MAデータで「何が商談化と関係しているか」を調べる|相関分析の考え方とExcelでの実施手順
「やっているのに成果が出ない」状態から抜け出すために
施策を続けているのに商談が増えない、リードの質が上がらない。 こうした課題の多くは、戦略と施策のつながりが設計されていないことが原因です。 Sells upは現状の分析と改善の優先順位整理から支援します。
「どの行動が成果に関係しているか」を感覚で決めていませんか?
「料金ページを閲覧したリードは熱い」
「事例記事を2本以上読んだら営業に渡す」
こういった判断基準は、多くのナーチャリングチームが経験則や感覚で設定しています。
ただ、「なぜその行動が重要だと言えるのか」を問われたとき、データで答えられるチームは多くありません。
この記事では、MAに蓄積された行動データと商談化・受注などの結果データを使って、「どの行動が成果と関係しているか」を数値で確認する手法である「相関分析」の考え方と実装手順を整理します。前回のカイ二乗検定の記事と同様に、統計の知識がなくてもExcelで実施できる形で解説します。
相関分析とは何か
2つの数値の「一緒に動く関係」を調べる
相関分析は、2つの数値データの間に「一方が増えると、もう一方も増える(または減る)関係があるか」を確認する手法です。
ナーチャリングの文脈では、たとえば以下のような問いに使います。
相関分析で答えられる問いの例 ・Webサイトの閲覧ページ数が多いリードほど、商談化しやすい傾向があるか |
相関係数の読み方
相関分析の結果は「相関係数(r)」という−1から+1の間の数値で表されます。
相関係数の値 | 意味 | MAデータでのイメージ |
r = +1.0 に近い | 強い正の相関:一方が増えるともう一方も増える | 閲覧数が多いほど商談化率が高い |
r = +0.4〜+0.7程度 | 中程度の正の相関:ある程度の関係がある | 開封回数が多いほどスコアが高めの傾向 |
r ≒ 0 | 相関なし:2つの数値は独立して動く | ページ滞在時間と商談化率に関係なし |
r = −0.4〜−0.7程度 | 中程度の負の相関:一方が増えるともう一方は減る | 最終接触からの経過日数が長いほど商談化率が低い |
r = −1.0 に近い | 強い負の相関:一方が増えるともう一方は減る | メール未開封回数が多いほどスコアが低い |
実務上は、r の絶対値が0.3以上あれば「ある程度の関係がある」、0.5以上で「比較的強い関係がある」と判断する目安として使われます。ただしこれは絶対的な基準ではなく、データの性質や分析の目的によって解釈が変わります。
ピアソン相関とスピアマン順位相関:どちらを使うか
相関分析には代表的な2種類があります。MAデータを扱う際にどちらを選ぶかの判断基準を整理します。
手法 | 使う場面・特徴 |
ピアソン相関係数 | データが正規分布に近い連続値の場合に使う。例:閲覧ページ数・スコア・商談化までの日数など、数値として自然に並べられるデータ。Excelの CORREL 関数で計算できる |
スピアマン順位相関係数 | データに外れ値が多い場合や、「順位」や「段階評価」のようなデータに使う。例:フェーズの段階(1〜5)・評価スコアの段階分けなど。ピアソンより外れ値の影響を受けにくい |
MAデータの多くは「閲覧数」「開封回数」「スコア」など連続値なので、まずピアソン相関係数を使うことが多いです。ただし一部のリードだけ極端に高い数値がある(外れ値が多い)場合はスピアマンを検討してください。この記事ではより使いやすいピアソン相関係数の手順を中心に解説します。
重要な前提:相関は「関係がある」を示すだけで「原因」は示さない
相関分析を使う前に、必ず理解しておくべき注意点があります。
「料金ページ閲覧数と商談化率に正の相関がある」という結果が出た場合、「料金ページを見たから商談化した(原因と結果の関係)」ではなく、「料金ページをよく見るリードは商談化しやすい傾向がある(関係性の観察)」という意味にとどまります。
相関と因果の混同に注意 【相関】料金ページ閲覧数が多いリードほど、商談化率が高い傾向がある 【因果(の誤解)】料金ページを見せれば商談化する 実際には「検討意欲が高いリードが、料金ページを多く見ており、かつ商談化もしやすい」という第三の要因(検討意欲)が両方を引き起こしている可能性があります。 |
相関分析は「どの行動に注目すべきか」のヒントを与えてくれる探索的なツールです。「相関が高い=スコアを高く設定すべき」と直結させるのではなく、営業へのヒアリングや実験的な施策変更を通じて因果関係を確かめるステップを踏むことが重要です。
Excelで相関分析を実施する手順
以下のデータを例に、手順を追います。リード10件の行動データと商談化(1=商談化、0=未商談化)を用意しました。
リードID | 閲覧ページ数 | メール開封回数 | 資料DL数 | 商談化 |
L001 | 12 | 8 | 3 | 1 |
L002 | 3 | 2 | 0 | 0 |
L003 | 18 | 11 | 4 | 1 |
L004 | 5 | 3 | 1 | 0 |
L005 | 15 | 9 | 3 | 1 |
L006 | 2 | 1 | 0 | 0 |
L007 | 9 | 6 | 2 | 1 |
L008 | 4 | 2 | 0 | 0 |
L009 | 14 | 10 | 3 | 1 |
L010 | 6 | 4 | 1 | 0 |
