「自社商品のマーケティングに取り組みたいものの、どの市場を狙えばよいのか分からない」
「STP分析という言葉は知っているが、BtoBマーケティングでどのように使えばよいのか分からない」
このような悩みから、STP分析について調べている方もいるのではないでしょうか。
STP分析とは、市場を細分化する「Segmentation(セグメンテーション)」、狙う市場を決める「Targeting(ターゲティング)」、その市場における自社の立ち位置を定める「Positioning(ポジショニング)」の3つの観点から、マーケティング戦略を整理する手法です。
BtoBマーケティングでも活用できますが、企業を対象とする場合は、業種や企業規模だけでなく、社内の意思決定構造や抱えている課題、購買に関わる人なども考慮する必要があります。
そのため、BtoCと同じ切り口をそのまま当てはめるのではなく、BtoBの購買特性を踏まえてセグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングを考えることが重要です。
本記事では、BtoBマーケティングにおけるSTP分析について、次の内容を解説します。
- BtoBマーケティングにおけるSTP分析とは何か
- BtoBとBtoCでは何が異なるのか
- BtoBにおけるSTP分析の具体例
- BtoB向けSTP分析の進め方5ステップ
- STP分析を行う際に注意したいこと
特に、考え方を説明するだけでなく、セグメンテーションの切り口やターゲットの絞り込み方、ポジショニングの考え方まで具体例を交えて紹介します。
これからSTP分析を実践したい場合は、記事中盤の「3.BtoB向けSTP分析のやり方5ステップ」からご覧ください。
BtoBマーケティングにおけるSTP分析とは?
まずは、BtoBマーケティングにおけるSTP分析について、次の順番で解説します。
- STP分析の3つのプロセス
- BtoBマーケティングでもSTP分析を活用できる理由
- BtoBとBtoCで見るべきポイントの違い
STP分析を実践する前に、まずは何を整理するための手法なのかを理解しておきましょう。
STP分析の3つのプロセス
STP分析とは、
- Segmentation(セグメンテーション):市場をいくつかのグループに分ける
- Targeting(ターゲティング):その中から狙う市場を決める
- Positioning(ポジショニング):狙う市場における自社の立ち位置を決める
という3つのプロセスでマーケティング戦略を整理する手法です。

マーケティング戦略を考えるときは、いきなり広告やコンテンツなどの施策を決めるのではなく、
市場や競合を把握する → 狙う顧客と自社の立ち位置を決める → 具体的な施策へ落とし込む
という順番で考えると整理しやすくなります。
STP分析は、この中でも「誰を狙い、その顧客に対してどのような価値を打ち出すのか」を整理する役割を持ちます。

STP分析を行うことで、たとえば次のような内容を整理しやすくなります。
- どのような企業・顧客を優先して狙うのか
- その顧客がどのような課題を抱えているのか
- 競合と比較したときに、自社の何を強みとして伝えるのか
- どのチャネルやメッセージでアプローチするのか
つまり、STP分析そのものが売上を生み出す施策ではなく、その後のマーケティングや営業活動の判断基準をつくるための分析と考えると分かりやすいでしょう。
なお、セグメンテーションそのものの考え方と手順は、セグメンテーション分析の進め方で詳しく解説しています。
BtoBマーケティングでもSTP分析を活用できる理由
STP分析は、BtoBマーケティングでも活用できます。
そもそもSTPの前提となる市場細分化の考え方は、特定の市場を一つのまとまりとして見るのではなく、異なるニーズを持つグループに分けて考えることにあります。
市場細分化については、Wendell R. Smithが1956年に発表した論文「Product Differentiation and Market Segmentation as Alternative Marketing Strategies」で体系的に論じています。
BtoBでも、
- 業種によって抱えている課題が異なる
- 企業規模によって予算や意思決定の方法が異なる
- 同じ製品でも部署や役職によって重視する価値が異なる
- 競合との比較基準が顧客によって異なる
といった違いがあります。
そのため、市場を一括りにして同じ訴求を行うのではなく、顧客を一定の条件で分け、優先する市場と伝える価値を整理するSTPの考え方はBtoBでも有効です。
ただし、BtoBでは「企業」という単位だけを見ればよいわけではありません。
企業規模や業種だけでなく、
- どのような業務課題を抱えているのか
- 誰が製品を利用するのか
- 誰が比較・検討するのか
- 誰が最終的な意思決定をするのか
- 予算や導入時期はどうなっているのか
なども考慮する必要があります。
そのため、BtoBでSTP分析を行う場合は、企業属性と購買プロセスの両方を見ることがポイントです。
