マーケティングオートメーションとビッグデータ連携の実装ガイド|5ステップ・成熟度モデル・業種別シナリオ
「やっているのに成果が出ない」状態から抜け出すために
施策を続けているのに商談が増えない、リードの質が上がらない。 こうした課題の多くは、戦略と施策のつながりが設計されていないことが原因です。 Sells upは現状の分析と改善の優先順位整理から支援します。
マーケティングオートメーションとビッグデータの連携とは、MA(マーケティングオートメーション)に蓄積された行動データと、SFA(営業支援システム)・基幹システム・外部データなどの異なるデータを統合し、スコアリングの精度向上、パーソナライズの高度化、マーケティングROIの可視化を同時に実現する取り組みです。
弊社に寄せられたご相談の中でも、MAに十分なデータが蓄積されているにもかかわらずスコアリングが営業に活用されていない、結果としてハウスリストの上から順に架電している、といったケースが少なくありません。こうした状況を見ると、問題はツールそのものではなく、「データが活用できる状態になっていないこと」にあると感じています。
本記事では、データ統合の進め方を5つのステップで整理し、自社の成熟度を把握するための3段階モデル、さらに製造業とSaaS企業における具体的な実装シナリオについて順を追って解説します。
MAとビッグデータ連携とは?1分で押さえる定義とよくある誤解
MAとビッグデータ連携とは、MAツールに蓄積された行動履歴だけでなく、CRM・SFA・基幹システム・外部の企業属性データなど、複数の異種データを統合することで、MAの活用精度と事業への貢献度を高める取り組みを指します。
まず押さえておきたい前提は、次の3点です。
①データは「集める」だけでなく「使える状態に整える」ことが先に必要であること
②連携の目的は、スコアリング精度の向上・パーソナライゼーション・ROIの可視化の3点に集約されること
③これらを実現するには、段階的な成熟度設計が不可欠であること
ビッグデータとは何か|3つの特徴で理解する
ビッグデータとは、Volume(量)・Variety(多様性)・Velocity(速さ)の3つの特徴を持ち、従来の方法では扱いきれない規模と複雑さを持つデータ群を指します。
マーケティングの文脈では、Webサイトのアクセスログ(Volume)、名刺情報や展示会履歴、メール開封データといった形式の異なるデータ(Variety)、リアルタイムに変化する行動データ(Velocity)が該当します。これらをMAで扱える形に整備することで、顧客一人ひとりの状態をより正確に把握できるようになります。
「データがある」と「使える」は別物
「データは溜まっているのに施策に活かせない」という声は、BtoBマーケティングの現場でよく聞かれます。データが存在していることと、それを分析・活用できる状態にあることは、まったく別の話です。
部門ごとに分断されたデータ(サイロ化)、表記ゆれや重複による品質低下、分析体制の不足。この3つが重なると、MAは単なるメール配信ツールにとどまってしまいます。
実際の現場でも、データ整備を後回しにしたままシナリオ設計を進めてしまい、誤った属性情報に基づくアプローチを繰り返しているケースが多く見られます。
MAで成果が出ない理由:サイロ化とデータ品質の問題
MAで成果が出ない場合、主な原因はデータのサイロ化とデータ品質の低下にあります。改善に向けて重要なのは次の3点です。
①サイロ化により、スコアリングに必要な属性情報と行動情報を組み合わせられない
②データ品質が低いままだと、誤ったセグメントへのアプローチが発生する
③これらは別々ではなく、同時に解決すべき問題である
データのサイロ化とは
サイロ化とは、部門やツールごとにデータが分断され、相互に連携されていない状態を指します。代表的な例は次の通りです。
- MAツール:Web閲覧履歴やメール開封などの行動データ
- SFA・CRM:商談履歴や役職などの属性データ
- 基幹システム:購買金額や契約情報などのトランザクションデータ
これらが連携されていないと、たとえ価格ページを何度も閲覧しているユーザーがいても、その人が意思決定者かどうかを判断できません。その結果、スコアリングは「よくクリックする人」を抽出するだけになり、営業との認識にズレが生じます。
「リストは来るが温度感が合わない」という声が出る背景には、こうした構造的な問題があります。
スコアリング設計から営業連携まで体系的に理解したい方は、スコアリング設計と営業連携の全体像も参考にしてください。
サイロ化がMQLの質を下げる理由
