MAツールのシナリオ完全ガイド|基本的な考え方から設計手順まで
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「MAツールを使うにあたり『シナリオ設計』が必要だと聞くが、どのようなものかよくわからない」
「自社でシナリオ機能を上手く使いこなせるのか不安で、導入に踏み切れない」
MAツールの導入を検討しているマーケティング担当者の中には、このようなお悩みや疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
結論として、MAツールのシナリオとは「顧客の行動に応じて最適な“次の一手”を自動で実行するための筋書き」のことです。
シナリオ設計そのものは人の手で行う必要があるものの、MAツールを使えば
「このページにアクセスした顧客にはポップアップを表示する」
「メールを開封した顧客には〇日後に次のメールを配信する」
といった効果的なマーケティング活動を自動化できます。
本記事では、MAツールのシナリオについて理解したいマーケティング担当者に向けて、
- MAツールのシナリオとは何か
- シナリオ実行によって期待できる効果
- 成果が出るシナリオを設計するための8つのステップ
といった情報をわかりやすくお伝えします。
本記事を読み終える頃には、
「自社の場合はこのようなシナリオが必要そうだ」
「そもそも今の状態ではシナリオ運用は向いていない」
といった判断ができるようになり、MAツール活用の現実的なイメージが持てるようになります。
ぜひ最後までご覧ください。
1.MAツールのシナリオとは
MAツールのシナリオとは、一言で言えば「顧客の行動に合わせて最適な“次の一手”を自動で実行するための筋書き」のことです。
顧客(見込み顧客も含む)が
- Webサイトを訪問した
- 資料をダウンロードした
- フォームから無料相談の申し込みをした
などの行動を起こした際、
- 画面上に関連資料のポップアップを表示する
- 資料に関連する内容のステップメールを送信する
- 顧客リストを抽出して営業に共有する
といった、「顧客がこう動いたらこう対応する」というシナリオをあらかじめ設計しMAツールに組み込んでおくことで、顧客に合わせたマーケティング活動が自動化できます。
【MAツールによってシナリオが実行されるイメージ】

一般的には、上の図のような「見込み顧客にメールを配信して成約へ誘導する」といったシナリオをイメージするかもしれませんが、MAツールで自動化するシナリオの対象は必ずしも新規リードに限らず、休眠顧客の再アプローチ・既存顧客の体験向上やロイヤルカスタマー化にも活用できます。
MAツールで自動化できるシナリオの一例 |
|---|
・一定期間アクションのなかった休眠顧客に定期お知らせメールを送る ・過去に低単価商材を購入した既存顧客に対して、上位グレード製品の案内を送る ・「展示会期間中に3日連続でブースを訪れた見込み顧客」を条件にリストを作成し、営業チームへ共有する |
MAツールで実行できるシナリオは多岐にわたります。
「誰に」「何を」「どの手段で」届け、最終的に「どこへ」導くのかという一連の道筋全体がシナリオである、と理解しておくと良いでしょう。
【注意】MAツールができるのはシナリオの「実行」のみ。シナリオ設計そのものは人の手で行う MAツール=自動化というイメージから、「導入すればシナリオの設計まで自動で行われるのではないか」と誤解されるかもしれませんが、シナリオ設計そのものは人間が行わなければなりません。 ・顧客セグメント ・シナリオの分岐 ・シナリオの内容 ・配信頻度 ・配信手段 といった内容設計は、自社の事業モデルや顧客理解に基づいて決定する必要があります。 MAツールのシナリオ機能は、あくまで自社で設計したシナリオの“実行”を自動化するための仕組みだと認識しておきましょう。 ※シナリオの具体的な設計手順は、記事の終盤「4.成果が出るMAツールのシナリオ作成8ステップ」で詳しく解説しています。 |
2.MAツールのシナリオ実行によって期待できる効果
