リードナーチャリングとスコアリングの連携術|設計根拠・MQL閾値・SLAまで80社の支援経験を基に解説
「やっているのに成果が出ない」状態から抜け出すために
施策を続けているのに商談が増えない、リードの質が上がらない。 こうした課題の多くは、戦略と施策のつながりが設計されていないことが原因です。 Sells upは現状の分析と改善の優先順位整理から支援します。
リードナーチャリングにおけるスコアリングとは、見込み客(リード)の属性スコアと行動スコアを数値化し、営業アプローチの優先順位を客観的に判断するための仕組みです。
弊社にご相談いただく企業では、スコアリングを導入したものの「営業が使ってくれない」「半年も経たずに運用が止まってしまった」といったお悩みを抱えているケースが少なくありません。
こうした状況を防ぐには、スコアの設計理由とSLA(マーケティングと営業の引き継ぎルール)までを一体で設計することが、商談化率を左右する重要なポイントになります。
本記事では、属性スコア・行動スコアの設計の考え方から、MQL(Marketing Qualified Lead)閾値のAND条件、スコア減衰ルール、営業連携SLAの実務フローまで、80社以上のBtoBマーケティング支援を通じて得た知見をもとにお伝えします。
リードナーチャリングにおけるスコアリングとは何か
リードスコアリングとは、見込み客の属性情報と行動履歴に点数を付けることで、受注確度を定量的に可視化するためのモデルです。
このスコアリングモデルを設計する際に押さえておきたいのは、次の3つのステップです。
- 属性スコアで「自社の理想顧客像にどれだけ近いか」を評価する
- 行動スコアで「今この瞬間、購買意欲がどれくらい高まっているか」を評価する
- その合算値に基づいて、MQLとして営業に渡すかどうかを判断する
という構造です。経験や勘に頼ったリード判断のままでは担当者ごとのばらつきが大きくなり、担当が交代するたびに判断基準がわからなくなってしまいます。スコアリングを導入することで、組織として共通の物差しでリードランクを判断できるようになります。
スコアリングは、リードナーチャリング全体の流れの中に位置づけて設計することが大切です。リードナーチャリング全体の仕組みについては、リードナーチャリングの全体設計もあわせてご覧ください。
スコアリングがリードナーチャリングに必要な理由
スコアリングが不可欠になるのは、リードナーチャリングで育成した見込み客の「今の温度感」を数字で捉えられないと、営業に引き渡すタイミングを適切に判断できないからです。
メールの開封、資料ダウンロード、料金ページの閲覧といった行動は、いずれも購買意欲の高まりを示すシグナルになります。これらをスコアとして積み上げていくことで、「どのリードが今もっとも商談につながりやすいか」を数値で判断できるようになります。
具体的には、あらかじめ定めたスコア閾値を超えたリードをホットリードとして営業に即日引き渡し、それ以外のリードは引き続きナーチャリングシナリオで育成する、といった役割分担を仕組みとして回せるようになります。
スコアリングとリードジェネレーション・クオリフィケーションの位置づけ
BtoBマーケティングのプロセスは大きく、リードジェネレーション(獲得)、リードナーチャリング(育成)、リードクオリフィケーション(選別)の3段階に分けて考えられます。スコアリングは、このうち育成フェーズから選別フェーズへ移行するタイミングを自動的に判断する仕組みとして機能します。
スコアが一定の値に達したリードをMQLとして定義し、その後、営業が対応することでSQL(Sales Qualified Lead)へと引き継ぐ流れを設計することで、マーケティングと営業の役割分担の線引きを明確にできます。スコアリングがない状態では、この線引きが担当者の感覚に依存しやすく、部門間の認識のズレが商談機会の取りこぼしにつながります。
行動スコアと属性スコア:2つの評価軸の設計方法
スコアリングモデルの設計は、属性スコアと行動スコアという2つの評価軸で構成するのが、多くのBtoBマーケティングに取り組む企業において回しやすい形です。
属性スコアは「受注につながりやすいリード像」にどれだけ近いかを測る静的な指標であり、行動スコアは「今どれくらい関心が高まっているか」を測る動的な指標です。