MQLは本来、「ターゲットに合致した属性」と「購買意欲を示す行動」の両方を満たすリードを指します。しかしサイロ化した環境では、この2つを同時に評価できません。
その結果、行動スコアだけが高いリードが営業に渡され、「質が低い」という不満が蓄積されます。やがてマーケティングと営業の連携も機能しなくなります。
データ品質の課題
サイロ化と並んで重要なのがデータ品質です。よくある問題は以下の通りです。
- 表記ゆれ:同一企業が別名で登録される
- 重複:同一人物が複数登録される
- 欠損:役職や業種が未入力
- 情報の古さ:更新されないまま残るデータ
この状態で施策を実行すると、重複配信や誤ったアプローチが発生します。一方で、クレンジングと名寄せを行うとリード数は減ることがありますが、その分、実際にアプローチすべき対象が明確になり、結果的に商談化率の改善につながります。
MAとビッグデータ連携の主なメリット
連携によって得られる主な効果は次の3つです。
①スコアリング精度の向上
②パーソナライゼーションの高度化
③ROIの可視化
MA導入全体の設計については、BtoBマーケティングにおけるMA導入の全体設計で詳しく解説しています。
スコアリング精度の向上
行動データに加えて属性や購買履歴を組み合わせることで、より実態に即した評価が可能になります。例えば、「価格ページを複数回閲覧し、かつ一定規模以上の企業の購買担当者」という条件でホットリードを抽出できます。
パーソナライゼーションの高度化
顧客の状況をより細かく把握できるため、一斉配信ではなく、個々の状況に応じたコミュニケーションが可能になります。結果としてエンゲージメントの向上が期待できます。
ROIの可視化
リード獲得から受注までのプロセスを追跡できるため、どの施策が売上に寄与したかを定量的に把握できます。これにより、マーケティング投資の意思決定がしやすくなります。
品質の低いデータが混在したままシナリオを動かすと、同じ顧客に何通もメールが届いたり、すでに退職した担当者へ架電し続けてしまったりといった事態が起こります。
一方で、データクレンジングと名寄せを丁寧に行うと、見かけ上の有効リード数は当初想定よりも大きく減ることがありますが、むしろその「絞り込まれた母集団」こそが現実的にアプローチできる質の高いリードです。
結果として、無駄なアプローチコストが削減され、商談化率の改善につながります。
MAとビッグデータ連携が生む3つの効果
MAとビッグデータを組み合わせることで得られる主なメリットは、次の3つに整理できます。
①スコアリング精度の向上とMQLの質の改善
②顧客一人ひとりに合わせたパーソナライゼーションの実現
③リード獲得から受注までのROIを定量的に可視化できること
MAの全体設計については、BtoBマーケティングにおけるMA導入の全体設計も併せて参考にしていただくと、全体像を掴みやすくなります。
メリット①:スコアリング精度が上がり、MQLの質が安定する
Web閲覧などの行動データだけでなく、SFAの商談履歴や基幹システム上の購買情報、外部企業データを組み合わせることで、スコアリングの評価軸は「行動量」から「購買意欲と属性を掛け合わせた評価」へと変わります。
たとえば「特定製品の価格ページを3回以上閲覧しており、従業員数100名以上の製造業に所属する購買担当者」といった条件でホットリードを定義できるようになり、営業が受け取るリードの質も安定していきます。
メリット②:高度なパーソナライズによる顧客体験の向上
複数のデータソースを統合すると、顧客の興味関心や検討フェーズ、過去の行動履歴をより高い解像度で捉えられるようになります。
その結果、「全員に同じメールを送る一斉配信」ではなく、「過去に購入した製品Aの利用頻度が最近急増している顧客にだけ、関連オプションの提案メールを自動送信する」といったきめ細かなコミュニケーションが可能になります。
メリット③:マーケティングROIを可視化し、投資判断に活かせる
MA・SFA・基幹システムが連携すると、「このコンテンツを閲覧したリードが何件の商談化を経て、どれだけの売上に結びついたのか」といったアトリビューション分析が可能になります。
マーケティング施策ごとの売上貢献を数値で示せるようになるため、経営層への説明や予算獲得、組織内での役割認知に直結します。
MAでビッグデータを成果につなげる5ステップ
MAとビッグデータの連携を成果につなげるには、次の5つのステップを順番に進める必要があります。
特に意識したいのは以下の3点です。
・KPIを先に定め、その達成に必要なデータ範囲を決めること
・ツール選定の前に要件定義を行うこと
