MAツールの導入・活用の相談はSells upへ。

MAツールの導入や、導入後の成果最大化に課題をお持ちでしたら、ぜひSells upにご相談ください。50社以上の導入・活用を支援してきた担当者が貴社の状況・目標に向き合い、最適なツールの導入プラン / 統計知識を用いた活用プラン描き、戦略策定から実装 / 実行 / 効果測定までをご支援いたします。

目次

「Account Engagementを導入したものの、高価なメルマガ配信ツールになってしまっている」 
「他社はどのように活用して、営業連携や商談化率向上を実現しているのだろうか」 
「機能が多すぎて、自社では何から手をつければ良いかわからない」

BtoB企業のマーケティング担当者やマネージャーの方であれば、このような悩みを抱えているケースは少なくありません。Account Engagement(旧Pardot)は、Salesforceと連携することでBtoBマーケティングの成果を増大させる可能性がありますが、その機能を十分に引き出すには、明確な戦略と適切な運用体制が不可欠です。

本記事では、Account Engagementを活用して具体的な成果を上げている国内企業7社の事例を詳しく解説します。さらに、それらの事例を横断的に分析することで見えてきた「成功企業に共通する5つの原則」と、陥りがちな「失敗の回避策」を体系的に整理します。

他社の事例を「すごい」で終わらせず、貴社での活用レベルを引き上げるための具体的なヒントを掴んでいただければ幸いです。

Account Engagementとは? BtoBマーケティングにおける位置づけ

事例を見ていく前に、Account EngagementがBtoBマーケティングにおいてどのような役割を果たすツールであるかを整理しておきましょう。

Salesforceが提供するBtoB特化型MAツール

Account Engagement(旧称Pardot)は、Salesforceが提供するBtoB向けのマーケティングオートメーション(MA)ツールです。その役割は、リード(見込み顧客)の獲得から、育成(ナーチャリング)、選別、そして営業部門への引き渡しまでの一連のプロセスを自動化・効率化し、データに基づいて最適化することにあります。

特に、検討期間が長く、複雑な購買プロセスを経るBtoBビジネスにおいて、顧客一人ひとりの検討状況に合わせた継続的なコミュニケーションを実現する上で有効です。

Salesforce(SFA/CRM)連携による顧客情報の一元管理

Account Engagementの価値を最大化する上で、Salesforce(SFA/CRM)との連携は重要です。他のMAツールと比較した場合の最大の優位点は、この「シームレスな連携」にあります。

マーケティング部門が把握する「Web上の行動履歴」や「メールの反応」と、営業部門が把握する「商談の進捗状況」や「顧客の詳細な属性情報」を、リアルタイムかつスムーズに統合できます。

これにより、部門間の情報格差が解消され、顧客に対して一貫性のあるアプローチが可能になります。例えば、営業担当者は商談前に顧客のWebアクセス履歴を確認することで、提案の精度を高めることができます。

【Sells upの視点】 
MAとSFAの連携は、単なるデータ連携以上の意味を持ちます。ツール連携を行うことで、分断されがちなマーケティングと営業という二つの組織が、同じデータを見ながら「共通言語」で対話できるようになります。顧客情報を一元管理することは、両部門が共通の目標(売上・利益)に向かって協働するための最初のステップとなります。データが分断されている状態では、部門間の連携は決して進みません。

リード育成(ナーチャリング)を実現する主要機能

Account Engagementには、効率的かつ効果的なリードナーチャリングを実現するための多様な機能が搭載されています。

  • スコアリングとグレーディング:リードの行動(例:料金ページの閲覧)に基づき「関心度」を測るスコアリングと、属性(例:役職、企業規模)に基づき「自社ターゲットとの合致度」を測るグレーディングにより、アプローチの優先順位を自動で判断します。

  • Engagement Studio(エンゲージメントスタジオ):顧客の行動や属性に応じた複雑なシナリオを設計・自動化できます。段階的な情報提供や、条件分岐によるアプローチの最適化が可能です。

