リードナーチャリングとスコアリングの連携術|「質の低いリード」問題を解決し、営業を加速させる方法

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リードの「量」は増えたのに、なぜ営業の成果に繋がらないのか?
マーケティング担当者が直面する「質の低いリード」という壁
Web広告やコンテンツ施策が実を結び、リード獲得数は右肩上がり。数字の上では順調に見えるのに、営業部門との定例会議では「最近、温度感の低いリードばかりだ」という厳しい声が上がる——。
これは、多くのBtoB企業のマーケティング担当者が一度は経験する、根深い課題ではないでしょうか。特にSaaSビジネスのように、オンラインでの情報収集が活発な領域では、資料請求やセミナー参加といったリードは増えやすいものです。しかし、そのすべてが「今すぐ商談したい」顧客とは限りません。
この「量」と「質」のギャップが生まれる背景には、マーケティング部門が追う「リード獲得数」と、営業部門が求める「商談化・受注数」という、指標の違いが存在します。マーケティングとしては将来の優良顧客候補も大切にしたい。しかし、営業としては今月の目標達成のために、確度の高いリードに集中したい。この想いのすれ違いが、貴重なリードを活かしきれない大きな原因となっているのです。
営業部門との間に横たわる「有望なリード」の認識のズレ
もう一つの大きな壁が、「有望なリード」の定義そのものが、部門間で食い違っていることです。
マーケティングは、サイト上の行動データ(どのページを見たか、どの資料をダウンロードしたか)から「見込みあり」と判断します。一方、営業は、より具体的で属人的な情報(決裁権の有無、課題の深刻度、導入意欲の高さ)を重視します。この「見る角度」の違いが、部門間の連携を阻害し、深刻な機会損失を生み出します。
マーケティングが丹精込めて育てたつもりのリードも、営業の基準に合わなければ「質が低い」と判断され、フォローが後回しにされてしまう。結果として、せっかくのリードは休眠顧客となり、マーケティング活動全体のROI(投資対効果)も正当に評価されない、という悪循環に陥ってしまうのです。
そもそもリードナーチャリングにおけるスコアリングとは?
リードスコアリングの目的:「勘」に頼らない営業活動の仕組み化
リードスコアリングとは、見込み客(リード)一人ひとりの属性や行動に基づき、「受注確度がどれだけ高いか」を点数で可視化する仕組みです。これにより、営業担当者個人の経験や勘といった主観的な判断に頼ることなく、組織として客観的な基準でリードの優先順位を判断できるようになります。
例えば、「役職が部長以上なら+10点」「料金ページを閲覧したら+15点」といったルールをあらかじめ設定し、リードごとに合計点を算出します。そして、スコアが一定の基準(閾値:しきいち)を超えたリードを「ホットリード」として営業部門に引き渡す、といった運用が一般的です。
この仕組みを導入することで、営業は「今、誰にアプローチすべきか」が一目瞭然になり、マーケティングは「なぜこのリードが有望なのか」を数字で明確に説明できるようになります。
リードナーチャリングとの関係性:見込み客を「育てる」活動と「見極める」仕組み
リードナーチャリングは、メール配信やセミナー開催などを通じて、まだ購買意欲が低い見込み客との関係を構築し、興味・関心を高めていく「育てる」ための活動です。
一方、スコアリングは、そのナーチャリング活動の成果を定量的に測定し、「今、どのリードがどのくらい育っているのか」を客観的に「見極める」ための仕組みです。
この2つは車の両輪のような関係です。リードナーチャリングによってリードの興味を育て、スコアリングによってその育ち具合を正確に把握する。この連携があって初めて、「量」と「質」を両立した効率的なリード管理が実現できるのです。
なぜ今、リードスコアリングが営業とマーケの架け橋になるのか
課題1:営業と「有望なリード」の認識を具体的に合わせられる
リードスコアリング導入の最大の価値は、「有望なリード」の定義を社内で共通言語化できる点にあります。スコアリングの基準を設計するプロセスで、営業とマーケティングが「どんな行動や属性を持つリードが、本当に“熱い”のか」を徹底的に議論せざるを得ません。