Step 1 | Excelにデータを入力する リードごとに行を作り、各列に行動データと商談化フラグ(1/0)を入力します。実際のMAとSFA/CRMのデータを連携・エクスポートして貼り付けるだけで準備完了です。最低でも30〜50件以上のデータがあると信頼性が上がります。 |
Step 2 | CORREL関数で相関係数を計算する 各行動指標と「商談化」列の間の相関係数を計算します。 書式:=CORREL(数値範囲1, 数値範囲2) 例:閲覧ページ数(B列)と商談化(E列)の相関 =CORREL(B2:B11, E2:E11) |
上記の例データで計算すると、以下のような結果が得られます。
行動指標 | 商談化との相関係数(r) | 解釈 |
閲覧ページ数 | r = +0.92 | 強い正の相関:閲覧数が多いリードほど商談化しやすい傾向が強い |
メール開封回数 | r = +0.91 | 強い正の相関:開封回数が多いほど商談化しやすい傾向が強い |
資料DL数 | r = +0.89 | 強い正の相関:資料DLが多いほど商談化しやすい傾向が強い |
この結果から「閲覧ページ数・開封回数・資料DL数はいずれも商談化と強い正の相関がある」ことが分かります。ただしサンプルが10件と少ないため、実際には50件以上で確認することを推奨します。
Step 3 | 複数の指標を一覧で比較する(相関マトリクス) 行動指標が複数ある場合は、すべての組み合わせを一覧にした「相関マトリクス」を作ると全体像が把握しやすくなります。 Excelの「データ分析」アドイン→「相関」を使うと、選択した範囲の全組み合わせの相関係数を一度に出力できます。 |
Excelの「データ分析」アドインの有効化手順 1. ファイル → オプション → アドイン 2. 「管理」ボックスで「Excelアドイン」を選択し「設定」をクリック 3. 「分析ツール」にチェックを入れてOK 4. データタブに「データ分析」ボタンが追加される 5. データ分析 → 「相関」を選択し、入力範囲に行動データ列を指定する |
Step 4 | 相関係数の高い指標をスコアリング・セグメント設計に活かす 商談化と相関が高い行動指標を特定したら、その結果をスコアリングのウェイト設定やMQL条件の見直しに活用します。 例:「閲覧ページ数との相関がr=0.9以上」→ 閲覧数が一定水準を超えたリードを優先セグメントに設定する根拠として使う |
相関分析をナーチャリングチームで活用する3つのシーン
シーン①:スコアリングの重み付けの根拠を作る
scoring記事で整理したように、感覚ベースのスコアリングは「なぜその点数か」の根拠が薄いという問題があります。相関分析を使うことで、「この行動は商談化との相関がr=0.8だからスコアを高く設定している」という説明が可能になります。ロジスティック回帰分析の前段として、まず相関分析で「どの変数が重要そうか」を絞り込む使い方が実務的です。
シーン②:コンテンツ効果の優先順位を決める
「どのコンテンツ(資料・ウェビナー・ブログ)に接触したリードが商談化しやすいか」を相関で確認できます。複数コンテンツがある場合に「どれを中盤シナリオの中心に据えるか」の判断材料になります。
シーン③:行動指標間の関係を把握する
「閲覧数と開封回数は相関が高い(r=0.95)」という結果が出た場合、2つは似たような情報を持っている(多重共線性)可能性があります。スコアリングで両方に高い点数を付けると、実質的に同じ行動に二重で点数を与えることになります。相関マトリクスを見ることで、こうした重複に気づけます。
相関分析を使う上での注意点
注意点 | 対処法 |
サンプルが少ないと信頼性が低い | 最低30件、できれば100件以上のデータで分析する。件数が少ない場合は「傾向の仮説」として扱い、施策変更の根拠には慎重に使う |
外れ値が相関係数を歪める | 極端に高い数値を持つリードが数件あるだけで相関係数が大きく変わる。外れ値を除外するか、スピアマン相関を使うことを検討する |
相関と因果を混同しない | 相関が高い行動を「原因」と断定しありません。「注目すべき仮説」として扱い、実験的な施策変更で確認するステップを踏む |
時間的な変化を考慮していない | 相関分析は一時点のデータで行うため、「行動が先にあって商談化が後に来る」という時間的な順序は分からありません。縦断的なデータ設計(コホート分析など)と組み合わせると精度が上がる |
まとめ
MAに蓄積された行動データを相関分析にかけることで、「どの行動が商談化と関係しているか」を数値で確認できます。ExcelのCORREL関数を使えば、統計の専門知識がなくても実施できます。
ただし相関分析は「関係の探索」であり、「原因の特定」ではありません。スコアリングのweigtを決める際には、相関分析で仮説を立て、ロジスティック回帰分析や実際の施策変更による検証を通じて精度を上げていく流れが実務的です。
まずは手元の商談化データとMAの行動データをExcelに並べ、CORREL関数を使ってみることから始めてください。数分で「どの行動が商談化と関係しているか」の仮説が見えてきます。
今日からできること
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「やっているのに成果が出ない」状態から抜け出すために
施策を続けているのに商談が増えない、リードの質が上がらない。 こうした課題の多くは、戦略と施策のつながりが設計されていないことが原因です。 Sells upは現状の分析と改善の優先順位整理から支援します。
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