MAツールスコアリング入門|成果が出る設計と運用のポイント
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MAツールを導入し、ひと通り使えるようにはなってきた。
しかし、いざ「スコアリング」の設定となると難しすぎて、ベンダーに聞いてもよく分からない──。
そんな不安や行き詰まりを感じながら、なんとか設計と運用までたどり着きたいと思い、このページを読んでいるのではないでしょうか。
もしスコアリングの設定で手が止まり、せっかくの高価なツールが「ただのメルマガ配信ツール」になってしまっているのだとしたら、本当にもったいないことです。
なぜなら、スコアリングの本質は、これまでアプローチできていなかった休眠顧客を掘り起こし、新たな売上機会を生み出すことにあるからです。
スコアリングは、単なる“点数付け”ではありません。
顧客一人ひとりの行動を読み解き、「次にどんなアクションを取るべきか」を導くための、ナーチャリングの設計そのものなのです。
とはいえ、最初の設定が難しいのも事実。
そこで今回は、国内外ほぼすべてのMAツールを運用してきたSells up代表の私・武田が、スコアリングの正しい設定方法から運用のコツまで、分かりやすく解説します。
最後までお読みいただければ、スコアリングを自信を持って設定できるようになり、これまでアプローチできていなかった見込み客からも商談を生み出し、事業の売上向上へつなげていけるはずです。
MAツールを“本当に成果につながる仕組み”として活用するために、ぜひ最後までご覧ください。
1.MAツールのスコアリングとは「受注確度の高い顧客を可視化する機能」
まずはスコアリングについて、改めて確認しておきましょう。MAツールを導入する前に一度は調べたと思いますが、概要をしっかり理解しておくと、このあと運用していくうえでイメージしやすくなります。
MAツールのスコアリングとは、一言でいうと受注確度の高い顧客を可視化する機能のことです。
スコアリングでは、商談化して受注まで至った(もしくは商談まで至った)顧客の行動履歴を分析し、「行動ベースのアクション」にプラスとマイナスの点数をつけていきます。
点数をつけることで、次のような顧客ごとの行動の違いがはっきり見えるようになります。
- 商談にも受注にも至らない人
- 商談転換したが、受注に至らない人
- 商談転換して、受注に至った人
「受注に至った顧客」と同じ行動を、ほかの見込み客も取っていれば、統計的には受注確度が高まりやすいはずです。その行動パターンを分析し、ナーチャリングのプロセスとして可視化する役割を担っているのが、MAツールのスコアリング機能です。
ここでは、ここでは、1か月で受注に至った顧客のケースを例に、スコアリングを活用して、どんな施策を打てばよいのかを見ていきます。
1-1.ある顧客が1か月で受注に至った場合を分析する
例えば、ある顧客が1か月で受注に至ったとします。行動を分析した結果、その1か月の間に
「コラムA →コラムB →サービス紹介ページ →事例A」
という順番で閲覧していたことが分かりました。実際の行動履歴を時系列で見ると、次の通りです。
| 日付 | 顧客の行動履歴(分析結果) |
|---|---|
1/1 | コラムAを閲覧 |
1/8 | コラムBを閲覧 |
1/15 | サービス紹介ページを閲覧 |
1/22 | 事例Aのページを閲覧 |
2/1 | 商談化 |
このような行動履歴になるように設計できれば、商談化しやすくなる可能性が高まるでしょう。
1-2.分析結果をもとにナーチャリングプロセスを設計する
先ほどの分析結果をもとに、他の見込み客にも同じ体験をしてもらえるよう、いわば「ナーチャリングプロセス(育成の流れ)」を設計していきます。
次のような行動の流れになるよう施策を組み立てることで、商談化しやすくなる可能性を高められます。

| 日付 | 実施する施策 |
|---|---|
12/30 | コラムAページに飛べるメルマガを配信する |
1/1 | コラムAのページを閲覧させる |
1/6 | コラムBページに飛べるメルマガを配信する |
1/8 | コラムBのページを閲覧させる |
1/13 | サービス紹介ページに飛べるメルマガを配信する |
1/15 | サービス紹介ページを閲覧させる |
1/20 | 事例Aのページに飛べるメルマガを配信する |
1/22 | 事例Aのページを閲覧させる |
このように、スコアリングは「顧客の育成計画」を立てるための仕組みです。