MAツールでシナリオを実行した場合、以下の4つの効果が期待できます。
- 見込み顧客の育成
- 営業の生産性向上
- 休眠顧客の再活性
- 既存顧客のロイヤルティ向上
それぞれどのような効果か、詳しく見ていきましょう。
2-1.見込み顧客の育成
MAツールのシナリオ実行によって期待できる効果として最も代表的なのが、見込み顧客の育成(リードナーチャリング)です。
Webサイトから資料をダウンロードした・展示会のブースに訪問したといった見込み顧客は、必ずしも商品・サービスの購買意欲が高いとは限りません。
こちらから何もアプローチをしなければ興味が薄れてしまう恐れがあるため、「次に必要な情報」をタイミングよく届ける仕掛けが必要になります。
例えば、以下のような見込み顧客育成の流れをMAツールのシナリオで自動化できます。
MAツールのシナリオで自動化できる見込み顧客の育成例 |
|---|
・Webサイトの資料ダウンロード直後、関連する導入事例をメールで自動配信 ・製品の料金ページを訪問したユーザーに、無料見積のポップアップを表示 ・展示会で名刺交換したユーザーを属性ごとのセグメントに分け、属性に応じた内容のサンクスメールを配信 |
このように、見込み顧客が購入・成約に至るまでに取るであろう行動をあらかじめ予測し、その行動に応じた効果的なアプローチを仕込んでおくことで、見込み顧客を取りこぼさず育成できます。
2-2.営業の生産性向上
営業の生産性向上というのも、MAツールのシナリオ実行によって期待できる効果の一つです。
リードを獲得・育成した後は営業へのトスアップが必要になりますが、この工程では、
- フォロー対象の判断が属人的になる
- 営業とマーケティングの部門間で情報共有の手間が発生する
といった課題が生じやすくなります。
MAツールでは「どの行動をとった顧客を営業フォロー対象とするか」を、シナリオとして設定できるため、営業担当者は
- フォローすべき見込み顧客と優先順位
- 顧客が最近どんな行動を取ったか(クリックしたリンクの内容、申し込んだイベントなど)
といった「商談に生きる情報」をスムーズに受け取れるようになり、営業活動に集中できます。
MAツールのシナリオでどのような営業支援ができるのか、以下の具体例をご覧ください。
MAツールのシナリオで自動化できる営業支援の例 |
|---|
・「直近〇日以内に重要ページを複数回訪問した顧客」を自動でスコアリングし、フォロー対象リストに追加 ・スコアが一定以上のホットリードをリスト化し営業へ通知(SFAへ自動連携) |
このように、「営業が今アプローチすべき顧客」をMAツールのシナリオで事前に定義し自動化することで、判断の属人化を防ぎ、フォロー漏れのない効率的な営業活動が可能になります。
2-3.休眠顧客の再活性
MAツールによるシナリオ実行は、見込み顧客の育成だけではなく、休眠顧客(休眠リードも含む)の再活性の効果も期待できます。
休眠顧客の中には、商品・サービスへの関心が完全に消えたわけではない層が一定数存在し、適切なタイミングで適切な情報を届ければ再度関心を引き戻せる可能性が高いです。
「休眠顧客を掘り起こすシナリオ」を設計しMAツールで実行すれば、休眠顧客の判定から再アプローチまでを自動化できます。
例えば、「〇〇日以上アクションのない顧客」に対して、
- 定期的なお知らせメール
- 新商品・新機能の案内
- 値下げ等のキャンペーンの案内
といったシナリオを組むことで、休眠状態からの復帰を促せます。
このように、休眠顧客を再活性させる接点づくりを仕組み化できるのは、MAツールが提供する大きな価値の一つだと言えるでしょう。
2-4.既存顧客のロイヤルティ向上
既存顧客のロイヤルティ向上も、MAツールのシナリオ実行によって期待できる効果の一つです。
既存顧客への継続的なコミュニケーションを自動化することで、製品の利用度・満足度・企業への信頼などが高まり、安定した関係を維持しやすくなります。
既存顧客のロイヤルティを向上させるMAツールのシナリオにはどのようなものが考えられるのか、例を見てみましょう。
