ナレッジ

カスタマージャーニーを進化させる「進化心理学」入門|データで顧客の本能をハックし、BtoBマーケティングの勝ち筋を作る

BtoBマーケティングのご相談はSells upへ

Sells upはデータに裏打ちされたマーケティング活動を通じて売上成長を実現するBtoBマーケティング専門のエージェンシーです。 まずはお気軽にご連絡ください。

目次

なぜ、論理的なはずのBtoB顧客は「非合理な選択」をするのか?

あなたのチームでは、合理的なはずのBtoB顧客が、なぜか“説明のつかない”選択をする場面に直面したことはありませんか?
「機能も価格も優れているのに、なぜ競合に負けるのか」「稟議を通すロジックは完璧なのに、意思決定が遅れる」——マーケターとして、こうした“ブラックボックス”に頭を抱えた経験は、一度や二度ではないはずです。

BtoBの購買は「論理」「合理性」「ROI」で動く——これは半分正解で、半分は幻想です。実際には、意思決定の現場で人間の“感情”や“本能”が無意識のうちに大きな影響を及ぼしています。
この“見えない力”を理解しないまま、カスタマージャーニーマップや施策を設計しても、現場で「なぜかうまくいかない」が繰り返されるだけです。

あなたのカスタマージャーニーマップが見落としている、人間の「OS」

多くのマーケターが作成するカスタマージャーニーマップは、「論理的な意思決定プロセス」を前提にしています。認知→興味→比較→意思決定——この流れ自体は間違いではありませんが、そこに“人間のOS”とも言える「本能」や「バイアス」が組み込まれていないことがほとんどです。

たとえば、なぜ「他社も使っている」という一言が、スペック説明よりも強い説得力を持つのか?なぜ「今だけ限定」と言われると、急に決断を早めてしまうのか?
それは、私たちの意思決定が“進化の過程で獲得した本能”に強く影響されているからです。
この「OS」を無視したジャーニーマップは、どこか現実とズレてしまうのです。

感覚や経験則では捉えきれない、顧客の無意識のバイアス

「この施策、なぜか響かない」「リードの質が上がらない」——その正体は、論理や経験則では説明しきれない“無意識のバイアス”かもしれません。
人は自分の意思決定を「論理的」と信じていますが、実際には無数のバイアス(損失回避、社会的証明、権威への服従など)に左右されています。

BtoBの現場でも、担当者や決裁者は「組織の一員である前に“人間”」です。
この“無意識のバイアス”を見抜き、ジャーニー設計や施策に組み込むことが、これからのマーケターに求められる新しいスキルなのです。

顧客理解を根底から変える「進化心理学」とは

「もっと科学的なアプローチがあるはずだ」——そんなあなたの思考に、進化心理学はヒントを与えてくれます。
進化心理学とは、人間の意思決定や行動が、何百万年もの進化の過程で培われた「生存と繁殖」の原則に根ざしている、という学問です。

人間の意思決定は「生存と繁殖」の原則に支配されている

私たちの脳は、現代のビジネス環境よりもはるかに過酷な「生き残り競争」の中で進化してきました。
“失敗して命を落とすリスクを避ける”“群れから外れない”“リーダーに従う”——こうした本能的なプログラム(OS)は、今も意思決定の根底に深く残っています。

BtoBの購買担当者も、合理的なロジックだけで動いているわけではありません。
「失敗したくない」「みんなと同じ選択が安心」「信頼できる人の意見に従いたい」——これらは、進化心理学で説明できる“本能的な動機”です。

BtoBにおける「生存と繁殖」とは?- 組織での生き残りとキャリアアップの本能

進化心理学で語られる「生存」と「繁殖」というキーワード、一見するとビジネスの現場とは遠い言葉に思えるかもしれません。しかし、実はこの2つの本能は、あなた自身や多くのBtoBマーケターが日々直面している意思決定の根底に、しっかりと根を張っています。

まず「生存」とは、ビジネスの現場に置き換えると「プロジェクトの失敗を回避する」「組織内で評価を落とさない」「予算やポジションを守り抜く」といった“守り”の本能です。例えば、新しい施策やツールの導入を決めるとき、「もし失敗したら自分の評価が下がるのでは」「この選択で部署の信頼を損なわないか」といった不安がよぎることはありませんか?これはまさに、“生存本能”があなたの意思決定に影響を与えている証拠です。