  • メールマーケティングと動的コンテンツ:セグメント配信はもちろん、リードの属性情報に合わせてメールやWebページの内容を自動で出し分ける「動的コンテンツ」機能により、高度なパーソナライズを実現します。

  • フォーム・ランディングページ作成:専門知識がなくても、リード獲得のためのフォームやランディングページを容易に作成・設置できます。

  • レポーティングと分析(B2B Marketing Analyticsなど):Salesforceのキャンペーン機能と連携することで、施策ごとの効果測定やマーケティングROIの可視化が可能です。

【課題・業種別】Account Engagementの国内導入・成功事例7選

ここからは、Account Engagementを導入し、具体的な課題解決と成果創出を実現した国内企業の事例を7つご紹介します。各社が直面した課題、実施した施策、得られた成果を具体的に解説し、Sells up独自の視点で成功のポイントを考察します。

事例1:IT・情報通信業|営業とマーケティングの連携強化で商談化率30%向上

導入前の課題:部門間の断絶とリードの放置

部門間の連携が取れておらず、マーケティングが獲得したリードを営業に渡しても、「確度が低くフォローしきれない」という声が多くありました。結果として、リードが放置されるケースも散見されました。

施策:スコアリングによるMQL定義と自動通知の仕組み化

  • 使用した主な機能:スコアリング、グレーディング、自動化ルール、Salesforce連携

  • 実施内容

    • Step.1:営業とマーケティング合同でMQL(Marketing Qualified Lead:マーケティングが創出する質の高いリード)の定義を明確化(例:「料金ページ閲覧で+10点」「役職がマネージャー以上でグレードA」など)。

    • Step.2:合意した定義に基づき、Account Engagement上でリードを自動評価する仕組みを構築。

    • Step.3:一定のスコアとグレードを超えたリードのみをMQLと認定し、自動化ルールを用いて担当営業へ即時通知(SalesforceのToDo発行やChatter通知)するよう設定。

成果

MQL数が導入前の2.5倍に増加し、その後の商談化率は30%向上しました。営業部門からも「アプローチすべきタイミングが明確になった」「質の高いリードに集中できるようになった」との評価を獲得しました。

【Sells upの視点】 
この事例の成功要因は、ツール設定の前に「部門間の合意形成」に時間をかけた点にあります。多くの企業で営業連携がうまくいかない原因は、ツールではなく、ルールがないことや不透明である点にあります。MQLの定義をマーケティング部門だけで決めるのではなく、営業部門を巻き込み、双方が納得する「共通言語」を作ることが、Account Engagementによる営業連携強化のポイントです。

事例2:製造業|休眠顧客の掘り起こしで年間30件の有効商談を創出

導入前の課題:展示会名刺リストの死蔵化

過去の展示会で獲得した大量の名刺リストが、担当者のPCやデスクで管理されており、全社的な資産として活用されず、休眠顧客となっていました。

施策:Engagement Studioによる段階的なナーチャリングシナリオ

  • 使用した主な機能:Engagement Studio、動的リスト、メールマーケティング

  • 実施内容

    • Step.1:散在していた名刺データをAccount Engagementに集約・デジタル化し、過去の接触履歴を整理。

    • Step.2:休眠期間や業種に基づき、リードをセグメント化(動的リスト)。

    • Step.3:Engagement Studioを用いて、段階的な情報提供シナリオを設計(例:業界動向レポート→製品事例→個別相談会案内)。メールの反応に応じてシナリオを分岐させ、関心が高まったリードを抽出。

成果

休眠顧客からの問い合わせが活性化し、年間で30件以上の有効商談を創出。新規リード獲得コストを抑えつつ、既存資産の活用効率が大幅に向上しました。

【Sells upの視点】
休眠顧客の掘り起こしは、ペルソナとカスタマージャーニーの解像度が成果を分けます。Engagement Studioは優秀なシナリオツールですが、その効果は「誰に、何を、どの順番で届けるか」という設計に依存します。単にメルマガを一斉配信するのではなく、顧客視点に立ち、押し付けにならない情報提供を心がけることがポイントです。