BtoBとBtoCで見るべきポイントの違い
STP分析の基本的な考え方は、BtoBでもBtoCでも変わりません。
一方で、対象となる顧客や購買プロセスが異なるため、分析するときに重視する情報には違いがあります。
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比較する項目
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BtoBで重視しやすい情報
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BtoCで重視しやすい情報
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|---|---|---|
| セグメンテーション |
業種、企業規模、事業内容、部署、役職、業務課題、予算、利用中のシステムなど |
年齢、居住地、家族構成、ライフスタイル、価値観、行動、悩みなど |
| ターゲティング |
市場規模に加え、自社が接点を持てるか、営業できるか、意思決定まで対応できるかなどを確認する |
市場規模、購買行動、接点を持てるチャネル、ニーズとの適合度などを確認する |
| ポジショニング |
業務改善、売上への貢献、コスト、導入負担、機能、サポートなどが比較軸になりやすい |
価格、機能、利便性、ブランド、体験、デザインなどが比較軸になりやすい |
| 購買に関わる人 |
利用者、担当者、上長、決裁者など複数人が関与するケースがある |
購入者本人や世帯など、商材によって意思決定者が異なる |
| 検討期間 |
複数人での確認や社内承認を伴い、中長期になるケースがある |
短期間で決まるものから、住宅・自動車など長期間検討するものまで幅がある |
あくまで一般的な傾向であり、「BtoBは必ず複雑」「BtoCは必ず単純」というわけではありません。
重要なのは、BtoBでは企業属性だけで市場を区切らず、その企業の課題や購買に関わる人まで含めて考えることです。
たとえば「従業員500名以上の製造業」という条件だけでは、まだターゲットとしては広い場合があります。
そこから、
「複数拠点を持ち、営業情報が拠点ごとに管理されている製造業」
など、実際に抱えている課題まで含めることで、自社が狙う市場を具体化できます。
同様にポジショニングでも、「高機能」「低価格」といった自社側の特徴だけで決めるのではなく、ターゲットが製品を比較するときに何を重視しているのかを基準にする必要があります。
詳しい進め方については「3.BtoB向けSTP分析のやり方5ステップ」で解説します。
BtoBにおけるSTP分析の具体例
STP分析では、セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングをそれぞれ個別に考えるのではなく、「どの市場を分け、どこを狙い、その顧客に対してどのような価値を打ち出すか」まで一続きで考えることが重要です。
ここでは、BtoBでSTP分析を行う場合の考え方を3つの例で紹介します。
人事管理システムを提供するA社の例
【セグメンテーション】
- システム導入のコストを抑えたい中小企業
- 予算に余裕があり、機能の充実を重視する大企業
- 既存システムからの乗り換えを検討している企業
【ターゲティング】
システム導入のコストを抑えたい中小企業
A社の人事管理システムには、利用人数に制限のある無料プランがあるとします。
この場合、「多機能であること」よりも「小規模な組織でも費用を抑えて導入できること」に価値を感じる企業の方が、A社の特徴と合っています。
そのため、まずは導入コストを抑えたい中小企業を優先するという判断が考えられます。
【ポジショニング】
小規模な企業でも導入しやすい、低コストの人事管理システム
無料プランを入口として導入のハードルを下げ、利用人数や必要な機能が増えた段階で有料プランを検討してもらう設計です。
この例では、自社商品の強みから逆算して狙う市場を絞っていることがポイントです。
小売店向けの家具を製造するB社の例
BtoBでは、自社の直接の顧客だけでなく、その先にいる顧客まで考えてSTP分析を行うケースもあります。
たとえば、B社が大手家具チェーン店へ商品を卸している家具メーカーだとします。
この場合、直接の取引先は家具チェーン店ですが、実際に商品を使う消費者のニーズが、家具チェーン店の仕入れ判断にも影響します。
【セグメンテーション】
家具を購入する消費者を、
- ファミリー世帯
- 単身世帯
- 夫婦のみの世帯
などに分けます。
【ターゲティング】
単身世帯
仮にファミリー向け家具は競合商品が多い一方で、単身世帯向けには十分な商品が少ないことが分かった場合、単身世帯を重点的に狙うという判断が考えられます。
【ポジショニング】
単身世帯の暮らしに合った、高品質で使いやすい家具
このポジションを明確にすることで、家具チェーン店に対しても、
「単身世帯向けの商品ラインアップを強化できる家具」
