Salesforceで実現するリードナーチャリングとは?成果を出すための戦略設計から部門連携、成功のポイントまで解説
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BtoBビジネスを取り巻く環境の変化により、見込み客の購買行動は複雑かつ長期化しています。情報収集の主導権が顧客側に移り、オンラインでの比較検討が容易になった現在、従来の「リード獲得後すぐに営業へ引き渡す」というアプローチでは、機会損失やリードの取りこぼしが増加する一方です。
多くの企業、特にマーケティング部門は、「獲得したリードの質が低いと営業部門から指摘される」「マーケティング活動の投資対効果(ROI)を証明できない」といった、部門間の連携不足や成果の可視化に関する課題に直面しています。
Salesforceを活用したリードナーチャリングは、こうした課題に対する具体的な解決策となり、見込み客の行動データを基に関係性を段階的に構築し、購買意欲を高めていくために不可欠な取り組みといえます。
本記事では、Salesforce環境下でのリードナーチャリングの基本から、主要ツールであるAccount Engagement (旧Pardot) の活用法、そして成果を出すために重要な戦略設計と部門連携の仕組み作りまでを解説します。
なぜ、Salesforceを活用したリードナーチャリングが重要なのか
BtoBビジネスにおけるリードの価値の変化と「育成」の必要性
かつては「とにかくリード数を集める」ことが重視されていましたが、現在は「質の高いリード」を効率良く案件化・受注につなげることが重要視されています。リードの価値は、単なる数ではなく、以下の多面的な評価で判断されます。
どれだけ購買意欲が高いか(ホット/ウォーム/コールド)
どの購買プロセスにいるか(認知・比較検討・意思決定)
どの程度自社サービスと適合しているか
このため、リード獲得後の「育成(ナーチャリング)」が、ビジネス成果に直結する重要なプロセスとなりました。
営業部門とマーケティング部門が抱える連携の課題
リードナーチャリングの必要性は理解していても、多くのBtoB企業では、営業部門とマーケティング部門の間に壁が存在します。
マーケティング部門の声:「せっかく獲得したリードを営業がフォローしてくれない」「活動のROIが経営層に伝わらない」
営業部門の声:「マーケティングが渡すリードは質が低い」「まだ購買意欲が低い顧客ばかりだ」
こうした部門間の連携の課題は、「質の高いリード」の定義が曖昧なことに起因します。これらの課題を解消し、部門連携を強化するためにも、Salesforceという共通プラットフォーム上でのリードナーチャリングの仕組み構築が有効です。
リードナーチャリングがもたらす3つの主要なメリット
1. 営業機会の損失防止と中長期的な資産構築
獲得したリードの多くは、すぐに購入を検討しているわけではありません。リードナーチャリングを通じて適切にフォローし続けることで、競合他社への流出や休眠化を防止できます。継続的なコミュニケーションにより、見込み客の購買タイミングが訪れた際に第一想起され、将来の案件化につなげることが可能です。
2. 案件化率と受注率の向上による営業効率化
リードの興味・関心・課題をデータで可視化し、検討段階ごとに適切なコンテンツや情報を提供することで、案件化率・受注率が向上します。営業部門には「購買意欲が十分に高まったリード」のみを引き渡すため、営業担当者は確度の高い商談に集中できます。これにより、営業リソースの最適配分と営業効率の向上に直結します。
3. データに基づく営業とマーケティングの連携強化
リードナーチャリングのプロセスをSalesforce上で一元管理することで、マーケティングと営業の情報共有が格段にスムーズになります。リードの状態、Webサイト上での行動履歴、スコアリング情報などをリアルタイムで可視化できるため、部門間の認識の齟齬や属人化を防ぎます。共通のデータと目標に基づいた連携が実現します。
リードナーチャリングの基本プロセスとSalesforceの役割
見込み客を顧客へと育成する全体像
リードナーチャリングは、リード獲得から受注に至るまでの一連のプロセスです。
リード獲得(リードジェネレーション)
情報の蓄積・分析:属性情報やWeb上の行動履歴を蓄積・分析する。
戦略設計:ペルソナ、カスタマージャーニー、スコアリングモデルを設計する。
セグメンテーションと評価:リードを属性や行動、スコアに基づいて分類・評価する。
コミュニケーション実行:タイミングや興味度に応じた情報提供を行う。
案件化(営業部門への引き渡し):一定の基準を満たしたリード(MQL)を営業部門へ引き渡す。
