRM、SFAとの連携設計
・効果測定やデータ分析
・メールやホワイトペーパーなどのコンテンツ制作
・社内担当者への操作・運用方法の共有
など、自社で不足している部分だけを補う方法もあります。
MA運用を立て直した支援事例
ここまで解説してきた戦略設計や運用体制の見直しが、実際のマーケティング活動でどのように行われているのか、Sells upの支援事例を2つ紹介します。
| 事例企業 | 主な課題 | 取り組み・成果 |
|---|---|---|
| 株式会社日本テレビアート様 | 営業・マーケティングに相当する部署がなく、新規事業の顧客接点や販路をどのようにつくるかが課題 | サービス設計、広告、コンテンツ制作、CRMへのリード情報移行などを実施。初年度から多い月で100件以上のリードを獲得 |
| 株式会社ブリューアス様 | BtoBマーケティングの知見を持つメンバーが少なく、施策やMA運用が手探りの状態 | 広告、LP、MA運用を見直し、目標リード数を達成。ステップメール経由の受注にもつながった |
株式会社日本テレビアート様|広告予算10万円で毎月100件のリードを創出した事例
株式会社日本テレビアート様では、テレビ業界を取り巻く環境の変化を受けて、新規事業の立ち上げを進めていました。
一方で、それまで番組制作を中心に事業を展開していたため、一般企業における営業やマーケティングに相当する部署がなく、新しい顧客との接点をどのようにつくるかが課題となっていました。
そこでSells upでは、まず同社がどのようなサービスを提供するのかを整理するところから支援しました。
取り組みは大きく2つのフェーズに分かれています。
| 支援フェーズ | 主な取り組み |
|---|---|
| フェーズ1(10か月) |
ビジネスプロデュース室が提供するサービスの方向性を整理・言語化 |
| フェーズ2(14か月) |
Meta広告によるリード獲得、サービス資料・LP制作、コーポレートサイト改修、コンテンツマーケティングの立ち上げ、リード情報のCRMへの移行 |
フェーズ2では、広告やコンテンツによって新しい顧客接点をつくるだけでなく、スプレッドシートで管理していたリード情報をCRMへ移行し、その後の分析やフォローにつなげられる状態を整えました。
その結果、初年度から多い月で100件以上のリードを獲得しています。また、広告予算は月10万円程度に抑えながら運用できるようになりました。
リード情報を蓄積・分析できるようになったことで、これまで接点のなかった企業が日本テレビアート様に何を求めているのかを把握し、その後のサービスや施策を考えるための材料としても活用されています。
MAツールだけを導入するのではなく、その前段となるサービス設計や顧客接点のつくり方から整理し、獲得したリードを継続的に活用できる環境まで整えた事例です。
▼株式会社日本テレビアート様の事例は、下記でも解説しています。

株式会社ブリューアス様|広告・LP・MA運用を見直し、リード獲得につなげた事例
株式会社ブリューアス様では、法人向けの「新人エンジニア研修」を拡大するため、BtoBマーケティングのチームを立ち上げました。
一方で、社内にBtoBマーケティングの知見や経験を持つメンバーが少なく、施策やMAツールの運用を手探りで進めている状態でした。
そこで、既存のBtoC向けマーケティングの方法をそのまま利用するのではなく、法人向けの購買プロセスに合わせて施策全体を見直しました。
【実施した主な施策】
・Googleの検索広告に加えて、Meta広告、Microsoft広告へ配信先を拡大
・LPの構成を見直し
・グループ全体のMAツールの運用方法を整理
特にMAツールについては、単にメールを配信するだけではなく、保有しているリードへ継続的に情報を届け、反応を確認しながら次のコミュニケーションにつなげる運用へと見直しました。
その結果、目標としていたリード件数を達成し、MAツールから配信したステップメールをきっかけに継続的な受注も発生しています。
また、一度失注した企業へメールで再度アプローチしたことで、大型案件の受注につながったケースもありました。
MAツールを単なる配信作業のためのツールではなく、保有リードとの接点を継続し、営業活動につなげるための仕組みとして活用できるようになった事例です。
▼株式会社ブリューアス様の事例は、下記でも解説しています。

「やっているのに成果が出ない」状態から抜け出すために
施策を続けているのに商談が増えない、リードの質が上がらない。こうした課題の多くは、戦略と施策のつながりが設計されていないことが原因です。Sells upは現状の分析と改善の優先順位整理から支援します。
相談してみる →まとめ
MAツールを導入したものの使いこなせないという課題は、多くの企業が直面している悩みです。その原因は、ツールの機能的な問題よりも、「戦略・目的が定まっていないこと」「運用プロセスの不備」「リソース・体制(特に営業連携)の不足」といった仕組みの問題にあります。
現状を変えてMAを「使いこなす」ためには、次の3つの視点が欠かせません。
-
MAを単なるツールではなく、「事業成長のための仕組み」として位置づけること。
-
「セールス・マーケティング一体運用」の視点を持ち、部門間の隔たりをなくすこと。
-
理想を一気に目指すのではなく、無理なく段階的に改善を進めること。
まずは現状を客観的に把握し、できるところから一つずつ改善を積み重ねていきましょう。ここで紹介した立て直しの手順を参考に、自社のMA運用を組み直し、事業成長につなげてください。
よくある質問
MAツールの目的は何ですか?