| 既存顧客のロイヤルティを向上させるMAツールのシナリオ(一例) |
|---|
【アプリの場合】 |
【SaaS製品の場合】 ・一定期間以上の継続利用があったユーザーに対し、限定キャンペーンの案内・特典の付与 |
【コンサルティングサービスの場合】 |
このような顧客の状態に応じたコミュニケーションは人の手では限界があり、リソースが足りずに実行できないというケースも多いのではないでしょうか。
MAツールによるシナリオ実行の自動化を活用して継続的かつ個別に最適化されたコミュニケーションを取ることで、既存顧客のロイヤルティ向上が期待できます。
結果として、サービスの解約防止やアップセルにもつながるため、
- SaaS製品の継続率を高めたい
- 既存顧客からのアップセルを強化したい
といった課題を持つ企業にとっては、特に大きな効果を感じられるでしょう。
3.MAツールのシナリオは一から設計するのが基本|汎用テンプレートは存在しない
ここまで記事を読んで、
「実際にシナリオを設計するにあたって、手軽に作成できるテンプレートがほしい」
と感じた方もいるかもしれませんが、「MAツールのシナリオは一から設計するのが基本であり、汎用テンプレートは存在しない」というのが本記事の結論です。
なぜなら、シナリオ設計の根幹にあるのは「何を達成するためのシナリオなのか」という目的定義であり、この目的は企業ごと・プロダクトごとに大きく異なります。
仮にWeb上などに掲載されている一般的なテンプレートを使って当てはめようとしても、自社の顧客行動や営業プロセスと合致せず上手く機能しない可能性が高いです。
以上のことから、
- 他社のテンプレートに無理やり自社のシナリオを当てはめる
- 目的を定義せず「とりあえずステップメールを作ってみる」など準備不足の状態でシナリオを作成する
といった進め方はせず、自社オリジナルのシナリオを1から作ることをおすすめします。
※具体的なシナリオ設計の進め方については、次章「4.成果が出るMAツールのシナリオ作成8ステップ」で詳しく解説します。
なお、MAツールによってはシナリオ設計をサポートするような機能を搭載した製品も存在します。
シナリオ設計のサポート機能があるMAツール(一例) | |
|---|---|
・テンプレートライブラリ ウェビナーの招待・休眠復帰・イベント御礼などの目的を選択すると、推奨される待機時間や分岐条件がセットされたフローが自動生成される ・AIによるシナリオの自動生成 「展示会に来た人にお礼メールを送り、3日後にクリックがなければ営業に通知するフローを作って」などの指示をチャットで送ると、AIが自動でシナリオの設定を組み上げてくれる機能 ※組み上げられたシナリオが最適とは限らないため、利用時には内容の調整が必要 | |
・標準テンプレート 「標準的な育成フロー」のテンプレートが使用できる ・自作テンプレートの保存機能 一度自社で作った成功パターンをテンプレート化し、複製して使い回せる | |
・シナリオ作成のための参考資料が豊富 ツール内機能としてのテンプレートはないものの、教育資料が充実しており、ツール操作以前の「企画」を埋めるサポートが手厚い | |
上記のような機能を活用するのも一つの方法ですが、あくまでも補助的な機能であるため、最終的にはテンプレートに頼らず自社の目的・顧客・プロセスに合わせた独自のシナリオを設計しましょう。
4.成果が出るMAツールのシナリオ作成8ステップ
ここからは、MAツールの導入を決めた方に向けて、成果が出るMAツールのシナリオ作成方法を8つのステップでご紹介します。
- 【STEP1】シナリオ作成の目的と目標を明確にする
- 【STEP2】営業にとって有益な情報を選別する
- 【STEP3】対象顧客を分類する
- 【STEP4】シナリオの中身を設計する
- 【STEP5】タイミング・通数・CTAを決める
- 【STEP6】スコアリングのルールを決める
- 【STEP7】トスアップ(営業連携)の基準を定義する
- 【STEP8】MA→SFA→営業のループでシナリオを改善する