一方で「繁殖」とは、単なる現状維持ではなく「プロジェクトを成功させて評価を上げる」「キャリアアップする」「チームを成長させ、影響力を拡大する」といった“攻め”の本能にあたります。たとえば、「このMAツールの導入でMQLが2倍になれば、経営層からの評価も一気に上がる」「新しい成功事例を社内外に発信して、組織内でのプレゼンスを高めたい」といった前向きな動機は、“繁殖本能”がもたらすものです。

つまり、あなたが日々抱える「失敗したくない」という慎重さと、「もっと成果を出して評価されたい」という野心。そのどちらもが、進化心理学で語られる根源的な本能に支配されているのです。
このレンズでカスタマージャーニーを見直すことで、顧客の“非合理”な行動も、「実は私自身も同じ本能に突き動かされている」と、深い納得感を持って理解できるはずです。そして、この理解こそが、再現性のあるマーケティング戦略の第一歩になるのです。

BtoBマーケティングに応用できる5つの本能的トリガー

ここからは、BtoBマーケティングの現場で特に重要な「本能的トリガー」を5つ紹介します。
あなたの戦略や施策に、これらの視点が組み込まれているか、ぜひチェックしてみてください。

  • 生存本能(損失回避):失敗したくない、安全な選択をしたい

    人は「得をする」よりも「損をしない」ことを強く求めます。
    BtoBの意思決定では、「この選択で失敗したら…」というリスク回避の心理が強く働きます。
    だからこそ、「失敗しない理由」「リスクを最小化する仕組み」の訴求が響くのです。
  • 群居本能(社会的証明):他社と同じ選択で安心したい

    「みんなが使っている」「業界トップシェア」——こうしたメッセージが強い説得力を持つのは、群れから外れることへの本能的な不安があるからです。
    BtoBでは特に「他社も導入している」「同じ業界の事例」が、意思決定を後押しします。
  • 権威への信頼:専門家やリーダーの意見に従いたい

    「この道のプロが推奨」「著名なリーダーが導入」——人は、専門家や権威ある人物の意見に従う傾向があります。
    BtoBの現場では、第三者のレビューや専門家の推薦が、論理的説明以上に強く働くことも珍しくありません。
  • 互恵性の原理:受けた恩は返したくなる

    「無料で役立つ情報をもらった」「個別相談で丁寧に対応してくれた」——人は恩を返したくなる本能を持っています。
    BtoBマーケティングでも、ギブ(価値提供)を先行させることで、問い合わせや商談化の確率が高まります。
  • ストーリーへの共感:物語を通じて情報を理解し、記憶する

    人間は、データやスペックだけでは動きません。
    「自分と同じ課題を持つ企業が、どうやって成功したのか」——こうしたストーリーが、記憶に残り、行動のトリガーになります。

進化心理学で顧客の「本能」を読み解くカスタマージャーニーマップ

ここからは、進化心理学の視点をカスタマージャーニーマップにどう落とし込むか、実践的なステップで解説します。
「理論は分かった。でも、実際にどう設計すればいいのか?」という疑問に、具体的に答えます。

Step1:ペルソナの「生存戦略」を定義する - 会社での生き残りと成功

まずは、あなたがターゲットとするペルソナ(例:情報システム部長、マーケティングマネージャー)が、組織の中でどんな“生存戦略”を持っているかを明確にしましょう。
「失敗したくない」「評価を下げたくない」「上司や同僚から信頼されたい」——こうした本能的な動機を言語化することで、ジャーニーマップの精度が一気に高まります。

Step2:購買フェーズごとに働く「本能」をマッピングする

次に、認知→比較・検討→意思決定という各フェーズで、どの本能が強く働くのかを整理します。
たとえば、認知フェーズでは「脅威・機会への気づき」、比較フェーズでは「社会的証明・権威」、意思決定フェーズでは「損失回避・希少性」など、フェーズごとに異なる心理的トリガーを明確にします。

Step3:本能的トリガーを刺激するタッチポイントを設計する

各フェーズごとに、どのタッチポイント(広告、ホワイトペーパー、事例記事、セミナーなど)が、どの本能を刺激できるかを設計します。
たとえば、「導入事例ページ」は社会的証明・ストーリー、「専門家インタビュー」は権威、「ROI診断ツール」は損失回避——といった具合に、施策と本能を紐付けていきます。

Step4:心理的障壁(ペインポイント)を「生存の脅威」として捉え直す

「なぜこのフェーズで離脱が多いのか?」というペインポイントは、ペルソナの“生存本能”が脅かされているサインです。
「もし失敗したらどうしよう」「他社はどうしている?」——こうした“脅威”をどうやって安心に変えるかを考え、施策やコンテンツに落とし込みます。