という提案ができるようになります。
この例では、BtoBの直接的な取引先だけでなく、その先の利用者のニーズから自社の立ち位置を考えていることがポイントです。
オフィス向けの冷凍社食を提供するC社の例
C社が、企業向けに冷凍食品を使った社食サービスを提供しているとします。
同じ「社食を導入したい企業」でも、導入する理由は同じとは限りません。
【セグメンテーション】
- 従業員の食事にかかる時間を短縮したい企業
- 社員食堂の運営コストを抑えたい企業
- 従業員の食生活を改善したい企業
【ターゲティング】
従業員の食生活を改善したい企業
たとえばC社の商品が、低価格や調理時間の短さでは競合に優位性を持たない一方で、
- 管理栄養士が監修している
- 多品目を取り入れたメニューを用意している
- 栄養バランスを考慮している
といった特徴を持っているとします。
この場合、コスト削減を最優先する企業よりも、従業員の健康や福利厚生を重視する企業の方が、自社の特徴と合っています。
【ポジショニング】
従業員の健康を食事から支援する、栄養バランスを重視した冷凍社食
この例では、市場の大きさだけでターゲットを決めるのではなく、自社が提供できる価値との相性から狙う顧客を決めていることがポイントです。
このようにSTP分析では、単に市場を細かく分ければよいわけではありません。
自社が提供できる価値と顧客のニーズを照らし合わせながら、優先して狙う市場と、その市場で選ばれるための立ち位置を決めることが重要です。
次章では、この考え方を実際に自社へ当てはめるための進め方を5つのステップで解説します。
BtoB向けSTP分析のやり方5ステップ
ここからは、BtoBでSTP分析を行う手順を5つのステップで解説します。
- Step.1:【事前準備】現状の課題と目的を整理する
- Step.2:市場をグループに分ける(セグメンテーション)
- Step.3:優先して狙う市場を決める(ターゲティング)
- Step.4:選ばれる理由を整理する(ポジショニング)
- Step.5:分析結果を具体的な施策へ落とし込む
STP分析では、セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングをそれぞれ独立して考えるのではなく、「誰を狙い、その顧客に何を価値として伝え、どのように施策へつなげるか」まで一続きで整理することが重要です。
Step.1:【事前準備】現状の課題と目的を整理する
最初に、なぜSTP分析を行うのかを整理します。
STP分析は、市場を細かく分けること自体が目的ではありません。
たとえば、
- ターゲットが広すぎて訴求内容がぼやけている
- 広告やコンテンツを実施しているが、狙う顧客が明確でない
- 競合と比較したときの自社の強みを説明できない
- 営業担当者ごとに狙っている企業が異なる
といった課題を整理し、STP分析によって何を明確にしたいのかを決めます。
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整理する項目
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例
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|---|---|
| 現状の課題 |
狙う顧客が広く、Webサイトや営業資料の訴求が定まっていない |
| STP分析の目的 |
優先して狙う顧客と、その顧客に伝える価値を明確にする |
| 分析後の施策で確認する指標 |
対象顧客からのリード数、商談化率、受注率、商談単価など |
目標は、「売上を2倍にする」といった数字を最初から置くのではなく、現在の実績を確認したうえで設定します。
また、STP分析の成果は短期間の売上だけで判断できるとは限りません。
「狙う企業像を社内で共通認識にできた」「広告・営業・コンテンツの対象がそろった」といった状態も、分析が機能しているかを見る一つの判断材料になります。
Step.2:市場をグループに分ける(セグメンテーション)
次に、STP分析の「S」にあたるセグメンテーションを行います。
セグメンテーションでは、顧客になり得る企業を一定の切り口で整理し、似た特徴や課題を持つグループに分けます。
進め方は大きく2段階です。
- 市場を分けるための切り口を洗い出す
- 複数の切り口を組み合わせてセグメントを作る
1. 市場を分けるための切り口を洗い出す
BtoBでは、たとえば次のような切り口があります。
- 企業規模(従業員数・売上高・資本金など)
- 業種・業界
- 事業内容
- 所在地
- 企業の成長段階
- 部署・役職
- 既存システムや利用サービス
- 購入・問い合わせ履歴
- 業務フロー
- 抱えている課題
- 導入時期
- 予算
- 意思決定の進め方
企業属性だけでなく、「何に困っているのか」「なぜ今検討するのか」まで含めて考えることがポイントです。
2. 複数の切り口を組み合わせてセグメントを作る
たとえば、自社商品が「業務効率化システム」の場合、次のようなセグメントが考えられます。