具体的なアクションや失敗しないためのポイントなど、各ステップごとに見ていきましょう。
4-1.【STEP1】シナリオ作成の目的と目標を明確にする
まずは、シナリオ作成の目的と目標を明確にします。
これから作成しようとしているシナリオが、「何を達成するためのシナリオなのか」「何をもって成功とするのか」を言語化しておくことで、戦略に沿った一貫性のあるシナリオを構築できます。
以下の例を参考に、シナリオ作成の目的と目標を設定しましょう。
シナリオ作成の目的と目標の一例 | |
|---|---|
目的 | 目標 |
ハウスリストからのリードを掘り起こす | 掘り起こしたリードから毎月〇件の商談獲得・うち〇件の受注を安定して創出する |
見込み顧客を育成・選別する | スコアリング基準に基づき「ホットリード」を月〇件創出する |
過去失注した見込み顧客や休眠顧客を掘り起こす | 再商談化率〇%を達成する |
来月開催するウェビナーの集客 | 開催前日までに申し込み件数〇件を達成する |
目的と目標を設定するとシナリオの方向性が固まり、対象となる顧客や内容の設定がしやすくなります。
真の目的を明確にせず「シナリオを作ること」を目的に進めてしまうと、施策全体の解像度が下がり「どの顧客にも響かないシナリオ」となって成果を生みにくくなるため、本ステップは必ず徹底して行いましょう。
4-2.【STEP2】営業にとって有益な情報を選別する
続いては、営業にとって有益な情報を選別します。
MAツールを導入すると、ユーザーの行動に関するさまざまな情報を集められるようになります。
MAツールから得られるユーザーの情報(一例) |
|---|
【Webサイトを訪問したユーザーの場合】 ・ページ閲覧履歴 ・滞在時間 ・離脱ポイント 【メールを配信したユーザーの場合】 ・メールの開封率・クリック率 ・開封時間帯・デバイス ・開封後の行動追跡 |
これらの情報のうち、「営業が商談を進めるうえで本当に必要なデータ」をあらかじめ選別しておきましょう。
すべての行動データが営業活動に直結するわけではないため、営業にとって有益な情報は何かを定義しておくことで
- 営業のアプローチの精度が上がり、商談化率が向上する
- ユーザーのスコアリングの精度が高まる
- 営業とマーケ担当者の足並みが揃う
といった、営業・マーケ双方にとってメリットがあります。
具体的なやり方としては、営業とマーケティングの担当者同士が直接コミュニケーションを取り「どの情報が商談に役立つのか」「逆に不要な情報は何か」のすり合わせを行うのが一般的です。
例えば、
- メールの開封回数は一見有益な情報に感じるが、実際の温度感はユーザーと接触してみないとわからない
- どのバナー経由で流入したかは、アポイント獲得には有効でも、商談では必須とは限らない
といったように、営業視点では価値が低いデータや、そもそもMAツールの仕様上取得できないデータも存在します。
こうした双方の認識のずれを放置せず、
- 営業:「この情報があると商談が進めやすい。その理由は〇〇」
- マーケ:「そのデータは取得できるか・本当に必要か」
といった対話を通じて整理していくことが、このステップの本質です。
4-3.【STEP3】対象顧客を分類する
続いては、対象顧客の分類を行います。
こちらは、STEP1で定めたシナリオの目的・目標を元に、そのシナリオを「どの顧客に向けて実行するか」を具体化するステップです。
以下の例を参考に、シナリオの対象顧客をいくつかのセグメントに分類してみましょう。
シナリオの対象顧客の分類方法(一例) |
|---|
【1.前提情報の整理】 シナリオの作成目的:休眠顧客を掘り起こす 目標:再商談化率5%を達成する 対象顧客:過去に商品の購入があったが、現在ではやり取りがない顧客全般 |
【2.セグメントの切り口を設定する】 対象顧客「過去に商品の購入があったが、現在ではやり取りがない顧客全般」を、どの軸で分類するかを決める ・購入した商品の種類 |