後ほど「3-2.データを多角的に分析する」でも解説しますが、スコアリングで分析するときは、年齢、性別、業種といった属性ごとに区切って、それぞれに合わせた施策を実施していきます。
こうして、顧客の行動から興味・関心の度合いを点数化し、最適なタイミングで営業がアプローチできるようにすることで、受注確度を高めていくことができます。
2.スコアリングはMAツールの成果そのものを左右するほど重要
スコアリングは重要だと分かっていても、「実践となると難しそうだ」と感じてしまう方は少なくありません。
だからこそ、最初にお伝えしておきたいことがあります。
スコアリングは、MAツールの成果を左右するほど重要な機能です。しっかり取り組む価値があります。
なぜなら、ウェビナーの開催やホワイトペーパーの作成といった大きな施策がなくても、顧客との接点(タッチポイント)を設計できるようになるからです。
ここでは、スコアリングを活用できない場合と、活用できた場合とで、どれほど成果が変わるのかを具体的に見ていきます。その違いを理解したうえで、スコアリングに本気で取り組む意義を感じてください。
2-1.闇雲にウェビナーへの参加や資料ダウンロードを促してもリストの反応はほとんど得られない
BtoB企業では、一度アプローチしても商談に至らなかった見込み客をMAツールに蓄積し、ウェビナー参加や資料ダウンロードを促したうえで、反応があった人に再度アプローチする、という流れが一般的です。
しかし、この方法だけで接点を持てる顧客はごく一部に限られてしまいます。
仮にアプローチリストが1万件あったとしても、直近90日以内にメールを開封するなど、活動的な顧客はその半分にも満たないことが多いでしょう。
さらに、その中から実際にウェビナーへ参加したり、資料をダウンロードしたりする人は、1,000人にも届かないケースがほとんどです。
結果として、残りの9,000件以上の見込み客は、アプローチされないまま放置されてしまうのです。

2-2.画一的なアプローチでは反応しなかった顧客もスコアリング活用で大きな成果を生み出せる
一方で、MAツールのスコアリングを活用すれば、この放置されている見込み客にアプローチする道が開けます。
しかも、闇雲に同じアプローチをするわけではありません。
「1-2.分析結果をもとにナーチャリングプロセスを設計する」でも解説した通り、顧客の属性ごとに、商談や売上につながりやすい行動パターンがあります。そのため、そのパターンをもとに、同じ動きを再現できるよう設計していきます。
例えば、1万人の見込み客をさまざまな属性でグループ分けし、それぞれに最適化したアプローチを行った結果、次のような大きな成果が生まれる可能性があります。
【セグメント別アプローチによる成果の掘り起こし例】
| セグメント(属性別の例) | アプローチ※ | 新たな反応が見込める顧客数 |
|---|---|---|
グループA(製造業) | 生産性向上に関する事例を送付 | 500人 |
グループB(役職:課長クラス) | 部門マネジメントに関するコラムを送付 | 300人 |
グループC(従業員数:50名以下) | コスト削減に関するウェビナーを案内 | 100人 |
グループD(年齢:30代) | 最新トレンドに関する情報を提供 | 1,000人 |
グループE(地域:西日本) | 地域限定のイベント案内を送付 | 200人 |
合計 | 2,100人 | |
※実際には段階を踏んで顧客ごとにより異なるアプローチを行います
画一的なアプローチでは反応が得られなかった顧客でも、属性に合わせてアプローチを変えるだけで、新たに2,000人以上の見込み客を掘り起こせる可能性があります。
スコアリングは、こうした顧客ごとの最適なアプローチを見つけ出し、効果的に育成していくための設計図となる機能です。
もちろん、すでに対応しきれないほど商談が獲得できている企業であれば、スコアリングの優先度は高くないかもしれません。
しかし、多くの企業は「受注につながる見込み客を、今より増やしたい」と考えてMAツールを導入しているはずです。もしそうであれば、いまは眠っている9割の見込み客にアプローチするためにも、スコアリングの活用は最優先で取り組むべきテーマだと言えるでしょう。
3.MAツールのスコアリングの設定方法
スコアリングの必要性をご理解いただけたところで、ここからは具体的な設定方法について解説していきます。
「設定」と聞くと少し難しく感じるかもしれませんが、心配はいりません。