- 従業員30〜100名程度で、人手不足に悩んでいるIT企業
- 店舗数が増え、顧客情報の管理が複雑になっているサービス業
- 急成長により社内業務が追いついていないSaaS企業
- 既存システムが古く、入れ替えを検討している中堅企業
この段階では、すぐに「狙う・狙わない」を決める必要はありません。
まずは市場を整理し、どのようなグループが存在するのかを把握します。
ただし、思いつく限り無制限に細分化すればよいわけでもありません。
切り口を細かくしすぎると、実際には接点を持てない小さなセグメントが大量にできてしまいます。
そのため、後から市場規模や到達可能性を評価できる程度の粒度にとどめることが重要です。
また、マーケティング部門だけで考えると視点が偏る場合があります。
営業担当者やCS担当者が把握している
- 受注しやすい企業の特徴
- 商談でよく聞かれる課題
- 失注しやすい条件
- 継続率の高い顧客の特徴
なども参考にすると、実際の顧客に近いセグメントを作りやすくなります。
セグメンテーションの各手順についてより詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。

Step.3:優先して狙う市場を決める(ターゲティング)
Step.2で作成したセグメントの中から、優先して狙う市場を決めます。
ターゲティングでは、「顧客になりそうか」だけで判断するのではなく、
- 市場として一定の規模があるか
- 自社の商品・サービスとの相性がよいか
- 実際に接点を持つ方法があるか
- 自社の営業・マーケティング体制で対応できるか
- 他のセグメントと違いを測定できるか
といった観点から比較します。
日本のマーケティング解説では、これらを「4R」と呼ばれる観点で整理することがあります。
- Rank(優先順位):市場規模・成長性・自社との相性を見て優先順位をつける
- Realistic(有効な規模と現実性):自社の売上目標や体制に対して、市場規模が十分かを確認する
- Reach(到達可能性):広告・営業・パートナーなどを通じて、そのセグメントへ接触できるかを確認する
- Response(反応の違いと測定可能性):他のセグメントと異なる反応を期待でき、その結果を測定できるかを確認する
名称そのものよりも、「市場として成立するか」「自社が狙えるか」「検証できるか」という観点で使うと分かりやすいでしょう。
たとえば、Step.2で次のセグメントを作ったとします。
A. 人手不足に悩むIT中小企業
B. 店舗展開を進めているサービス業
C. 急成長中のSaaS企業
D. 既存システムの入れ替えを検討している中堅企業
E. 情報の一元化を進めたい大企業
F. 新規事業立ち上げに伴いシステム導入を検討している大企業の子会社
この6つを、
- 市場規模
- 自社との相性
- リーチ方法
- 商談までの難易度
- 検証しやすさ
などで比較し、優先順位を決めます。
たとえば、
- Aは広告やインサイドセールスで接点を持ちやすく、自社の商品とも相性がよい
- Cは課題が顕在化しており、短期間で検証しやすい
- Dはニーズは強いものの、既存システムの入れ替えに複数部署が関与する
- Fは条件に合う企業数が限られ、市場規模が小さい
といった違いが見えてきます。
その結果、まずA・Cを優先し、B・Eは次の候補として残す、といった判断ができます。
ターゲティングでは、「誰を狙うか」だけでなく「今回は誰を狙わないか」を決めることも重要です。
すべてのセグメントを同時に狙うと、広告や営業活動、コンテンツ制作の優先順位が曖昧になりやすいためです。
ターゲットとして定めた企業像を広告やフォームの設定に落とし込む手順は、BtoBマーケティングのターゲティングで解説しています。
Step.4:選ばれる理由を整理する(ポジショニング)
次に、ターゲットに対して自社がどのような立ち位置を取るのかを整理します。
ポジショニングで重要なのは、
「競合がいない場所を探すこと」ではなく、「顧客が比較する基準の中で、自社を選ぶ理由を明確にすること」
です。
まずは、ターゲットが商品・サービスを比較するときに重視している要素を洗い出します。
たとえば、
- 価格
- 機能
- 導入効果
- ROI
- 導入までの期間
- 操作性
- サポート体制
- カスタマイズ性
- セキュリティ
- 導入実績
などがあります。
これらは社内だけで想像するのではなく、
- 受注理由
- 失注理由
- 商談で頻繁に聞かれる質問
- 顧客インタビュー
- 営業担当者へのヒアリング
などから確認すると、実際の比較軸に近づきます。
次に、顧客が特に重視している軸を使って競合との違いを整理します。
ポジショニングマップを使う場合は、たとえば、
- 横軸:低価格 ↔ 高価格
- 縦軸:短期間で導入できる ↔ 導入に時間がかかる
など、顧客が実際に比較に使っている2軸を設定します。
ただし、マップ上の空白地帯を見つけただけでは、その市場が有望とは限りません。
競合がいない理由が、
- その価値を求める顧客が少ない