・データ品質を担保する前に分析やシナリオ設計へ進まないこと
Step.1:目的の明確化とデータソースの棚卸し
最初のステップは、「何を実現するためにデータを連携するのか」を明らかにし、KGI・KPIを設定することです。
「リードスコアリングの精度を高めてMQLからの商談化率を改善する」「特定セグメントの商談化率を現在の2倍にする」といった、できるだけ具体的なゴールを先に決めます。
そのうえで、その目標達成に必要なデータが社内外のどこにあるかを洗い出します。
MA、CRM/SFA、Web解析ツール、基幹システム、外部企業データベースなど、データソースごとに「内容」「形式」「更新頻度」「管理部門」を整理しておくと、後工程がスムーズになります。
目的が曖昧なままデータを集め始めると、工数ばかり増え、使われないデータが溜まっていく原因になります。
Step.2:データ統合基盤の構築|CDP・DWH・ETLの選び方
棚卸ししたデータをMAで活用できる形に整えるには、データ統合のための基盤が必要です。
規模や予算、技術リソースに応じて、概ね以下の3パターンから選択します。
- MA・CRMの標準連携機能:HubSpotとSalesforceのように、ツール間の公式連携を活用するパターン。追加コストを抑えて始められるシンプルなアプローチです
- ETLツール:複数システムからのデータ抽出・変換・統合を行うミドルウェアを導入するパターン。異なるシステム同士の連携が必要な中規模企業に向いています
- CDP・DWH:大規模データを集約し、高度な分析を行うための基盤。導入・運用コストが大きいため、中小企業では過剰投資になるケースもあります
最初からCDPやDWHの導入を前提にプロジェクトを立ち上げると、基盤構築に時間がかかり、途中で頓挫してしまう例も少なくありません。
「どのデータを、どのような施策で、どう活用したいのか」を先に言語化し、その要件を満たせる最小限の仕組みから着手することが重要です。
Step.3:データクレンジングと名寄せで品質を担保する
統合したデータは、そのままでは使えないことがほとんどです。活用できる状態に整えるため、データマネジメントのプロセスを設計します。
- 表記ゆれの統一:企業名・住所・役職名など、入力ルールにばらつきがある項目を標準化する
- 重複の解消:同一人物がメールアドレス違いや表記違いで複数登録されている場合は、1レコードへ統合する
- 欠損値の補完:役職・業種・従業員数など、スコアリングに必要な項目の空欄を、外部データやフォーム設計の見直しなどで補う
- 名寄せ:異なるシステムに分散している同一企業・同一人物のデータを、一意のIDでつなげる
これらは一度きりの作業ではなく、運用ルールとして継続的に回していく必要があります。
入力ルールをまとめたガイドラインを用意し、定期的に品質チェックを行う体制づくりまで含めて設計しておくと、あとから手戻りが少なくなります。
Step.4:分析とセグメンテーションを高度化する
データの品質が一定レベルまで整ったら、いよいよ分析とセグメント設計に進みます。
まずは過去の受注顧客データから、「どのような行動パターン・属性を持つリードが受注に至りやすいのか」を洗い出し、その条件をMA上のセグメントに落とし込んでいきます。
たとえば「製品Aの導入事例ページを3回以上閲覧し、従業員数500名以上の製造業に所属する購買担当者」というセグメントを作成する、といったイメージです。
単一の行動だけを見ていたときには見えなかった「ホットになりやすい塊」が立ち上がってくるのが、このフェーズの醍醐味です。
分析手法や施策化の流れをより詳しく知りたい場合は、MAデータ分析の実行ガイドも参考になります。
Step.5:MAシナリオへ実装し、PDCAを回す
設計したセグメントをもとに、MAのシナリオへ落とし込んでいきます。
カスタマージャーニーをもとに、各セグメントに対して「どのタイミングで」「どのようなコンテンツを」「どのチャネルで」届けるかを整理し、シナリオとして実装します。
シナリオ稼働後は、Step.1で設定したKPI(MQLの商談化率、メール反応率、受注率など)を定期的に確認し、スコアの閾値やセグメント条件を見直すサイクルを回します。
「MAシナリオ設計の全体像と具体的な設計手順」を押さえたい方は、MAシナリオ設計の実践手順もあわせてご覧ください。
データ活用の成熟度モデル:自社の現在地を3段階で把握する
データ活用成熟度モデルとは、MAとビッグデータ活用の到達レベルを3段階で整理し、自社がどのフェーズにいるのかを客観的に確認するための枠組みです。
