MAツールの導入・活用の相談はSells upへ。

MAツールの導入や、導入後の成果最大化に課題をお持ちでしたら、ぜひSells upにご相談ください。50社以上の導入・活用を支援してきた担当者が貴社の状況・目標に向き合い、最適なツールの導入プラン / 統計知識を用いた活用プラン描き、戦略策定から実装 / 実行 / 効果測定までをご支援いたします。

目次

「獲得したリードは多いのに、商談になかなかつながらない」 
「営業担当者から『リードの温度感が低い』と指摘され、関係性がギクシャクしている」 
「MA(マーケティングオートメーション)ツールのスコアリング機能を使ってみたいが、設定方法が難しそう」

BtoBマーケティング担当者であれば、こうした悩みを一度は抱えたことがあるのではないでしょうか。

これらの課題を解決し、メールマーケティングの成果を最大化する手法が「スコアリング」です。見込み客(リード)の行動を点数化することで、「誰が今アプローチすべき顧客なのか」を客観的に判断できるようになります。

本記事では、スコアリングの基本から、メールマーケティングに特化した設計方法、失敗しない運用プロセスまでを、BtoBマーケティング支援の専門家であるSells upの視点を交えて解説します。

スコアリングとは?BtoBマーケティングにおける見込み客の「温度感」の可視化

BtoBメールマーケティングにおいて「スコアリング」とは、見込み客一人ひとりの検討度合いや購買意欲、つまり「温度感」を数値化し、可視化する仕組みです。

スコアリングの基本的な定義

スコアリング(リードスコアリングとも呼ばれます)は、見込み客の属性情報(企業規模や業種、役職など)やオンライン・オフラインでの行動履歴(メールの開封、Webサイトの閲覧など)を点数化し、総合的な評価を行う手法です。

点数が高いほど、購買に近い「ホットリード」とみなされ、営業が優先的にアプローチすべき対象となります。逆に点数が低いリードは、メールマガジンなどを通じて、継続的に情報提供(ナーチャリング)を行う対象となります。

なぜ、メールマーケティングでスコアリングが重要視されるのか

デジタルマーケティングの浸透により、BtoB企業がオンラインで獲得するリード数は年々増加しています。しかし、全てのリードが同じタイミングで製品・サービスを検討しているわけではありません。

営業リソースの最適化と生産性向上

営業リソースには限界があり、担当者の勘や経験といった属人的な判断だけでは「本当に今アプローチすべきリード」を見極めきれず、機会損失が発生するケースが増えています。

スコアリングを導入することで、営業が対応すべき優先リードをシステムが自動で判別し、リソース配分を最適化できます。これにより、確度の低いリードへのアプローチを減らし、商談機会の創出に集中することが可能になります。

データに基づいた客観的な判断基準の構築

従来の「なんとなく確度が高そう」といった曖昧なリード評価ではなく、データに基づいた客観的な基準でリードの質を判定できるのがスコアリングの大きな特徴です。これにより、マーケティング部門と営業部門間の認識齟齬や、有望なリードの取りこぼしを防ぐことができます。

MAツール活用の高度化

MAツールを導入したものの、単なるメール配信ツールとしてしか活用できていないケースも少なくありません。スコアリングは、MAツールが持つ「リードの自動評価と選別」機能を実現するための重要な要素であり、ツールへの投資対効果を高めるためにも不可欠です。

スコアリング導入がもたらす4つの主要なメリット

スコアリングは、単なるリード評価の効率化を実現するだけではなく、BtoBマーケティング全体の質を底上げし、営業成果を最大化するための重要な基盤となります。

メリット1:営業活動の劇的な効率化

スコアリングによって「今アプローチすべきリード」がリストアップされるため、営業担当者は確度の高いリードへのアプローチに集中できます。結果として、商談化率や受注率の向上が期待でき、営業活動の生産性が大きく改善します。

メリット2:マーケティング部門と営業部門の連携強化

スコアリングは、マーケティング部門と営業部門の「共通言語」となります。両部門の間で「質の高いリードとはどのような状態か」という定義が明確になるためです。

たとえば、「スコアが100点を超えたリードをMQL(Marketing Qualified Lead:マーケティング部門が認定した質の高いリード)とする」といった基準を設けることで、リード引き渡しのタイミングがスムーズになり、部門間の摩擦を解消できます。