MQLの判定は、この2軸をAND条件で見ることで、誤検知を抑えることができます。3軸(属性・関心・活性度)を用いるケースもありますが、「関心」と「活性度」はいずれも行動データから導き出される指標なので、実際には行動スコアとして一本化して設計したほうが運用はシンプルになります。
スコアリング全体の考え方や仕組みについては、リードスコアリングの仕組みと設計手順でも詳しくご紹介しています。
属性スコアの設計:業種・規模・役職の重み付けの考え方
属性スコアとは、リードの企業情報や担当者情報をもとに、自社の理想顧客像(ICP:Ideal Customer Profile)への当てはまり具合を点数化したものです。スタート地点としては、過去の受注データを振り返り、「どの業種・企業規模・役職のリードが成約しやすかったのか」を確認するところから始めます。
以下は、弊社がBtoB SaaS企業をご支援する際によく採用している初期値の一例です。自社の受注データと照らし合わせて調整する前提で参考にしてみてください。
| 評価項目 | 条件 | スコア(初期値の例) |
|---|---|---|
| 役職 | 部長以上・事業責任者 | +15pt |
| 役職 | 課長・マネージャー | +8pt |
| 従業員規模 | 50〜300名 | +10pt |
| 業種 | 自社の主要受注業種 | +10pt |
| メールアドレス | フリーメール(Gmail等) | -20pt |
属性スコアだけではリードの購買意欲までは測れないため、必ず行動スコアとのAND条件で使います。弊社の支援では、属性スコアの合計が20pt以上であることをMQL判定の最低条件として置くケースが多いものの、この数値はあくまでスタートラインであり、必ず自社の受注データと照らし合わせて調整していくことが前提になります。
行動スコアの設計:購買シグナルと相関の高い行動を優先する
行動スコアとは、リードのWeb上の行動やメールでの反応、コンテンツとの接触状況などを点数化し、購買意欲の高まりを数字で追えるようにしたエンゲージメントスコアのことです。設計の基本原則は、「受注との結びつきが強い行動に高いスコアを割り当てる」ことです。
これまで弊社が支援してきたデータをもとに傾向を整理したところ、おおよそ次のような強弱が見えてきました。
| 行動種別 | 点数の目安(例) | 受注との結びつき(傾向) |
|---|---|---|
| フォーム送信・お問い合わせ | +25pt(即トス推奨) | 非常に高い |
| 料金ページ・事例ページ閲覧 | +15pt | 高い |
| 資料ダウンロード | +20pt | 高い |
| 事例・導入ページ閲覧 | +10pt | 中程度 |
| メールCTR(リンククリック) | +5pt | やや低い |
| メール開封 | +2pt | 低い |
メール開封に高い点数を付けている設計を目にすることがありますが、開封そのものは受注との結びつきがそれほど強くなく、高得点を割り当てると「メルマガだけはよく読むが商談意欲はない」リードがホットリードとして上がってきてしまいます。スコアの配分は、受注との結びつきの強さに応じてメリハリを付けていくほうが機能しやすいと感じています。
スコア設計に根拠を持たせる方法
スコアリングの設計に説得力を持たせるためには、過去の受注データと行動データをロジスティック回帰分析などで検証し、各行動が受注確率にどの程度影響しているかを把握しておくと役立ちます。
弊社がある支援でデータを分析した際、行動データをRFE指標(Recency:直近の行動タイミング、Frequency:行動頻度、Engagement:行動の質)に分解して重みを算出したところ、Engagementがもっとも強く効き、その次にRecency、最後にFrequencyという順番で影響している傾向が見られました。この結果は、「直近の質の高い行動」が受注に強く効くという感覚値を裏付けるもので、スコア設計時の重み付けの参考にしています。
とはいえ、最初から十分なデータが揃っていないケースも多いと思います。その場合は、営業担当者に「受注したお客様は、検討の前後でどんな行動をしていたか」をヒアリングし、仮のスコアを置いて運用しながら精度を高めていくやり方がおすすめです。弊社でも「データがないとスコアリング設計はできない」と思い込んでいたのですが、営業へのヒアリングを20分ほど行うだけで、仮のスコア設計の半分くらいは決められると気づいてから、設計のスピードがかなり変わりました。