ポイントは、「まず現在地を正しく把握すること」と、「段階を飛ばして高度な取り組みに進まないこと」の2つです。
Sells upでは、80社以上の支援実績をもとに、以下の3レベルで整理しています。
レベル1:基盤整備フェーズ
レベル1のゴールは、主要なデータソース(MAとSFA・CRM)を連携し、顧客データを一元管理できる状態をつくることです。
- データソースの棚卸しと、管理部門の整理
- MA×SFA・CRMの標準連携の設定
- クレンジングと名寄せによるデータ整備
- KPIを可視化するダッシュボードの設計
この段階では、「完璧な統合」を目指すのではなく、「主要な2システムが正しくつながり、KPIが測れる状態」を最短距離でつくることを優先します。
レベル2:施策実行フェーズ
レベル2では、整備された基盤の上でMAシナリオを稼働させ、セグメントごとに最適化されたナーチャリングを実行していきます。
カスタマージャーニーに沿ったシナリオ設計や、属性データと行動データを組み合わせたスコアリングモデル構築、営業との連携プロセスの標準化(ホットリードの定義と引き渡し条件の合意)が主な取り組みです。
このフェーズで特に効果が出やすいのは、受注データをもとにした統計的なスコアリングの導入です。
レベル3:自動最適化フェーズ
レベル3では、基幹システムの購買データや外部データなど、より多くのデータソースを連携し、AI・機械学習による予測モデルを構築していきます。
受注確率の高い行動パターンの自動学習や、スコアの動的な最適化、LTVに基づく戦略立案が主なテーマになりますが、このフェーズに進む前提として、レベル1・2が安定稼働していることが欠かせません。
なぜスモールスタートが重要なのか
「CDPを導入し、全社データを統合してから活用を始める」といった構想を掲げた結果、基盤整備に時間がかかりすぎて、組織の優先順位が変わりプロジェクトが中断してしまうケースは珍しくありません。
現実的で成功確度が高いのは、まずMA×SFA連携(レベル1)を短期間で整備し、最初のシナリオを1本動かして成果を確認する(レベル2)という進め方です。
小さな成功事例を積み重ねることで、関係部門の理解と協力を得やすくなり、結果的に大きなプロジェクトも前に進めやすくなります。
業種別:ビッグデータを活用した高度なMAシナリオ例
ここからは、異なるデータを組み合わせることでMA活用が一段階進んだ事例を、製造業とSaaSビジネスの2パターンで紹介します。
ポイントは、「MA単体のデータだけでは到達できない精度のシナリオ」が、業種固有のデータと掛け合わせることで実現している点です。
製造業:展示会名刺×Web行動×商談データで重要顧客を発掘する
製造業では、展示会やセミナーなどオフラインでの接点が多く、名刺データが大量にありますが、MAのWeb行動データとつながっていないケースがよくあります。
これらを統合すると、次のようなシナリオが組めます。
- 展示会で獲得した名刺データをMAに取り込み、行動トラッキングを開始する
- そのリードが自社サイトの高額製品の価格ページを複数回閲覧したタイミングを検知する
- CRM上の役職情報と照合し、意思決定に関与しうるポジションであればスコアを大きく加算する
- 一定スコアを超えたリードに、該当製品の導入事例コンテンツを自動配信する
- 同時に担当営業へアラートを送り、フォローを促す
「展示会に来場した」「価格ページを何度も見ている」「決裁に関わる立場である」という3つの条件がそろった瞬間を、自動で捉えられる点がポイントです。
SaaSビジネス:プロダクト利用ログを使ったアップセル・クロスセル
SaaS企業では、ユーザーがプロダクトをどのように使っているかを示す利用ログが蓄積されています。
このログをMAと連携させることで、次のようなアップセル・クロスセルのシナリオを自動化できます。
- 利用ログから「特定機能の利用頻度が急増している顧客」や「契約プランの利用上限に近づいている顧客」を抽出する
- 該当するセグメントに対して、上位プランへのアップグレード案内や関連機能のウェビナー案内を自動配信する
- さらに、「上位プランの紹介ページを閲覧したが申し込みに至っていない顧客」を特定し、カスタマーサクセスへ自動アラートを送る
「プロダクトの使われ方」という、MA単体では取得できないデータを組み合わせることで、LTV向上と解約率低減の両方に効くシナリオになります。
異種データの掛け合わせが競合優位につながる理由
2つの事例に共通しているのは、「自社にしかないデータ」をMAと組み合わせている点です。