効果測定と改善:各プロセスの成果を測定し、改善サイクルを回す。
Salesforceは、これらのプロセスを一気通貫で管理・自動化し、データドリブンな運用を実現するプラットフォームです。
Salesforceにおける主要ツール:Account Engagement (旧Pardot) の位置付け
Salesforceでリードナーチャリングを実行する上で中心となるのが、Marketing Cloud Account Engagement (旧Pardot) です。これは、BtoBマーケティングに特化したMA(マーケティングオートメーション)ツールです。
Account Engagementは、主に以下の機能を提供します。
行動トラッキング:Webサイト訪問、メール開封、資料ダウンロードなどの行動を追跡。
スコアリングとグレーディング:リードの購買意欲(スコア)と自社ターゲットとの適合度(グレード)を自動評価。
セグメンテーション:属性や行動に基づき、動的にリストを作成。
シナリオ自動化(Engagement Studio):条件分岐を用いたメール配信シナリオを設計・自動化。
パーソナライズ(ダイナミックコンテンツ):リードごとに最適なコンテンツを出し分け。
Sales CloudとAccount Engagement連携の価値
MAツールであるAccount Engagementと、SFA(営業支援システム)であるSales Cloudを連携させることには、大きな意義があります。
マーケティング部門が育成したリード情報を、シームレスに営業活動へと引き継ぐことが可能です。営業担当者は、担当リードが過去にどのようなWebページを閲覧し、どの資料をダウンロードしたかといった詳細な情報をSales Cloud上で確認できるため、初回のアプローチから的確な提案が可能になります。
また、営業の商談の進捗や失注理由などもSales CloudからAccount Engagementへ同期されるため、マーケティング部門は施策の効果測定や改善をより正確に行えます。この双方向のデータ連携が、部門間の連携を促進します。
【重要】ツール導入の前に。リードナーチャリング成功の土台となる戦略設計
多くの企業がMAツールやSalesforceの導入に着手するものの、「戦略設計が不十分なままツールだけを導入し、期待した成果が出ない」という失敗に陥りがちです。ツールはあくまで手段であり、リードナーチャリングを成功させるためには、導入前の緻密な戦略設計が不可欠です。
Step.1:ターゲット顧客の解像度を高めるペルソナ設計
リードナーチャリングの起点は、「誰に対して価値を届けるのか」を明確に定義することです。ターゲット企業の属性だけでなく、担当者の役割や抱える課題まで具体化します。
企業属性:業種、業界、企業規模、エリアなど。
担当者属性:所属部署、役職、決裁権限、ミッション。
課題とニーズ:現在直面しているビジネス課題、情報収集の目的。
ペルソナを明確に定義し、マーケティングと営業の両部門で共通認識を持つことが、その後の全ての施策の基準となります。
【Sells upの視点】ペルソナ設計は「理想」ではなく「現実」から出発する
ペルソナ設計を行う際、自社にとって都合の良い「理想の顧客像」を描いてしまうケースが見受けられます。しかし、成果に直結するペルソナは、既存の優良顧客や過去の成功事例の分析から導き出されるべきです。Salesforceに蓄積された過去の商談データや、営業担当者へのヒアリングを通じて、実際に自社の製品・サービスを購入している顧客の「現実」を捉えることが、有効な戦略設計の最初のステップとなります。
Step.2:購買プロセスを可視化するカスタマージャーニーマップの作成
ペルソナごとに、「認知→情報収集→比較検討→意思決定」という購買プロセスを時系列で整理します。各段階で顧客がどのような行動を取り、どのような感情を抱くのかを可視化することが目的です。
顧客の行動とタッチポイント:Web検索、セミナー参加、資料請求、デモ依頼など。
顧客の課題と心理状態:抱えている疑問、不安、期待。
提供すべき情報とコンテンツ:各段階で必要とされる情報。
カスタマージャーニーマップを作成することで、どのタイミングで、どのような情報を提供すべきかが明確になり、施策の抜け漏れを防ぎます。
Step.3:ジャーニーの各段階に応じたコンテンツ計画
カスタマージャーニーに基づき、顧客の検討段階ごとに最適なコンテンツを計画します。
認知・興味喚起段階:業界トレンド解説、課題提起型のブログ記事、調査レポートなど。
情報収集・課題解決段階:ホワイトペーパー、eBook、セミナー動画、事例紹介など。
比較検討・意思決定段階:サービス比較表、料金体系、デモ・トライアル案内、導入相談会など。