メリット3:見込み客一人ひとりに合わせたナーチャリングの実現

リードの温度感(スコア)に応じて、メール配信内容やフォロー施策を最適化できるのも大きなメリットです。

例えば、検討初期のリードには業界動向やノウハウ提供型のコンテンツ、購買意欲の高いリードには具体的な導入事例や無料トライアル案内など、パーソナライズされたナーチャリングが可能になります。これにより、リードの検討度合いを効率的に引き上げることができます。

メリット4:マーケティング活動の投資対効果(ROI)の可視化

スコアリングを通じて、どの施策(どのメールコンテンツやキャンペーン)がリードの温度感を高め、最終的に商談や受注に寄与しているかを数値で分析できます。これにより、マーケティング予算の最適配分や、施策改善のPDCAが加速し、ROIの向上につながります。

【Sells upの視点】スコアリングは単なる効率化ツールではなく、パイプラインを予測する先行指標

多くの企業は、スコアリングを「営業効率化のためのツール」と捉えがちですが、パイプライン(営業案件のプロセス全体)の予測する「先行指標」として活用すべきとSells upは考えています。

スコアの分布や推移を定期的にモニタリングすることで、数ヶ月先の商談創出数や受注見込みを精度高く予測できます。たとえば、直近3ヶ月間のホットリード割合が減少傾向にあれば、「将来の売上が不足する可能性がある」と判断し、ナーチャリング施策やコンテンツの見直しが必要であるといった意思決定にも活かせます。

単なる点数付けで終わらせず、スコアの変化を組織の意思決定に反映することでデータドリブンな経営を実現できます。

スコアリングモデル設計の基本となる3つの評価軸

効果的なスコアリングを実現するためには、どのような基準で点数を付けるかを設計する必要があります。一般的に、スコアリングは以下の3つの評価軸で構成されます。

設計を始める前に:KGI・KPIとの連携

まず重要なのは、スコアリングの目的を「KGI(最終的なゴール)」や「KPI(中間指標)」と連動させることです。たとえば「新規受注数の最大化」をKGIとするなら、スコアリングのKPIは「MQLからの商談化率」などが該当します。KGI・KPIとスコアリング指標を紐付けることで、点数付けが「現場の作業」ではなく「経営課題の解決策」として機能するようになります。

評価軸1:属性(アトリビューション)‐どのような企業・担当者か

属性評価は、見込み客が貴社の「理想的な顧客像(ICP:Ideal Customer Profile)」に近いかどうかを点数化するものです。

  • 企業規模(従業員数、売上規模)

  • 業種(ターゲット業界かどうか)

  • 担当者の役職・部門(意思決定権の有無、担当領域)

評価軸2:興味・関心(インタレスト)‐何に興味を持っているか

興味・関心の評価は、見込み客が貴社の製品やサービス、提供する情報に対して、どの程度関心を持っているかを示します。

  • Webサイトの閲覧ページ(製品詳細、料金ページ、導入事例など)

  • 資料ダウンロード(ホワイトペーパー、サービス資料、事例集)

  • イベント・セミナー申込

特に「料金ページ」の閲覧は、検討フェーズが進んでいるサインとして、高得点を設定するのが一般的です。

評価軸3:行動の活性度(アクティビティ)‐どれだけ活発に動いているか

行動の活性度は、リードの「今」の温度感を測るための重要な指標です。直近の行動が活発であればあるほど、検討意欲が高いと判断できます。

  • サイト訪問頻度(過去7日間でのアクセス回数など)

  • メールの開封・クリック頻度

【Sells upの視点】スコアリング設計は「シンプルさ」と「バランス」が重要

スコアリング設計において、多くの企業が陥りがちな落とし穴が2つあります。

1つ目は「複雑すぎるモデル」です。あらゆる行動を点数化しようとすると運用が煩雑になり、なぜその点数になったのか誰も説明できなくなってしまいます。まずは重要な行動に絞り込み、シンプルに始めることが重要です。

2つ目は「属性スコアへの偏重」です(例:「大手企業だから高スコア」)。仮にターゲット企業の役員でも、メールを全く開封していなければ購買意欲は低いと判断すべきです。逆に、中小企業の担当者でも、頻繁に価格ページを見ているなら有望な見込み客でしょう。

Sells upでは、属性スコアと行動スコア(興味・関心、活性度)のバランスを適切に保つことを推奨しています(初期設計では「属性:行動=3:7」程度を推奨)。組織全体で共通認識を持てる「納得感のあるモデル」こそが、現場で活用される条件です。