【具体例】SaaSプロダクト選定におけるカスタマージャーニーを分解する

ここからは、実際に現場で直面し得る「新しいMA(マーケティングオートメーション)ツールの選定プロセス」を例に、進化心理学のフレームワークを具体的に当てはめてみましょう。

1. 認知フェーズ:生存の脅威がスイッチを入れる

情報システム部長のAさんは、競合他社が次々と最新のMAツールを導入しているというニュースを目にします。「このまま自社だけが旧式のシステムにしがみついていたら、マーケティング効率で大きく後れを取ってしまうのでは?」――ここで働くのは“生存本能”です。「競争に負けてしまう」「自分の担当領域で失敗したくない」という危機感が、Aさんの行動を促します。

2. 比較・検討フェーズ:群居本能と権威への信頼が意思決定を左右する

複数のMAツールをリストアップしたAさんは、公式サイトやレビューサイトで「導入社数No.1」「業界トップシェア」「有名企業の導入事例」といった情報を熱心にチェックします。
ここで強く働いているのは“群居本能(社会的証明)”です。「みんなが使っているなら安心」という心理は、BtoBの現場でも非常に強力です。

さらに「某有名コンサルが推奨」「著名なSaaSアナリストが高評価」といった“権威”の情報も、Aさんの背中を押します。特に組織内での説明責任を果たす必要がある立場では、「第三者のお墨付き」は極めて重要な意思決定要素になります。

3. 意思決定フェーズ:損失回避と希少性が最後の一押し

最終的に2~3社の候補に絞り込んだAさん。しかし、ここで「導入に失敗して責任を問われたらどうしよう」という“損失回避”の本能が、最後の壁として立ちはだかります。「トラブル時のサポート体制は?」「もしROIが出なかったら?」といった不安を払拭できなければ、決断は先送りになりがちです。

この段階で「今月中の契約で初期費用が無料」「導入後3ヶ月間は返金保証」といった“希少性”や“リスク回避”を訴求するメッセージが、Aさんの決断を後押しします。

このように、SaaSプロダクトの選定プロセスは、単なるスペックや価格比較だけでなく、各フェーズごとに「本能的トリガー」が巧妙に働いています。

——このように、SaaSプロダクトの選定プロセスは、単なるスペックや価格比較だけでなく、各フェーズごとに顧客の「本能」が複雑に作用しています。あなたのマーケティング施策を設計する際も、論理や機能訴求に加えて、「このタッチポイントで、顧客のどの本能が動いているのか?」という新しいレンズを持つこと。それこそが、表層的な行動の裏にある“真のインサイト”を掴み、競合の一歩先を行く戦略を描くための鍵となるのです。

【フェーズ別】BtoB顧客の本能を動かすマーケティング施策

認知フェーズ:まずは「脅威」と「機会」に気づかせる

  • 顧客心理(本能):「このままではマズい(脅威)」「これは得かもしれない(機会)」

    BtoBの現場では、担当者は「現状維持バイアス」に陥りがちです。
    「今のままでも問題ない」と考える心理を揺さぶるには、「今動かなければ損をする」「競合が先に動いている」など、“脅威”や“機会”を強調する必要があります。
  • 施策例:データを用いた調査レポート、課題を自分ごと化させる診断コンテンツ

    • 「業界の90%がすでにDXに着手」「このままでは取り残される」など、データや調査を活用したコンテンツ

    • 「自社の課題発見診断」「ROIシミュレーション」など、読者が自分事として危機感を持てる診断ツール

比較・検討フェーズ:「安全な群れ」を求める本能に応える

  • 顧客心理(本能):「みんなが使っているか?(社会的証明)」「専門家のお墨付きは?(権威)」

    「他社も使っているなら安心」「専門家が推奨しているなら間違いない」——この心理を刺激することが、比較・検討フェーズでの勝ち筋です。
  • 施策例:導入社数や業界シェアを訴求、権威者によるレビュー記事、詳細な導入事例

    • 「導入実績No.1」「業界トップシェア」といった数字や実績の明示

    • 著名な専門家や第三者によるレビューや推薦コメント

    • 同業他社の具体的な成功事例をストーリー仕立てで紹介

意思決定フェーズ:最後の「損失回避バイアス」を乗り越えさせる

  • 顧客心理(本能):「もし失敗したら…(生存本能)」「今決断しないと損をするかも(希少性)」

    「決断して失敗したらどうしよう」という不安がピークに達するのが、意思決定の直前です。
    また、「今だけ限定」といった“希少性”も、決断を後押しするトリガーとして機能します。
  • 施策例:手厚い導入サポートの提示、期間限定の特典、ROIシミュレーションによる効果の保証