コンテンツの質と提供タイミングが、ナーチャリングの成果を大きく左右します。
Step.4:客観的な評価基準を作るリードスコアリングモデルの設計思想
リードの「質」を客観的に評価し、営業部門へ引き渡すタイミングを見極めるために、スコアリングモデルの設計が重要です。単に機能を設定するのではなく、「どのような状態になれば、自社にとって質の高いリードと言えるのか」という設計思想が求められます。Salesforce Account Engagementでは、以下の2軸で評価します。
属性情報(グレーディング)による適合度の評価
自社のターゲット顧客像(ペルソナ)にどれだけ近いかを評価します。これは適合度を示す指標です。
評価項目例:企業規模、業種、役職、部署など。
ターゲットに近ければグレードが高くなる(例:A、B、C…)。
行動履歴(スコアリング)による購買意欲の評価
見込み客の行動に基づき、購買意欲の高まりを数値化します。これは興味関心の度合いを示す指標です。
評価項目例:メール開封、リンククリック、資料ダウンロード、セミナー参加、料金ページの閲覧など。
購買意欲を示す行動ほど高スコアを付与する。
スコアの減点と鮮度の重要性
加点だけでなく、減点のルールやスコアの鮮度を考慮することも重要です。
減点項目例:長期間Webサイト訪問がない、メールの配信停止、競合企業の採用ページ閲覧など。
スコアの鮮度:半年前の資料ダウンロードと昨日の資料ダウンロードでは、購買意欲の高さは異なります。一定期間アクションがなければスコアを減衰(またはリセット)させる仕組みを導入し、スコアの有効性が低下することを防ぎます。
【Sells upの視点】多くの企業が陥りがちなスコアリング設計の3つの落とし穴と対策
スコアリング設計はリードナーチャリングの成否を分ける重要な要素ですが、多くの企業が以下のような罠に陥っています。
落とし穴1:行動スコアへの偏重と「グレード(適合度)」の軽視
よくある失敗は、「資料ダウンロードをしたらホットリードだ」と行動履歴(スコア)のみで評価してしまうことです。これでは、頻繁に情報収集はするものの、自社のターゲット属性と全く合致しないリード(例えば、学生や競合他社)が高スコアになってしまいます。
対策:「行動スコア(購買意欲)」と「属性グレード(適合度)」のマトリクスで判断する 重要なのは、グレードとスコアの両軸で評価することです。
グレード高・スコア高:最優先で営業がアプローチすべきリード。
グレード高・スコア低:ターゲットだが、まだ興味が低い。マーケティング部門による中長期的なナーチャリング対象。
グレード低・スコア高:購買意欲は高いが、ターゲット外。インサイドセールスによる選別などを検討、または原則アプローチ対象外。
このように、属性情報で足切りを行い、その上で行動履歴を評価するモデルを採用することが成功のポイントです。
落とし穴2:スコアの有効性が低下することへの無対策
初期に設定したスコアリング基準の有効性が時間とともに低下することがありますが、これを見過ごしてしまうケースが多く見られます。リードの興味・関心には鮮度があります。
対策:スコアの再評価の導入 一定期間アクションがなければスコアを減点またはリセットするなど、リードの興味・関心の「鮮度」を保つ仕組みを設定する必要があります。
落とし穴3:営業部門の感覚との乖離と基準の固定化
マーケティング部門が設計したスコアリング基準が、現場の営業担当者の感覚と合わず、「スコアは高いのにアポが取れない」という不満が生じるケースです。また、一度決めた基準を固定化してしまうことも問題です。
対策:設計段階から営業部門を巻き込み、定期的に見直す 過去の受注データを分析し、「料金ページ閲覧」や「導入事例ダウンロード」など、購買意欲の高さを示す特定の行動を特定し、そのスコア配分を高く設定します。設計段階から営業部門を巻き込み、運用開始後も定期的にフィードバックを受け、基準をチューニングする運用体制を構築します。
Salesforce Account Engagementを活用したリードナーチャリングの具体的な手法
設計した戦略に基づき、Salesforce Account Engagement(旧Pardot)の機能を活用してリードナーチャリングを実行します。
見込み客の行動を捉えるトラッキング機能
Webサイトの訪問履歴、メールの開封・クリック、資料ダウンロードなど、見込み客のオンライン上の行動をリアルタイムでトラッキング可能です。これにより、リードごとの関心度や検討段階を「データ」で把握できます。
興味の度合いで分類するリスト作成(セグメンテーション)
リードの属性、行動履歴、スコア、グレードに応じて、動的なリスト(セグメント)を作成できます。