【具体例】メールマーケティングに特化したスコアリング設計と高度化

メールマーケティングにおいては、単に「メールを開封した」「リンクをクリックした」という事実だけでなく、その行動の「質」と「文脈」を見極めることが非常に重要です。

開封・クリックの「質」を見極める:エンゲージメントの深さを測る方法

メールの開封やクリックは基本的な指標ですが、それだけではリードの温度感を正確に測ることはできません。ホットリードを見極めるには、以下のようなエンゲージメントの深さを評価する視点が必要です。

  • どのリンクをクリックしたか:ブログ記事へのリンクよりも、製品詳細や価格ページへのリンクの方が重要度は高い。

  • 反応したメールの内容:一斉配信のメルマガへの反応と、特定の課題解決をテーマにしたシナリオメールへの反応では、後者の方が重要度が高い。

  • 連続性があるか:直近配信した3通のメールを連続して開封・クリックしているか。

これらをスコアリング設計に盛り込むことで、単なる「反応数」ではなく「質の高いエンゲージメント」を評価できます。

メールコンテンツの種類に応じたスコア設定例

行動の種類や文脈ごとに点数を細かく設計することで、リードの温度感をより正確に把握できます。

導入事例・製品比較コンテンツへの反応

検討フェーズが進んでいることを示す行動には、高得点を設定します。

  • メール内の「導入事例ダウンロード」リンクをクリック:+8点

  • メール内の「製品比較資料」リンクをクリック:+10点

  • メール内の「価格ページ」リンクをクリック:+15点

セミナー・ウェビナー案内への反応

セミナーやウェビナーはリードとの接点を深める機会であり、参加意欲を示す行動は重要です。

  • セミナー案内メールの「詳細を見る」リンクをクリック:+7点

  • セミナー申込フォームを送信完了:+15点

シナリオメール(ステップメール)の進行度

段階的に検討度合いを引き上げるシナリオメールでは、どの段階まで進んでいるかを評価します。

  • シナリオメール(全5回)のStep.3まで読了(クリック):+5点

  • シナリオメール(全5回)の最終ステップまで読了(クリック):+10点

スコアリング設計のテンプレート(考え方)

「どのような行動に何点をつけるべきか」は多くの担当者が悩むポイントです。以下の表は、スコアリングルールを設計する際の基本的な考え方(テンプレート)です。自社の状況に合わせて、具体的な項目と点数を検討してみてください。

評価軸

検討フェーズ

具体的な行動例(メール関連)

点数設定の目安

設定理由(例)

興味・関心

認知・情報収集

定期メルマガの開封・クリック

低(1~3点)

まずは関係性を構築する段階のため

比較・検討初期    

事例紹介メールのクリック、WPダウンロード

中(5~10点)

具体的な課題解決策を探し始めているため

セミナー申込、価格に関するメールへの反応

高(15点~)

導入に向けて具体的に動き出しているため

行動の活性度

-

直近1週間で3回以上のメール開封

中(5点程度)

直近の関心度が高まっているため

属性

-

ターゲット業種かつ役職者以上

高(10点~)

決裁権を持つ可能性が高いため

精度を高めるための高度な設定:減点・休眠期間・除外設計

スコアリングでは加点ばかりが注目されがちですが、リードの鮮度を保ち、精度を高めるためには、以下の3つの設定が重要です。これらを活用することで、MAツールによる自動化の精度が飛躍的に向上します。

1. 減点ルール(温度感の低下を反映)

リードの温度感が低下した場合や、ネガティブな行動をとった場合にスコアを減点するルールです。

  • 長期未開封・未反応:過去60日間、メールの開封もWebサイト訪問もない場合、-20点。

  • メール配信停止:メールマガジンの購読を解除した場合、-50点(またはスコアをリセット)。

これにより、「過去に高スコアだったが、今は検討していない」といった実態と乖離したリードを排除できます。

2. 休眠期間(スコアの有効期限)

「行動スコアは時間経過とともに価値が減少する」という考え方に基づき、スコアに有効期限を設けます。たとえば、「資料ダウンロード(+10点)」という行動も、それが1年前の行動であれば、現在の検討意欲を示す指標としては価値が低いはずです。

MAツールで「過去3ヶ月間の行動スコアのみを評価対象とする」といった設定をすることで、常に「今、動いているリード」だけをホットリードとして抽出できます。

3. 除外設計(営業対象外の自動判別)