- 顧客は求めているが、採算が合わない
- 技術的に提供が難しい
といった可能性もあります。
そのため、空白地帯を見つけた場合は、
- その比較軸を顧客が本当に重視しているか
- その価値に対して費用を払う顧客がいるか
- 自社が継続して提供できるか
まで確認します。
最終的には、
「誰に対して、どのような課題を、どのような価値で解決し、競合と何が違うのか」
を一文で説明できる状態を目指します。
Step.5:分析結果を具体的な施策へ落とし込む
STP分析は、ターゲットとポジションを決めて終わりではありません。
決めた内容を、商品・価格・販売方法・訴求内容などの具体的な施策へ反映します。
代表的な整理方法として、4Pがあります。
- Product(製品):ターゲットに必要な価値を提供できる商品になっているか
- Price(価格):ターゲットが価値に見合うと判断できる価格か
- Place(流通・販売方法):ターゲットへどのように商品を届けるか
- Promotion(販促):どのチャネル・メッセージで接点を持つか
たとえば、
- ターゲット:既存システムが古く、入れ替えを検討している中堅企業
- ポジション:導入しやすく、操作がシンプルな業務効率化システム
と整理した場合、次のような施策が考えられます。
Product
必要な機能を絞り、担当者が操作を覚えやすいUIを重視する
Price
初期導入の負担を抑えられる料金プランを検討する
Place
オンラインだけでなく、営業担当者による導入支援も用意する
Promotion
「多機能」で訴求するのではなく、「既存システムから移行しやすい」「担当者が使いやすい」といった価値を中心に伝える
また、施策を開始した後は、STP分析で立てた仮説が正しかったかを検証します。
たとえば、
- ターゲット企業からのリード数
- 商談化率
- 受注率
- 商談単価
- 失注理由
- チャネルごとの費用対効果
などを確認します。
期待した結果が出なかった場合も、すぐに「STP分析が間違っていた」と判断する必要はありません。
ターゲットは合っていて訴求がずれているのか、そもそも狙う市場が違うのか、接点を持つチャネルが合っていないのかを切り分けて確認します。
STP分析は一度作って固定するものではなく、実際の商談・受注データをもとに見直していくものです。
STP分析の前後にどのような工程があるのかは、BtoBマーケティングプロセスの全体像で整理しています。
セグメンテーションから始めなくてよい場合
ここまで5つのステップを紹介しましたが、すべての企業が最初から市場全体を細かく分ける必要があるわけではありません。
次のような状況では、机上で多数のセグメントを作るよりも、すでに受注している顧客の共通点を確認する方が進めやすい場合があります。
- まだ受注件数が少なく、市場全体を分析できるほどデータがない
- 取り扱う商材が限定されており、狙える市場がある程度決まっている
- 作ったセグメントを検証するための施策やデータがまだない
この場合は、既存顧客について、
- 業種
- 企業規模
- 導入前に抱えていた課題
- なぜ自社を選んだのか
- 誰が検討・意思決定したのか
- 商談化までにどのような接点があったのか
を並べ、共通点を探します。
この情報を、ターゲティングを考えるための仮説として利用します。
ただし、既存顧客だけを基準にすると、たまたま最初に獲得できた企業や、短期的に受注しやすかった企業に偏る可能性があります。
そのため、
「その企業に売れた」ではなく、「なぜその企業は自社を選んだのか」
まで確認しておくことが重要です。
受注件数や施策データが増えてきた段階で、市場全体をあらためてセグメンテーションし、当初の仮説と比較します。
BtoB企業がSTP分析を行う際の注意点
BtoBでSTP分析を行うときは、企業属性だけを見てターゲットを決めないことが重要です。
特に、次の2点に注意します。
- 企業全体ではなく、購買に関わる人たちを見る
- 必要に応じて、顧客企業の先にいる顧客まで見る
BtoBでは、同じ企業の中でも立場によって課題や判断基準が異なります。また、商材によっては顧客企業の顧客にどのような影響を与えるかまで理解することで、提供価値を整理しやすくなります。
「企業全体」ではなく「購買に関わるグループ」を見る
BtoBでSTP分析を行う際は、企業を一つのまとまりとして捉えるだけでなく、その企業の中で誰が購買に関わるのかまで確認します。
BtoBの購買では、
- 製品・サービスを実際に利用する人
- 情報収集や比較を行う人
- 導入を推進する人
- 予算を管理する人
- 最終的な意思決定をする人
など、複数の関係者が関わることがあります。
Forresterが2026年1月に公表した「The State Of Business Buying, 2026」では、調査対象となったBtoBの購買判断に、平均で13人の社内関係者と9人の社外関係者が影響していると報告されています。高額または複雑な購買ほど、関係者は増える傾向があります。