スコアリングの具体的な設計手順
スコアリングの設計は、Step.1から順番に進めることで抜け漏れを防ぎやすくなります。多くの企業が、いきなりStep.2の点数付けから着手してしまいがちですが、Step.1のデータ確認を飛ばすと「なんとなく決めた点数」になり、結果的に営業シーンで活用できる水準にならない可能性が高くなります。
Step.1:受注データから「受注確度の高いリード」の特徴を洗い出す
スコアリング設計の出発点は、MA(マーケティングオートメーション)ツールやSFAに蓄積された過去の受注データを振り返ることです。具体的には、過去12〜24ヶ月の受注顧客を抽出し、「業種・企業規模・担当者の役職」「初回接触から受注までの日数」「受注直前に取っていた行動」の3点を確認します。
これを通じて、自社ならではの「受注確度の高いリード像」が見えてきます。あわせて営業へのヒアリングも並行して行い、「この業種は担当者決裁になりやすい」「この規模の企業は検討期間が短い」といったデータに出てこない暗黙知も、属性スコアの設計に取り込んでいきましょう。
Step.2:コンバージョンポイントごとにスコア値を設定する
コンバージョンポイントとは、見込み客が具体的な行動を起こす接点のことです。それぞれの接点ごとに、購買意欲の高さに応じて異なる点数を設定していきます。
このときの判断軸は、「その行動を取った人が、最終的にどのくらいの割合で受注につながっているか」です。フォーム送信やお問い合わせなど、すでに営業が必ず対応するアクションについてはスコアリングの対象から外し、「即トス」として扱うことが多いです。スコアの加減算は、その手前の行動(ページ閲覧・資料ダウンロード・メールの反応など)に絞ったほうが設計しやすくなります。
各行動ごとの具体的なスコア設定の考え方については、スコアリングルールの具体的な設定方法も参考にしてみてください。
Step.3:属性スコアと行動スコアのAND条件でMQL閾値を設定する
MQL(Marketing Qualified Lead)の判定条件は、属性スコアと行動スコアの合計点ではなく、それぞれのスコアが一定以上に達しているかをAND条件で見ることをおすすめします。
行動スコアだけが高い場合、自社の対象外となる業種・企業規模のリードが競合調査目的で情報収集しているだけ、というケースをホットリードとして誤認してしまうリスクがあります。一方で属性スコアだけが高い場合は、たしかに理想顧客像には近いものの、現時点では検討が全く進んでいない段階かもしれません。そのタイミングで営業がアプローチすると、かえって関係性を損ねてしまう可能性もあります。AND条件にすることで、こうした両方のリスクをバランスよく避けることができます。
弊社がBtoB SaaS企業をご支援する際には、「属性スコア20pt以上 かつ 行動スコア40pt以上」といった初期値を置くことが多いですが、あくまで議論のスタート地点で、実際の商談化率や受注率を見ながら、四半期ごとに微調整していく必要があります。
MQLの具体的な設定基準やSQLへのつなぎ方については、MQL判定基準の詳細設計で体系的に整理しています。
Step.4:スコア減衰ルールを設計して鮮度を保つ
スコア減衰とは、一定期間アクションがないリードのスコアを自動的に減点していくルールのことです。減衰ルールがない設計だと、1年以上前の行動で積み上がったスコアがそのまま残り続けてしまい、実態とかけ離れたリードがいつまでもホットリード扱いされる状態になります。
弊社の支援では、Webアクセスやメールの反応が半年ほど途絶えているリードに対して、一定の減衰をかけるルールを初期設定として採用しています。多くの企業において、一定期間まったく反応がないリードほど受注への結びつき(相関)が弱まっていく傾向があり、そのルールに落とし込んだものです。
スコアリセット(スコアをゼロに戻す)については、受注・失注が確定したリードや、「情報収集のみで検討予定はない」といった明確な意思表示があった場合に限定して実施したほうが、その後の運用がスムーズになります。
スコアリングが形骸化する3つのパターンと対策