競合他社や営業対象外のリードを自動的に判別し、スコアに関わらず営業への通知対象から除外する仕組みです。

  • 競合他社・パートナー企業:競合企業のドメイン(メールアドレス)が登録された場合、スコアをマイナス値(例:-100点)に設定する。

  • ターゲット外の属性:明らかにターゲットとならない業種や個人事業主などの場合、自動的に除外する。

これらの設定を組み込むことで、営業リソースの無駄を徹底的に防ぐことができます。

失敗しないスコアリング導入・運用のための5つのステップ

スコアリングを有効に機能させるには、設計から運用まで体系的なプロセスが不可欠です。Sells upが推奨する5つのステップをご紹介します。

Step.1:理想の顧客像(ICP)とペルソナの明確化

最初のステップは、貴社にとって「理想的な顧客像(ICP:Ideal Customer Profile)」と具体的な担当者ペルソナを定義することです。

これが曖昧なままスコア設計を始めると、「どのようなリードに高得点を付けるべきか」という基準がブレてしまいます。過去の受注企業の共通点を分析したり、営業担当者へのヒアリングを行ったりして、ターゲット像を明確にしましょう。

Step.2:カスタマージャーニーに基づいた顧客行動の洗い出し

次に、Step.1で定義したペルソナが、製品・サービスを認知してから比較・検討し、決定に至るまでのプロセス(カスタマージャーニー)を想定し、各フェーズでどのような行動を取るかを洗い出します。

  • 認知段階:ノウハウ資料をダウンロードする、情報収集目的のメールを開封する。

  • 比較検討段階:セミナーに参加する、導入事例を読む。

この行動データをもとに、スコアリングの評価項目と点数を設計していきます。

Step.3:営業部門とのすり合わせとMQL定義の合意形成

スコアリング導入において、非常に重要なプロセスが、営業部門とのすり合わせです。マーケティング部門が定義したMQLの基準(例:100点以上)について、営業部門が納得感を持っていることが、連携成功のポイントとなります。

なぜ部門間の合意形成が不可欠なのか

営業部門が「このスコアなら確かに確度が高い」と判断できる基準でなければ、せっかくのスコアリングも現場で活用されません。「マーケティングから渡されるリードは質が低い」という不満の多くは、この基準のすり合わせ不足に起因します。

【Sells upの視点】部門連携を円滑にする「スコアリング基準すり合わせ会議」のアジェンダ例

合意形成をスムーズに進めるためには、データと現場の感覚をすり合わせる会議(ワークショップ)の開催が有効です。以下は、Sells upが推奨するアジェンダ例です。

  1. 目的とゴールの共有:なぜスコアリングを導入するのか(営業効率化、MQLの質向上など)。

  2. ICP・ペルソナの再確認:ターゲットとする顧客像にズレがないか。

  3. 過去の受注リードの行動分析:直近の受注リード数件をピックアップし、彼らが受注前にどのような行動を取っていたか(どのメールに反応し、どのページを見ていたか)を共有します。

  4. スコアリング設計案の提示と議論

    1. 行動分析に基づき、マーケティング部門が作成したスコアリング案を提示。

    2. 営業視点での違和感(点数が高すぎる/低すぎる行動)をヒアリングし、調整。

  5. MQL定義の決定:何点以上をMQLとするか。

  6. アクションルールの決定:「このスコア以上なら、必ずインサイドセールスが○時間以内に架電する」といった具体的なルールを定義。

このプロセスを経ることで、部門間の認識のズレを防ぎ、実効性の高いスコアリング運用が可能になります。

Step.4:MAツールへのスコアリングルールの実装と検証

合意したスコアリングルールを、MAツールに実装します。

設定時のポイントは以下の通りです。

  • まずはシンプルに始める:主要な評価項目(10〜20個程度)からスタートする。

  • 加点・減点ルール、休眠期間、除外設計をMAツールに設定する。

  • 営業部門が確認しやすいよう、SFA(営業支援システム)と連携し、スコア情報やアラート機能を見やすく設定する。

実装後は、テストを行い、意図した通りにスコアが反映されているかを検証することが重要です。

Step.5:スコアに基づいたアクションの自動化設定

スコアリングの価値は、「点数を付けること」ではなく、「スコアに応じた最適なアクションを自動で実行できること」にあります。

リードをスコアに応じてセグメントし、それぞれに最適なアプローチを設計します。

スコア階層別のナーチャリングシナリオ例

  • ホットリード(例:100点以上)

    • アクション:即時に営業担当者へ通知(アラート)、個別デモや相談会の案内メールを自動配信。

    • 目的:商談機会を逃さず、迅速にアプローチする。

  • ウォームリード(例:50点〜99点)