例:スコアが100点以上かつグレードがB以上のリード(MQL)を抽出し、営業部門に自動通知。
例:特定の業種・役職のリードに限定したセミナー案内メールを配信。
こうしたセグメント運用により、リードごとに最適化された情報提供が可能となります。
シナリオに基づいたコミュニケーションを自動化する「Engagement Studio」
Engagement Studioは、見込み客の属性や行動に応じて、最適なメール配信やコンテンツ提供を自動化できるシナリオ設計機能です。「もしリードがこの行動を取ったら、次にこのメールを送る」といった段階的なナーチャリングを仕組み化できます。
この自動化により、手作業による抜け漏れや機会損失を防ぎ、継続的な関係構築が可能です。
顧客属性に合わせたコンテンツの出し分け(ダイナミックコンテンツ)
Webページやメール内のコンテンツを、リードの属性や興味に応じて自動で出し分けることができます。
例:製造業のリードには製造業の事例を、IT企業のリードにはIT企業の事例を表示。
例:検討段階に応じて最適なCTA(行動喚起ボタン)を表示。
これにより、パーソナライズされた体験を提供し、エンゲージメントを高めます。
具体的なリードナーチャリングシナリオ例
BtoBマーケティングで頻出する場面を想定し、Engagement Studioでの設定をイメージした具体的なシナリオ例を紹介します。
シナリオ例1:ウェビナー参加者向けフォローアップ
ウェビナーは有効な施策ですが、その後のフォローが成果を分けます。
トリガー(起点):ウェビナーに参加登録する。
アクション(参加前):リマインダーメールを送信する。
評価・分岐(参加後):ウェビナーに参加したか?
Yesの場合:お礼とアンケート依頼メールを送信。さらにアンケート回答内容に応じて関連資料を送付。
Noの場合:アーカイブ動画(見逃し配信)の案内メールを送信。
後続アクション:一定期間後、次の検討段階に進めるためのコンテンツ(事例紹介や個別相談会の案内など)を提供する。行動に応じてスコアを加算する。
シナリオ例2:休眠顧客の掘り起こし
過去に接点はあったものの、長期間アクションがない休眠顧客を再活性化させるシナリオです。
トリガー(起点):過去6ヶ月間アクションがないリードを動的リストで抽出する。
アクション:最新の業界トレンドや役立つ情報に関するメールを送信する。
評価・分岐:メール内のリンクをクリックしたか?
Yesの場合:関心があると判断し、関連するホワイトペーパーを案内。スコアを加算する。
Noの場合:一定期間待機した後、別の切り口のコンテンツ(導入事例など)を案内する。それでも反応がなければ、配信頻度を下げる。
これらのシナリオを自動化することで、効率的なナーチャリングが実現します。
【Sells upの視点】失敗の多くは組織の問題。成果を出す営業・マーケティング連携の仕組み作り(SLA設計)
リードナーチャリングがうまくいかない原因の多くは、「ツール」の機能不足ではなく、「組織・連携」の課題にあります。特に営業部門とマーケティング部門の連携が弱い場合、「マーケティングが渡すリードの質が低い」「営業がリードをフォローしてくれない」といった問題が頻発し、せっかくの取り組みが成果につながりません。
部門間の断絶を解消し、共通の目標に向けて連携するためには、SLA(Service Level Agreement)の設計が有効な解決策となります。
リードの質を定義する:MQLとSQLの明確な基準設定
部門間で「質の高いリード」の定義が曖昧なことが、連携不足の根本原因です。MQL(Marketing Qualified Lead:マーケティング部門が創出するリード)とSQL(Sales Qualified Lead:営業部門が追客対象とするリード)の定義を、両部門で合意し、数値や行動で明確にします。
MQLの定義例:スコアが100点以上、かつグレードがB以上。直近1ヶ月以内にキーアクション(料金ページ閲覧など)がある。
SQLの定義例:MQLに対してインサイドセールス(または営業)がヒアリングを行い、BANT条件(予算、決裁権、ニーズ、時期)の一部が確認できている。
基準を明確にすることで、不要な摩擦や属人的な判断を排除できます。
連携を制度化するSLAの設計方法
SLAとは、両部門の役割、責任、目標を定義し、明文化した合意のことです。抽象的な「連携しよう」というスローガンではなく、具体的な行動ルールを定めます。
SLAで定義すべき具体的な項目例
SLAには、以下のような項目を盛り込みます。
マーケティング部門が営業部門に対して約束すること
月間(または四半期)のMQL供給数目標。
供給するMQLの質(定義した基準)の担保。