HubSpotやPardotなど、MAツールごとに機能名は多少異なるものの、スコアリング設定の基本的な考え方は共通しています。
次の4つのステップに沿って進めることで、自社に合ったスコアリングの仕組みを構築できます。
3.プラス・マイナス両方の採点基準とスコアリセットの仕組みを作る
4.受注確度の高い顧客の行動履歴を元にナーチャリングプロセスを作る
では、最初のステップから詳しく見ていきましょう。
3-1.「受注」か「商談」どちらを対象とするか決める
スコアリング設定の最初のステップは、分析のゴールを「受注」と「商談」のどちらに置くかを、はっきり決めることです。
判断基準はシンプルです。Web上の行動履歴データが、より多く、より正確に残っている方を選んでください。目安としては、行動履歴を分析できるデータが1,000件以上あるのが理想です。
スコアリングは、顧客のWebサイト上での行動に点数をつける仕組みです。そもそも、分析の元になるデータがなければ機能しません。
例えば、受注データが500件程度しかない場合は、よりデータ数の多い「商談」をゴールに設定する方がおすすめです。
業界にもよりますが、商談数は受注数の数倍から10倍になることもあり、分析に使えるデータ量が大きく増えます。まずは自社のデータ状況を確認し、分析のゴールを明確にするところから始めましょう。
3-2.データを多角的に分析する
分析のゴールを決めたら、次は顧客のデータを多角的に分析していきます。
3-2-1.既存の顧客データを整理する
分析を始める前に、まずは既存の顧客データを整理する必要があります。
Excelやスプレッドシートで管理している受注履歴や商談記録などをもとに、以下の表で示すような項目で情報を整理していきましょう。
顧客属性 | ・役職 ・従業員規模 ・業種(職業) ・年齢 ・性別 ・所得 ・居住地域 ・家族構成 など |
受注状況 | ・商談にも受注にも至らない人 ・商談転換したが、受注に至らない人 ・商談転換して、受注に至った人 |
期間 | 受注や商談までにどのくらい期間がかかったか |
行動 | どんな行動を何回とったか |
このように地道なデータ登録が終わってから、いよいよ分析に入ります。
3-2-2.整理したデータをセグメントごとに比較する
ここからは、整理したデータをセグメントごとに比較していきます。
セグメントとは、年齢や役職など、共通の特徴で顧客を分けたグループのことです。
例えば、「業種:製造業」「役職:課長クラス」といった形で、さまざまな切り口からデータを分類していきます。
こうしてセグメントごとに分析していくと、グループごとに、行動パターンや受注までの期間に特有の傾向が見えてきます。その違いをもとに、セグメントごとに最適なナーチャリングプロセスを設計してください。
地道に比較と分析を続けることで、やがて
「この行動パターンは、受注確度が高いと言える」
という、信頼できるデータが見つかるはずです。
3-3.プラス・マイナス両方の採点基準とスコアリセットの仕組みを作る
分析で見えてきた行動パターンをもとに、いよいよ具体的な点数付けのルールを作っていきます。次のような考え方でルールを作ってください。
【スコアリングの基準設定例】
| 基準の種類 | スコアリングの考え方 |
|---|---|
プラス(加点) | 商談転換した顧客がよく取る行動 |
マイナス(減点) | 商談転換しない顧客がよく取る行動 |
リセット | ・一定期間アクションがない ・特定の行動をしている(採用ページ閲覧、配信停止 など) |
この中でも特に意識したいのが、「マイナス評価」と「スコアリセット」の仕組みです。
これらがないと、実際には受注に至らない顧客のスコアだけが不自然に上がり、スコアリング全体が機能しなくなってしまいます。
例えば、採用ページを頻繁に閲覧している顧客がいたとします。
アクセスは多いので、プラス評価だけを見ればスコアはどんどん上がります。
しかし、目的は競合調査や就職活動かもしれず、受注の可能性は高くありません。
こうした「実態と合わないスコア」を防ぐためにも、プラス・マイナス両方の基準と、スコアリセットの仕組みを合わせて設計することが重要です。
| なんとなくの感覚で分析しない |
|---|