スコアリングが形骸化してしまう原因は、スコアの設計そのものというよりも、多くの場合「設計後の運用体制」にあります。弊社にご相談いただいた企業の中にも、かなり細かくスコア設計をしたにもかかわらず、3ヶ月ほどで運用が止まってしまっているというケースが複数あり、その多くは次の3パターンに当てはまっていました。
スコアリングとナーチャリングシナリオを連動させて形骸化を防ぐ方法については、ナーチャリングシナリオとの連携設計も参考になると思います。
パターン①:スコア設計がマーケティング部門だけで完結している
スコアリングの設計をマーケティング部門だけで進めてしまうと、「営業が実際にホットだと感じるリード像」とズレた基準になってしまう可能性が高くなります。マーケティングはどうしてもWeb上の行動データに目が行きがちですが、営業は「決裁権を持っているか」「課題解決に対する緊急度」「予算の有無」など、定性的な情報を重視します。
ある支援先では、マーケティングが単独でスコアリングを設計し、運用を始めて1ヶ月ほど経ったタイミングで、営業から「このリード、3ヶ月前にお断りしたお客様ですよ」と指摘されたことがあり、スコア設計をすべて見直すことになりました。
こうした状況を避けるためには、最初の設計段階から営業に入ってもらい、「スコア○○点以上のリードに実際に当たってみてどうだったか」を毎月振り返る場を作ることが有効です。マーケティングと営業が一緒に設計を更新していくプロセスそのものが、スコアへの信頼や効果を育てていきます。
パターン②:スコア閾値が高すぎて誰もホットリードにならない
「本当に温度感の高いリードだけ渡したい」という思いが強すぎると、スコアの閾値を高く設定しすぎてしまうことがあります。その結果、月間のホットリード数が0〜1件程度に留まり、「仕組みとして動いているのかどうか分からない」という状態になってしまいます。この状態が続くと、「スコアリングをやっても意味がない」という空気になり、運用自体が止まってしまうこともあります。
まずは閾値をやや低めに置き、一定数のホットリードを意図的に発生させたうえで、実際の商談化率を見ながら少しずつ引き上げていくほうが、結果的に商談数や受注数は多くなります。精度を最初から完璧にしようとするよりも、「ちゃんと動いている状態をつくる」ことを優先したほうが、結果的にスコアリングが組織に根付きます。
パターン③:スコア可視化の仕組みがなく営業が確認しない
スコアリングを実際に活用してもらうには、営業担当者が普段の業務の流れのなかで、自然とスコアに触れられるようにしておくことが重要です。MAツールのダッシュボードをわざわざ開かないとスコアが見られないような設計だと、忙しい営業担当者ほど確認を後回しにしてしまいます。
ホットリードが発生したタイミングで、Slackやメールで担当営業に自動通知が飛ぶように、MAツールのアラート機能を設定しておくと、日々のワークフローの中に自然とスコア情報を組み込めます。こうした仕掛けを入れておくと、「時間があるときにダッシュボードを見に行く情報」から、「自分の手元に届く情報」へと変わり、スコアが実際に参照される頻度が大きく変わってきます。
営業連携を機能させるSLAの設計
SLA(マーケと営業の引き継ぎルール)とは、マーケティングがMQLと判断したリードを営業に渡す際のルールや責任範囲、フィードバックの仕方を整理し、合意したものを指します。
SLAがない組織では、「マーケティングは『渡したのに動いてくれない』と感じる一方、営業は『温度感が低いリードが急に回ってきた』と感じる」というすれ違いが何度も起きます。SLAで押さえておきたい項目は、
- トス基準:どのスコアのリードを渡すか
- 対応期限:営業が何時間以内に初回対応するか
- フィードバック:商談化・失注の結果をどうマーケに戻すか
の3つです。
SLAに定めるべき3つの項目
| SLA項目 | 定義内容 | 設定例 |
|---|---|---|
| ①トス基準 | どのスコア・条件でマーケティングから営業にリードを渡すか | 属性スコアと行動スコアの両方が閾値を超えた時点でホットリードとしてトス |
| ②対応期限 | 営業がMQLを受け取ってから最初のアクションを起こすまでの期限 | 通知受信から24時間以内に初回コンタクト |
| ③フィードバック | 商談化・失注の結果とその理由をマーケティングに返す方法 | SFA上で商談化/失注の理由コードを入力し、月次でマーケティングに共有 |