事例3:サービス業|セミナー後のフォロー自動化で商談化率87%向上

導入前の課題:手作業によるフォローの遅延と工数増大

セミナーやウェビナー開催後のフォローアップ(お礼メール送付、資料配布など)を手動で行っており、担当者の工数を圧迫していました。また、対応の遅れや漏れによる機会損失も発生していました。

施策:参加状況に応じたフォローアップシナリオの完全自動化

  • 使用した主な機能:Engagement Studio、フォーム/フォームハンドラー、Salesforceキャンペーン連携

  • 実施内容

    • Step.1:セミナー申し込みフォームとAccount Engagementを連携。

    • Step.2:セミナーの出欠状況(Salesforceキャンペーンメンバーの状況)に基づき、リストを自動分岐。

    • Step.3:参加者には終了直後にお礼とアンケートを自動配信。不参加者にはアーカイブ動画案内を自動配信。

    • Step.4:アンケート回答内容に応じて、さらにフォローシナリオを分岐させ、営業連携までのスピードを高めた。

成果

セミナー経由の商談化率が87%向上しました。また、フォローアップにかかる工数を月間20時間以上削減することにも成功しました。

【Sells upの視点】
BtoBにおける顧客体験の向上は、「スピード」と「一貫性」によってもたらされます。特に熱量の高いセミナー直後のフォローは、その後のエンゲージメントに大きく影響します。自動化による即時対応と、人手を介さないことによる漏れのない一貫したフォローは、顧客との信頼構築の基盤となります。効率化だけでなく、顧客満足度の向上にも寄与する施策です。

事例4:専門コンサル業|ROI可視化により広告費用対効果が50%改善

導入前の課題:施策ごとの貢献度が不明瞭

Web広告、セミナー、コンテンツマーケティングなど複数の施策を実施しているものの、どの施策がどれだけ受注に貢献しているのかが不明瞭でした。そのため、予算配分や活動の優先順位付けが経験と勘に頼っていました。

施策:キャンペーン連携とレポートによるROIの定量的把握

  • 使用した主な機能:Salesforceキャンペーン連携(コネクテッドキャンペーン)、キャンペーンインフルエンス、B2B Marketing Analytics (B2BMA)

  • 実施内容

    • Step.1:Salesforceの「キャンペーン」機能の運用ルールを整備し、全てのマーケティング施策をキャンペーンとして管理(コネクテッドキャンペーン設定)。

    • Step.2:リードが商談化・受注した際に、キャンペーンの貢献度(キャンペーンインフルエンス)を自動計測する設定を有効化。

    • Step.3:B2BMA(またはSalesforceレポート)を活用し、施策ごとのリード獲得数、商談化金額、受注金額、ROIをリアルタイムで可視化。

成果

施策ごとの投資対効果が定量的に把握できるようになり、広告費用対効果が50%改善。データに基づき、成果の高い施策へ予算とリソースを集中できるようになりました。

【Sells upの視点】
ROIの可視化は、経営層への説明責任を果たすためだけでなく、現場の意思決定の質を高めるためにも非常に重要です。データは単に「見る」だけのものではなく、「次の一手を決めるための判断材料」として活用されるべきです。キャンペーン機能の適切な運用は、データドリブンな組織文化を醸成する上で欠かせません。

事例5:人材サービス業|パーソナライズによるエンゲージメント向上で問い合わせ数1.8倍

導入前の課題:画一的なアプローチによる反応率の低下

多様な業種・職種の顧客をターゲットとしているにもかかわらず、全ての見込み客に画一的なメールしか配信できていませんでした。結果として、メールの反応率やWebサイトへの誘導率が伸び悩んでいました。