【3.セグメントを作成する】 2で設定した切り口を元に、対象顧客「過去に商品の購入があったが、現在ではやり取りがない顧客全般」を4つのセグメントに分類する ・セグメントA:休眠期間短い・高単価商品を購入 →A~Dのセグメントに向けた4本のシナリオが必要になる |
このように、「どの顧客に向けたシナリオなのか」を具体化することで、顧客の属性・行動・検討フェーズにマッチしたシナリオが配信しやすくなります。
セグメントの切り口にはさまざまなものがありますが、以下が一般的です。
- 流入チャネル(問い合わせフォーム・セミナー・展示会・資料ダウンロードなど)
- 購入商品の種類
- 購入者の業種・役職(BtoBの場合)
BtoC事業については、商品の購入頻度・顧客の年齢・地域・最高購入額など収集できるデータが多岐に渡り分類が細かくなりすぎてしまうため、まずは商品ごとのセグメントに分けることをおすすめします。
4-4.【STEP4】シナリオの中身を設計する
続いては、具体的なシナリオの中身を設計します。
顧客の流入をスタート地点、営業へのトスアップをゴール地点とし、スタートからゴールに至るまでのプロセスを整理しましょう。
具体的には、
- トリガー(シナリオの開始条件)
- アクション(実行する施策)
- 条件(ユーザーの行動に応じた分岐)
などの要素を組み合わせながら、シナリオ全体のたたき台を作成します。
以下は、見込み顧客育成を目的としたシナリオの一例です。
シナリオの中身設計の一例 |
|---|
【前提情報】 目的:見込み顧客を育成・選別する 目標:毎月10件の商談獲得 対象顧客:見込み顧客 セグメント:Webサイトより高単価商品の資料をダウンロードした顧客 |
【スタート】 資料ダウンロードをトリガーにシナリオを開始 |
【アクション1.】 サンクスメールを送信 ※メールの開封有無によって分岐 |
【アクション2.】 メールを開封したユーザーに対し、育成ステップメールを配信 ・導入前のよくある不安 ・課題を放置するリスクの解説 ・事例紹介 など |
【アクション3.】 ステップメールを全て開封したユーザーに対し、個別相談の案内を送付 |
【ゴール】 個別相談の申し込みがあった顧客を営業へトスアップ |
※実際の運用では、さらに多くの分岐や条件を設定するのが一般的です。上記は、シナリオ設計の考え方を理解するための簡易版サンプルとしてご覧ください。
この時、ユーザーの温度感を下げないこと、営業が動きやすい状況を作ることを意識してシナリオを設計するのが重要です。
具体的な分岐の数やタイミングは次のステップで設定するため、本ステップではシナリオ全体の流れを大まかに設計しましょう。
4-5.【STEP5】タイミング・通数・CTAを決める
シナリオの中身を設計したら、シナリオ実行のタイミング・通数・CTA(行動を促すバナーやリンク)を決めます。
同じ内容のシナリオであっても、配信のタイミング・通数・CTAの設計次第で成果は大きく変わります。
そのため本ステップでは、ユーザーの検討フェーズや温度感を意識しながら、より具体的な設計を行うことが重要です。
ただし、シナリオのタイミング・通数・CTAには明確な「正解」というものが存在せず、本記事内で具体的な目安を提示することはできません。
自社にとっての最適な配信タイミング・通数・CTAを設定するには、ユーザーの属性・購買意欲・商品特性などをふまえた仮説を立て、配信後の反応を見ながら修正・改善を重ねるといった試行錯誤が必要になります。
さらに、MAツールの製品によっては分岐数やステップ数に制限があるため、こうした仕様も踏まえてツールを選定することが重要です。
ツール別・シナリオの分岐数やその他制限 | ||
|---|---|---|
ツール名 | シナリオ分岐数 | 機能の特徴・制限など |
分岐数:1つの分岐点で最大20分岐 分岐の仕組み:マルチ分岐 | 「都道府県が東京ならルートA、大阪ならルートB、それ以外ならルートC」といったマルチ分岐(最大20分岐)が1つのノードで可能 | |
分岐数:制限はないが、複雑な分岐を作ると管理が煩雑になりやすい 分岐の仕組み:条件合致型 | メール配信のみ | |