リードの行動履歴や興味関心に関する十分な情報の提供。
営業部門がマーケティング部門に対して約束すること
MQLに対するアプローチ完了までの時間(例:24時間以内にファーストコンタクト)。
MQLに対する最低アプローチ回数(例:3回以上)。
アプローチ結果(商談化、失注、ナーチャリングに戻すなど)のSalesforceへの正確な記録。
リードの質や施策に対する定性的なフィードバックの提供。
SLAを運用することで、部門間の期待値を揃え、組織全体で成果創出に向けた連携が強化されます。
【Sells upの視点】SLA形骸化を防ぐための運用のポイント
SLAは一度作成しても、運用されなければ意味がありません。形骸化する典型的なパターンは、「目標数値だけが独り歩きし、現場の実態と乖離する」ことです。これを防ぎ、継続的に機能させるためには以下のポイントが重要です。
データによる可視化と定期的なレビュー会の実施:SLAの遵守状況(MQL供給数、アプローチ速度など)をSalesforceのダッシュボードで可視化します。そして、両部門のマネージャーが参加する月次レビュー会で、データを確認しながら課題と改善策を議論します。
定性的なフィードバックを重視する仕組み:数値報告だけでなく、「なぜこのリードは案件化しなかったのか」「どのような情報があればアプローチしやすかったか」といった営業現場からの定性的なフィードバックを重視し、マーケティング施策やスコアリングモデルの改善に活かすサイクルを回すことが不可欠です。
スモールスタートと段階的な改善:最初から完璧なSLAを目指さず、主要な項目から運用を開始します。運用しながら、市場環境やビジネスの変化に合わせて基準を見直していく柔軟性が求められます。
経営層のコミットメント:部門間の連携は、現場レベルだけでは限界があります。経営層がリードナーチャリングと部門連携の重要性を理解し、組織全体の目標として位置付けることが不可欠です。
Salesforceレポートとダッシュボードを活用した定期的な情報共有
Salesforceのレポート・ダッシュボード機能を活用し、SLAの遵守状況や施策の成果を可視化・共有します。これにより、部門間の連携が「属人的」にならず、データに基づいた建設的な議論と継続的な改善サイクルが回るようになります。
リードナーチャリングの効果を測定し、改善を続けるためのポイント
リードナーチャリングは一度仕組みを構築したら終わりではありません。常にデータで効果を測定し、改善を繰り返すことが重要です。特に、経営層に対してマーケティング活動のROIを証明するためには、適切なKPI設定が求められます。
追跡すべき重要なKPI(重要業績評価指標)
リードナーチャリングの成果を測るためには、プロセス全体を俯瞰したKPI設定が必要です。
最終的な成果指標(KGI)
マーケティング由来の売上・受注額
マーケティング由来のパイプライン(商談)創出額
中間指標(KPI)
MQL創出数
MQLからSQLへの転換率
SQLから案件化(商談化)への転換率
リードタイム(リード獲得から受注までの期間)の短縮度
施策ごとの評価指標
メール開封率・クリック率
コンテンツ(資料、ウェビナーなど)ごとのMQL創出貢献度
これらのKPIを定期的に計測・分析し、ボトルネックを特定します。
Salesforceのレポート機能を活用したROIの可視化
Salesforceの標準レポートやカスタムダッシュボード、そしてAccount Engagementの分析機能を活用し、投資対効果(ROI)を可視化します。
特に「キャンペーン」機能と「キャンペーンインフルエンス」機能を適切に設定することが重要です。これにより、「どのマーケティング施策(例えば、どのWebセミナー)が、どの商談の成約にどれだけ貢献したか」を金額ベースで測定することが可能になります。
これにより、どの施策が売上に貢献しているかを明確にし、経営層への報告や予算配分の最適化につなげやすくなります。
A/BテストとPDCAサイクルによる継続的な最適化
効果測定で得られたデータをもとに、施策を改善していくPDCAサイクルを回します。
メールの改善:件名、配信タイミング、コンテンツのA/Bテストを実施し、反応率の高いパターンを見つける。
コンテンツの改善:反応率の低いコンテンツを見直し、顧客のニーズに合わせて改善する。
シナリオの改善:Engagement Studioのレポートを確認し、離脱率の高いポイントを見つけてシナリオを見直す。
スコアリングモデルの見直し:営業部門からのフィードバックを基に、スコアリング基準(キーアクションの定義など)を調整する。
小さな改善を継続的に積み重ねることで、ナーチャリング全体の成果が大きく向上します。