    • アクション:導入事例や製品比較コンテンツを提供、関連テーマのウェビナーへ招待。

    • 目的:比較検討を後押しし、検討度合いを引き上げる。

  • コールドリード(例:49点以下)

    • アクション:定期的なメールマガジン配信、業界トレンドレポートや基礎知識コンテンツの提供。

    • 目的:接点を維持し、将来の顧客候補として育成する。

このようにアクションを自動化することで、リードの温度感に応じた最適なコミュニケーションを、漏れなく継続できます。

スコアリング運用における注意点とよくある失敗事例

スコアリングは非常に有効な手法ですが、設計や運用を誤ると期待した成果が得られないこともあります。ここでは、よくある失敗事例とその解決策を解説します。

失敗事例1:属性スコアに偏りすぎ、行動が活発な担当者を見逃す

背景:属性スコア(企業規模や役職)の比重が極端に高くなっている。

問題点:情報収集段階の若手担当者や、決裁権はないが現場のキーパーソンである担当者の行動スコアが伸び悩む。結果として、彼らが発する購買シグナルを見逃してしまう。

解決策:属性スコアと行動スコアのバランスを見直します。「役職は問わないが、直近1ヶ月で行動スコアが急上昇したリード」もMQLの候補として抽出するなど、柔軟な設計が必要です。

失敗事例2:スコアリングルールが複雑すぎて形骸化する

背景:導入当初にあらゆる行動を評価しようと、数百ものスコアリングルールを設定してしまった。

問題点:ルールが複雑すぎて、なぜそのリードが高スコアになっているのか、誰も説明できない状態になる。メンテナンスも困難になり、次第にスコアが信頼されなくなり、運用が形骸化する。

解決策:スコアリングルールはシンプルに保つことが重要です。まずは主要な行動に絞って開始し、運用しながら徐々にルールを追加・調整していくアプローチが有効です。

失敗事例3:Webサイトのリニューアルでスコアリングが機能しなくなる

背景:WebサイトのリニューアルでURL構造が変更された、または新しい資料を追加した。

問題点:MAツール側の設定(特定のURLへのアクセスや資料ダウンロードを評価するルール)を更新し忘れていたため、重要な行動がスコアに反映されなくなり、MQLが創出されなくなる。

解決策:メールコンテンツやWebサイトに変更を加える際は、必ずスコアリング設定への影響を確認する運用ルールを徹底します。変更管理のチェックリストを作成し、MA担当者が必ず確認する体制を整えましょう。

注意点:スコアリングが機能しにくいケース

スコアリングは万能ではありません。以下のようなケースでは、スコアリングがうまく機能しない、あるいは導入の優先度が低い場合があります。

  • 保有リード数が極端に少ない場合:評価対象となるリード数が少なければ、スコアリングによる効率化のメリットは限定的です。

  • ターゲット市場が極めて限定的な場合(ABM):特定の企業を狙い撃ちするABM(アカウント・ベースド・マーケティング)を展開している場合は、個人単位のスコアリングよりも、企業単位でのエンゲージメント評価が重要になります。

自社の状況を客観的に判断し、スコアリング導入の目的を見極めることが重要です。

スコアリングを成功に導くための継続的な改善プロセス

スコアリングは「設定して終わり」ではありません。市場環境や顧客の行動は常に変化するため、継続的に運用と改善(PDCA)を繰り返すことが重要です。

「設定して終わり」にしないためのPDCAサイクルの確立

スコアリングの精度を維持・向上させるためには、以下のようなPDCAサイクルを回す仕組みが必要です。

  • Plan(計画):KGI・KPIに基づき、スコアリングモデルとMQL基準を設計する。

  • Do(実行):MAツールに実装し、スコアに基づいたナーチャリングと営業連携を実行する。

  • Check(評価):定期的に効果測定を行い、スコアと営業成果の相関を分析する。

  • Action(改善):評価結果と営業からのフィードバックに基づき、スコアリングモデルを見直す。

このサイクルを、営業・マーケティング合同の定例会議などで定期的にレビューする体制を整備しましょう。

効果測定で見るべき重要指標(KPI)

スコアリングの成果を測るためには、単にMQLの数だけでなく、その後の営業成果にどれだけ貢献しているかを評価する必要があります。

  • MQL創出数と転換率:全リードのうち、MQL基準スコアを超えたリードの割合と数。

  • 商談化率(SQL転換率):MQLから商談(SQL:Sales Qualified Lead)へ移行した割合。この数値が低い場合、MQLの基準が甘い(スコアが低すぎる)可能性があります。