つまり、BtoBでは特定の一人だけを想定して訴求を考えると、実際の購買プロセスとずれる可能性があります。
たとえば、企業がオフィス用のコーヒーマシンを導入する場合でも、
- 利用者:社員
- 選定担当者:総務担当者
- 承認者:総務部長や管理部門の責任者
では、重視する内容が異なります。
利用者は使いやすさや味を気にする一方で、選定担当者は導入や管理の手間、承認者は費用や導入効果を重視するかもしれません。
そのため、セグメンテーションでは企業規模や業種などで市場を整理しつつ、ターゲティングやポジショニングでは、
「その企業の中で、誰がどのような役割を持ち、何を判断基準にするのか」
まで考えます。
特にBtoBでは、企業単位のターゲットだけでなく、購買に関わる役割ごとに必要な情報を整理しておくと、その後のコンテンツや営業活動にもつなげやすくなります。
必要に応じて「顧客の顧客」まで見る
もう一つ意識したいのが、顧客企業がその商品・サービスを導入することで、その先の顧客にどのような影響があるのかを見ることです。
すべてのBtoB商材で必要になるわけではありませんが、顧客企業の売上やサービス品質に関わる商材では、この視点が重要になります。
たとえば、小売企業が在庫管理システムを導入する場合、直接的な目的には、
- 在庫管理の工数を減らす
- 入力ミスを減らす
- 在庫状況を把握しやすくする
といったものがあります。
一方、その先には、
- 欠品を減らす
- 誤出荷を防ぐ
- 在庫に関する問い合わせへ早く回答する
といった、最終顧客の体験につながる効果も考えられます。
この場合、単に
「在庫管理を効率化できるシステム」
と位置づけるだけでなく、
「欠品や誤出荷を減らし、顧客対応まで改善できるシステム」
という価値が見えてくる可能性があります。
このように、顧客企業の先にいる利用者や顧客まで考えることで、自社の商品・サービスが顧客企業にとってどのような事業価値を持つのかを整理しやすくなります。
ただし、すべての商材で「顧客の顧客」を見る必要があるわけではありません。
たとえば、法令対応や内部統制、社内業務の効率化など、企業内部の課題解決が中心となる商材もあります。
そのため、
「この商品を導入すると、顧客企業の事業やその先の顧客にどのような変化が起きるのか」
を一度確認し、ポジショニングを考える材料になる場合に取り入れるとよいでしょう。
BtoBマーケティングの戦略設計にお悩みなら「Sells up」

STP分析では、狙う市場や顧客、自社の立ち位置を整理できます。
一方で、実際のマーケティングでは、STP分析だけで完結するわけではありません。市場や競合の把握、KPIの設計、広告やコンテンツなどの施策、MA・CRMを使ったデータ管理、営業との連携まで含めて考える必要があります。
「自社だけでは戦略を整理しきれない」「分析した内容を具体的な施策へ落とし込むところまで支援してほしい」といった場合は、弊社「Sells up」にご相談ください。
Sells upでは、スタートアップからプライム上場企業まで80社以上のBtoBマーケティングを支援してきました。
顧客データや商談履歴などを確認しながら、戦略の整理から広告・コンテンツ・MAなどの施策設計、運用まで支援しています。
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Sells upが支援できる課題の例
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狙う顧客や伝える内容が定まっていない |
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顧客データや商談履歴などを確認し、優先して狙う顧客や施策の方向性を整理する |
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マーケティングと営業の連携がうまくいっていない |
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MAやCRM・SFAなどを活用し、営業へ引き渡す条件や情報共有の方法を整理する |
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複数の施策を実施しているが、どこを改善すべきか分からない |
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施策ごとの数値を確認し、改善する順番を整理する |
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施策ごとの費用対効果を把握できていない |
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リード・商談・受注までのデータを確認し、施策ごとの成果を評価できる状態を整える |
Sells upのBtoBマーケティング支援事例
株式会社CLUE様

株式会社CLUE様では、2019年当時、社内にマーケティング経験者がいない状態からマーケティング体制の構築を支援しました。