施策:動的リストとパーソナライズによるアプローチ最適化

  • 使用した主な機能:動的リスト、ダイナミックコンテンツ(動的コンテンツ)、メールマーケティング

  • 実施内容

    • Step.1:Account Engagementの「動的リスト」機能を活用し、業種、職種、検討フェーズといった条件でリードをリアルタイムにセグメント化。

    • Step.2:「ダイナミックコンテンツ」機能を使用し、メールの本文や紹介する事例コンテンツなどを、受信者の属性に合わせて自動で出し分ける設定を実施。

    • Step.3:A/Bテストを継続的に実施し、どのパーソナライズが効果的かを検証。

成果

メール開封率が平均10ポイント向上し、クリック率は1.5倍に増加。パーソナライズされたアプローチにより、Webサイトからの問い合わせ数が1.8倍に増加しました。

【Sells upの視点】
BtoBマーケティングにおいても、顧客を「集団」ではなく「個」として捉える視点がエンゲージメントを高めます。Account Engagementのダイナミックコンテンツ機能は、最小限の工数で高度なパーソナライズを実現する有効な手段です。ただし、そのためには前提として、顧客の属性情報が正確かつ豊富である必要があります。

事例6:SaaS|社内教育と運用体制構築でツールの形骸化を防止

導入前の課題:属人化と全社的な活用が進まない状況

Account Engagementを導入したものの、設定の複雑さや運用ノウハウの不足から、一部の担当者しか使いこなせず、属人化が進行。全社的な活用が進まず、ツールのポテンシャルを活かしきれていませんでした。

施策:ハンズオン研修と運用体制の構築

  • 使用した主な機能:全般、トレーニング環境(Sandbox)

  • 実施内容

    • Step.1:外部の専門パートナーによる、自社のビジネス課題に即したハンズオントレーニングを実施し、メンバーのスキルレベルを底上げ。

    • Step.2:社内の運用ルール(命名規則、フォルダ管理、承認フローなど)を策定し、マニュアル化。

    • Step.3:定期的な社内勉強会を開催し、成功施策の共有や疑問点の解消を行う場を設定。

成果

マーケティング部門のメンバー全員が基本操作を習得し、自律的に施策を立案・運用できる体制が構築されました。属人化が解消され、施策の実行スピードと量が向上しました。

【Sells upの視点】
MAツール導入は、「教育」と「運用設計」がセットになって初めて投資効果が生まれます。高機能なツールほど、使いこなすための学習コストがかかります。初期段階で運用体制の整備と教育に投資することが、中長期的な活用の成否を分ける重要なポイントです。形骸化を防ぐには、導入プロジェクトの段階で「誰がどのように運用するか」を具体的に決めておく必要があります。

事例7:卸売・小売業|パートナー企業との連携強化でリードタイムを2週間短縮

導入前の課題:代理店との非効率な情報共有

販売代理店(パートナー企業)との情報共有がメールや電話ベースで行われており、非効率でした。新製品情報や販促資料の共有遅延、代理店へのリードパスの不透明さなどが原因で、販売機会の損失が発生していました。

施策:Experience Cloud連携による情報共有基盤の構築

  • 使用した主な機能:Salesforce連携、Experience Cloud

  • 実施内容

    • Step.1:SalesforceのExperience Cloud(パートナーコミュニティ機能)とAccount Engagementを連携。

    • Step.2:パートナー企業向けの情報共有ポータルを構築し、最新の資料やナレッジを集約。

    • Step.3:Account Engagementで獲得したリードを、一定の条件でパートナー企業に自動連携し、その後の進捗状況をポータル上で共有できる仕組みを整備。

成果

代理店への情報伝達スピードが向上し、リード発生から受注報告までのリードタイムが平均2週間短縮。パートナーとの連携強化により、連携している事業全体の販売力が向上しました。

【Sells upの視点】
Account Engagementの活用は、自社のマーケティング・営業部門内に留める必要はありません。この事例は、パートナー企業と連携する基盤として活用することで、外部パートナーとの連携をデジタルトランスフォーメーション(DX)化し、販売力の強化につながっています。

成功事例の分析から見えた、Account Engagement活用「5つの共通原則」

ご紹介した7社の事例を分析すると、Account Engagementを活用して成果を出している企業には、共通する思考や行動が見えてきます。ここでは、それらを「5つの共通原則」として体系化し解説します。これらは、ツールの機能的な側面だけでなく、戦略、組織体制、企業文化に関わるポイントです。