スコアリング設定で最も避けたいのは、感覚に頼ってしまうことです。 スコアリングとは、データという客観的な事実から、成約に至る傾向を見つけ出す作業です。 「なんとなく料金ページは重要そうだから、+10点」という感覚だけでスコアを高くすると、それは単なる思い込みになります。 一方で「受注した顧客の9割が料金ページを閲覧していた」という事実があれば、「料金ページの閲覧」に高いスコアを設定することには、統計的な根拠があります。 そもそも統計とは、多くのデータから集団の傾向や性質を明らかにするための考え方です。感覚ではなく、データに基づいた統計的な視点を欠かさずにスコアリングの基準を作りましょう。 |
3-4.受注確度の高い顧客の行動履歴を元にナーチャリングプロセスを作る
スコアリングのルールが固まったら、いよいよ最後のステップです。
すでにあなたには「 3-2-2.整理したデータをセグメントごとに比較する 」のステップで、受注に至った顧客の行動パターンが見えているはずです。
「1-2.分析結果をもとにナーチャリングプロセスを設計する」で解説したプロセスを、自社の顧客に置き換えてスコアをつけて、どんな行動を取らせれば商談(受注)転換につながるのか、ナーチャリングプロセスを作りましょう。
この作業は、本当に地道な作業ではあります。しかし、丁寧に取り組めば、確実に成果へとつながります。
ナーチャリングプロセスができたら、見込み客が成功パターンと同じ行動を取れるように、メルマガを配信するなどの施策に落とし込んでいきましょう。
もし、自社だけでは難しいと感じたなら、Sellsupへお気軽にご相談ください。
4.極端にリードタイムの短い顧客を元にスコアリングしてはいけない
ここまでスコアリングの設定方法について解説してきましたが、最後に一つ、多くの人が陥りがちな注意点をお伝えします。
それは、リードタイムが極端に短い顧客のデータをモデルケースにしてはいけないということです。
MAツールは、多数派のパターンを見つけ出すための仕組みです。
そのため、特殊な成功例は他の顧客には応用できません。
例えば、リードタイムが極端に短い顧客には、次のようなケースがあります。
- 以前から自社のファンで、起業を機にすぐ発注した
- 前職で利用しており、新しい会社でも導入を決めていた
常に、「これは例外ではなく、統計的に優位性のある行動パターンだ」という視点を忘れないようにしましょう。
5.MAツールのスコアリング設計・運用に悩んだらSells upにご相談ください

もし、BtoB企業としてスコアリングを本格的に活用し、成果へつなげていきたいとお考えであれば、ぜひ一度、私たちSells upへご相談ください。
私たちは、BtoBマーケティングに専門特化してきただけでなく、各MAツールの特性を深く理解し、実務で使いこなしてきました。
その経験を踏まえ、貴社の状況に合わせて、最も現実的で効果の出る進め方をご提案できると考えています。
私たちは、BtoBマーケティングに特化してきただけでなく、各MAツールの特性を熟知しているからこそ、
「どのツールで、何を、どう設定すれば成果につながるのか」
について、貴社の状況に合わせた具体的な道筋をお示しできます。
MAツールの選定、データに基づいたスコアリング設計、そして売上につながるナーチャリングシナリオの構築まで、貴社の「売れる仕組み」づくりなら、ぜひご相談ください。
6.まとめ
最後に、この記事の内容を振り返っておきましょう。
本記事では、MAツールで成果を出すうえで欠かせない「スコアリング」について、その重要性から、具体的な設定手順までを解説してきました。
スコアリングは、感覚ではなくデータに基づいて顧客を理解するための機能です。
次のステップに沿って進めることで、これまでアプローチできていなかった見込み客を掘り起こし、売上向上へとつなげることができます。
最後に、この記事のおさらいをしましょう。
本記事では、MAツールで成果を出すために不可欠な「スコアリング」について、その重要性から具体的な設定手順までを解説しました。
スコアリングは、感覚ではなくデータに基づいて顧客を深く理解するための機能です。
以下のステップに沿って実践することで、これまでアプローチできていなかった見込み客を掘り起こし、売上向上につなげることが可能です。
- 「受注」か「商談」どちらを対象とするか決める
- データを多角的に分析する
- プラス・マイナス両方の採点基準とスコアリセットの仕組みを作る
- 受注確度の高い顧客の行動履歴を元にナーチャリングプロセスを作る
一見すると複雑に見えるかもしれませんが、一つひとつのステップを着実に進めることが、MAツール活用の成功につながるでしょう。
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