SLAはマーケティング部門が一方的に決めるのではなく、営業マネージャーや担当者とすり合わせたうえで合意することが、機能させるうえで欠かせないポイントです。また、一度決めたら終わりではなく、四半期ごとに商談化率などを見ながら、トス基準や対応期限を見直していくサイクルを組み込んでおくと運用が安定しやすくなります。
HOT判定からトスアップまでの実務フロー
HOT判定をしてから営業にトスアップするまでの流れは、次の5ステップで設計すると整理しやすくなります。
- リードの購買シグナルとなる行動を検知し、スコアを自動加算する
- 行動スコアが閾値に達したタイミングで、MAツールからアラートを発火させる
- 属性スコアとのAND条件を満たした時点で、HOT判定を確定させる
- SLAに沿って、担当営業に自動通知(Slack・メールなど)を送る
- 営業がアプローチし、商談化/失注の結果をSFAに入力、必要な情報をMAへ返す
トスアップの設計や部門連携の具体的な進め方については、マーケから営業へのトスアップ設計でも詳しく解説しています。
MAツール別スコアリング設定の考え方
スコアリングの基本的な考え方は共通ですが、実装するMAツールによってスコアリング機能の仕様や制約が異なります。そのため、使っているツールの特徴を踏まえて設計することが大切です。
ざっくりとした特徴でいうと、HubSpotはカスタムスコアリングの自由度が高く、Account Engagement(旧Pardot)はスコアとグレードの2軸設計が標準機能として備わっており、Marketoは大量リードを前提にルールベースで細かく設計するのが得意、といった違いがあります。
HubSpotのスコアリング設定の特徴
HubSpotでは「カスタムスコアリング」機能を使って、属性や行動ごとに加点・減点のルールを柔軟に設定できます。スコアはコンタクトのプロパティとして保持されるため、SFAとの連携も比較的スムーズです。
一方で、HubSpotはプランによって利用できるスコアリング機能の範囲が異なります。複雑なスコアリングルールを組む予定がある場合は、現在利用しているプランでどこまで対応できるか、事前に最新の機能一覧を確認しておくと安心です。
Account Engagementのスコアリングカテゴリの役割
Account Engagement(旧Pardot)には、スコア(行動の蓄積)とグレード(属性の適合度)の2軸が標準機能として用意されており、本記事で紹介したようなAND条件に近い設計を、そのままツール仕様として組み込めます。また、スコアリングカテゴリ機能を使うと「製品Aに対する行動」「製品Bに対する行動」といった単位でスコアを分けて管理できるため、複数プロダクトを展開しているBtoB企業には特に相性が良いです。
弊社が支援したSmartHR様では、複数のアプリケーションを提供するアプリストアという特性を踏まえ、Account Engagementのスコアリングカテゴリを活用して、各アプリへの興味度を個別に評価する設計を導入しました。行動データをベースにしたトリガーメールも併せて実装した結果、マーケティングチーム全体の取り組みとして、約1年間で問い合わせ数が大きく伸びる成果につながりました。

Marketoのスコアリング設計のポイント
Marketoのスコアリングは、スマートキャンペーンを使ってルールベースで設計していくのが基本です。行動トリガーと属性フィルタを組み合わせることで、細かな条件に応じてスコアを自動で加減算していくことができます。リードの件数が多い企業や、セグメントごとに異なるスコアリングロジックが必要な場合に、特に力を発揮します。Marketoではスコア用のフィールドを複数作成できるため、「製品ごとのスコア」「部門ごとのスコア」といった並列設計も可能です。
スコアリングのPDCA改善サイクルの回し方
スコアリングモデルは、一度作って終わりではなく、定期的に見直していくことで精度を高めていく前提で考えるのが現実的です。市場や商材、競合環境は常に変化していくため、数ヶ月前に最適だった設計が、そのまま今も最適とは限りません。実務では、月次レビューで指標を確認し、一定以上のズレを検知したタイミングでモデルを更新する、という二段構えの運用が回しやすいと感じています。
月次レビューで確認すべき3つの指標
①MQL数と商談化率の変化