原則1:目的と成果指標(KGI・KPI)が全社共通言語になっている

成功している企業は、「何のためにAccount Engagementを導入するのか」という目的が明確であり、それを測るための成果指標(KGI・KPI)が具体的に設定されています。

単に「リード数を増やす」といった曖昧な目標ではなく、「〇〇製品のMQLからの商談化率をX%からY%に向上させる」といった、具体的で計測可能な指標を設定しています。さらに重要なのは、その指標がマーケティング部門内だけでなく、営業部門や経営層とも合意された「共通言語」になっていることです。これにより、運用の軸がぶれず、施策の優先順位や改善の方向性が定まります。

原則2:営業部門との「協働」を前提としたプロセス設計

Account EngagementはBtoB向けMAツールであり、その最終的なゴールは営業部門と連携して売上を最大化することです。成果を出している企業は、マーケティング部門単独でプロジェクトを進めるのではなく、初期段階から営業部門を巻き込み、「協働」を前提としたプロセスを設計しています。

具体的には、MQLの定義の合意形成、リードの受け渡しルールの策定、営業からのフィードバックをマーケティング施策に反映させる仕組みの構築などです。営業が「本当に欲しい」と思う情報を提供し、部門間の壁を越えた連携を実現することが、成果創出の必須条件です。

原則3:データ品質と運用リソースへの継続的な投資

MAツールは、投入されるデータの質によって成果が大きく左右されます。成功企業は、データ品質の重要性を理解し、投資を行っています。導入初期のデータクレンジングや名寄せはもちろん、運用開始後も定期的なデータの棚卸しや、入力ルールの徹底、外部データによる補強(リッチ化)などに取り組んでいます。

また、MAの運用には多岐にわたる業務が発生します。これらの業務を担うための専門的なスキルを持った人材やチームのリソースを確保し、継続的に育成・投資している点も共通しています。

原則4:「コンテンツなきMAは機能せず」を理解した戦略設計

MAツールは、あくまでコンテンツを顧客に届けるための「仕組み」に過ぎません。顧客の関心を引き、関係性を深めるためには、顧客にとって価値のある「コンテンツ」そのものが不可欠です。

成功企業は、ツールの設定に注力するだけでなく、それ以上にコンテンツ戦略の設計と制作体制の構築に力を入れています。ペルソナとカスタマージャーニーに基づき、各検討フェーズで必要とされるコンテンツ(例:ホワイトペーパー、事例集、セミナー動画など)を計画的に準備しています。

原則5:スモールスタートとデータに基づく改善文化の醸成

Account Engagementは多機能なツールですが、成功企業はいきなり全ての機能を使いこなそうとはしません。自社の課題やリソース状況に合わせて優先順位をつけ、まずは限定的な範囲で施策を開始(スモールスタート)しています。

小さな成功体験を積み重ねながら、徐々に活用の範囲を広げています。また、施策実行後は必ずデータを基に効果を測定し、仮説検証のサイクルを回すことが組織に根付いています。データに基づく客観的な意思決定が、成果の再現性を高めます。

【Sells upの視点】成功の本質は「ツール導入」ではなく「ビジネスプロセスの再設計」
これら5つの原則からわかるように、Account Engagement活用で成果を出すためには、ツール導入という「点」での取り組みではなく、マーケティングと営業の連携、データ管理、コンテンツ制作といった一連のビジネスプロセスを再設計するという「線」や「面」での視点が不可欠です。ツールはあくまで手段であり、成果を決定づける要因は、貴社の「戦略」とそれを実行する「体制」にあります。

Account Engagement導入・活用で「よくある失敗」と回避策

成功事例の裏側には、多くの失敗やつまずきが存在します。ここでは、Account Engagementの導入・活用フェーズにおいて多くの企業が陥りがちな「よくある失敗」と、それを回避するための具体的な解決策を提示します。リスクを事前に把握し、貴社のプロジェクト成功確度を高めてください。