まず、ターゲット属性に合致するリード数と商談獲得数をKPIとして設定。建設業界の顧客行動を踏まえ、Meta広告やディスプレイ広告などを中心にリード獲得施策を設計しました。
LPもサービス機能を中心とした構成から、顧客の課題を起点とした内容へ見直しています。
さらに、Account EngagementとSalesforceの選定・初期設定・活用を支援し、Web上の行動をもとにインサイドセールスへ対象者を連携する仕組みも構築しました。
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株式会社日本テレビアート様

株式会社日本テレビアート様では、新規事業の立ち上げにあたり、サービス内容の整理からマーケティング施策の実行まで支援しました。
サービス内容の言語化を行ったうえで、Meta広告によるリード獲得、サービス資料・LPの作成、コーポレートサイトの改修、コンテンツマーケティングなどを進めています。
また、スプレッドシートで管理していたリード情報をHubSpotへ移行し、ステータス管理やメールマーケティングを行える状態を整えました。
広告予算を月10万円程度に抑えながら、初年度から多い月で100件以上のリードを獲得しています。
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STP分析を含む戦略設計や、その後の施策への落とし込みを自社だけで進めにくい場合は、ご相談ください。
「やっているのに成果が出ない」状態から抜け出すために
施策を続けているのに商談が増えない、リードの質が上がらない場合は、個々の施策だけでなく、ターゲットや訴求内容、営業への引き渡し条件などを含めて見直す必要があります。Sells upでは、現在の施策やデータを確認しながら、課題となっている箇所と改善する順番を整理します。
相談してみる →まとめ
本記事では、BtoBマーケティングにおけるSTP分析の考え方と、実際の進め方について解説しました。
STP分析は、
- Segmentation(セグメンテーション):市場をグループに分ける
- Targeting(ターゲティング):優先して狙う市場を決める
- Positioning(ポジショニング):その市場で自社がどのような立ち位置を取るかを決める
という3つのプロセスで、マーケティング戦略を整理する手法です。
BtoBでも基本的な考え方は変わりませんが、企業規模や業種だけでなく、顧客が抱えている課題や購買に関わる人、意思決定の進み方まで含めて考えることが重要です。
実際にSTP分析を行う場合は、次の5つのステップで進めます。
- Step.1:【事前準備】現状の課題と目的を整理する
- Step.2:市場をグループに分ける(セグメンテーション)
- Step.3:優先して狙う市場を決める(ターゲティング)
- Step.4:選ばれる理由を整理する(ポジショニング)
- Step.5:分析結果を具体的な施策へ落とし込む
STP分析では、「誰を狙うか」を決めるだけでは十分ではありません。
誰に対して、どのような課題を、どのような価値で解決し、競合と何が違うのか
まで整理し、その内容を商品、価格、販売方法、広告や営業活動などに反映していきます。
また、BtoBでは企業を一つのまとまりとして見るのではなく、利用者、選定担当者、決裁者など、購買に関わる人ごとの判断基準を見ることも重要です。
商材によっては、顧客企業だけでなく、その先にいる顧客や利用者への影響まで考えることで、自社が提供する価値をより具体的に整理できます。
STP分析は一度作って終わりではありません。実際の商談・受注結果を確認しながら、ターゲットやポジショニング、施策を見直していきましょう。
よくある質問
STP分析とは何ですか?
STP分析とは、市場を細分化(Segmentation)し、ターゲットを定め(Targeting)、自社の立ち位置を決める(Positioning)という3つのプロセスで構成されるマーケティング手法です。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| S:Segmentation(セグメンテーション) | 市場に存在する顧客を、業種・規模・課題・属性などの切り口でグループ分けする |
| T:Targeting(ターゲティング) | セグメントの中から自社が注力すべき有望なグループを絞り込む |
| P:Positioning(ポジショニング) | ターゲットに対して競合と差別化できる自社独自の立ち位置を定め、訴求軸を明確にする |
STP分析はBtoBマーケティングにおける戦略立案フェーズで活用され、「自社商品を必要としている顧客への理解を深める」「競合との差別化ポイントを明確にする」「マーケティング施策に一貫性を持たせる」といった効果が期待できます。短期的な販促効果を狙うものではなく、中長期的に成約の効率と精度を上げることを目的とした手法です。
STP分析は誰が作ったのですか?