このプロセスを通じて作られた共通の物差しは、部門間のコミュニケーションを劇的に改善します。「なぜこのリードを送ってきたんだ」という不満が、「スコアが〇〇点を超えたので、お願いします」という建設的な連携に変わっていくのです。
課題2:限られた営業リソースを、見込みの高い顧客に集中できる
優秀な営業担当者の時間は、企業にとって最も貴重な資源の一つです。すべてのリードに同じ熱量でアプローチするのは非効率的であり、現実的ではありません。
スコアリングを活用すれば、購買意欲が最も高まった瞬間のリードを的確に抽出し、優先的に営業へ引き渡せます。これにより、営業は無駄なアプローチを減らし、最も成果に繋がりやすい活動にリソースを集中投下できるようになるのです。また、スコアがまだ低いリードには、引き続きマーケティングがナーチャリングを行う、という戦略的な役割分担も可能になります。
課題3:マーケティング活動のROI(投資対効果)を数字で説明できる
「マーケティング予算を増やすからには、その成果を売上への貢献度で示してほしい」。経営層からこのように求められる場面は、ますます増えています。
スコアリングを導入すれば、「どの施策から生まれたリードが、どれくらいの期間で、何点のスコアになり、最終的にいくらの受注に繋がったか」という一連の流れをデータで可視化できます。これにより、マーケティング活動のROIを具体的な数字で示せるようになり、経営層や他部門に対する説明責任を果たしやすくなります。
【Sells upの視点】スコアリング導入の成否は「技術」ではなく「対話」で決まる
リードスコアリングと聞くと、「どのMAツールを使うべきか」「どんな指標を設定すれば精緻になるか」といった“技術論”に目が行きがちです。しかし、私たちが数多くの企業の現場をご支援してきた経験から断言できるのは、「スコアリングの成否を分けるのは、技術ではなく、部門間の“対話”の質と量である」ということです。
どれだけ高機能なツールを導入し、複雑なスコアリングモデルを構築しても、その背景にある「なぜ、この行動が重要なのか」という認識が営業とマーケティングでズレていては、現場で信頼されず、形骸化してしまいます。
むしろ、最初はシンプルなExcel管理でも構いません。重要なのは、「どんなリードを営業に渡せば、彼らが『よし、アプローチしよう!』と心から思えるのか」を、腹を割って議論し、共にルールを作り上げていくプロセスそのものです。この対話を重ねることこそが、スコアリングを単なる点数付けの作業から、売上を創出するための“生きた仕組み”へと進化させる唯一の道なのです。
リードスコアリングを成功に導く、実践的な5つのステップ
Step.1:目的の明確化 - 何を達成するためにスコアリングするのか?
まず最初に、「何のためにスコアリングを導入するのか」という目的を、関係者全員で明確に共有することから始めます。「営業効率の向上」「受注率アップ」「部門間連携の強化」など、目的によって設計の重点や見るべき指標は大きく変わります。
例えば、「営業から“質の低いリード”と言われる現状を打開したい」のであれば、営業が納得する基準作りが最優先です。一方で、「経営層にマーケティングの投資対効果を説明したい」のであれば、施策と受注の紐付けを可視化できる設計が求められます。この目的が曖昧なままでは、途中で議論が迷走し、誰も幸せにならない仕組みが出来上がってしまいます。
Step.2:営業部門との「対話」 - ホットリードの定義を徹底的にすり合わせる
スコアリング導入の成否は、ここで決まると言っても過言ではありません。営業が「今すぐ会いたい!」と思えるリード像(ホットリード)を、マーケティングと営業が膝を突き合わせて徹底的に言語化します。
例えば「決裁権者である」「直近6ヶ月以内の導入検討」「予算が確保されている」など、営業現場のリアルな声を吸い上げて、具体的な条件に落とし込みましょう。この定義が曖昧なままだと、スコアが高くても「期待と違う」となり、仕組みが形骸化してしまいます。
営業現場に眠る暗黙知を具体的な条件に落とし込む。この地道な作業こそが、スコアの信頼性を担保する上で非常に重要です。
Step.3:スコアリング項目の設計 - 3つの評価軸を自社に落とし込む