失敗1:「導入すれば何とかなる」というツール依存思考

よくある失敗

最も多い失敗パターンは、「高機能なMAツールを導入すれば、自動的に成果が出るはずだ」という過度な期待やツール依存の思考です。戦略や目的が不明瞭なまま導入しても、何を自動化すべきかが定まらず、結果として「使われないシステム」となってしまいます。

回避策

Account Engagementは優れたツールですが、それ自体が戦略を描いたり、コンテンツを作ったりしてくれるわけではありません。導入前に、自社のマーケティング課題を徹底的に洗い出し、「Account Engagementで何を解決したいのか」という目的を言語化します。そして、継続的な改善を重ねる覚悟と、主体的な取り組みが必要です。

失敗2:データ整備を後回しにした見切り発車

よくある失敗

「まずはツールを入れてからデータを整理しよう」という考えは危険です。名刺リストや既存顧客データが重複していたり、情報が古かったり、必要な属性情報が欠落していたりする状態で運用を始めると、スコアリングやセグメント配信の精度は著しく低下します。これは、顧客体験を損ねるだけでなく、MAツールへの投資そのものが無駄になってしまう可能性があります。

回避策

運用を開始する前に、必ずデータのクレンジング(洗浄)や名寄せ、属性情報の整備を徹底します。特に、Salesforceとの連携を前提とする場合、双方のデータ品質を高いレベルで維持管理するルール作りが重要です。データ整備は地味ですが、非常に重要な作業です。

失敗3:運用リソース不足による「高価なメルマガツール化」

よくある失敗

MA運用には、シナリオ設計、コンテンツ作成、効果測定、改善といった一連の業務を継続的に行う必要があります。しかし、これらの運用に必要なリソース(人的リソース、時間)や専門スキルを持った担当者を確保せずにスタートしてしまうと、運用が回らなくなり、最終的には「高価なメルマガツール化」になってしまいます。

回避策

MA運用は「導入して終わり」ではないことを理解し、中長期的な視点で必要なリソースを確保することが重要です。導入計画段階で、運用に必要なタスクを洗い出し、専任の担当者やチームをアサインします。社内での育成が難しい場合は、外部の専門パートナーによる支援を活用することも有効です。

【再現性を高める】自社でAccount Engagement活用を進めるための具体的ステップ

他社の成功事例や失敗パターンを踏まえ、ここからは貴社でAccount Engagementの活用を進めるための具体的なステップを解説します。既に導入済みで活用に悩んでいる場合も、このステップに沿って現状を見直すことで、次のアクションが明確になります。

Step.1:現状の課題と目指す姿の明確化(アセスメント)

まずは、現状のマーケティング・営業プロセスを可視化し、どこにボトルネックがあるのかを客観的に特定します。

  • リード獲得から受注までのプロセスにおいて、どこで機会損失が発生しているか?

  • 部門間の連携でうまくいっていない点はどこか?

  • 現在、Account Engagementのどの機能を使えていて、どの機能が使えていないか?

その上で、「Account Engagementを活用して何を実現したいのか」という目指す姿(目的)と、それを測るための成果指標(KGI・KPI)を明確に定義します。このステップでは、マーケティング部門だけでなく、営業部門のメンバーも巻き込むことが重要です。

Step.2:データ基盤の棚卸しと整備

次に、現在保有している顧客データの棚卸しを行います。データの質(重複、欠損状況)を確認し、活用に必要な属性情報が揃っているかを評価します。

棚卸しの結果に基づき、データのクレンジングや名寄せを行い、Account EngagementおよびSalesforceで活用できる状態に整備します。また、Salesforceとの連携設定が適切に行われているか(同期エラーが発生していないか、必要な項目が連携されているか)も確認します。

Step.3:営業部門とのMQL定義の合意形成

マーケティングと営業の連携を円滑にするために、MQLの定義について両部門で合意を形成します。

  • どのような条件(スコア、グレード、特定の行動など)を満たしたリードを営業に引き渡すか?

  • リードを受け取った後、営業はどのようなアクションを、いつまでに行うか?

  • 営業からのフィードバックをどのように受け取るか?