まずは、MQL数の推移と商談化率の変化をチェックします。MQL数がこの数ヶ月で大きく増減していたり、商談化率が明らかに下がり始めているような場合は、スコア設定や閾値が現状に合わなくなってきているサインと捉えます。
②「高スコア未受注」の分析
次に、スコアは高かったのに最終的には失注・辞退となったリードを洗い出し、どのような共通パターンがあるかを見ていきます。たとえば弊社の支援先では、セミナー参加に高いスコアを付けていた結果、「毎回セミナーには参加するが、購買意欲は低い情報収集目的のリード」がスコア上位に並んでしまったケースがありました。このようなパターンが見つかったときが、スコア配分を見直すタイミングになります。
③「低スコア受注」の分析
逆に、スコアはそれほど高くなかったのに受注に至ったリードの特徴も確認します。そこから「実は重要だった購買シグナル」や「見落としていた条件」が見つかることも多く、その気づきを次回のスコア設計の見直しに活かしていきます。
スコアリングモデルを更新するタイミングの判断基準
スコアリングモデルをいつ見直すかについて、弊社の支援では次の3つの条件のいずれかを満たしたタイミングで更新を検討することが多いです。
- 商談化率が前四半期比で目安として10ポイント前後下がった場合
- ウェビナーや展示会、新しいコンテンツの投入などによりリードの行動パターンが変わったと感じられる場合
- 狙うべき業種や企業規模が変わるなど、ターゲット戦略に大きな変更があった場合
の3つです。
モデルを見直す際には、変更前後でMQL数や商談化率がどう変化したかを記録しておくと、「どの調整が効いたか」を後から振り返りやすくなり、次の改善につながります。
事例:スコアリング設計と行動連動でアプリへの問い合わせが大幅増加
弊社がご支援したSmartHR様のケースでは、Account Engagement(旧Pardot)を導入したものの、社内に十分な運用経験を持つメンバーがいなかったため、初期設定の段階で止まってしまっている状況からプロジェクトがスタートしました。支援の中心となったのは、複数のアプリケーションに対応したスコアリング設計と、行動データに基づくトリガーメールの実装です。
初期設定の開始から約1ヶ月で最初のメルマガ配信にこぎつけた後、各アプリごとの興味度を個別に評価するスコアリングカテゴリを設計し、SmartHRユーザーの行動データをもとにしたトリガーメールを順次立ち上げていきました。同時に、各アプリに対応した問い合わせフォームをAccount Engagement上に構築し、スコアリングと問い合わせの導線を一体化させています。
その結果、マーケティングチーム全体の取り組みとして掲げていた問い合わせ数の目標に対し、おおよそ1年間で大きな伸びを実現することができました。スコアリング単体で成果が出たというよりも、スコアリング設計とトリガーメール、フォーム整備をセットで考えたことが、問い合わせ増加につながったと感じています。Salesforceとのデータ連携まわりの知見は、社内の別部門から直接相談が来るほど認知されるようになりました。

まとめ
本記事では、リードナーチャリングにおけるスコアリングの設計の考え方から、営業連携をスムーズにするSLAの作り方までを、一通り整理してご紹介しました。スコアリングの本質は単に点数を付けることではなく、「どのリードを、いつ、誰に渡すのか」をマーケティングと営業が共通の基準で判断できるようにすることにあります。
- 属性スコアと行動スコアのAND条件によるMQL判定
- スコア減衰の設計
- SLAによるトスアップフローの明文化
この3つが揃って初めて、スコアリングは営業の動きを変える仕組みとして機能します。
どれか1つでも欠けていると、「せっかく設計したのに誰も使わない」という状態に陥りがちです。本記事でご紹介した数値や閾値はいずれも、BtoBマーケティングに取り組む企業をご支援する中での経験値にもとづく参考値ですので、自社の商材や検討期間、実際の受注データを踏まえて調整していく前提で捉えていただければと思います。
スコアリングの設計は、PDCAを回しながら精度を高めていくことを前提にスタートするのがおすすめです。最初から完璧なモデルを目指すのではなく、まずは「動く状態」をつくり、月次レビューで実績と照らし合わせながら少しずつ調整していく姿勢が、長く機能するスコアリング運用につながります。
よくある質問
顧客のスコアリングとは何ですか?