スコアリング設計では、一般的に「属性情報」「興味・関心」「行動の活性度」の3つの評価軸を用います。自社のビジネスに合わせて、各軸をどう設定するかが重要です。
評価軸1:属性情報(企業の業種・規模、担当者の役職など)
企業の基本的な情報です。自社の理想的な顧客像(ペルソナ)に合致するほど、高い点数を設定します。
企業の属性:業種、従業員規模、売上高など
担当者の属性:役職(決裁権の有無)、所属部署など
例えば、「従業員100名以上の企業は+10点」「役職が部長以上なら+15点」のように、過去の受注データと照らし合わせながら設定します。
評価軸2:興味・関心(Webサイトの閲覧ページ、資料ダウンロードなど)
見込み客が自社の製品やサービスに対して、どれだけ関心を示しているかを測る行動データです。購買意欲の高さを示す行動ほど、高い点数を付けます。
高関心アクション:料金ページの閲覧、導入事例のダウンロード、デモの申し込み
中関心アクション:特定の機能紹介ページの閲覧、セミナーへの参加
低関心アクション:ブログ記事の閲覧、メルマガの開封
例えば、「料金ページの閲覧は+15点」だが、「ブログ記事の閲覧は+3点」のように、行動の重みを明確に区別することが重要です。
評価軸3:行動の活性度(直近の活動、休眠期間など)
リードの「鮮度」を測るための軸です。たとえ過去に良い行動をしていても、長期間動きがなければ、関心が薄れている可能性があります。
ポジティブな活性度:30日以内のサイト再訪問、問い合わせ
ネガティブな活性度:90日以上Webサイトへのアクセスがない(減点対象)
「最終接触から90日経過で-20点」のように減点ルールを設けることで、常にアクティブなリードを優先できます。
Step.4:スコアの重み付けと、営業へ引き渡す閾値(しきいち)の設定
スコアリング項目が決まったら、それぞれの点数(重み付け)を決定します。重要なのは、「どのスコア以上なら営業に渡すか」という閾値(しきいち)を設けることです。
この基準は、営業とマーケティングで何度もすり合わせながら決めることが大切です。最初は仮の数値で運用し、実際の受注データをもとに定期的に見直すことで、精度を高めていきます。
Step.5:運用開始と定期的な見直し - PDCAで精度を高め続ける
スコアリングは「作って終わり」の仕組みではありません。市場や顧客、自社のサービスは常に変化します。一度作ったモデルも、時間と共に陳腐化していくのが自然です。
重要なのは、運用開始後に定期的な見直しの場を設け、PDCAサイクルを回し続けることです。
Check(評価):営業に引き渡したリードの商談化率や受注率はどうだったか?スコアと実績の間にズレはないか?
Action(改善):「スコアは高いが失注した案件」と「スコアは低いが受注した案件」を分析し、評価項目や点数、閾値に反映させる。
この改善サイクルを粘り強く回し続けることで、スコアリングの精度は磨かれ、組織全体の成果に貢献する強力な武器となります。
【Sells upの視点】MAツール導入前でも大丈夫!Excelで始めるスコアリング設計
「スコアリングを始めるには、高額なMA(マーケティングオートメーション)ツールが必須」と思い込んでいませんか?もちろん、ツールがあれば効率的ですが、その本質はツールなしでも実践できます。むしろ、ツール導入前にExcelやスプレッドシートで簡易的に運用し、自社なりの成功パターンを見つけることこそが、失敗しないための近道です。
BtoB SaaS企業向けスコアリングモデルのサンプル(テンプレート付き)
例えば、以下のようなシンプルなシートでスコアリングを始めることができます。各項目の点数は、Step.2で行った営業部門との対話に基づいて設定します。
評価軸 | 具体的項目 | スコア | 備考 |
---|---|---|---|
属性情報 | 役職が「部長」以上 | +15 | 決裁権者、または強い影響力を持つ可能性が高い。 |
従業員規模が100名以上 | +10 | 自社のメインターゲット層に合致する。 | |
メールアドレスがフリーメール | -20 | ビジネス目的での検討確度が低い可能性がある。 | |
興味・関心 | 料金ページを閲覧 | +15 | 導入を具体的に検討している強いシグナル。 |
導入事例をダウンロード | +10 | 課題解決のイメージを具体化しようとしている。 | |