合意した定義に基づき、Account Engagementのスコアリングや自動割り当ての設定を行います。これは一度決めたら終わりではなく、定期的に見直す場を設けることも重要です。

Step.4:スモールスタート施策の選定と実行

準備が整ったら、いよいよ施策を実行します。ただし、最初から大規模な施策に取り組むのではなく、成果が出やすく、影響範囲が限定的な施策からスモールスタートすることをお奨めします。

  • 例:直近のセミナー参加者に対するフォローアップシナリオの自動化

  • 例:特定のホワイトペーパーをダウンロードしたリードに対する段階的な情報提供

まずは1つのシナリオを確実に実行し、成功体験を積むことを目指しましょう。

Step.5:効果測定と改善サイクルの確立

施策を実行したら、必ず効果測定を行います。Step.1で設定したKPIの達成状況を確認し、データに基づいて施策の評価を行います。

測定結果を基に改善点を洗い出し、次の施策に活かします。この検証サイクルを高速で回す仕組みを定常業務として確立することが、継続的な成果創出につながります。

【Sells upの視点】伴走型支援で「自走できる体制」を構築する重要性
これらのステップを自社内だけで進めるのが難しい場合、外部の専門家の知見を活用することも有効です。特に、戦略策定や初期設定、運用体制の構築といったフェーズにおいては、専門的なノウハウが求められます。重要なのは、単なる作業代行ではなく、貴社が将来的に自走できるよう、ノウハウ移転やトレーニングを含む「伴走型」の支援パートナーを選ぶことです。Sells upでは、貴社の課題に合わせた戦略設計から実行支援までを一気通貫でサポートし、成果創出にコミットします。

まとめ:成功事例から学び、貴社のマーケティングを次のステージへ

Account Engagementは、BtoB企業のマーケティング活動を効率化し、営業連携の強化やROIの可視化を実現する上で有効なツールです。

しかし、その導入効果を最大化できるかどうかは、ツールの機能そのものよりも、それを使いこなすための「戦略」と「実行体制」にかかっています。

本記事で紹介した7社の成功事例は、いずれも明確な目的を持ち、部門間の壁を越えて協力し、データとコンテンツの重要性を理解し、継続的な改善に取り組んできた結果です。

Account Engagement活用「5つの共通原則」

  1. 目的と成果指標(KGI・KPI)が全社共通言語になっている

  2. 営業部門との「協働」を前提としたプロセス設計

  3. データ品質と運用リソースへの継続的な投資

  4. 「コンテンツなきMAは機能せず」を理解した戦略設計

  5. スモールスタートとデータに基づく改善文化の醸成

これらの原則と活用ステップを参考に、貴社の状況に照らし合わせることで、Account Engagement活用のヒントが見つかるはずです。

MAツールの導入・活用の相談はSells upへ。

MAツールの導入や、導入後の成果最大化に課題をお持ちでしたら、ぜひSells upにご相談ください。50社以上の導入・活用を支援してきた担当者が貴社の状況・目標に向き合い、最適なツールの導入プラン / 統計知識を用いた活用プラン描き、戦略策定から実装 / 実行 / 効果測定までをご支援いたします。

株式会社Sells up
武田 大
株式会社AOKIにて接客業を、株式会社リクルートライフスタイル(現:株式会社リクルート)にて法人営業を経験した後、株式会社ライトアップでBtoBマーケティングを担当。その後、デジタルマーケティングエージェンシーにてBtoBマーケティングの戦略設計/施策実行支援、インサイドセールスをはじめとしたセールスやカスタマーサクセスとの連携を通じたマーケティング施策への転換といった支援を行い、2023年に株式会社Sells upを設立。BtoBマーケティングの戦略設計/KPI設計はもちろん、リードジェネレーション施策やナーチャリング、MA/SFA活用を支援し、業界/企業規模を問わずこれまでに約80社以上の支援実績を持つ。Salesforce Certified Marketing Cloud Account Engagement Specialist/Tableau Desktop SpecialistのSalesforce認定資格を保有。