STP分析は、ひとりの研究者が一度に作り上げた手法ではありません。市場細分化(セグメンテーション)の考え方はWendell R. Smithが1956年の論文で体系的に論じ、ポジショニングはアル・ライズとジャック・トラウトが広めました。これらをセグメンテーション→ターゲティング→ポジショニングという3段階の流れとして体系化し、マーケティング戦略の基本プロセスとして広めたのがフィリップ・コトラー(Philip Kotler)です。
コトラーは「近代マーケティングの父」とも呼ばれ、STP以外にも4P(製品・価格・流通・販促)や競争戦略、顧客価値理論など、現代マーケティングの基盤となる多くの概念を体系化した経営学者です。
STP分析は本来BtoC商品・サービスを想定した手法として確立されましたが、顧客ニーズの多様化・競合との差別化が難しくなっている現代においては、BtoBマーケティングにおいても十分有効なフレームワークとして広く活用されています。
STP、3C、4Pの順番はどうなっていますか?
BtoBマーケティングの戦略設計における一般的な実施順序は、以下のとおりです。
| フェーズ | 手法 | 目的 |
|---|---|---|
| ①環境分析 | 3C分析(Customer・Competitor・Company) | 市場・顧客・競合・自社の現状を把握し、マーケティングの前提条件を整理する |
| ②戦略立案 | STP分析(Segmentation・Targeting・Positioning) | 3C分析で得た情報をもとに、狙う市場・ターゲット・競合との差別化ポジションを決定する |
| ③施策の実施 | 4P分析(Product・Price・Place・Promotion) | STP分析で設定したターゲット・ポジションに基づいて、具体的なマーケティング施策を設計・実行する |
この順序が重要な理由は、各手法が「前のステップの結果を土台にしている」からです。3C分析で市場と自社の状況を正確に把握してからSTP分析でターゲットとポジションを定め、その戦略の方向性を受けて4P分析で具体的な施策に落とし込む、という一貫した流れがマーケティング活動の精度と効率を高めます。逆順や途中を飛ばすと、施策が戦略から外れたり、根拠のない「とりあえず施策」になってしまうリスクがあります。
BtoBのSTP分析でBtoCとやり方が異なるのはどの部分ですか?
BtoBのSTP分析は基本的なフレームワークこそBtoCと同じですが、市場構造や意思決定プロセスの違いから、以下の3点においてBtoC向けのセオリーとは異なるアプローチが必要です。
| 比較ポイント | BtoB | BtoC |
|---|---|---|
| セグメンテーションの切り口 | 企業規模・業種・役職・抱えている課題・決裁権など組織の「構造・課題・意思決定」が軸 | 年齢・性別・ライフスタイル・価値観など個人の「属性・行動・感情」が軸 |
| ターゲティングの難易度 | 高い。意思決定プロセスが複雑で購買に慎重なため、精度の低いターゲティングは購買不成立につながりやすい | 比較的低い。単価が低く顧客数が多いため、多少ターゲットを広く取ってもマーケティング施策次第でチャンスがある |
| ポジショニングの訴求軸 | 導入効果(ROI・売上貢献)・機能・価格・サポート体制など「企業の利益・合理性」にフォーカス | 世界観・ブランドイメージ・体験価値など「個人の感情や体験」にフォーカス |
また、BtoBならではの注意点として、「企業全体」ではなく「購買の意思決定者(役職・決裁権保持者)」にフォーカスすることと、「顧客企業」だけでなく「顧客企業のさらにその先の顧客」まで視野に入れてターゲティングを行うことが成功につながります。
STP分析はどのくらいの頻度で見直せばよいですか?
決まった頻度はありませんが、少なくとも年に1回、事業計画を立てるタイミングで見直すことをおすすめします。
市場のニーズ、競合の顔ぶれ、自社の商材や体制は時間とともに変わります。数年前に決めたセグメントとポジションをそのまま使い続けると、現在の市場と合わなくなっていることがあります。
あわせて、受注率や商談化率がターゲットごとに大きく違っていないか、想定していないセグメントから受注が増えていないかを確認すると、見直しの必要性を判断しやすくなります。
STP分析とICP(理想の顧客像)の違いは何ですか?
STP分析は「市場をどう切り、どのセグメントにどう位置づけるか」を決める戦略の枠組みです。ICPは、そこで決めたターゲットを、営業やマーケティングがリストを作るときに使える条件へ具体化したものです。
たとえばSTP分析で「既存システムの入れ替えを検討している中堅の製造業」をターゲットに定めたとすると、ICPでは業種コード・従業員数・売上規模・導入済みのシステムといった条件に落とし込みます。
受注実績がすでにある場合は、その顧客の共通点からICPを先に作り、あとからSTP分析で全体を整理し直す進め方もあります。