分岐数:2択のみ ステップ数:1シナリオあたり最大300ステップ 分岐の仕組み:2択分岐 (Yes/No) | 3つ以上の選択肢を作りたい場合は、「Aですか?(No) → ではBですか?(No) → …」と階段状に条件を繋げる必要がある | |
STEP4で設計したシナリオの流れを前提に、「このタイミングで、この通数、このCTAが適切か」という視点で見直しながら調整を重ね、シナリオの精度を高めていきましょう。
4-6.【STEP6】スコアリングのルールを決める
続いては、シナリオ内のスコアリングのルールを決めます。
【スコアリングとは?】 顧客の属性や行動に応じて点数(スコア)を付与し、購買意欲の高さを可視化する評価手法。 スコアが高い顧客ほどホットリード(自社商品を購入する可能性が高い見込み顧客)であると判断でき、営業やマーケティングにおけるアプローチの優先度を明確にできる。 |
MAツールのスコアリング機能では、シナリオ設計時に「資料ダウンロードで+20点」「メール開封で+10点」といったスコアリングのルールをあらかじめ決めておくことで、自動で顧客のスコアリングを行うことができます。
スコアリングの採点基準として一般的に用いられるのは、大きく分けて「行動スコア」「属性スコア」の2種類です。
- 行動スコア:メルマガ開封・資料ダウンロード・メール内のリンククリック・セミナー参加など
- 属性スコア:役職・企業規模・業種など
これらを組み合わせることで、「誰が・どのくらい購買に前向きなのか」をより精度高く判断できるようになります。
採点項目や配点の最適解は企業によって異なるため、スコアリングのルールは感覚ではなく、データドリブンで設計することが重要です。
例えば、シナリオ作成の目的が「商談の成功」であった場合、過去の顧客データを
- 商談成功に至った顧客のグループ
- 商談に至らなかった、または失注した顧客のグループ
の2つに分けて解析し、両者の間で行動や属性がどう違っていたかを洗い出すことで、自社にとって有効なスコアリングができるようになります。
なお、MAツールの中には、AIによってスコアを自動算出する機能を備えた製品もありますが、採点の根拠は基本的に公開されていないため、基本的には自社で設けたルールにもとづいてスコアリングを行うようにしましょう。
4-7.【STEP7】トスアップ(営業連携)の基準を定義する
スコアリングのルールを設定した後は、トスアップ(営業連携)の基準を定義します。
以下の例を参考に、「スコアが何点に到達したら営業に回すのか」といった判断基準を明確化しましょう。
トスアップの基準定義の一例 |
|---|
【前提情報】 シナリオ作成の目的:ハウスリストからのリード掘り起こし 目標:掘り起こしたリードからの毎月の安定的な商談獲得を通じた受注創出 対象顧客:ハウスリスト内顧客 |
【シナリオの中身】 役職を切り口に顧客を4つのセグメントに分け4本のシナリオを実行、以下のルールでスコアを貯める ・セグメントA:スコア50をシナリオαで貯める ※上記とは別に週次でのメール配信も行い、スコアの加点を行う |
【トスアップの基準】 ・セグメントAおよびBは、シナリオ進行中にスコアを満たしたタイミングで営業にトスする ・セグメントCおよびDにおいては、スコアを満たしたリードに対して個別打ち合わせメールを送り、返信があれば営業にトスアップする |
このように、データにもとづいたホットリードが自動的に営業へ回せるようになることで、
- マーケティングは「リードの育成」
- 営業は「商談の成功」
というそれぞれの役割分担が明確になり、組織全体としての成果の最大化が期待できます。
4-8.【STEP8】MA→SFA→営業のループでシナリオを改善する
最後は、ここまでのステップで作成したシナリオを、MA→SFA→営業のループで改善していきます。
シナリオが改善されるループ |
|---|
| 1.MA |
・シナリオ実行により、顧客データを収集・分析しながらリードの育成・選別 ・スコアを満たしたホットリードが営業にトスアップされる |