まとめ:Salesforceリードナーチャリングは「戦略」と「組織連携」で成果が決まる
Salesforceを活用したリードナーチャリングは、BtoBビジネスの成長において不可欠な取り組みです。しかし、単にAccount Engagementのようなツールを導入するだけでは、十分な成果は得られません。
成功のポイントは、以下の3つに集約されます。
緻密な戦略設計:ペルソナ、カスタマージャーニー、スコアリングモデルなど、ツール導入前の戦略設計が成果の土台となります。特にスコアリングの設計思想が重要です。
組織横断の連携(SLA):マーケティングと営業が共通の目標とルール(SLA)に基づき連携する仕組みが不可欠です。形骸化を防ぐ運用体制も求められます。
データドリブンな運用と改善:Salesforce上に蓄積されたデータを基に効果(ROI)を測定し、継続的に改善サイクルを回す運用が求められます。
これらを着実に実行することで、リードの質と案件化率を高め、マーケティング部門が会社の売上に貢献するプロフィットセンターへと成長することができます。
属人的な管理や場当たり的な施策から脱却し、Salesforceを基盤とした再現性の高いマーケティングモデルを構築しましょう。
FAQ:Salesforceリードナーチャリングに関するよくある質問
Q1. MQLとSQLの違いは何ですか?どこで線引きすべきですか?
MQL(Marketing Qualified Lead)はマーケティング部門が定義する「一定の興味・関心を持つリード」であり、SQL(Sales Qualified Lead)は営業部門が受け入れる「商談化に向けてアプローチすべきリード」です。線引きの基準は企業によって異なりますが、属性情報(グレード)や行動スコアなどを組み合わせ、数値やアクションで具体的に定義し、両部門で合意(SLA締結)することが重要です。
Q2. Salesforce Account Engagement(旧Pardot)とSales Cloudの違いは何ですか?
Account Engagementは、リードナーチャリングやマーケティング活動の自動化(MA)に特化したツールです。一方、Sales Cloudは、商談管理、顧客管理、営業活動の効率化(SFA/CRM)に特化しています。両者を連携させることで、リード獲得から育成、案件化、受注まで一気通貫のデータ管理と活用が可能となります。
Q3. リードナーチャリングの成果が出るまでどれくらいの期間がかかりますか?
商材の検討期間やリードタイムにもよりますが、一般的にリードナーチャリングは中長期的な取り組みです。短期的な成果としては、MQL創出数の増加などが挙げられますが、売上やROIへの貢献を実感するには、半年から1年程度の継続的な運用と改善が必要です。まずは「ペルソナ・カスタマージャーニーの明確化」と「スコアリング基準の設計」から着手することが重要です。
Q4. スコアリングを導入しましたが、うまく機能しません。何が原因でしょうか?
よくある原因として、「行動スコアへの偏重(属性グレードが考慮されていない)」「減点ルールやスコアの鮮度が考慮されていない」「購買に直結するキーアクションが特定できていない」「スコアリング基準が営業部門と合意できていない」などが挙げられます。(本記事の「多くの企業が陥りがちなスコアリング設計の3つの罠と対策」をご参照ください)。スコアリングモデルの設計思想に立ち返り、基準を見直すことが必要です。
Q5. 部門間の連携がうまくいかない場合、何から手をつけるべきですか?
まずは、両部門のマネージャー間で「質の高いリード」の定義(MQL/SQL基準)について議論し、合意することから始めます。次に、その基準に基づいた運用ルール(SLA)を定め、Salesforceのダッシュボードで状況を可視化します。定期的なレビュー会を実施し、データに基づいた建設的な議論と定性的なフィードバックを行う場を設けることが有効です。
Sells upは、データドリブンなマーケティング戦略の設計と、営業・マーケティング連携の強化を通じて、貴社の売上成長を支援します。Salesforceリードナーチャリングの導入・運用でお悩みの際は、ぜひご相談ください。
MAツールの導入・活用の相談はSells upへ。
MAツールの導入や、導入後の成果最大化に課題をお持ちでしたら、ぜひSells upにご相談ください。50社以上の導入・活用を支援してきた担当者が貴社の状況・目標に向き合い、最適なツールの導入プラン / 統計知識を用いた活用プラン描き、戦略策定から実装 / 実行 / 効果測定までをご支援いたします。
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