製造業なら展示会名刺や保守契約データ、SaaSなら利用ログや契約更新情報など、自社のビジネス特性から生まれるデータ資産を棚卸しし、それらをどうMAに渡すかを設計することが、ビッグデータ活用の起点になります。
まずは「自社にしかないデータは何か」を書き出してみるところから始めると、次の一手が見えやすくなります。
よくある失敗パターン3つと、その対処法
MAとビッグデータ連携のプロジェクトで見られる失敗は、次の3つに集約されます。
①ツール導入が先行し、目的とKPI設計が後回しになる
②データ分析・活用を担う人材・体制が整っていない
③営業・IT・マーケティングの連携設計がないまま進めてしまう
失敗①:ツールありきで始めてしまう
「CDPを入れればデータが活用できるはず」「BIツールを入れれば分析できるはず」といった発想でプロジェクトがスタートするパターンです。
ツールだけ先に導入した結果、「何を見ればいいのか分からない」「どの数字を改善すべきか決められない」といった状態に陥り、プロジェクトが止まってしまうケースもあります。
対処のポイントは、ツール選定の前にKGIとKPIを定義し、「そのKPIを動かすために必要なデータは何か」から逆算して、必要なツールや連携範囲を決めることです。
失敗②:人材・体制がないまま基盤だけ作る
データ統合基盤を整えても、その後の分析や品質管理、PDCAを担う人材がいなければ、せっかくの基盤も活かされません。
MAの運用担当者はいても、データ統合や統計的分析までカバーできる人材は限られている、という組織も多いのではないでしょうか。
現実的な解としては、社内に専任担当を育成しつつ、必要な部分だけ外部の専門家と協働する形を設計することです。全てを内製化しようとすると採用・教育コストが膨らみ、すべてを外部委託するとノウハウが社内に残りません。
失敗③:部門間の合意形成がないまま進めてしまう
データ活用はマーケティング部門だけでは完結しません。MQLの定義や引き渡し条件の合意には営業部門が不可欠であり、データ統合基盤の構築・運用にはIT部門の協力が必要です。
マーケティング部門だけでスコアリングモデルを決めてしまい、営業から「そのスコアは信用できない」と言われてアラートが使われなくなる、といったケースも実際に起きています。
こうした事態を防ぐには、プロジェクト立ち上げ時にマーケ・営業・ITの三者が参加するキックオフを設定し、共通のゴールと役割分担を文書化しておくことが重要です。
支援事例から見える共通原則
Sells upのこれまでの支援を振り返ると、MAとビッグデータ連携が成果につながったケースには、共通するポイントが2つあります。
統計解析をスコアリングに組み込む
担当者の感覚でスコアリングを設計していた企業が、受注済み顧客の行動履歴にロジスティック回帰などの統計解析を適用することで、「どの行動が受注確率と強く相関しているか」を特定できたケースがあります。
分析の結果、社内の感覚とは異なり、「価格ページよりも導入事例ページへの複数回訪問」の方が、受注との相関が高いことが分かり、スコアの重み付けを見直したところ、MQLの商談化率が改善しました。
統計解析を用いたスコアリング設計の具体的な手順は、統計解析を使ったスコアリング設計で詳しく紹介されています。
まずはMA×SFA連携から着手し、営業の行動変容まで設計する
別の企業では、CDPやDWHの導入ではなく、まずMAとSalesforceの標準連携を設定し、ホットリードのアラートを営業へ届くようにするところから始めました。
稼働当初は「アラートが来てもどう使えばよいか分からない」という声が営業側から出ていましたが、マーケと営業でSLAを再設計し、「スコア◯点以上のリードには翌営業日中に架電する」といった具体的な運用ルールを合意しました。
営業からのフィードバックをもとに、スコアの閾値を複数回調整した結果、数ヶ月後には「架電の優先順位づけがMAのアラートベースに変わった」という行動変化が生まれました。
共通するのは「データを使える状態にする」こと
これらの事例に共通するのは、高度なデータ基盤を整える前に、「今あるデータを使える状態に整え、現場でのアクションと結びつけること」に徹している点です。
統計解析も、MA×SFA連携によるホットリード検知も、裏側でデータのサイロ化や品質問題が解消されていなければ機能しません。
まずは「データが使える状態をつくる」ことへの投資が、その後の商談化率やLTV向上といった成果につながっていく、というのが実務から得られた共通認識です。
まとめ:MAとビッグデータ連携は「準備の質」で決まる