    • 「万全のサポート体制」「導入後のフォローアップ」を明確に訴求し、不安を和らげる

    • 「今月中の契約で初期費用無料」など、希少性を訴求する期間限定の特典

    • 「ROIシミュレーション」や「費用対効果の事例」など、失敗リスクを理詰めで払拭するコンテンツ

「仮説」を「勝ち筋」に変える。データで顧客の本能を科学するSellsupのアプローチ

進化心理学は「仮説」、データ分析は「検証」

進化心理学の理論は、顧客の意思決定を読み解くための効果的な「仮説」です。
しかし、仮説はあくまで出発点。現場で本当に機能するかどうかは、データで検証する必要があります。
Sellsupは、MA/CRMデータを活用し、感覚や経験則に頼らない「再現性のある勝ち筋」を構築します。

MA/CRMデータを活用し、顧客の本能的な反応を可視化する

進化心理学に基づいたカスタマージャーニーマップは、いわば精度の高い「宝の地図」です。しかし、その地図が本当に正しいか、どのルートが最短距離なのかを教えてくれるのは、顧客が残したデジタルの足跡、すなわち「データ」に他なりません。貴社のMAやCRMに蓄積されたデータは、顧客の本能的な反応を解き明かすための最高の検証ツールなのです。例えば、以下のような問いに、データは明確な答えを与えてくれます。

  • どの「社会的証明(導入事例)」が、最も「安心感(商談化)」に繋がったか?

    例えば、複数の導入事例ページの中で、どの業界・どの規模・どんなストーリーが最も商談化率を高めたのか。
    こうしたデータを分析することで、「社会的証明」が本当に機能するポイントを特定できます。
  • どの「権威(ホワイトペーパー)」が、顧客の「損失回避(離脱防止)」に貢献したか?

    専門家監修のホワイトペーパーや第三者レビューが、どのフェーズで離脱防止や意思決定の後押しに効いているのか。
    データをもとに、最も効果的なコンテンツやタッチポイントを見極めていきます。

データに基づき「売れる仕組み」を構築・自動化する

進化心理学という「仮説」と、MA/CRMデータという「検証」を組み合わせることで、「なぜ売れるのか」「なぜ響くのか」を再現性のある仕組みとして設計・自動化できます。

——これまで「ブラックボックス」だったマーケティングの成果を、予測可能でコントロールできるシステムへと変革する。Sellsupは、属人的な勘や経験則から脱却し、データドリブンで貴社だけの「売れる仕組み」を構築し続けます。

まとめ:顧客の本能を理解し、データで導くことこそがマーケティングの進化論

マーケティングの成果を“再現性ある勝ち筋”に変えるには、「人間の本能」という“見えないOS”を理解し、その仮説をデータで検証し、具体的な仕組みに落とし込む――このサイクルが不可欠です。

感覚や経験則に頼るのではなく、科学的なアプローチでマーケティングを進化させる。
それこそが、あなたのキャリアを次のステージへと引き上げ、貴社の成果を「ブラックボックス」から「コントロール可能なシステム」へと変える第一歩です。

Sellsupは、顧客の本能を読み解く「心理学の視点」と、それを再現性ある仕組みへと昇華させる「データ分析の技術」を組み合わせ、貴社の「もっとうまくやれるはずだ」という想いを、具体的な「勝ち筋」へと変えるお手伝いをします。まずは貴社の現状を、私たちと一緒にデータで紐解いてみませんか?

BtoBマーケティングのご相談はSells upへ

Sells upはデータに裏打ちされたマーケティング活動を通じて売上成長を実現するBtoBマーケティング専門のエージェンシーです。 まずはお気軽にご連絡ください。

株式会社Sells up
武田 大
株式会社AOKIにて接客業を、株式会社リクルートライフスタイル(現:株式会社リクルート)にて法人営業を経験した後、株式会社ライトアップでBtoBマーケティングを担当。その後、デジタルマーケティングエージェンシーにてBtoBマーケティングの戦略設計/施策実行支援、インサイドセールスをはじめとしたセールスやカスタマーサクセスとの連携を通じたマーケティング施策への転換といった支援を行い、2023年に株式会社Sells upを設立。BtoBマーケティングの戦略設計/KPI設計はもちろん、リードジェネレーション施策やナーチャリング、MA/SFA活用を支援し、業界/企業規模を問わずこれまでに約80社以上の支援実績を持つ。Salesforce Certified Marketing Cloud Account Engagement Specialist/Tableau Desktop SpecialistのSalesforce認定資格を保有。