| 2.SFA(営業支援システム) |
・MAからトスアップされた顧客情報(行動履歴など)を営業が確認 |
| 3.営業 |
・商談を行い、結果をMAへフィードバック(スコアは基準値に達していたがリードの温度が低いと感じた、など) →営業からのフィードバックを受け、MAはシナリオ・スコアリング・トスアップの基準等を修正(1に戻る) |
このような一連の流れを繰り返すことで、シナリオの内容や分岐だけではなくMA全体がブラッシュアップされていき、「営業が本当に欲しいリードだけが上がってくる仕組み」に近づいていきます。
シナリオは「作って終わり」ではなく、運用した成果を元に磨き続けるものだと理解しておきましょう。
5.成果が出るシナリオを作りたいならSells upにご相談ください

MAツールのシナリオ活用は、リード育成や営業の効率化に大きな効果をもたらしますが、実際に成果を出すにはシナリオの設計・スコアリング・営業に渡す情報の選別など、想像以上に多くの工程が求められます。
ここまで記事を読んで
「精度の高いスコアリングを設定できない」
「リード育成につながるようなシナリオを構築できない」
「そもそもどの顧客に、どんなコンテンツを、どのタイミングで届ければ良いのか判断できない」
と感じた場合は、MAツールの導入・ナーチャリング支援を行う「Sells up」にご相談ください。
Sells up社の強みは、マーケティングのあらゆる課題を解決できる「客観的なデータに基づいた戦略立案」と「多角的なマーケティング施策」です。
顧客の事業ステージや課題に合わせて、広告運用、コンテンツマーケティング、MA活用などを組み合わせ、リード獲得から顧客化までを一気通貫で支援します。
Sells upが解決できる課題(一例) |
|---|
・目標設定でつまずいてしまっており、もはや何のためにシナリオ設計をするのかわからなくなっている ・どのMAツールを導入すればいいかわからない ・リードナーチャリングが機能するシナリオを自社で設計できない |
このように、Sells upのマーケティング支援は、多くの企業が陥っている「勘や感覚に頼った成果の出ないマーケティング活動」を「勝てる仕組み」へと変革します。
以下は、実際にSells upが手掛けたMA活用支援の事例です。
MAツールの導入段階から総合的なサポートを受けたい、あるいはMAツールを導入したもののシナリオ設計やスコアリングにお悩みの場合は、まずは一度お問い合わせください。
6.まとめ
最後に、本記事の重要ポイントをおさらいします。
▼MAツールのシナリオとは
・顧客の行動に合わせて最適な“次の一手”を自動で実行するための筋書きのこと ・「顧客がこう動いたらこう対応する」というシナリオをあらかじめ設計し、MAツールに組み込んでおくことで、顧客に合わせたマーケティング活動が自動化できる ・MAツールができるのはシナリオの「実行」のみ。シナリオ設計そのものは人の手で行う →MAツールのシナリオは一から設計するのが基本であり、そのまま使えるテンプレートは存在しない |
▼MAツールのシナリオ実行によって期待できる効果
・見込み顧客の育成 ・営業の生産性向上 ・休眠顧客の再活性 ・既存顧客のロイヤルティ向上 →これらの効果が、売上・商談率の向上に繋がる |
▼成果が出るMAツールのシナリオ作成8ステップ
1.シナリオ作成の目的と目標を明確にする 2.営業にとって有益な情報を選別する 3.対象顧客を分類する 4.シナリオの中身を設計する 5.タイミング・通数・CTAを決める 6.スコアリングのルールを決める 7.トスアップ(営業連携)の基準を定義する 8.MA→SFA→営業のループでシナリオを改善する →定めた目標・目的に向かってシナリオを設計することで、「とりあえず」のマーケティングから脱却できる |
本記事の内容が、貴社のマーケティング施策改善の参考になりましたら幸いです。
BtoBマーケティングのご相談はSells upへ
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