MAツール(マーケティングオートメーションツール)の目的は、見込み客の獲得・育成・選別のプロセスを自動化・効率化し、商談化できるリードを増やすことです。
具体的には、以下の3つの領域を一元的に管理・自動化することが主な目的です。
| 目的の領域 | 内容 |
|---|---|
| リード獲得 | Webサイト・広告・フォーム・セミナーなど複数の接点から見込み客情報を収集し一元管理する |
| リード育成(ナーチャリング) | 見込み客の検討段階に応じたコンテンツをシナリオに沿って自動配信し、購買意欲を段階的に高める |
| リード選別(スコアリング) | 見込み客の行動・属性に点数を付与し、商談化の可能性が高いホットリードを可視化して営業に引き渡す |
ただし、MAツールは導入するだけで自動的に成果が出るわけではありません。「なぜMAツールを使うのか」という目的と、目的に沿ったKPI・シナリオ・体制の設計が揃って初めて、MAツールは成果に結びつくツールになります。
MAツールの機能一覧は?
MAツールには、見込み客の獲得から商談化まで幅広いマーケティング活動を支援する機能が揃っています。主な機能は以下のとおりです。
| 機能 | できること |
|---|---|
| 見込み客の情報管理 | オンライン・オフライン問わず見込み客情報を一元管理できる |
| メールの作成・配信 | ノーコードでメールを作成し、見込み客の状況に応じて自動配信できる |
| 広告配信連携 | 複数の広告配信を自動化・最適化できる |
| LP・フォームの作成 | 購買意欲を高めるLPや問い合わせフォームを作成できる |
| スコアリング | 見込み客の行動・属性をもとに検討度合いを数値化して可視化できる |
| シナリオ設計(ワークフロー) | 見込み客の行動パターンに応じて、次のアクションを自動実行できる |
| アラーム通知 | 見込み客が指定の行動をしたタイミングで担当者に通知が届く |
| 商談履歴の管理 | 顧客ごとの商談履歴や商談化までのプロセスを可視化できる |
| 分析機能 | キャンペーン・リード・各施策の効果を多角的に分析できる |
| 他ツールとの連携 | CRM・SFAなどと連携し、部署間でデータを共有できる |
これらの機能を戦略的に組み合わせることが重要で、メール配信だけに使っていると費用対効果が下がる原因になります。自社の目的達成に必要な機能をどのタイミングでどう使うかを、導入前に設計しておくことが、使いこなせる状態に近づく手順です。
マーケティングの順番(プロセス)はどうなっていますか?
BtoBマーケティングにおける一般的なプロセスの順番は、以下の3フェーズで構成されます。
| フェーズ | 内容 | MAツールの主な役割 |
|---|---|---|
| ①環境分析 | 市場・競合・自社の現状を分析し、マーケティングの課題と目標を明確にする | 分析機能でデータを収集・可視化する |
| ②戦略立案 | ターゲット定義・KPI設定・シナリオ設計・スコアリング設計などを行う | スコアリングやシナリオ(ワークフロー)を設定する |
| ③施策の実施・改善 | メール配信・コンテンツ提供・広告運用などを実行し、結果を分析してPDCAを回す | 自動配信・アラーム通知・分析機能を活用して運用する |
MAツールを使いこなせない企業の多くは、②戦略立案を十分に行わないまま③施策の実施に進んでしまっています。「MAツールを導入したから使い始める」ではなく、「何を達成したいか(目的)」「何を指標にするか(KPI)」を先に固めることが、成果につながるマーケティングプロセスの大前提です。
マーケティングの4原則とは何ですか?MAツールとどう関係しますか?
マーケティングの4原則とは、マーケティングの基本的な考え方として広く使われる「4P」を指すことが多く、製品(Product)・価格(Price)・流通(Place)・販促(Promotion)の4要素から構成されます。
| 4P | 内容 | MAツールとの関係 |
|---|---|---|
| Product(製品) | 顧客ニーズを満たす商品・サービスの設計 | 顧客の行動データから製品への関心・ニーズを分析できる |
| Price(価格) | 顧客が適切と感じる価格設定 | 検討度合い別にスコアリングし、価格感度の高い層へアプローチできる |
| Place(流通) | 顧客に最適な販売場所・提供方法の設計 | チャネル別の接触データを管理し、最適な接点をシナリオに組み込める |
| Promotion(販促) | ターゲットへ効果的にアプローチするコミュニケーション設計 | メール配信・シナリオ・広告連携など販促施策の自動化・最適化を担う中核機能 |
MAツールは主にPromotion(販促)フェーズで使われますが、STP分析(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)や4P分析などの戦略設計があって初めて機能します。MAツールを導入する際は「4Pのどの部分をMAで強化するのか」を明確にしたうえで機能・シナリオ・KPIを設計することが、使いこなせない状態から抜け出すための第一歩です。
MAツールを使いこなせるようになるまで、どのくらいかかりますか?
かかる期間は、設定する範囲と社内の体制によって変わります。株式会社SmartHR様の例では、運用経験を持つマーケターがいない状態から初期設定に着手し、約1ヶ月で初回のメールマガジンを配信しました。
一方で、シナリオ設計やスコアリングまで含めて運用が回るようになるには、配信した結果を見て調整する期間が必要です。最初から全機能を使おうとせず、メール配信とフォームから始めて、扱う範囲を段階的に広げるほうが結果を確認しやすくなります。
外部の支援を受けずに自社だけで運用できますか?
できる場合があります。判断の目安は3つです。設定を担当できる人が社内にいること、必要な機能が標準機能の範囲に収まること、運用に週1〜2日を割けることです。この3つが揃っていれば、メール配信・フォーム・Web行動の記録といった基本機能は自社だけでも立ち上げられます。
反対に、シナリオ設計やスコアリングのように配点の根拠づくりが必要な領域は、社内に経験がないと時間がかかります。クラウドサーカス株式会社の調査でも、専門家の意見が必要だと感じた場面として運用時を挙げた人が47%でした。どこを自社で担い、どこを外部に出すかを分けて考えます。