顧客のスコアリングとは、見込み客(リード)の属性情報と行動履歴に点数を付け、受注確度を定量的に評価するためのスコアリングモデルです。スコアが高いリードをホットリードとして営業に優先的にアプローチしてもらうことで、限られた営業リソースを効率的に配分できます。
ナーチャリングとは具体的に何ですか?
ナーチャリング(リードナーチャリング)とは、まだ購買意欲が高くない見込み客に対して、メール配信やコンテンツ提供、セミナー開催などを通じて継続的に接点を持ち、購買意欲を少しずつ高めていく活動のことです。スコアリングは、そのナーチャリングの成果を数字で可視化し、「どのリードが営業に渡せる状態になったか」を判断するための仕組みとして機能します。
リードナーチャリングとは何ですか?
リードナーチャリングとは、リードジェネレーション(獲得)で集めた見込み客に対して、コンテンツや施策を通じて継続的にアプローチし、最終的に商談・受注へとつなげていく一連のプロセスを指します。特に、購買検討期間が長くなりやすいBtoBマーケティングでは、リードナーチャリングが受注率に大きな影響を与える重要な施策です。
スコアリングの閾値はどう決めればよいですか?
スコアリングの閾値は、過去の受注データと商談化率を参考にしながら決めていくのが、もっとも現実的で精度の高い方法です。弊社では、属性スコアと行動スコアの両方が一定値を超えたときにMQLとみなすAND条件を出発点として設定し、実際の商談化率を月次レビューで確認しながら少しずつ調整していく運用を取ることが多いです。閾値を高くしすぎると、月に0〜1件しかホットリードが出ないような状態になりがちなので、最初はやや低めに置いて様子を見るほうがうまくいきやすいと感じています。
スコアリングを設計したのに営業が使ってくれない場合はどうすればよいですか?
営業がスコアリングを活用してくれない背景には、多くの場合、設計段階で営業が関わっておらず、スコアに対する信頼が育っていないという問題があります。スコアリングの設計フェーズから営業マネージャーに入ってもらい、「スコア○○点以上のリードに実際にアプローチしてみてどうだったか」を月次で振り返る場を設けることで、スコアへの納得感が生まれやすくなります。また、ホットリード発生時に自動で通知が飛ぶ仕組みを用意しておくと、営業側の「わざわざ見に行く手間」を減らすことができ、結果としてスコアが使われやすくなります。
スコア減衰はどの程度の設定が適切ですか?
スコア減衰の設定は、自社の商材の検討期間やリードの動き方によって変わってきます。弊社の支援案件では、Webアクセスやメールの反応が半年ほど途絶えたタイミングで減衰をかけるルールを採用するケースが多いですが、あくまで一つの目安です。検討期間が短い商材の場合は、3ヶ月程度を目安とすることもあります。スコアリセット(スコアをゼロに戻す)については、受注・失注が確定したときや、オプトアウトされたときなどに限定するほうが、後々の運用で混乱が少ない傾向があります。
「やっているのに成果が出ない」状態から抜け出すために
施策を続けているのに商談が増えない、リードの質が上がらない。 こうした課題の多くは、戦略と施策のつながりが設計されていないことが原因です。 Sells upは現状の分析と改善の優先順位整理から支援します。
CONTACT