本記事では、マーケティングオートメーションとビッグデータ連携の定義から、成果が出ない原因、5ステップの実装プロセス、成熟度モデル、業種別シナリオ、失敗パターンと対処法、支援事例の共通原則までを一通り整理しました。
繰り返しになりますが、「データがあること」と「データが使える状態になっていること」は別物であり、連携の効果は準備段階の設計とデータ整備の質によって大きく左右されます。
Step.1でKPIを先に定め、Step.2でMA×SFAの標準連携から最小工数で基盤を整備し、Step.3でクレンジングと名寄せを行う。この順番を守ることで、スコアリング精度向上・パーソナライゼーション・ROI可視化という3つのメリットを、無理なく段階的に実現していくことができます。
また、業種別シナリオの設計では、ハイエンドなテクノロジーよりも、「自社ビジネスに固有のデータを見つけ、それをMAと組み合わせる」という発想の転換が重要です。
製造業における展示会名刺や保守契約データ、SaaSにおける利用ログや契約更新情報など、自社にしかないデータ資産を活かすことで、他社には真似しづらい競合優位性を築くことができます。
MAとビッグデータ連携は、一度構築して終わりではありません。データ品質の維持、スコアリングモデルの定期的なチューニング、部門間でのフィードバックループを継続的に回すことで、長期的に成果を生み出し続ける基盤へと育てていく取り組みです。
よくあるご質問
MAとビッグデータ連携は、まず何から始めるべきですか?
まずはKGI・KPIを設定し、その達成に必要なデータを棚卸しするところから始めてください。
多くの企業では、MA×SFA・CRMの標準連携を短期間で整え、最初のシナリオを1本稼働させて結果を確認する「スモールスタート」のアプローチが現実的です。
大規模なデータ統合基盤の導入は、その後の成果を確認しながら段階的に検討するほうが、リスクも小さくなります。
MAのデータ活用が進まないとき、よくある原因は何ですか?
支援先で頻出する原因は、次の3つです。
- 部門間でデータが連携されていない「サイロ化」
- 表記ゆれ・重複・欠損値などによるデータ品質の低下
- MQLの定義やSLAについて、営業とマーケの合意が取れていない
ツールを追加する前に、まずはこの3点に手を入れることが、MAデータ活用を前進させる近道です。
ビッグデータとMAを連携しても商談が増えない場合、どこを見直せばよいですか?
連携後も商談数が増えない場合は、スコアリングの閾値設計と、営業の行動がそれにきちんと連動しているかを確認する必要があります。
ホットリードの定義が営業と共有されていなかったり、スコアが一定値を超えた際の具体的なアクション(架電・メール・訪問など)が決められていないと、せっかくのデータ連携も商談に直結しません。
MQLの定義を営業と改めてすり合わせ、スコア条件と営業アクションをSLAとして文書化することが有効です。
スコアリングの見直しは、どの程度の頻度で行うべきでしょうか?
月次でKPIを確認し、MQLの商談化率が目標を下回っている場合は、スコアの閾値や重み付けの見直しを検討するのがおすすめです。
稼働から3〜6ヶ月の間に1〜2回程度、営業からのフィードバックをもとにチューニングを行うケースが多く、スコアと現場感のズレを早めに修正することで、精度を徐々に高めていけます。
SLAを設定しても、営業がMAのアラートを使ってくれない場合は?
SLAを整備してもアラートが活用されない場合、主な原因は「スコアの信頼性」と「アラートを受けた後の行動のあいまいさ」の2つに分けられます。
前者は、営業と一緒にスコアの閾値や条件を再設定することで改善できますし、後者は「スコア◯点以上なら翌営業日中に架電し、このトークスクリプトを使う」といった具体的なアクションをセットで定義することで解決しやすくなります。
ビッグデータとはどのようなデータを指しますか?
ビッグデータとは、従来のデータベースでは収集・保存・分析が難しいほどの「大量・多様・高頻度」のデータ群を指します。
MAとの連携という文脈では、Web行動ログ、メールの反応データ、SFAの商談履歴、基幹システムの購買データ、外部の企業属性データなど、形式も発生源も異なるデータを総称してビッグデータと呼ぶことが多いです。
「やっているのに成果が出ない」状態から抜け出すために
施策を続けているのに商談が増えない、リードの質が上がらない。 こうした課題の多くは、戦略と施策のつながりが設計されていないことが原因です。 Sells upは現状の分析と改善の優先順位整理から支援します。
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