  • パイプライン創出額:MQL経由で創出されたパイプラインの総額。

  • 受注率:MQL経由の商談から成約へ移行した割合。

これらの指標を定点観測し、「スコアが高いリードほど商談化率も高い」といった相関関係が見られれば、モデルは適切に機能していると判断できます。

営業からのフィードバックをモデルに反映させる具体的な仕組み

現場の声をスコアリングモデルに反映させるためには、具体的な仕組みが必要です。

  • SFAへのフィードバック項目の設定:営業担当者がMQLをフォローした際、「時期尚早だった」「ニーズが異なった」などの理由をSFAに入力できる項目(カスタムフィールド)を設けます。

  • 定期的な合同レビュー会:フィードバック結果を集計し、なぜスコアと実態に乖離が生まれたのかを分析します。たとえば、「時期尚早」が多ければMQL基準スコアを引き上げる、「ニーズが異なる」が多ければ興味・関心の評価項目を見直すといった改善を行います。

【Sells upの視点】スコアリングモデルの陳腐化を防ぐ、半期に一度の「棚卸し」を推奨

スコアリングモデルは、一度設計しても時間とともに陳腐化します。特にBtoB市場は、顧客の意思決定プロセスや購買行動が変化しやすいため、Sells upでは半年に一度、スコアリング基準の「棚卸し」(見直しワークショップ)を行うことを推奨しています。

営業・マーケティング合同で以下の点を集中的に議論します。

  • 半期のKGI・KPI達成状況とスコアリング指標(特にSQL転換率)の振り返り。

  • 現在のスコアリング基準に対する現場の違和感や課題の洗い出し。

  • 新しい顧客の行動パターンや市場変化を、次期のスコア設計にどう反映させるかの検討。

この定期的な見直しサイクルを組織のルーチンとして組み込むことで、スコアリングモデルの陳腐化を防ぎ、常に「今の商談機会を最大化する設計」を維持できます。

まとめ:スコアリングを起点にデータドリブンなBtoBマーケティングを実現する

メールマーケティングにおけるスコアリングは、単なるリードの点数付けではありません。見込み客の「温度感」を可視化し、営業・マーケティング部門の連携を強化し、最終的にはROIの最大化を実現するための重要な解決策です。

効果的なスコアリングを実現するためには、以下のポイントを押さえることが重要です。

  • 属性・興味・行動の3軸で、自社に最適なスコアモデルを設計する(シンプルさとバランスが重要)。

  • メールコンテンツの種類に応じた詳細なスコア設定を行う。

  • 減点ルール、休眠期間、除外設計を活用し、リードの鮮度と精度を保つ。

  • 営業部門とのMQL定義の合意形成を徹底し(ワークショップの活用)、MAツールでアクションを自動化する。

  • 失敗事例を理解し、定期的な効果測定と半期ごとのモデル見直し(棚卸し)を継続する。

これらの取り組みを通じて、貴社のメールマーケティングは「感覚」から「データドリブン」なものへと変わります。スコアリングを起点に、質の高いリード創出と営業成果の向上を実現しましょう。

MAツールの導入・活用の相談はSells upへ。

MAツールの導入や、導入後の成果最大化に課題をお持ちでしたら、ぜひSells upにご相談ください。50社以上の導入・活用を支援してきた担当者が貴社の状況・目標に向き合い、最適なツールの導入プラン / 統計知識を用いた活用プラン描き、戦略策定から実装 / 実行 / 効果測定までをご支援いたします。

株式会社Sells up
武田 大
株式会社AOKIにて接客業を、株式会社リクルートライフスタイル(現:株式会社リクルート)にて法人営業を経験した後、株式会社ライトアップでBtoBマーケティングを担当。その後、デジタルマーケティングエージェンシーにてBtoBマーケティングの戦略設計/施策実行支援、インサイドセールスをはじめとしたセールスやカスタマーサクセスとの連携を通じたマーケティング施策への転換といった支援を行い、2023年に株式会社Sells upを設立。BtoBマーケティングの戦略設計/KPI設計はもちろん、リードジェネレーション施策やナーチャリング、MA/SFA活用を支援し、業界/企業規模を問わずこれまでに約80社以上の支援実績を持つ。Salesforce Certified Marketing Cloud Account Engagement Specialist/Tableau Desktop SpecialistのSalesforce認定資格を保有。