ブログ記事を閲覧 | +3 | まだ情報収集の初期段階である可能性が高い。 | |
行動の活性度 | 30日以内にサイトへ再訪問 | +5 | 関心が継続している証拠。 |
90日間アクションなし | -20 | 関心が薄れているか、他社で検討が進んでいる可能性。 | |
特別アクション | デモをリクエスト | +50 | 最優先対応。即時ホットリード化。 |
「採用情報」ページを閲覧 | -50 | サービス利用者ではなく、求職者の可能性が高い。 |
スプレッドシートで管理する際の簡易テンプレートと運用ポイント
各リードの行動履歴や属性情報を、定期的にアップデート
営業への引き渡しタイミングや、その後の受注状況も記録
営業・マーケティング双方がアクセスできる共有環境で運用
月1回の定例ミーティングで、「スコアと実績のズレ」を確認・見直し
このような運用を繰り返すことで、ツール導入前でもスコアリングの効果を実感でき、社内の合意形成にもつなげやすくなります。
リードスコアリングで陥りがちな3つの失敗と、その解決策
失敗例1:「スコアは高いのに、全く受注につながらない」
スコアが高得点なのに、実際には商談化や受注に結びつかない——これは多くの現場でよくあるつまずきです。主な原因は、スコアリングの評価軸や重み付けが実態とズレていることです。例えば「資料ダウンロード」や「セミナー参加」に高得点を与えすぎてしまい、情報収集目的のリードが“ホット”と判定されてしまうケースが典型です。
【解決策】
受注に直結した行動・属性の見直し(過去受注データを分析し、実際に成約率が高い要素を優先的に加点)
営業現場の声を反映し、「本当に商談化しやすいリード」の特徴を再定義
スコアリングの項目や重み付けを定期的にアップデートし、PDCAを回す
失敗例2:「営業担当者がスコアを信頼せず、活用してくれない」
マーケティングが精魂込めて作った仕組みも、現場の営業担当者が「このスコアは当てにならない」「自分の感覚の方が正しい」と感じてしまえば、使われることなく形骸化してしまいます。
【解決策】
この問題の根源は、コミュニケーション不足にあります。スコアリングの設計段階から営業担当者を巻き込むのはもちろんのこと、運用開始後も「なぜこのリードがホットなのか」というスコアの根拠を丁寧に説明し続けることが重要です。また、スコアリングによって成果を上げた営業担当者の成功事例を社内で共有し、「スコアを使えば成果が出る」というポジティブな認識を広めていくことも効果的です。
失敗例3:「一度決めたルールを更新せず、仕組みが形骸化してしまう」
導入当初は意欲的に運用していても、日々の業務に追われるうちに、ルールの見直しが疎かになってしまう。これも非常によくある失敗です。ビジネス環境や顧客の行動は常に変化するため、半年前の最適なルールが、今も最適とは限りません。
【解決策】
「スコアリングは生き物である」という認識をチームで共有し、月次や四半期ごとなど、定期的に見直しを行う会議をカレンダーに組み込んでしまいましょう。その会議では、営業とマーケティングが双方の視点から「実際の受注状況」と「スコアの妥当性」を検証し、改善点について議論します。仕組みを維持するには、意志の力だけでなく、こうした「見直しをせざるを得ない仕組み」を作ることが大切です。
まとめ:スコアリングは、営業とマーケティングが同じ目標へ向かうための共通言語
リードナーチャリングとスコアリングは、単なる“数値化の仕組み”ではありません。両部門が「どんなリードを、どのタイミングで営業に渡すべきか」を具体的に議論し、合意形成を重ねるための“共通言語”です。
スコアリングを導入することで、「量から質へ」の転換が進み、営業とマーケティングが同じゴールを目指して協働できる土台が生まれます。最初から完璧なモデルを目指す必要はありません。まずは小さく始め、現場の声とデータをもとにアップデートし続ける——それが、マーケティング担当者が“質の低いリード問題”を本質的に解決し、営業成果を加速させるための最短ルートです。
ぜひ、この記事を参考に一歩を踏み出し、貴社のリードナーチャリングとスコアリングを“使える仕組み”に進化させてください。
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